SAO 少女が見たクリアまでの道   作:自家製イチゴ牛乳

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16話 暗き森の悪夢 1

『61層の"暗き森"にて、攻略組のptを含めた合計7名が死んでいる事が分かった。明日、Aちゃんにその調査に行ってもらいたい。Aちゃんなら一人でも問題ないと思うが、もう一人、オレッチの方で強力な人員を確保してある。とりあえず、明日の夜8時に暗き森の入り口に来てくれ』

突然届いたそのメールは、私の事情を無視した内容だった。

「……めんどくさいな」

そう呟いてはみたものの、私にはこの頼みを断る術を知らない。

オレッチ、その一人称が表しているのはこのメールの差出人。すなわち、アルゴである。

故に断れない。いや、断るのは簡単に出来る。しかし、その後に何をされるか分からない以上、やはり断るべきではないのだろう。

「それにしても、攻略組ptを殺した化物を私一人でも問題無いと言い切るって、アルゴは私の事を過大評価しすぎだよ」

確かに私は、暗殺術という皆には無いスキルを持っている。しかし、それだけで生き残れる程この世界は甘くは無い。

部屋の窓から見上げた空には燦々と輝く太陽があった。

それを尻目に私は布団に潜る。

明日もこの太陽を拝めますようにと、今日も私は密かに願った。

 

 

夜7:00

ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。

脳内に鳴るアラーム音は、昨日と同じで無機質なものだった。

「ふわぁぁぁ……もう7時か」

今日はアルゴの頼み(拒否権は実質無し)を遂行するために少し早めに宿を出ないと行けない。

いつもなら後30分はグダグダとしているところを、たったの10分に短縮し宿を出る。

朝ごはんを適当な屋台で買って、目的地まで歩きながら次々と食していく。

丁度食べ終わる頃、私は暗き森の入り口に立っていた。

「あら、予定時間より早く来るなんて意外だわ」

そう言ったのは白を基調とした防具を見に纏い、手には細く長いレイピアと呼ばれる武器。一般のプレイヤーからは閃光と呼ばれ尊敬され、また、攻略組からは攻略の鬼と呼ばれ畏怖を念を抱かれている、この世界では知らない人は誰一人いない超大者プレイヤー。

「アルゴの言っていた強力な人員って……」

その呟きに彼女は答えた。

「私、血盟騎士団副団長アスナが今回の助っ人よ」

私は夜空を見上げる。キラキラ光る星々に、この巡り合わせを恨んだ。

 

 

暗き森に入る前に私はアスナに幾つか質問をした。今回の敵はどんな敵か。どうすると出現するのか。そもそも何で攻略組が負けたのか。っていうか、何で私が攻略組を殺した化物と戦わないといけないのか。それら全てを尋ねると、アスナは私に対してこう言うのだった。

「アルゴさんから何も聞いてないの?」

私はその問いに堂々と頷いた。

するとアスナは、歩きながら説明を始める。

「今回の敵に関しては何も分からないのが現状ね。アルゴさんを中心とした情報屋達に周囲のNPCやクエストの類を大凡全て当たってみたけど、情報が全く無し。出現条件も同様に分からず、今回は本当の意味で手探りなの。でも、アルゴさんの見立てだとHPはそう高く無いらしいから、Aが適任だろうって言ってた」

確かにHPが低い敵は私にとって絶好のカモである。でも、流石に事前情報無しで行けと言われると別である。

そもそも私の戦闘は、奇襲攻撃からクリティカルで敵を怯ませ、怯んでいる敵に更に追い討ちをかける様にソードスキルを発動させる。怯みが終わる頃に隠密を発動させ、奇襲攻撃からクリティカルで……以下ループ

つまり、第一条件として敵の弱点を知っておく必要がある。

そこらにいるもんスターの類は弱点を予測しやすいが、ボスモンスターは特別で、如何にも弱点な部位がそうでなかったり、逆にそこは絶対弱点じゃ無いと思っていた部位が弱点であったりと、とにかく予想が出来ない。

っていうより……

「もしも敵のHPが多かったらどうするだ……」

もしもアルゴの予想が外れてHPの多い敵に遭遇したらどうするのだろう。HPが少なければ、弱点は分からなくても暗殺術のダメージ倍率(奇襲ダメージx2)のみでゴリ推せるかもしれないが、もしそうでなかった場合、私が不利な戦いをするのは自明の理。逃げる程度は出来るだろうが、死にかけるなんてごめんだ。

「私もアルゴさんと同じで、敵のHPは大して多く無いと思うわ」

内心愚痴を零していると、隣にいたアスナが口を開いた。

「今の最前線は70層。そして此処は最前線から9も階層が低い。幾らこの階層最強の敵が出現したとしても攻略組のプレイヤー、しかもPTを組んでいる人達が死ぬなんて普通じゃありえない」

その意見には賛成だ。しかし、現に攻略組のPTが死んでいる。だったら何故攻略組のPTは死んだ?

「でも、もしも敵が攻撃力だけに特化したボスモンスターだったら、その"ありえない"が"ありえる"になっても不思議な話じゃない」

攻撃力特化のモンスター。その言葉に25層のフロアボスの姿が浮かび上がった。

あれは、最初から攻撃力が高かったが、最後らへんは防御力やHP、弱点箇所を増やすなどと言ったデメリットを幾つも作り、そしてそのデメリットに釣り合うだけのメリット得ていた。そのメリットとは、つまり攻撃力。

今回、攻略組のPTを殺したモンスターも、25層のフロアボスと同等に攻撃力以外の全てのパラメーターを犠牲にして、超火力を有していたなら。そう考えると、なるほど、それが妥当な気がしてきた。

私とアスナは、そこら中にいる攻撃をしてこない蝶型のモンスターを僅かな経験値に変えていきながら森を進んでいく。

大分進んだはずなのに、変化らしい変化は一向に訪れない。そして、新たに蝶を1匹倒すと、私は遠くに誰かの姿を見た。私はやっと次のステップに進めたのだと心の底から喜んだ。

 

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