SAO 少女が見たクリアまでの道   作:自家製イチゴ牛乳

18 / 18
18話 暗き森の悪夢3

 

NPCが去ると私達はその背中を追う様に森の出口を目指した。

出口を目指してから僅か3分程だろうか。背後から何かの目線を感じた。後ろを向いて敵が居ないか確認してみるも、そこには何もいなかった。

体を前に向けようとした時にアスナの体が目に入る。白を基調とした装備品の類には所々赤が散りばめられ、どこか品を感じさせる。

そして、その背中には一つの暗闇が揺らめいていた。

「アスナ‼︎背中に何かいる‼︎」

そう警告すると同時に私は持っていた愛剣をソードスキルで投げつける。奇襲でもクリティカルでもない攻撃は倍率無しで相手のHPを削った。

少し遅れて私の声にアスナが反応する。木と背中合わせにして背後からの奇襲を防ぐ形でレイピアを構えるアスナ。

完璧な判断だ。どこから敵がやってくるか分からない以上、背後からの奇襲をさせないように何かに背中を預ける行為は最適の判断だと言えるだろう。

しかし、アスナには揺らめく暗闇すら見えていないのか、それはアスナの目の前まで接近しているのに反応出来ていない。

私は腰に付けているナイフ状の投擲武器を手に取り、アスナの元まで駆け抜ける。

そして一線。投擲武器をそのまま武器として振るう。その攻撃を暗闇はスルリと躱し、私たちと距離をとる様に後ろの闇へと消えていった。

「アスナ、さっき何かがいたの見えた?」

その問いにアスナは首を横に振る。

「見るどころか、気配すら感じなかったわ」

その返事に、思わず舌打ちをしてしまう。

アスナを守りながら見えない相手に戦う。そんな事が私に出来るのか。そんな自問に対する自答は、考えるまでもなく"出来ない"だ。

だったら逃げるかと考えてみたが、こんな暗闇の中を、幾ら暗視の熟練度が高いとはいえ、マップ機能なしで、しかも、あの暗闇から逃げつつ出口を目指すというのは至難の技だ。当然、私にはそん芸当出来る筈もない。

八方塞がり。絶対絶命。そんな言葉が頭を過る。

ふと、目の前の暗闇が揺らめいた。

私は慌ててそれに向かって武器を振る。しかし、やはりというべきか、その暗闇はスルリと回避して背景の闇に紛れる。

そんな戦い方をする敵に対して私は不敵に笑った。

「まるで私の戦い方じゃないか」

気配を消し、奇襲をする。そして、攻撃される前に逃げ、また気配を消して奇襲。最高のヒットアンドアウェイ。それは本来なら自分が仕掛ける筈の戦法だ。しかし、今は立場が逆で、私はその戦法で確実に追い詰められている。

「…………」

私は誰よりもその戦法を使ってきた。真正面から戦うなんて危ない行動は極力避けてきた。だから分かった。

きっと、この暗闇は弱いのだ。

強者はいつだって正面から戦う。戦えるだけの能力を持っている。でも、私と同じでこの暗闇は弱い。だから、どこまでも卑怯に戦う。安全に、確実に、気配を消して、ばれないように、敵の急所を攻撃する。

私と何もかもが似ている敵。だから、その戦法の利点は、他の誰よりも知っている。そして、その弱点も……

「ねぇ、アスナ。これから迷惑を掛けるけど、許してくれるかな?」

私の問いに、アスナは笑って答えた。

「この状況で死なないなら、喜べる自信あるわよ」

「……そっか。ありがとう」

私は急いでアイテムを取り出す。そのアイテムは、爛々と燃え盛る炎を先端に宿した棒。松明だ。

炎が辺りを照らすと、周囲に1匹の蝶が現れた。その蝶は、今まで見た蝶のどれよりも大きく、黒く、しかし、今まで見た蝶と変わらず弱々しかった。

蝶が慌てて後ろの暗闇に逃げようとする。それを阻止する為に、私は手に持っている松明を投げつけた。

炎が蝶に近づき、気配を消させまいと赤い光を周囲に撒き散らす。

蝶は慌てて別の方向へ逃げようと動くが、既に勝負は決していた。

「アサシネイト」

それはユニークスキル暗殺術にある、たった一つのソードスキル。

アホみたいにダメージ倍率を引き上げるそのソードスキルは、無慈悲に蝶のHPを削り切った。

私の目の前にホログラムが表示される。

《ドロップアイテム 烏揚羽》

 

 

非常にやり切った感はあるが、私たちの戦いはこれからだったりする。

この暗き森で光を使う事は、大量のモンスターに襲われる意味を示しているのだから。

「さて、アスナ。どんどん倒していくよ」

私は一瞬で松明を回収すると、さっそく出てき始めた虫型モンスターに短剣を振るった。

なぜだろう。アスナの表情が蝶の親玉に襲われた時以上に悲痛な表情を浮かべている。……気がした。

 

 

30分後、あれから無限に湧くかと思われた虫の集団をなんとか狩り尽くした私とアスナは帰路についていた。

「そういえば、あの大きな蝶から何かドロップしなかったの?」

本来なら、こういったアイテム関連の詮索はマナー違反になる行為なのだが、さっき迷惑を掛けた詫びも兼ねて正直に答える。

「まだ見てないけど、烏揚羽って武器をドロップした」

そう言いながら烏揚羽を手元に出す。

黒い刀身は短く真っ直ぐ鞘から伸び、軽さを重視しているのか、刃の薄さはまるで蝶の羽のよう。柄にはアクセントとして青色のラインが幾つかあり、それはカラスアゲハの模様を彷彿とさせた。

美しい。武器にここまで心奪われたのは始めてだ。

私は放心しながら、武器の性能を見た。しかし、結果は可もなく不可もなくと言った微妙な性能。決して弱いわけではないが、今私が愛用している短剣と比べると一回り劣る性能だ。

でも、不思議な事に、私はその性能がこの武器の全てとは思えなかった。

私はサンタの袋に入っていたオーブ状のアイテム『追加効果の開花』をオブジェクト化し、烏揚羽を対象にして発動させる。

オーブは砕けたかと思うと、すぐポリゴンとなり霧散する。烏揚羽の方には目に見える変化は無いらしい。

もう一度、武器の性能を開き、新たに追加された文字を見る。

『追加効果 奇襲ダメージ4倍』

その一文に、私は目を見開いた。

「私からはその武器の性能見えてないけど、反応を見た感じ、強かったみたいね」

「ああ、これは強い。最強と言っても過言ではないかもしれないレベルで強い」

多分この武器はキリトの持つエリシュデータに匹敵する強さだ。

「そ、なら良かった」

そう言ってアスナは空を見上げる。そして、「あ」と声を漏らすと、ニヤニヤしながら私に近づいて来た。

「忘れてたんだけど、蝶を倒した時にAちゃんが言ったソードスキル名って、未だに聞いた事ない奴だったな〜」

「うぐっ」

もしかして、私がユニークスキルの保有者ってバレたのか。

「そっか、Aちゃんもユニークスキル持ってるんだ」

アスナの表情は既に確信をしている人の顔だった。

「って、Aちゃん"も"って事は、アスナも持ってるの?」

私の発言に、今度はアスナが「うぐっ」と声を漏らした。





おまけ
「そういえば、何で松明なんてアイテム持ってたの?あそこじゃ明かりは厳禁でしょ?」
「あー、それはね。一瞬だけ松明で明かりを灯すと、弱い癖に経験値が多い雑魚が2、3体だけ集まってくるの。それを利用してレベリングをするとアホみたいに経験値効率いいから、今回特に収穫がなかったらせめて経験値だけでも回収してから帰ろうと思っててね。まだ時間あるし、今からやろっか?」
「え、ちょっと待って‼︎私もう疲れてるのに‼︎」
この後めちゃくちゃレベリングした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。