「どう、楽しかった?」
競技が終わり、観客席へ戻る途中の10032号にゲコタのお面を着けた人物が話しかける。御坂だ。
「お姉様。代役として参加したのにも」
「そんなことは良いのよ。係りの人に間違われちゃったのは仕方ないし、そもそも私が出場に遅れたのが原因だし。アンタは楽しかった?姉としてはそっちのが重要よ。」
少し申し訳なさそうな10032号の言葉を遮り、御坂は質問を繰り返す。
「はい。楽しかったです、とミサカは顔を赤くしながら答えます。」
「いや、赤くなってない。ま、それなら良かったわ。最後なんて私よりよっぽど粘ってたじゃない。さすが私の妹!」
それじゃ、この後も楽しみなさい、と言い残して御坂は去って行った。
「今日、来られて本当に良かったです、とミサカは呟きます。っ!?」
歩き出した瞬間ミサカは崩れ落ちた。足に、全身に力が入らない。ミサカは倒れたまま体操着の土がついてしまったところを見る。
(お姉様の、お友達に、貸していただいた、もの、なのに)
10032号の意識はそこで途切れた。
天井は不安になっている。
「10032号遅くないか?」
ガタガタ
「あれよ、お花摘んでいるのよ。察しなさい。さっきから数秒毎に、うるさいわ。」
ガタガタ
「え、ミサカも一緒に摘みたいってミサカはミサカは駄々をこねてみる!」
ガタガタ
「Calm down.トイレに行くと言う意味よ。」
ガタガタ
先程からベンチが揺れているのは天井の貧乏揺すりのせいだ。
「そんなに心配なら探してきなさい。一方通行も。」
ガタガタ
「あァ?なンで俺が。『行ってきまァす』チッ。」
ガタガタ
《一応探しに行こうぜェ。万が一ってこともあるし。》
(面倒くせェ。)
「よし、行くぞ!早くしろ一方通行!」
《チーズフォンデュ、だと....!?》
(鍋持参かよ。)
天井と2手に別れて数十分経った。一方通行が食堂でキョロキョロしていると、変なお姉さんを視界に入れた。
《丁度イイ。あの人に10032号を見かけたか訊こう。》
(やけに似てる気がするンだが。)
人に話しかけられない一方通行に変わって第二人格が質問する。
『すみません。茶髪の常磐台中学生見ませんでしたか?超能力者第三位、超電磁砲って言うンですけど。』
するとお姉さんは笑って答えてくれた。
「あら、私の娘に何か用があるのかしら?」
《おいィィィ!》
(.....似てるわけだ。オリジナルの母親か。)
一瞬逃げようかと考えた二人だが、御坂美琴とも面識があることを思い出した。
『あァっと、御坂のお母さんでしたか。俺は御坂の友達でして、用があるので探しています。』
「あら、美琴ちゃんのお友達?ごめんなさい、今飲み物買いに行っちゃったわ。たぶんドリンクバーが混んでるから自動販売機で買ってると思うけど。」
『そォですか、じゃァ、そちらに向かいます。ありがとうございました。』
第二人格はボロが出る前に退散することにした。
「いえいえ、美琴ちゃんと仲良くしてあげてね!」
《あれ、中学生って10代だよな。その親ってことはあの人の年齢って....》
(....成長させられたクローンじゃねェだろォな。)
さらに数十分後、天井は女子中学生に話しかけていた。
「やっと見つけた。道に迷ったのか?さあ、帰るぞ。」
「え、アンタ誰?」
いきなりおっさんに話しかけられた御坂は放電して身構える。
「あ、オリジナルの方か。ごめんごめん。君の妹がどこに行ったか知らないかい?」
「.....誰?」
御坂はさらに電圧を上げる。
「いやいや、怪しいものじゃない!一方通行のことは知っているだろう!?彼の友人だ。妹達と暮らしている研究員の一人だよ!天井だ!ほら、この写真を見てくれ!」
必死に弁解する天井からタブレットを受け取り、表示されている何枚かの画像を見る。そこには目の前のおっさんや研究員ら一方通行、妹達の生活感溢れる様子が写っていた。御坂は放電を止める。
「すみませんでした!少し驚いちゃって。妹ならさっきの競技の後話したきり見てませんよ。」
「そうか、なら監視カメラをハッキングしてくれ。君なら簡単だろう?」
天井はとんでもないことを言い始めた。
「えっ、まあ、できますけど。」
そして、そのとんでもないことをこの娘は度々行っている。
「よし、頼んだよ!」
天井は親指を立てて突きだす。