SAO 少女が見たクリアまでの道   作:自家製イチゴ牛乳

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第13話 閑話 Aの1日

私の1日は夜7時から始まる。のだが、今日はその限りではなかった。

朝7時の太陽を全身で浴び、大きく体を伸ばす。

今日は待ちに待ったクリスマス。12月25日はここ、SAOでも盛大に祝われていた。

右を見ても、左を見てもクリスマス一色に染め上げられた街並みは、GM茅場の手助けもあってか、現実ではあり得ない程豪華に装飾されている。

一歩街へと踏み出せば、朝から酒を飲む大人や、恋人同士の男女が仲良く手を繋いで歩いている人が沢山いた。

生産系プレイヤーは、この機会を逃すまいと路上に大きな風呂敷を広げて、様々なアイテムを売っている。こんなアイテム何に使うの?と思っていたアイテム達もクリスマス景気によって財布が軽いお調子者のプレイヤー達が次々と買っていくので、案外儲けている様に見えた。

こんな日に戦う人なんて居ないだろうと思うだろうが、中には今から戦闘にいく準備をしているプレイヤーもチラホラと見える。

噂によると、蘇生アイテムをドロップするボスが大きなモミの木下に出現するらしいとの事なので、恐らくはそれが目当てだろう。

天涯孤独であるソロプレイヤーには必要ないアイテムなので、私はこんな日にフィールドへ出るプレイヤー達に素直にエールを送った。

街を歩き周り、何か良い物はないかと探し回る。

すると、良い物が手に入るクエストがクリスマス限定で実施されると聞いたので早速参加する事にした。

 

「サンタの袋には何が詰まっている?」そんな名前をしたクエストの内容は至って単純で、宝探しゲーム。

各階層の主街地の何処かにあるサンタの袋を見つけ出し、その中にあるアイテムをプレゼントするという、いかにもクリスマスをしているクエストは、朝9時にプレイヤー全員に送られた、クエストの内容が書かれたメッセージの受信と共に突如始まった。

 

右を見ても左を見てもクリスマスをしていた街並みは一変し、プレイヤー全員が血眼になって袋を探す異様な光景になった。

周りが異様な光景にもなったにも関わらず、笑顔で立っているNPCが少し気持ち悪い。

しかし、そうも言ってる暇は無いらしく、私も街の隅から隅までサンタの袋を探す事にした。

 

取り敢えず、人気の無さそうな階層から探そうと、転移門で移動してみるが、考えている事は同じなのか、普段ならあり得ない程どの階層も賑わっている。

「これじゃ意味がないかな?」

結局元の階層に戻り、地道にサンタの袋を探す事に。

視界を常に下に向け、なるべく早く、だけど見落としがないように動いていく。

 

 

現実は非情な事に全くと言って良い程見つからない袋。

別にもたもたしているつもりは無いが、気が付けば、どの階層も袋を見つけ終えていた。

しかし、神は私を見放さなかった。

曰く、第30層の主街地にあるサンタの袋は、堂々と置かれているにも関わらず、未だに誰も取れていないらしい。

なんでも、難関アスレチックの先にそれはあるらしく、そのアスレチックの攻略を握るのは俊敏力であるというらしい。

私は緩む口元を制しながら、転移門で第30層の名前を告げた。

 

 

第30層では、自分のプレイヤースキルに自信がある人たとが次々とアスレチックに挑んでいた。

しかし、既に攻略は不可能ではないかと噂が立っており、その場を後にする人も沢山いた。

通りすがりのおじさんが、「嬢ちゃんにはクリア出来ん。諦めたほうがいい」と諭してくれたが、私は小さく例を言うとアスレチックのある場所へ目指した。

妙に大きな人だかり、きっとその肉壁の先にアスレチックはあるのだろうと予想とし、顔を覗かせてみた。

アスレチックの内容をみる。

10m程の間隔を開けた一直線上の線。その両端にはそれぞれ赤いボタンと、中にサンタの袋が置かれている透明な箱があった。その透明な箱は、

一度そのゲームを見てみると、ゲームの仕組みが直ぐに分かった。

ルールは至って単純。ボタンを押すと透明な箱が一定時間消え、中にあるサンタの袋を取る事が出来る。

しかし、箱が消える時間はほんの僅かで、10mを一瞬で走りきらないと入手出来ない仕組みになっている。

10mという距離は、走り始めてから加速する前に到着してしまう程短い。

つまり出だし、スタートダッシュに全ての技術を要求されるのだ。俊敏は、スタートダッシュにも補正は掛かるが、その本来の力は加速する事にこそある。つまり、このゲームにおいて俊敏は大した役割を担わない。

瞬発力こそが、このゲームをクリアする鍵になるのだ。

「あの!次、私がやってみてもいいですか‼︎」

大きな声で、周囲に問いかける。

大半の人は既に一度挑戦して、諦めているのか、思いの外簡単に次の挑戦枠を獲得した。

一ゲームあたりの時間が短いため、深呼吸をする間もなく私の番になった。

ボタンに手を置き、集中する。瞳を閉じると、周囲の音が聞こえなくなるのを感じた。

息を整え、指の腹でそっとボタンを押すと同時に、足に全力を込めて地面を蹴る。すると、体が少し浮き、一気に加速いていくのが体に当たる風で感じる事が出来た。

初動は完璧に出来た。陸から離れた足が、再び陸に着いた時、私の持てる俊敏力を遺憾なく発揮し1歩2歩と足を運ぶ。3歩目を踏み出す頃には既に目の前に袋がある。目を限界まで開き腕を伸ばす。

手に感じる柔らかな感触。それは言うまでもなく布の感触だった。

「嘘だろ?」「あんな嬢ちゃんが……」「何者だよ。普通じゃない」

そんな呟きがそこらかしこで聞こえた。

しかし、そんなのお構いなしに、私は声を上げた。

「私、クリアしました‼︎」

そんな私の態度が気に入ったのか、気が付けば周囲にに人が集まり、胴上げをされていた。

目の前に表示されるハラスメントコードに、苦笑いをしながら、されるがままにその状況を受け入れた。

今日は楽しかった。そう心から言えた1日だった。

 

あれから暫くして、寝とまりに使っている宿に帰った私は、さっそくサンタの袋の中を覗いてみた。

「追加効果の開花」と命名されているオーブ状のアイテムが一つあった。

効果を見てみると、私は目を丸くした。

----選択した武器に追加効果を付与する。付与される効果は、武器によって決まる。----

追加効果の付与。それは武器の強化を意味する言葉だ。レア度の高い武器に稀に追加効果が付いている事がある為、追加効果自体は特別珍しい訳じゃない。しかし、このアイテムは異常だ。

そもそも、追加効果が付与されるような武器は、総じて元の性能が高くない。例えば攻撃力が低かったり、耐久値が低かったりと、必ず欠点と言える何かを抱えている。しかし、それを補う程の追加効果を持つ武器を見つけた場合は、元の性能など気にならない程強力な武器になる。

一重に片手剣と言っても、プレイヤーによって色んな武器を装備しているのがこの追加効果に理由があるからなのだ。

この追加効果が無ければ、今頃攻略組の武器は扱う武器種によって統一されているであろう。

余談だが、キリトは追加効果がない代わりに、元の性能が異常に高い武器を好んでいる。(後に入手するエリシュデータなどがそれに当てはまる)

私は強い武器であれば特に拘りはないので、入手したなかで最も強い武器を装備しているが、簡単な話、キリトが好むような追加効果なしで十分強い武器に、追加効果を付与したら一体どうなるか。付与される効果にもよるが、弱くなるなんて事はない以上、確実に強力な武器が完成する。

これは無駄遣いが出来ないレアアイテムを入手してしまったと、嬉しながらも短息してしまうのだった。

しかし、そんな浮ついた気持ちも束の間。私は一気に現実に戻された。

アイテムの確認ついでに開いたスキル一覧。そこには見た事のない文字があった。

「……ッ‼︎」

驚愕と共に私は毛穴という毛穴から脂汗が出てくるのが分かった。限界まで開かれた瞳孔には常に大量の光が入って来ているにも関わらず、不思議と視界は真っ暗で何にも見えない。そんな世界の中で、私は、その体を震わせた。




追加効果が付いている武器として、クォーターボスのラストアタックで入手した『憤怒の化身』などが該当します。憤怒の化身の場合、投擲の熟練度によって威力が上がる、という部分が追加効果です。
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