SAO 少女が見たクリアまでの道   作:自家製イチゴ牛乳

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第12話 月夜の黒猫団とその末路

太陽が完全に昇ってから、暫くたった頃。フィールドには自分以外のプレイヤーがポツポツ来始めたので帰る事にした。

時計を確認すると6時30分。

「エギル起きてるかな?」

 

数分後……

「嬢ちゃんはいつも朝早いな。おじさんはちと辛いよ」

エギルは起きていたが、とても眠そうにしていた。

しかし、私が「アイテムの買取価格は安めにしてもいいから」と告げると、エギルはクールに「しょうがねいな」と言って、口の綻びを必死に隠した。

最終的に大分安く買い取られたが、アルゴ情報によると、エギルの儲けの殆どは下層で頑張っているプレイヤー達の為に使われているらしいので嫌な感じはしない。

また来るよ、と告げると足早に宿を目指した。

 

 

宿の目の前に誰かがいる。それに気が付いた時には既に時遅し。其処にいた人、アルゴは私を見つけるなり一瞬で距離を詰めてきた。

「話がある」

そう一言言うと、ついて来いと言わんばかりに私に背を向け歩き出す。

アルゴには普段からお世話に成っているので、わざわざ直接会って話をしに来てくれたこの状況で、それを断る何て行為はあまりしたくない。

私は大きな欠伸を一つした後、アルゴの小さな背中をトボトボといった調子の足取りで追いかけるのだった。

 

「キリトが最近ギルドに所属したらしい」

レストランの席に着くなりアルゴは口を開いた。

内容は、今日、キリト本人から聞いた事ばかりで正直退屈だったが、幾つか聞いた事の無い事を知った。

私は、アルゴの口から出てきた言葉の中で最も最悪な単語を並べ復唱した。

「キリトは月夜の黒猫団に自分が攻略組であることを隠していて、レベルアップの協力としてパワーレべリングをしている……か」

これは想像以上に面倒くさい事になっているかもしれない。私の直感がそう告げていた。

特にパワーレべリングの部分が最悪だった。

このゲームはHPが0になれば死ぬ。パワーレべリングによって急激に強くなった黒猫団は、きっと心に慢心が産まれ、本来ならキリトがいないと勝てないバトルも、自分達だけで何とか出来る。なんて根拠の無い自信が出てきても不思議では無いし、そうなると、効率が良いからと上の階層で戦闘を繰り返し、いずれ取り返しの付かない事に、なんて事になる可能性もある。

そんな状況にならない様にキリトがストッパーになれば文句無いのだが、キリトは自分の正体を隠している。恐らくだが、本来のレベルより大分した下の数字を言っている筈だ。

流石に黒猫団のメンバーよりも少し高めに設定してあるだろうが、その発言力は攻略組のものよりも大分効果が低くなる。いざ止めようという時に、キリトの声が黒猫団に届かないなんて事態は何としても避けたいところだが、このままだと、いずれトラップに引っかかってキリト以外全滅なんて事も0%ではないだろう。

今言った事は現状起こりうる最悪の状況を適当に挙げただけだが、デスゲームであるこのSAOは常にそう言った最悪の状況を想定して行動をしないと命が幾つあっても足りない。

私でも思い付くことだ、アルゴがその発想に至らない方がおかしい。つまり今回の話は……

「オレっちからお前依頼を頼みたい」

そう言って、決して安くない額を私の目の前に置くアルゴ。

……キリトが取り返しの付かない事になる前に注意してくれ、と言った感じだろうか。

私は知り合いが悲しむ姿は見たく無いし、それに死者は出来る限り少なくしたい。

だから私はアルゴの目を見てこう返答をした。

「分かった。適当に暇を見つけたらキリトと黒猫団に注意しとくよ」

そう言うとアルゴは、何を言っているだ、と首を傾げた。

「お前に頼みたいのは、キリトと黒猫団を取り敢えず一週間程度護衛して欲しいんだヨ。影としてナ」

 

 

あの後アルゴから更に深く話を聞いてみると、アルゴは少し前に一度注意したらしいという事実が発覚した。それと同時に、その注意は黒猫団の慢心を前にすると意味が無かったとも発覚し、これは一度死にかけた方がお灸の代わりになって丁度いいんじゃ無いかと思い至ったらしい。

そこでお鉢が回ってきたのが私、という訳だ。

言われてみれば、注意だけならアルゴがすれば済む話だ。しかし、私に頼まなければダメな事、それも、そこそこの大金を積んでまでする依頼となれば、影として護衛して欲しい。なんて依頼が来ても不思議ではない。

結局依頼を受ける事にした私は、今からキリトの元へ隠密を使った護衛をする事になった。

私の安らかな睡眠はまだ遠いらしい。

 

 

護衛1日目

キリトの索敵のお陰で特に不安を感じる要素も無かったが、黒猫団のメンバーは、レベルと比例せずプレイヤースキルはダメダメだった。パワーレべリングの悪いことろが全面的に出てきたようなPTで、それでいて黒猫団のメンバーは自分が強くなっていると勘違いしているから手に負えない。

完全にキリトにおんぶに抱っこ状態だった。

 

護衛2日目

黒猫団メンバーのレベルが1上がった。これで今より少し強いエリアでも比較的安全にレべリングを出来るレベル帯になった。

明日から狩場を変えるらしい。

 

護衛3日目

新しく変えた狩場でも、はやりキリトにおんぶに抱っこ状態だった。キリトが攻撃を引き受けて、キリトがスキを作って、100%安全と言っても過言ではない状況の時だけ黒猫団のメンバーが攻撃していた。

レベルは上がらなかったが、大量の経験値とコルを前に黒猫団のメンバー全員の顔は笑顔だった。

 

護衛4日目

今日も今日とて影として護衛をしている訳だが、今日は黒猫団の面々の様子が少し変だ。みんな不自然なぐらい笑顔を浮かべている。

その事が気になったので、隠密を発動したまま黒猫団に近づく。話を聞く限り、今日、これから黒猫団のリーダーがギルドホームを買いに行くらしい。初めてのギルドホーム、それが楽しみでない筈がない。

しかし、楽しみで気が狂ったのか、黒猫団の1人が突然声を上げた。

「リーダーがギルドホームを買う間、俺たちは少し上の階層で金でも稼ごうぜ‼︎」

信じられない。いや、信じたくない。それが正直な私の感想だった。

昨日レべリングしていた場所ですらキリト無しでは死んでいたかもしれないぐらい弱い奴らが、調子に乗って昨日より強い場所に行こうとほざき始めたのだ。

しかも、そんなセリフを言った人は何故か笑顔で、その周囲にいた人もその言葉に賛同している。

キリトは「やめた方が……」と言っていたが、攻略組と認識されていない以上、はやり発言力は小さかった。

結局数の力によってキリトの意見は却下され、いつもより強い場所で金を稼ぐ事になった。

私は次に起こるであろう問題にため息を小さく吐くのだった。

 

案の定、黒猫団の面々は宝箱型のトラップに引っかかった。

即死系トラップでは無かったのが幸いし、死者は0名だが、そのトラップは今ままで見たことない様な悪質なトラップだった。密室空間に大量の敵、しかも結晶の使用不可。

はっきり言おう。私が参戦しなかったらキリト以外の人は死んでいた。これは絶対に言いれる。

犠牲者は誰一人でなかったが、黒猫団のメンバーには大きな心の傷が付いた。それが今回の出来事の末路だった。

早速アルゴに今日起こった事実をありのまま伝えると、短く「キリトを助けてくれてありがとう」と返信が来た。

あの後直ぐにキリトと話をしたが、これからギルド会議なるものをするとの事だったので、これ以上は私が関わるべき問題ではないだろう。

暫くして、キリトからメールがあった。

月夜の黒猫団は今までと変わらず攻略組を目指す。しかし、その中に小柄な女性サチさんは含まれておらず、もう一度、一からPTの編成や連携、プレイヤースキルなどを鍛えていく事にした。

そんなメールを見た私は、キリトに返信する際に一つの疑問をぶつけた。

キリトはどうするの?

そのメールの返信は「俺はソロに戻ったよ。でも、あいつらとはまたPTを組めたらいいと思ってる。それも出来ればボス戦でな」どこか吹っ切れた様なさっぱりとした物だった。

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