「まずいな....。」
天井が真剣な表情でモニターを覗き込んでいる。
「早く救急車の行き先を調べないと!」
御坂と天井はミサカ10032号を探すために、電子端末で監視カメラの映像データを盗み見していた。そして直ぐに御坂とミサカ10032 号が別れた場面を見つけられたのだが、その後が問題だった。
ミサカ10032号が御坂を見送って歩き出した瞬間、突然倒れてしまったのだ。そのまま意識を失ったようで、立ち上がらない。幸いにも数分で通行人が見つけてくれたおかげで救急車に乗せてもらえた。しかし、それも問題なのだ。
「病院で身元を調べられたらクローンだってばれるかもしれないわ!早く!」
「そ、そうだな!治療なら私のまずは、えー、どうする!?またハッキングか?」
「街の監視カメラを全部見るのは私だけじゃ時間がかかりすぎるわ!それよりも私の友達に風紀委員がいるわ。この会場にも風紀委員の設備は用意されているし、非番でも用があれば使えるかも!その娘に頼んで調べてもらうわ!車持ってますか?」
「ああ。近くの駐車場に停めてある。」
「まずは初春さんを探さないと。大きな花飾りを頭に着けた中学生の女の子です。」
「花飾りだな!ん、あの娘か!?」
天井が指差す先には三人の女の子がいる。一人は車イスに乗っているが表情を見るに、元気そうだ。
「あっ、黒子!初春さん!佐天さん!」
御坂は三人に駆け寄る。先程までより明るくなっている。友達に会えてほっとしたのだろう。
(いや~、女の子が仲良くしてる姿ってなんか良いな~。)
天井はそんなことを考えたが、どうやら様子がおかしい。話を聴いていると、どうも友人同士の会話とは思えない。三人とも御坂に対して初対面のような態度なのだ。
御坂と三人は少し話したが、それだけで三人とも去っていってしまった。
「どうしたんだ?」
「....食蜂っ!」
ビクッ
(え、な、なぜ急に怒り始めたんだ...?)
(私の友達に手を出して、もうイタズラじゃ済まさないわよッ!?)
「あ、ははは何か私のこと忘れちゃってるみたいで...。」
無理矢理に笑おうとするが、言い終わってすぐに俯いたのを見ればつらいのが誰にでもわかる。
(え、ええ...!なんだ?あれか、噂に聞く女の子特有のどろどろの人間関係ってやつか?だとしたら何て慰めれば...?)
天井はオロオロしながら御坂を見ている。
だが!天井は馬鹿ではない!女の子のどろどろした渦に巻き込まれた状況。普通の人なら絶対に巻き込まれたくないこの状況で、なんと!天井は渦の中の地の利を見出だした!
(はっ!そうか、これがフラグ!うまく慰めればもしかすると。フフフフフ。)
天井がアホなことを考えている横で御坂は怒りを抑えながら状況を整理していた。
(食蜂がちょっかいを出してきたことと、あの子が倒れたことに関係は?あいつの能力なら気を失わせることくらいできるし、黒子たちの記憶だって簡単に消せる!)
御坂は10032号が倒れたことと食蜂の関係を疑っている。
(いくらなんでも考えすぎかしら。)
「御坂、まあ友達だって時には喧嘩を」
「考えている時間は無いわ!とにかくあの子を見つけないと!」
「はいッ!そにょ、その通りだ。一方通行にも連絡しよう!フフフ、あいつなら簡単に解決してくれるだろう!」
御坂と天井は救護班の一人に救急車の行き先を尋ねたが、様子がおかしい。
大覇星祭では怪我人が続出する。それの対策として救急車を事前に数台用意しているのだ。その救急車はこの救護班が管理していて、救急車の行き先がわからないなどということはあり得ない。
「思い出せないってどういうことよ!」
御坂が班員の一人の襟を掴んで詰め寄る。
「本当だ!自分でもわからないが救急車の行き先だけが思い出せない。」
(もう、食蜂が関係していると見て間違いないわね。)
「ここにいても埒が開かない。一方通行が空から探しているから救急車はすぐに見つかるだろう。だが、救急車は何台走っていてもおかしくない。一方通行でも空から救急車の、患者を見分けるのは不可能だ。まさか救急車を止まらせるわけにはいかないしな。そうすると手分けで病院に着いて出てきた患者を一人ずつ確認するしかない。わたしたちは車で探すぞ!」
「そンで、今救急車を追跡してンだなァ?オリジナルはどォした?」
一方通行は空から救急車を見つけているが、大覇星祭の期間は救急車が多い。特定できないから、いくつかの病院を確認しにいかなくてはならない。
「それがな、まだ続きがあるんだ。」
天井が救護室から駐車場に行く途中に出会った心強い仲間の話を始めた。
数分前。
「あら、御坂さん。ここにいらっしゃいましたの?」
「婚后さん!」
常磐台中学の生徒、御坂の友達の婚后光子だ。
「それにしても御坂さん双子でしたのね。わたくし少し驚いてしまいましたわ。」
「「へ?」」
今何て?
「隠さなくてもいいんですわよ。同じ中学の仲間じゃありませんの!審判にばれないかヒヤヒヤしていましたが、素晴らしい活躍でしたわ。さすが御坂さんの姉妹!」
(ばれてるぅ!)
(おう...。)
ほとんどの人は気がついていないはずだが、この婚后光子は並外れた観察眼の持ち主らしく、10032号が御坂でないことに気がついているらしい。
「え、ええ。妹よ。そ、そのことは誰かに話したり....?」
「まさか!このわたくし、お友達の秘密を暴露するような口の軽い人間ではありませんわ。このことはわたくしと御坂さんだけの秘密にしておきますわ!」
「そ、そうね。そうしてもらえると助かるわ。」
御坂は安心して息を吐き出す。今のやり取りで少し疲れたようだ。
「ところで妹さんはどちらにいらっしゃるの。競技中のあの動き、わたくしにもやり方を教えていただきたいですわ。」
「....実は大会の後救急車で運ばれちゃってて。今どこにいるかわからないのよ。」
「なんですって!?それは、心配でしょう。わかりましたわ。わたくしも探しますわ!」
「でも、実は食蜂が絡んでて....。」
御坂が拳を握る。
「.....なるほど。そういうことでしたの。先程白井さんたちに会いましたの。ですが白井さんの様子が変で、御坂さんのことを超電磁砲などと他人のように話していましたの。あれは食蜂の能力によるものなのですわね!?許せませんわ!ぜひわたくしに御坂さんのお手伝いをさせてくださいませ!」
婚后は御坂の手を両手で握りながら、目を真っ直ぐ見つめている。
「ありがとう...!」
御坂は泣きそうになりながらも嬉しそうに笑っていた。
(フッ、わたしはお邪魔のようだな。天井亜雄はクールに去るぜ。)
「去るンじゃねェっ!」
一方通行が電話越しに叫んだ。天井の耳がキーンとする。
「と、いうわけで別行動だ。」
「おい、その二人はオマエが別行動になってンのを理解してンだろォなァ?」
「フハハハハ!当然、電話番号、メルアド共に入手済みだ!二人分な!」
『あっ!ずりィぞ!後で俺にも教えろやゴラァ!』
第二人格が久しぶりに出てきた。
「馬鹿なこと言ってねェでさっさと探しやがれ!この三下共がァっ!」
「ん?のり突っ込みか!?なかなかやるようになったな一方通行!」
「黙りやがれッ!」
再び天井の耳がキーン状態になってしまった。