麻帆良に現れた聖杯の少女の物語   作:蒼猫 ささら

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第5話―――運命と出会う 後編

 奇妙な演舞が周囲を蠢く怪異を観客にして繰り広げられている。

 

「はぁあああ!!!」

「フフッ…ハハハ―――!!!」

 

 演舞を演じるのは2人の少女。神鳴流剣士である刹那と月詠。

 少女達の扱う一振りと二振りの刃金が一呼吸の間に幾度も交錯し激突する。固い金属音が鳴り響き、火花と共に両者の“気”が宙に弾け、闇夜の中に歪な星空を描いた。

 直ぐにも消え去るそれを何度も上書きし、繰り返し、両者は互いの脇を抜け―――

 

「どけぇぇっ!!」

「邪魔やぁぁっ!!」

 

 敵に背を向けたまま、囲み押し寄せ、自身らを襲わんとする観客たる怪異どもに鋭く容赦の無い剣戟を見舞う。

 2人は、まるで事前に申し合わせたかのように周囲の怪異を排除し。直後、

 

「ふっ!!」

「はあっ!!」

 

 お互いの隙を突き、怪異を相手に無防備である背を狙い、同時に振り向いて斬撃を放つ。そうして再び2人は交錯し、宙に歪な星空を描き始める。

 殺陣の如き呼吸の合った剣の応酬。敵対しつつも共闘するかのような両者の動き。

 殺し合う2人が助け合うようで、やはり命を奪おうとする奇妙な演舞が続く。

 

「フフ…ウフフフ―――愉しい! 愉しいわっ!! 刹那センパイッ!! 一歩でも間違えれば、凄惨な死が待ち受ける甘美で魅惑的なこの状況……命をめぐる鬩ぎ合い! ハハッ!! 正に“活きとる”という感じやっ!! 本当! 愉しいでおますやろ!! センパイッッ!!!」

「クッ―――!!!」

 

 恍惚と喜悦に満ちた狂笑を浮かべ、際限無く感情を昂ぶらせる月詠に対し。刹那は苦汁を飲んだかのような険しい表情で歯噛みした。

 月詠の言い分に同意できないのは当然だが、刹那の表情を険しくさせているのは、これまた当然の事であるが自らの置かれた状況にだ。

 怪異に囲まれ。打開策を無にし。皆を放り。こうして月詠と対峙しているという不本意極まりない状況にだ。そして更にいうなら―――悔しい事であるが、認めなくては為らなかった。

 自分の顔を尤も険しくさせているのは―――敵の振るう二刀と自身の振るう野太刀の有利不利を。敵の力量と自分の実力が拮抗している事を。そして条件的にも消耗した身体を勘案し、このままでは自分―――桜咲 刹那が敵の振るう凶刃の前に倒れる事を理解してしまったからだ。

 

「―――! だが…!」

 

 それでも負ける訳には―――倒れるわけには行かない!!

 刹那は弱気になっている自分に活を入れる。

 それでも想いだけでどうにか為るものではない。状況は秒単位で悪くなって行く。

 月詠の振るう剣は徐々に刹那の身体を掠め始め、怪異に囲まれた彼女の仲間…友人達も疲弊の色を見せ始めており、特にそれが酷い明日菜は危うく怪異の餌食に成り掛け、古 菲は先程までの陽気さがすっかり鳴りを潜め、真名も独特のシニカルさを湛えた余裕をとっくに捨てていた。

 大鬼達…人外らも同様で、刹那と明日菜に還されず残存していた70体も、その数を30近くにまで減らしていた。

 

 ―――どうする?

 

 もう何度目かに為るのか、その言葉が刹那と真名、そして大鬼の脳裏に過ぎる。

 しかし、言葉だけで肝心の手段(さく)が思い浮かばない。いや…その中で1人、刹那だけは違った。正確には2人なのだが、ここは刹那に焦点を当てよう。

 

 刹那は周囲に犇めく怪異を一瞥し、目の前から迫る月詠に対処しつつ思う。

 

(こうなったら…最早あの力を使うしか―――)

 

 そう、今の状態で互角だというのなら、■■の力を使えば獲物の有利不利に関わらず、拮抗している技量は覆り、月詠を打破できるように成る。そして忌まわしい自分の白い■でも上手く用いて今度は……より至近から奥義を撃ち込め、あの奇怪な男…召喚主にも届く筈だ。

 それが無理でも、その■で真名を伴ない怪異を振り切って一度彼女を離脱させ、狙撃の機会を設ける事だって―――無論、その合間は明日菜と古 菲と味方してくれる人外らに負担を掛ける事になるが…十分勝機がある。

 刹那はその思考の末―――抱く不安と恐怖……逡巡を振り払って―――決意する。

 

「ハッ…!」

「!?」

 

 刹那は、敵の打ち込みをそのまま受けると思わせ―――その実、野太刀の刃の上で受け流す様に二刀の刃を滑らせて月詠の太刀筋を捌き。瞬間僅かに出来た隙を突いて、身体を駒のように回して遠心力を加え、敢えて大振りにした一撃を見舞った。

 それは当然の如く防がれるが、その振り抜く勢いのまま、

 

「飛べぇーー!!」

 

 渾身の力で敵対する狂人(しょうじょ)を押し飛ばす。

 

「―――…ッ!?」

 

 月詠は飛ばされた先、犇めく怪異に飲み込まれる前に姿勢を整え、着地点とその周囲に居る怪異へ斬撃を浴びせる。

 ハァ―――と、刹那はその僅かに出来た休憩時間で呼吸を整え、己の内に潜む……本性へと意識の手を伸ばし、

 

 ―――聞こえる? 聞こえたなら支援するから、直ぐに皆一箇所に集って全力で防御を固めなさい! いい…“全力”でよ!

 

 途端、脳裏にそんな少女の声が響いた。

 直後、上空から月の光に照り返された無数の銀の筋が刹那の後方へ降り注いだ。それに驚く間も無く連続した轟音―――ナニカの着弾音が彼女の耳を弄し、地と空を揺るがす衝撃により身体を小刻みに震わせた。

 

「なっ!?」

 

 一瞬後、驚きを見せて振り向いた刹那の視界には細切れ…或いは、粉々に吹き飛ぶ肉片と地を穿つ無数の小さなクレーターが映り、それが明日菜達の下まで道を築くように続いていた。

 いや、築くようではなく。事実それは明日菜達の下へ「走れ」という見知らぬ声の主からのメッセージだった。

 しかし、声の主が誰かなどは分からない。本当に味方であるかさえも。

 ただそれでも刹那達を助けようという意志は確かに感じられた。だが、それは錯覚かも知れない。藁にでも縋りたい状況下でそう思いたいだけなのでは―――微かに刹那は迷い…。

 

「刹那!!!」

 

 同じく声を聞いていたであろう真名が鋭い声で呼び掛けた。刹那はその鋭い声を聞き、その意を決した真名の眼を見て決断し―――瞬間駆け出していた。今も自分を狙う狂気を纏う少女に背を向けて、躊躇う事無く。

 

「センパイ!! 逃げるなん…―――!?」

 

 背を向けた刹那を追おうとした月詠の言葉は途中で轟いた銃声によって遮られた。正確には音速を超えて飛来した銃弾によってだ。

 駆ける刹那越しに真名は月詠を狙い、二丁の大型拳銃(デザートイーグル)から銃弾を吐き出し続ける。しかし神鳴流に並みの飛び道具は通じない。真名の技量を持ってしてもその道理は容易に覆す事は出来ず、弾道を読み取った月詠は“気”で強化した刀身で、瞬く間に銃弾を弾き、或いは紙一重で躱してゆく。

 だが、それだけで、その僅かな時間だけでも……彼女を足止め出来ただけで十分だった。再び月詠が追撃を試みた頃には、刹那は全てを完了させていた。

 真名の援護射撃のお蔭で無事合流を果たした刹那は、懐から装具を取り出して術と印を紡ぐ。

 

 ―――神鳴流・退魔戦術絶対防御!! 四天結界・独鈷(どっこ)(れん)(かく)!!!

 

 “言われた”とおり全力・最大出力で“気”を注いで防御を固め、人外らも含めた皆を結界で覆う。見れば大鬼の同胞である狐面を被った女妖も呪を紡ぎ、刹那の張る結界の内に別の防御結界を展開していた。

 それでも月詠は諦めず、刹那に目掛けて疾走した。

 

 ―――が、再度、上空から銀の筋が降り注いだ。

 

 しかも今度は、この場―――刹那達が佇む位置以外の戦域全体へと。それはまるで銀色の流星雨で夜空という事もあって実に調和の取れた美しい光景だった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 数分前。

 

 彼女が転移を果たして目にした光景は、広大な森を俯瞰できる遥か上空だった。

 迫る地上を目にし、轟々と落下によって大気を裂く音を耳にしつつも彼女は冷静に深く息を吐いた。

 

 ―――どうやら、強引な長距離転移のせいで座標にズレが生じたようね。

 

 内心でそう呟く。

 このままでは彼女は大地と接吻どころか、轢かれた蛙の如く落下の衝撃で身体が潰れてしまうだろう。それでも彼女は心底冷静だった。

 腿にあるホルダーからタロットにも似たカードを取り出す。

 そのカードに描かれた絵は弓を構えた騎士(アーチャー)。その絵を見て思わず吹き出してしまう。

 

 ―――それとも、この“彼”の運命(Fate)に引き摺られたのかしら? なら……

 

 微笑み、そしてカードを手に彼女は紡ぎ始めた。

 

「―――告げる!」

 

 なら…と、彼女は思った。

 敢えて声にする必要は無い。言葉にする必要も無い。けれどこの先に待ち受けるかも知れない運命(Fate)に挑む覚悟と、その宣誓の意味を込めて、と。

 

汝なんじの身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理ことわりに従うならば応えよ。

 

 宣誓は高らかに、されど厳かに、空を裂く音に掻き消されながらも彼女は謳う。

 

「誓いを此処に! 我は常世総ての善と成る者! 我は常世総ての悪を敷く者!」

 

 視界が徐々に狭まり、地上が迫る。

 

「汝! 三大の言霊を纏う七天! 抑止の輪より来たれ! 天秤の守り手よ!」

 

 強い意を込めて、その決意を“世界”に告げるように彼女は最後の聖言を紡いだ。

 

夢幻召喚(インストール)!!!!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 降り注ぐ銀の流星雨が怪異を大気と共に貫き、引き裂いて無残な骸へと変貌させる。

 着弾した銀光が地を穿ち、衝撃で怪異を吹き飛ばし、骸をより原型を留めない微塵の肉片と赤い体液へと晒して行く。

 その銀光の正体は、音速を優に超えて降り注ぐ“剣”だ。

 無数の剣は轟音と衝撃を伴ないながら怪異と大地に向かい、突き刺し、切り裂き、爆ぜさせ、両者を分別なく耕して次々と墓標の如く佇む。

 それは、空を月の輝きで照りかえる銀の流星雨で美しく彩りながらも、地には無残な骸と肉片をばら撒き、赤く血で染めて凄惨に描くという、実に相反する歪な場景だった。

 

 刹那達はその圧倒的な蹂躙に言葉を失い。息の呑み。次には呼吸も忘れて魅入った。

 いや、実際はそんな間も無い一瞬の出来事だったのかも知れない。

 そして、銀の筋が途絶え―――瞬間、全ての音が無くなり、視界が白く染まった。

 

「――――――ッ!!!?」

 

 それが起きた瞬間、刹那は圧倒的な光景に呑まれて自失しつつあった精神を再構築し、結界の維持に集中して全力を注いだ。

 突き刺さった剣群が馬鹿げた程、凄まじい魔力を伴なって炸裂・爆発したのだ。一応それは刹那達へは及ばないように配慮されていたが、その余波だけで彼女の張った結界は大きく揺らいでいた。

 結界の間近に居た為、流星雨の直撃を逃れていた怪異は、とうに血肉も残さずに吹き飛んでいる。

 ともすれば、強固である筈の神鳴流が誇る、この絶対的な守りが崩れかねない程だった。素で受ければ自分達もただでは済まない。

 必死に結界を維持する刹那の額に汗が浮かぶ。それを理解する真名も同様に汗を流した。

 しかしそんな彼女達以上にこの爆発や降り注いだ剣群に対して、冷や汗を流し、怖気を覚えているのは、大鬼を筆頭とする人外達の方だった。

 そう、彼等は本能と理性での両面で理解していた。

 あの怪異などとは比較するのもおこがましい、絶対的な(ほろび)の確信。

 そう…あの剣、一つ一つが自分達を幾度滅ぼしても余りある“神秘”であり、そして天敵となって久しい神鳴流よりも古く。郷愁にも似た懐かしい良き時代を想起させる“薫り”を持った貴き“幻想”なのだと。

 だからこそ、その内包した“神秘”と“幻想”を炸裂させた爆発に、刹那以上に必死の思いで結界の維持を図る女妖達。例え余波であろうと彼等に取っては致命傷に成りかねないのだ。

 だが、それもまた一瞬の事。秒にも満たぬ神経を擦り減らす時が過ぎ、静寂と共に視界が取り戻された。

 結界も解け、カランと渇いた音を立てて媒介としていた装具が地面に転がった。

 

「――――――何よ……これ?」

 

 言葉を失ったまま皆が絶句する中、明日菜だけがポツリと声を漏らした。それはこの場に居る誰もが抱いている思いだ。

 濛々と立ち込める熱気や蒸気と共に広がったそれは、刹那と月詠が放った技の跡とは比にならない圧倒的という言葉すら霞む破壊の痕跡だった。

 爆発があった範囲―――刹那達の立つ場所以外、戦域全体が樹木ごと薙ぎ払われ陥没し、クレーターと化して完全に地形が変わっていた。

 深さは全体的に4m以上で範囲は恐らく半径100mほど、少なくとも直径にして200m以上はある巨大なクレーターだ。

 地は黒く焼け焦げてガラス状と化し、蜘蛛の巣のように罅割れた個所すらあり、所々に炭化した黒い樹木の欠片が見えた。

 更にクレーターの周囲にある木々も悉くが圧し折れ、倒れており、葉が焼け落ちて黒く焦げていた。煙が見えても火の手自体が上がっていないのは、爆発が余りにも強力だった所為であろうか。

 

 この場に元から在った流れる川の水量を考えると時間は掛かるであろうが、このまま放置すれば、いずれ此処はちょっとした湖に成るかも知れない。

 ともかくこれは、“砲台”として火力第一の魔法使いの中でも、非常に高い魔力・出力を持つ人物が最上位の広域殲滅魔法を行使しないと不可能と思われる御業であった。

 そして長く裏世界に関わり、幾つもの戦場を見てきた真名でさえ、滅多に…もしくは全く見たことの無いものだった。魔法よりも、むしろ核のような現代の戦術・戦略兵器で為されたと言った方がまだ納得できるものだ…。

 

 当然、このような惨状では蠢く怪異の姿も気配もある筈が無く。僅かな瘴気の残滓が熱気や蒸気と共に大気に漂うだけであった。

 召喚主の男であろうと、月詠にしても、この爆発の直撃を受けて無事であるとは……生存しているとは思えなかった―――が、微かに動く影がクレーターの端に見え、彼女達と人外らの眼に捉えられた。

 

「■■■!? ■■■■■―――!!??」

 

 その影は、地面にのた打ち回りながら奇怪な呻き声を上げていた。

 纏う衣服は焼け焦げて襤褸と成り、皮膚は黒く炭化するか赤く焼け爛れているかのどちらかで、肉体の末端は欠けていた。

 その襤褸と顔の作りから辛うじてあの召喚主の男であることが判別できる。

 敵であるものの、その余りの凄惨な……半死半生の姿に明日菜は顔を背け、同情を抱いたが。一方でアレでよく生きているなぁ…と半ば感心めいた奇妙な感情を覚えた―――そう、既に彼女は、もう男に対して敵意をまったく抱いていなかった。

 

 と。明日菜は背けた視線の先に見覚えのある人の姿を捉えた。

 

「…イリヤちゃん?」

 

 明日菜は、熱気の漂うクレーターの中を歩くその人物の名前を呟いた。そうそれはついこの間、修学旅行の直前で知り合った少女だった。

 ただ明日菜の声に疑問が含まれていたのは、会った時とは随分とイメージが違う……というか似合わない赤い外套と黒い鎧のような物を身に着け、両手に白黒の短刀を持っている事と、脳裏に響いた声を聞いた時にも“まさか”と半信半疑だったからだ。

 それでもイリヤが“魔法使い”らしいという事は、ネギから聞いて居る訳で。それを考えるとその奇妙な格好と此処に居ること自体も不思議ではない……ないのだが―――

 

「イリ―――」

 

 明日菜は一瞬、頭に浮かんだ嫌な考えを振り払い。とりあえずイリヤに呼び掛けようとしたが。微かに此方を一瞥した彼女は、直ぐに鋭利ともいうべき視線を今ものた打ち回る男の方へ向けた為、思わず躊躇ってしまう。

 その僅かな間にイリヤは驚きの運動能力を示し、男の傍へと跳躍し距離が離れたため、明日菜は声を掛けるタイミングを逸してしまった。

 

 ―――そして、明日菜は先程浮かんだ嫌な考えが事実となる場面を見る。

 

 

 

 刹那や真名など他の者達もイリヤがこの場に現れたことは、当然気付いていた。

 しかし半死半生とはいえ、油断できない男の存在があり、また刹那と真名も学園内などの他、ある事情で修学旅行前に半日近く観察していたのだが、この見た目幼いイリヤスフィールという少女に気を許して良いのか、本当に味方であるのか判断が付かない為……況してやその実力も底が知れず、未知数であるので余計に警戒が解けず、声を掛けることも行動を取ることも出来ずに居た。

 イリヤもそれは分かっていたが、半ば意識的に無視して自分にとって優先すべき存在へと歩み寄った。

 

(これは……やはり駄目なようね)

 

 息も絶え絶えで足掻く男―――イリヤの知識に於いて4thキャスターともいうべき存在を間近で確認し、イリヤは残念そうにかぶりを軽く横に振った。

 学園長室で水晶球越しに見ていた時から確信に近いものを感じてはいたが、この4thキャスターは話しどころか口の利ける状態ではなかった。無論、時系列的に言ってそれは負傷の度合いを指している訳ではない。

 

「まさか本当に“黒化”…とはね」

 

 思わず口から零す。

 どういう訳か、この4thキャスターは黒化現象を起こしていた。

 そう、それは使役された英霊(サーヴァント)が“ある存在”により、汚染されて受肉化した状態の事だ。

 膨大な魔力が供給され、戦闘力こそ増すが、汚染という言葉通り、代償として悪性と凶暴性が高められてしまい。余程強固でなければ自我を喪失するというペナルティがある。

 さしずめ“狂化”スキルをより凶悪に高めたものと言えるだろう。

 そして目の前のサーヴァントは、どう見ても自我や理性を維持できているとは思えなかった。

 故に尋問を考えてギリギリで―――剣弾を敢えて外し、爆破も戦域離脱に達する瞬間を狙い―――彼を生かしたイリヤは、それを断念して……ふと今更ながらに気付く。

 

「いえ……よくよく考えると、理性が有ったとしても“これ”とは、まともに話は出来ないんだったわね」

 

 第4次聖杯戦争にて呼ばれたキャスター―――“ジル・ド・レェ”の保有スキル『精神汚染:A』とその錯乱振りに、会話が成立しない“Fate/zero”に於ける台詞のやり取りを思い出す。

 こんな簡単な事にも思い至らないとは―――心を逸らせ、平静さを欠いていた事を自覚してイリヤは吐息する。

 まあ、尋問などが出来なくともこうして黒化している事実や、サーヴァントの存在を直に確認できただけでも情報としては価値があった。

 そう気を取り直すと、もう用が無い目前で呻く焼け焦げた“物”をイリヤは冷然と見据え―――手に持つ中華刀を振るい、その首を刎ねた。

 

 

 

「――――――」

 

 ネギの下へ向かう前に一言お礼を言おうとイリヤの方へ足早に近づいていた最中、その容赦無く瀕死の重傷人の首を刎ねる彼女の姿を見て、明日菜は声無きナニカを口から洩らした。

 殺人―――という単語が脳裏を過ぎり…次の瞬間、明日菜は叫んでいた。

 

「イリヤちゃん! 何をっ…!?」

 

 明日菜は上げた己の声の思わぬ大きさに、自分で驚いてしまい言葉を切らした。

 傍にいる刹那達も突然叫んだ彼女に驚いているが、イリヤはそれに少し不思議そうな顔で見せつつも気に留めた様子は無く。明日菜達の方へ歩み寄って安堵するかのように笑顔を浮かべた。

 

「無事で良かったアスナ―――それに…ネギの生徒、よね?」

「……はい。桜咲 刹那といいます」

「龍宮 真名だ」

「……古 菲…アル」

 

 イリヤが明日菜の傍に立つ少女達へ視線を巡らせると、少女達は若干警戒しながらも、それぞれ順々に自分の名前を告げた。

 するとイリヤは軽くお辞儀をする。

 

「失礼。先に名乗るべきなのに…不躾だったわね」

「いえ、存じておりますイリヤスフィール」

「ああ、それもそうか……でも一応名乗っておくわ、私は―――」

 

 刹那の返事にイリヤは自己紹介を始める。

 そんな平然とした。そう、まるでほんの数日前の出会いを想起させる普段通りとも言うべきイリヤの様子を、明日菜は信じられない思いで見詰める。

 流石に怪訝に思ったのか、自己紹介を終えたイリヤは明日菜に尋ねる。

 

「どうしたのアスナ?」

「―――ッ…イリヤちゃん、自分が何をしたか分かっていないの?」

 

 やはり平然と尋ねてくるイリヤに一瞬、明日菜は得体の知れない怖気に似た感覚を覚えるも、何とか……応じた。

 

「? 何を…って、確かに下手をしたらアスナ達も吹き飛ばしかねなかったけど―――」

 

 明日菜の責めるかのような問い掛けにイリヤは首を傾げるも、直ぐに責められる理由……明日菜達を巻き込みかねなかった剣群の爆破に至り、弁明をし始めた。

 

 ―――が、明日菜が言ったのはその事ではない。

 

 勘違いし、少し体の悪い表情を見せて弁明するイリヤの姿に、明日菜は先ほどの得体の知れない感覚が再び沸き立った……今度は、彼女にも何となくであるが、それが自分の知る倫理観が揺らぎ侵される嫌悪感なのだと理解でき―――イリヤのことが怖くなった。

 そんな明日菜とイリヤの“ズレ”に真名は真っ先に気付いた。だから彼女は口を挟んだ。このままでは両者にとって健全的な事には成らないだろうと思ったからだ。

 

「違うぞイリヤスフィール。神楽坂が言ったのは、お前があの男の首を刎ねた事だ」

 

 真名の言葉に、明日菜は強張りつつあった身体をさらにビクリと震わせ、イリヤは弁明していた口を開いたまま唖然とする。

 唖然としたイリヤは、真名の言葉の意味を数秒掛けてゆっくりと咀嚼し、

 

「―――ああ、そっか」

 

 理解して、そう嘆くように呟いた。

 彼女は本当に今気付いた。人を容易に殺傷できる力を当然の如く振るえたこと。全身に火傷を負った瀕死の人間を見てもこれといった感傷を抱かなかったこと。そして―――何の躊躇いも無く人の首を刎ねたこと。

 普通に考えればそれは異常だ。真っ当な人間の感覚ではおかしいことだ。しかしイリヤはそれに悩む事も、考える事さえも無く。当然のように実行し、受け容れていた。その一方で明日菜が自分の何を責めたのか理解した。

 

「―――そのことか……明日菜。それは勘違いよ、何故なら“アレ”は人間じゃないから」

 

 だからイリヤは少し嘘を付く。―――実際の所、嘘という訳でもないのかも知れないが。

 恐怖の色を見せていた明日菜の眼から少しその色は失せるが、今度は懐疑的な色が加わった。

 明日菜だけではない。刹那と古 菲、そして魔眼を持つ真名すらも人間じゃないという言葉に疑惑を抱いた。いや、刹那と真名はアレが真っ当なモノではないと感じてはいたが、それでも人では在ると考えていたのだ。

 無事生き残った大鬼達もその2人と同様だった。そんな皆の抱く疑惑をイリヤは感じ取っていた。

 

「まあ、口で言うよりも……見て貰ったほうが早いわね」

 

 そう言ってイリヤは後ろを―――男の遺体が在るほうへと振り返る。

 それに釣られて皆の視線がそちらへ移った。

 明日菜は、あ…と声を漏らし、古 菲は、ナント!と零す

 ちょうどそれが起きていた。火傷を負い、首を刎ねられた男の遺体が光の粒子と化して徐々に消えて行くのだ。

 人間だと思っていた男の死体が消失して行く姿に刹那は驚いて静かに息を呑み。真名は、ほう…と感嘆に近い声を零した。

 

「驚きやな……なあ、異人のお嬢ちゃん。アレは何やったんや? もしかしてワイらと同じなんか?」

「そうね…似ているとも言えなくは無いけど、違うわ。どちらかというとアレは亡霊か怨霊の類ね」

 

 遺体がこの現世から完全に消えると、比較的驚きの小さい大鬼が質問し、イリヤも答える…が、

 

「馬鹿な、アレが怨霊だと!?」

 

 より驚きを大きくし、再度疑念を抱いてしまう云わば専門家である刹那。真名は考え込むかのように微かに眉を顰めている。

 

「…あくまでその類という事。でも他に適当な言い方は……無いわね」

 

 イリヤはそう言いつつ、内心では、

 

(使役された存在とは言えるけど。鬼や式神とは異なるし、だからといって受肉した英霊と言う訳にいかない。というかジル・ド・レェ(あんな狂人)をそう言うのは無理がある……やはり怨霊と言うしかないわよね)

 

 そう続けていた。

 

「いや…しかし―――な!?」

 

 それでも納得し難いといった然で顔を顰めていた刹那だったが、光の柱の方から再び強大な…されど先程よりも大きい力の流れを―――波動を知覚した。

 慌てて視線を向けると、光の柱から異様なまでに巨大な…数十mはあろう巨躯の鬼。いや、鬼神が現れるのを見た。

 

「な、何だあれは!?」

「こいつはまたぁ、とんでもないのが出て来よったな」

 

 刹那は驚き叫び。大鬼が暢気に言う。両者の反応は何となく立場を対極に現しているようにイリヤは思えた。

 とはいえ、イリヤもまた実際に感じる圧迫感(プレッシャー)に全身からじんわりと汗が流れる出るのを自覚していた。

 原作やその他、二次創作では割とあっさりと退場したりするリョウメンスクナであるが、

 

(よく、あんなのを撃退できるわね)

 

 イリヤはこうして現実で知覚し、あの鬼神が如何に恐ろしい存在なのかを識ってしまう。

 アレの“本質”は、まさしく神霊や神代の世にて災いを齎した魔物の領域にある“怪物”だ。そう、決して人間では打倒する事など出来ない。英雄と呼ばれる者が“世界”の後押し(バックアップ)を受けるか、もしくは人々の想念の結晶たる幻想―――宝具を手にしなければ、打ち勝てない絶対的な恐怖の具現だ。

 イリヤはそれを識って思わずゴクリと唾を呑んだが、明日菜と刹那がそれを知ってか、知らずか足を踏み出す。

 

「ネギ……助けに行かないと!」

「ええ! 急ぎましょう」

「―――待ちなさい」

 

 駆け出そうとした明日菜と刹那をイリヤは呼び止めた。別に鬼神の恐ろしさを知って止めようと思った訳では無い。何故ならまだアレは“不完全”だからだ。それに例え“完全”となっても打倒手段が無い訳ではない……ただ、少し梃を入れる必要があると感じだのだ。

 

 

 イリヤに止められて煩わしそうに2人は振り返ったが、次の瞬間、身体を包んだ柔らかな光と暖かさに驚きを表す。

 

「これは…」

「何これ?」

「治癒とちょっとした疲労回復よ」

 

 驚く2人にイリヤが両手を向けて答えると、言葉通り見えていた傷が塞がって行き、2人は覚えていた疲れが軽くなっていくの感じていた。

 

「これ、イリヤちゃんの魔法?」

 

 そう尋ねる明日菜の眼には、もうイリヤに対する不信や恐怖の色は無かった。

 それにイリヤは、明日菜の問いに頷きながらも安堵した。

 良好ともいえる関係を築けた彼女に嫌われるというのも勿論嫌ではあったが、何よりも今この時、事態が解決していない段階で明日菜の持つ果敢さが畏縮してしまう方が問題だと思えたからだ。

 況してやネギの救援に向かうという事は、あのフェイト・アーウェルンクスと対峙するという事でもある。僅かな不安要素でも残したくは無かった。

 それに―――この世界は明らかに原作(えそらごと)ではない、未来が不確かな現実(リアル)なのだ。どのような事が起こるか判らない。

 大きな齟齬を見た事でイリヤはそれを真実理解しつつあった。

 

「ん…? もしかしてペンダントを身に着けてくれているの?」

 

 原作を思い浮かべた為、ふと明日菜の格好―――浴衣姿に違和感を覚えてイリヤは言った。原作ではこの時、彼女は私服姿であった事を思い出したからだ。

 明日菜は首肯する。

 

「あ、うん」

「そっか……成程ね。何というか……贈っておいて幸いだったわ」

「へ?」

 

 イリヤの言い様のおかしさに思わず首を傾げる明日菜。しかしイリヤはそれに事件が片付いてから説明するとだけ答えた。

 あのペンダント―――アミュレットは対魔力のみならず、結構強力な幾つかの付与効果を持っており、その一つに石化を含んだ『耐物理異常』もある。その為、フェイトの石化魔法をより完全に無効化したのだった。また4thキャスターの海魔の骸や血から発生する瘴気に侵されずに済んだのも、アミュレットによる加護のお蔭であろう。

 

(そうなると、刹那は……退魔師である以前に烏族との混血だから、まだ分かる。けど―――)

 

 この2人はどうなんだろう? と。治癒魔術の行使を真名と古 菲へと切り替えたイリヤは、今更ながらにそんな疑問を抱いた。

 なお加えて言えば、明日菜が凄惨な光景を目にしつつも戦えたのも、低ランクではあるがアミュレットに付与されたスキル効果『勇猛』がある為だった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 4人の少女の治癒を終えると同時にネギからの念話が明日菜と刹那に入り、その2人はカードを媒介に転移した。

 これは原作でも描かれた事であったが、それでも4thキャスターというイレギュラーも在り、イリヤは漫然とした不安を感じてスクナの下へ向かおうとした。

 しかしそこにふらりと立ち塞がるようにして、ゴスロリ服を身に纏う見覚えのある少女が姿を現した。

 

「あら、生きていたのね…意外だったわ」

 

 イリヤはその少女―――月詠が現れたのが心底予想外だと思い。先のあれで生存していた事にも驚き、そして残念に感じていた。

 原作を参考程度に留めても、今後の事を思えば彼女の存在はネギとそのパーティの脅威か、障害にしかならないと考えたからだ。少なくともイリヤの持つ知識では月詠はネギ達の成長に何ら寄与していない。

 故に容赦無く、怪魔諸共吹き飛ばした筈だったのだが……。

 

「ええ、ホンマに危ない所でしたけどぉ、何とか無事にこうピンピンしておりますー」

 

 さっきまでの狂気は何処に行ったのか、月詠はまるで歳相応の少女のように受け答える。そこには昼下がりの会話のようなお気楽さがあった。

 しかし油断はならない。異常なまでの狂気を纏い刹那と互角に戦った神鳴流剣士なのだ。

 真名は既に銃を構え月詠にポイントしている。古 菲も同様で構えを取って臨戦態勢にある。

 大鬼達は既に関わる積もりは無いようだが、それでも遠巻きに油断無く此方を観察していた。

 気配で…いや、既に分かっているだろうに月詠は、ワザとらしく周囲を見回して残念そうな表情を作った。

 

「でも、センパイはおらんのですねー。残念やわぁ……―――せやからもし良かったら、代わりにお相手してくれますー? ええところをお嬢ちゃんが邪魔してくれはったようですしぃ」

 

 言葉途中…―――月詠の雰囲気が変わりその視線をイリヤに向けた。その眼は既に狂気が滲み出して魔に染まっており、闇色の眼の中心に金の輝きを見える。

 そんな彼女にイリヤは微かに溜息を吐く。

 

「やる気なの?」

「はいー、勿論ですー」

「驚きね。この私に勝てる積りなの?」

「うふふ、可愛らしいお嬢ちゃんやのにスゴイ自信ですねぇ。でもウチが求めとるのは、勝ち負けなんてつまらないモノと違いますー。多分お嬢ちゃんもそれは分かっとると思いますけどー」

 

 呆れた様子で言うイリヤに月詠はにこやかに応じる。ただその爛々とした眼と酷く歪んだ口元が異様であったが。

 そんな月詠に真名と古 菲の警戒心が最大限にまで高まる……が、イリヤは白い中華刀を持った右手を掲げてその2人を制する。

 

「そうね。……まあ、私としても貴女のような“怪物”に近い在り方をする人間なら良心は痛まないし、罪悪感に苛まれる事も無いだろうから―――そう、殺したとしても気が楽だし、遠慮なく戦えるわ」

「ふふ、酷い言い草ですね。ウチのような可憐な女の子を怪物やなんてぇ」

「…そう思うのは、貴女が本物の“怪物”とその定義を知らないからよ」

「……?」

 

 イリヤの言葉に引っ掛かりを感じたのか、月詠は狂気を滲ませながらも何処かキョトンとする。そして興味を誘うモノを感じたらしく不思議そうに尋ねた。

 

「本物の怪物に、定義ですか? ……興味深いですねぇ。教養に疎いウチとしては後学の為にも聞きたいところですけどー?」

「ふむ……貴方に後なんて無いと思うけど。ま、いいわ。冥土の御土産として特別に教授してあげる」

 

 イリヤは月詠の質問に少しだけ考え込むも、まあ、良いか、大した事では無いし、と気楽に思い答える事にした。

 

「なんでも―――怪物というのは、姿や外見ではなくてその在りよう。精神で決まる。それは本能ではなく、優れた理性で殺す者。人が及ばないその性能を持って、何の疑問も無く、微塵の躊躇も無く、喜びを持ってただひたすら殺すことにのみ傾ける、いるだけで毒を撒き散らすような害悪に成るモノ。人間社会の端から端まで否定する殺戮機構……だそうよ」

 

 イリヤは月詠を鋭く見据えて言う。

 

「貴女はこの全てで無いにしろ、かなり当て嵌まっているわ。そう―――本能に委ねるのではなく、自らの意思で外れ、常人には及ばない力を殺戮と流血を求めることにのみ注ぎ、そこには疑問も躊躇も無い。そして心の深奥では人の在り方を受け容れられず、侮蔑してもいる―――そうよね」

「――――――」

 

 イリヤの語る“怪物”の定義を聞き。自身を評された月詠は一瞬、眼を見開いて驚き表した。

 しかし直後、気配を一気に変貌させる。ただ刹那に挑んだ時とはまた異なる様子だった。

 

「ふふっ、ふふふ…なるほど、成程、勉強になりますなぁ。それが“怪物”ですかぁ……それにウチを、ふふっ…うふふ……ええわ、お嬢ちゃん。とてもええわぁ。ここまでウチを理解してくれはるのは、お嬢ちゃんがきっと初めてやわぁ」

 

 月詠はハァハァと呼吸が荒く。身体を悩ましげに捻らせ、頬を紅潮させ、瞳も潤ませて愛しげにイリヤを見詰める。

 まるで情事に誘う乙女のごとくである。ある意味、年齢不相応であり、相応とも言えなくも無い姿だ。もし相手がイリヤではなく、これが本当に情事を求める行為であったなら誘惑された男性は、甘い香りに誘われる蝶の如く誘いに乗ったことであろう。それだけ月詠は一見すると魅力的な美少女であるのだが……まことに惜しい事である。

 

「ウフフ―――あはぁぁ…お嬢ちゃんなら、お嬢ちゃんなら、ウチをきっときっと愉しませてくれる。だってそうですやろぉ、ウチが怪物でぇ、外れとるゆうんなら遠慮しないゆうた。きっと最後までウチと付きおうてくれる。そうでっしゃろ―――!!」

 

 情欲の染まった恍惚の表情を見せていたのも束の間、月詠はそう言い。口角の歪みきった凶悪な表情と喜悦を浮かべてイリヤに襲い掛かった。

 先の刹那へ初撃を浴びせたのと同様に瞬動で間合いを詰め、愛用の二刀を交差させるように左右から振るう。が―――

 

「は―――?」

 

 その瞬間、月詠は気の抜けたような声を零した。

 キンッと、刀の鞘の鯉口を切るかのごとき軽やかな金属音と共に、自分の振るう二刀の刀身が根元近くから切断されているのを眼に捉えたからだ。

 イリヤの持つ白と黒の双剣―――干将莫耶がいつの間にか振るわれ、彼女を切り裂く筈の二刀を逆に斬ったのだ。神鳴流剣士が“気”で強化した筈の獲物…それも式刀を、いともあっさりと野菜でも切るかのように。

 想像の埒外である予想だにしない、その()に思わず狂気が失せ。呆けそうになる月詠―――しかしイリヤが返す太刀で自身の身体を裂こうとしたのを感じ、

 

「―――!!」

 

 呆けかけた意思を戻し、月詠は鍛えられた剣士としての本能に、直感に従い。全力で相手の間合いから身体に刃先が掠めるのを感じつつ、瞬動で後ろに跳んでイリヤから離れ、―――途中、前方から凄まじい速度で回転しながら飛来する白い中華刀を見、―――地に足が着く間も惜しいとばかりに瞬動の勢いに任せるままに、―――倒れ込むようにして強引に身を仰け反らせた。

 それが自身を追い詰める結果に成るとしても、月詠が投擲された干将を避ける為にはそうするしかなかった。

 今一瞬先に上半身の在った所を白く鋭い軌跡が撫でるのを月詠は見た。更にその一瞬後には、そこには白い髪を流す幼い少女の顔が見え、半ば宙に仰向けという無防備に近い状態の自分に、白い髪の少女は黒い中華刀を首目掛けて振るう。

 黒い刃が迫る中、そんな間がある筈も無いのに奇妙にもその少女の声を聞いた気がした。

 

 ―――チェックメイト。

 

 と。

 

 

 

 結果として月詠は生き延びることが出来。イリヤは彼女を逃しこの場にて討ち取る機会を失った。

 

「転移符…か、些か侮っていたかしら?」

 

 イリヤは莫耶を振り切った姿勢のまま呟いた。

 そう、月詠は視界に飛来する干将を捉えた瞬間、自身にもう打つ手が無いと即断して離脱の為に転移符へと手を伸ばしていたのだ。そしてイリヤの振るう莫耶が彼女の首を刎ねる寸前に転移を果たした。

 今にして思えば、怪異ごと葬ろうとした時にも同様に転移符を使ったのだろう。月詠と対峙した時点でそれに思い至らなかったのはイリヤの大きなミスだった。故にこの帰結は当然なのかも知れない。

 それに―――

 

「自分で言っておきながら…はぁ、全く」

 

 狂気に染まり、感情を昂ぶらせたかのようで冷静ともいえる見事な判断と決断力。それはイリヤ自身が言った「本能に委ねるのではなく」という部分に通じていた。

 イリヤは自分でその事を指摘しておきながらも見誤り、月詠の剣を激したものと判断してしまったのだ。

 結局の所、イリヤは戦闘に於いては素人なのだ。だから状況認識が甘く。ミスを犯すし、判断を誤る。

 

(カードの力だけでは駄目ってことか……慢心したかな、無様ね)

 

 イリヤはその事実を痛感した。

 真名はイリヤの項垂れる背を見ながら、今繰り広げられた2秒にも満たない一連の攻防に戦慄していた。

 怪異を殲滅した攻撃と纏う魔力。そしてその佇まいから相当の実力者である事は理解していた積もりだったが―――本当に“積もり”でしかなかった事を思い知らされた。

 その付き合い故に刹那の実力を把握している真名にとって、その彼女と互角に戦う月詠の力も大まかにであるが測れていた。

 総合的にいえば刹那の性能(スペック)は真名を凌駕している。

 無論、状況や相性に経験といった容易に計れない部分があるから実際、単純に比較出来る物ではないのだが。基本として刹那は真名よりも強い、と考えても良い。

 真名の経験から鑑みても裏社会で十分上位の部類に入っている。その出自故、神鳴流に於いて階位が“末席”で“見習い”という扱いであってもだ。

 だからこそ、それと互角…或いは以上かも知れない月詠を―――結果的に逃がしたものの―――容易に撃退したイリヤが……この10歳程度の幼い少女が“異常”だと分かってしまう。

 月詠の初撃から撤退までの攻防……いや、攻防ですらない出来事の間にとったイリヤの対応と動作は、辛うじて視認…いや、それすらも危ういものだった。

 武器切断、斬撃、投擲、踏み込み、肉薄、また斬撃。それら全てが真名でも目で追えないのだ。傍から見ていて月詠はよく逃げられたものだと思えてしまう。しかもイリヤの様子を窺うにまだ大きく余裕を感じさせる。それほどまでにイリヤと月詠の間には大きな“開き”があった。

 

(10歳の子供がこれとは、まったく信じられないものだ…しかも無名だというのだから、なお驚きだ)

 

 まだ十代半ば程度の自分を棚に上げて真名はそんな事を思う。すると隣から「とんでもないネ」という嘆きにも似た呟きが耳に入った。古 菲だ。どうやら彼女も同様の事を考えていたらしい。

 しかし一方で、真名は内心で首を傾げていた。麻帆良でイリヤを見掛けた時には今のような佇まいはおろか、魔力もそれほど感じさせず、戦闘者としての片鱗すらなかったからだ。だから、大人びてこそいるが単なる見習い魔法使いだろうと考えていた。

 

 ―――だが、蓋を開ければこの結果。

 

(わからんな。仮に隠蔽していたのだとしても……こんなに“違う”もの、か?)

 

 自身の目利きへの自負も有り、拭い難い妙な“しこり”のようなものを覚え、真名は眉を顰める。それに、

 

(なんだろうな、この奇妙な感じは…?)

 

 白い少女の姿を見て、真名はあの男―――怪異を従えていた異相の召喚士の事が脳裏に過り、その時に感じた物と同じ疑念を抱いた。“在っては為らないモノ(イレギュラー)”という言葉を。

 だが、

 

(―――まあ、要注意である事は確かだ)

 

 覚えた“しこり”と疑念を無理にでも振り払う為か、胸中の奥底でそう呟いて今からそう遠くない時期に実行され、自らも加担する“計画”の事に……僅かな間、思考を傾け―――今、果たすべき仕事にその思考を戻した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 移動速度の関係からイリヤは、真名と古 菲を置いて独りネギ達の下へ先行していた。

 基礎能力(パラメーター)が然程高くない『アーチャー』とは言え、霊長最強の魂―――英霊の力をこの身に降ろしたのは伊達ではない。

 その駆ける速度は、常人はおろか一流アスリート、気を使う武の達人、高位の魔法使いでも追い付くのは至難であろう。可能だとしたらそれは、英雄とも呼ばれるような最強クラスの人物達だけである。

 ボンヤリと輝く鬼神の巨躯を目印に針葉樹の生い茂る森を抜け、桜に囲まれる湖までの距離が数十mまで迫った時、イリヤは強大な魔力を感知した。

 

「ッ―――!」

 

 小さく声を漏らしてイリヤは大きく跳躍する。

 僅かな風切り音を耳にしながら―――途中で白い翼を羽ばたかせて、木乃香を抱えて飛ぶ刹那を見かけ―――…一際高い桜の枝にイリヤは重量軽減の魔術を使いながら着地する。

 魔力の放たれる湖に視線を向けると、金髪の少女に殴られて水飛沫を立てながら吹っ飛ぶ白髪の少年の姿が目に映った。

 金髪の少女は言うまでも無くエヴァである。イリヤが感知した強大な魔力の源でもあった。その事にイリヤは安堵する。またイレギュラーではないかという心配があったからだ。

 一方、エヴァに殴り飛ばされた少年がイリヤの知識と状況的に、ネギの宿敵となるあのフェイト・アーウェルンクスであろう。

 イリヤは緩みかけた気を引き締めると、直ぐにその警戒すべきフェイトへと視線を向けたが、水飛沫が晴れるや否や既に転移を行なったのか、姿を補足出来ずイリヤは顔を渋め―――

 

「―――いえ、確かこの後…」

 

 と。短く呟いてその姿を気配と共に消した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 エヴァは15年という重い枷を掛けられた時間……その鬱屈と鬱憤を晴らすかの如く思う存分に力を振るい。伝説の大鬼神を氷漬けにして破砕し、打ち倒した。

 50mはある巨躯が凍り付き、砕けて崩壊し、津波のような大きな水飛沫を立てて湖へ沈む光景は圧巻であり、ネギと明日菜は感嘆の声と上げた。

 それは歓声へと変わり、その光景を作り出したエヴァへと向けられた。

 

「すごいよエヴァちゃん。やるじゃん! 最強とか自慢していただけあるわね。見直しちゃった!」

 

 特に明日菜はベタ褒めである。戦いの高揚感によるアドレナリンの影響か、ここ数日の疲労と徹夜に近い寝不足によるものか、若干ハイになっているのかも知れない。その一方でネギは、スゴかったです、と控えめながら素直な賞賛を口にした。

 後はイリヤも知る原作通りに状況が進んだ。

 登校地獄の呪いがあるエヴァが応援へ来られた疑問と答え。

 その理由を聞いて近右衛門を心配するネギと明日菜。

 そんな心配を“ジジイの見通しの甘さ”が事件の原因と一蹴するエヴァ。

 だが一方で、事件とネギの窮地のお蔭で15年ぶりに全力全開を出せた事への喜びをエヴァは表した。

 

 しかし、何か思うことがあったのか、それとも先達や年長者的な立場からか、直ぐにネギに対して釘を刺すように説教めいた事を口にし始める。

 

「―――次にこんな事が起こっても私の力は期待できんぞ。そこん所は肝に銘じておけよ」

「は…はい―――…?」

 

 ハァハァと息を切らせてネギは返事をし、何かに気付く。

 

「む…流石にキツそうだな、ぼーや。大丈夫か?」

 

 ネギの様子を体力と魔力消費によるものかとエヴァは気遣う。その背後に不審な水溜りが現れ、

 

「エヴァンジェリンさん!!」

 

 うしろっ…とネギは叫んで跳び、水溜りから現れた人影からエヴァを庇う為に抱きつく。

 エヴァは一瞬抱きつかれた事に驚き、抗議の声を上げようとして―――遅蒔きにその事に気付いた。

 

「障壁突破、『石の槍』」

「バカ、どけっ!」

 

 人影が行使した魔法……祭壇の床から延びて迫る『石の槍』にエヴァは自分を庇おうとするネギを逆に突き飛ばし―――途端、降り注いだ数本の剣がエヴァを貫かんとした石の魔槍を逆に穿ち砕いた。

 

「―――!?」

「これは!」

「これって…!」

「……剣!?」

 

 剣弾の穿つ破壊音が響く中、この攻撃を知る明日菜とエヴァに然程驚きは無い。だが初見であるネギと人影の驚きは大きい。

 それはネギは兎も角、襲撃者である人影にとっては大きなミスだった。そこには予想外という事もあったのだろうが、この機を狙い、剣弾を放った本人にとってそれは付け入るには十分な隙であった。

 

「―――!」

 

 何時の間に此処に現れたのか、人影―――フェイトの眼前に白黒の双剣を振るう赤い外套を纏う少女の姿が在った。

 左右から挟むように薙ぎ払われる双剣の斬撃をフェイトは咄嗟に後ろへ下がり、刃が微かに掠めるところを間一髪で避けて、

 

「―――ッ!?」

 

 幾重にも張り巡らせた障壁が切り裂かれたのを知覚した。既知感すら覚えるその感覚にフェイトは再び隙を、硬直を見せ。ズンと内臓にまで届く衝撃を、魔力が乗せられた少女の重い蹴りを障壁無しでまともに受け、彼は大きく後方へ吹き飛んだ。

 

「ぐっ!!」

 

 湖の水面を叩き、水飛沫を立てながら跳ねて彼は呻き声を上げる。これもまた既視感のある―――つい先程受けたエヴァ、明日菜、ネギが行った攻撃の焼き直しだった。

 

 水面に叩きつけられて、水切りの如く跳ねるフェイトを赤い外套の少女―――イリヤは、見届ける事もなくそのまま追撃する。その直前、彼女の名を呼ぶ声がしたが、かまわず駆け出していた。

 体勢を立て直して水面に着地するフェイトをイリヤは見据え、自身も水面の上へと足を踏みだした。

 湖の精霊の加護を有する彼の“剣の英霊”ならともかく、『アーチャー』には水上を駆ける能力(スキル)は無い。にも拘らずイリヤは水上を駆けていた。これは彼女の魔術…より正確に言えばその魔術特性による賜物だった。

 自身の魔力で届く範囲ならば、“理論・過程”を飛ばして“望む結果”を成立させるという万能の願望機の機能を小規模ながら再現した魔術回路。

 その機能を活かしてイリヤは、“水上を自在に歩き走る事を望んで”魔術として行使したのだ。

 ちなみに先のフェイトへの奇襲も同様に魔術による穏行と迷彩を使っての事だ。

 

 魔術の効果によって水上を自在に駆けるイリヤに、意外にもフェイトは退くこと無く挑んできた。

 魔法の矢を放ち、岩石で構成された魔剣を作り、遠近の双方でイリヤと激しい応酬を繰り広げるフェイト。それは彼にとっても意外であり、また自覚していない心情から生じた行動であった。

 その根幹は、この場には居ない彼に尽くす少女達であり、先ほどネギに入れられた拳であったり、今ほどそれを再現したかのようなイリヤの一撃であったりする。

 その当のイリヤがフェイトに挑んだのは勿論、可能ならば彼をこの場で討ち取る事でもあるが。それは実のところ二の次で今はまだそれより優先すべき目的があった。

 

「―――知っているなら答えなさい! あの男―――黒いローブを纏ったアレは貴方の仲間なの!」

 

 戦いの最中、雨の如く放たれる様々な魔法を避け。黒鍵を始め、様々な投擲用の武器の投影し、手ずから投擲して牽制しながら、肉薄を試みるイリヤが叫ぶように言う。

 4thキャスターに就いて彼が何かを知っていないか。或いはフェイトの…引いては“完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)”に加わっていたのではないかという疑念。

 そう、口の利けないアレから聞けなかった情報をフェイトから得ようと、得られるのではないかとイリヤは考えていた。

 幾度かの近接戦で魔力を通された尋常ではない剣―――強化を掛けたオーバーエッジ型の干将・莫耶にあっさりと切り裂かれる『岩の剣』から、近接での不利を悟ったフェイトは距離を取り、肉薄させないように遠・中距離魔法で迎撃、牽制し、間合いの維持を図りつつイリヤの問い掛けに応じる。

 

「だとしたら、どうだというんだい。こうして僕とたたか―――!?」

「アレは何!? 何処でアレと知り合ったの!」

 

 イリヤは『瞬動』を真似て肉薄に成功すると干将・莫耶を上段から振り下ろす。それをフェイトは『岩の剣』を使い捨ての盾として使い、防御を試みる。

 ―――僅かな…否、一瞬の拮抗の後、『岩の剣』は切り裂かれる……が、その一瞬の間でフェイトは斬撃を回避し、同時に水面に手を着いて『石の槍』を放つ。

 足元の水面から無数の石の魔槍が生え、イリヤに目掛けて先端を伸ばす。彼女は双剣を使いそれを切り裂き、或いは身を捻るようにしながら足を運んで避ける。

 その隙にフェイトは再度距離を取った。それにイリヤも再度肉薄しようとし、

 

「―――そうか」

 

 呟き、何の構えも見せずこちらをジッと見詰める彼の…その余りの無防備さに警戒を抱き、イリヤも動きを止めた。

 ただし転移での逃亡を許さない為に干将を破棄し、『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』を右手に投影する。弓にこそ携えていないが、空間ごと対象を捻じ切るこの改造宝具の威力なら魔力を通し、真名開放と共に投擲すれば転移であろうと仕留められる筈である。

 4thキャスターの情報も大事だが、逃亡を許すくらいならば、ここで―――

 

「言われて見れば、確かに似ている。……いや、瓜二つかな」

 

 そのフェイトの奇妙な言葉にイリヤは思考が中断され、「なにを…」と問い変えようとし、

 

「それはそうよ。…だって、私の愛しい“娘”なんだもの」

 

 背後からその声を聞いた。

 その声……優しげな女性の声を聞きいて、ドクンッとイリヤの心臓は鷲掴みされたように激しく鼓動を打った。

 

「―――!?」

 

 敵が目の間に居るにも拘らずイリヤは、本能的に背後へと振り向いてしまった。

 そして見た。

 新雪の如く真っ白で綺麗な髪を靡かせ、宝石とも見間違うような緋色の瞳を輝かせる自分と似た容貌を持つ妙齢の女性の姿を。

 距離は僅か2m先、湖の上に立って今時の婦人服を纏い。此方を見詰めながらゆっくりと歩き、近付いて来る。

 イリヤは動けなかった。その女性の見詰めてくる瞳に真っ直ぐと惚けた視線を返し、金縛りに在ったかのように立ち竦んだ。

 そして―――

 

「イリヤ、逢いたかった」

 

 間近に迫った女性は泣きだしそうな潤んだ声でそう言い。両手を広げてイリヤを優しく愛しげに抱擁した。

 その抱擁、女性の暖かさ、温もりに包まれたイリヤは―――イリヤスフィールで“ある筈に過ぎない”少女は、何故かそう言葉を零した。

 

「……お母様」

 

 と。

 

 無意識に頬を一筋の雫で濡らして。

 

 

 

 

 




 この回でイリヤの“敵”が姿を見せました。意外な人物という事もあり、初見の方は結構驚かられるかも知れません。まあ、そんなそれを狙っての事なんですが。


 少し長くなりますが、今回幾つか補足しますと。

 海魔の戦闘力に関しては、鬼達人外の平均よりは結構上と設定しています。
 大鬼などの刹那と互角に戦える別格クラスで無ければ、複数同時相手にするのは無理です。
 現状の明日菜も結構戦えているように見えますが、刹那のフォローやハマノツルギが無ければ、確実に海魔の腹に収まっていました。
 あと、ユニコーンの意匠の入ったイリヤのアミュレットが無くても同じです。

 このアミュレットの性能は、本文でも記したように『対魔力』付与の他、非常に高い毒、石化、麻痺といった物理系のステータス異常への耐性に加え、水属性魔法への耐性とDかCランク程度の『勇猛』スキルの付与による精神系のバッドステータスの回避と格闘攻撃の上昇があります。
 かなり高性能なアミュレットです。これを作れたのはイリヤにとっても意外な事に学園長が提供してくれた材料の中に、現実世界にかつて存在していた“本物”のユニコーンの鬣と涙などというレア素材があったからです。
 ただし学園長はそれらが本物なのか、半信半疑だったとしています。

 スクナに関してはFateの設定を重視し、基本的に”人間ではどうしようもない怪物”としました。
 これはネギま!初期にあった設定も考慮しての事です。
 西や東を陥落させられる大鬼神が最強クラスの人間一人でどうにか出来るほど弱い筈がありませんから。
 尤も、本作もエヴァにやられましたが、これはあくまで不完全だからです。完全体で復活していたらもっと苦戦していたでしょう。

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