オオサカから来た男   作:御龍

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ある意味暗殺教室で最もオオサカに順応できる人物ビッチ先生の登場です。
これで皆さんはオオサカの常識をまた一つ知るでしょう。

あ、まだ転校初日です。


色事師はオオサカにおける最強の搦め手

殺は冷や汗をダラダラ流しながら焦っていた。今まで生活していた場所とは違う異世界にきた時よりも、ジャリ銭爆弾で五体不満足になりそうだった時よりも、沙京でうっかりはきだめの悪魔とタイマン張らざるを得なかった時よりも焦っていた。

そしてその元凶はE組の教卓で教鞭をとっている一人の人物にあった。

 

「ガキどもー授業を始めるわよー」

「「「はーい、ビッチ先生ー」」」

「だからビッチって呼ぶんじゃないわよ!!」

「そういえば転校生が来てるんだったわね。私はイリーナ・イェラビッチ。イリーナ先生と呼びなさい」

「ビッチ先生。ビッチと呼ばせないように必死だー」

「うるさいわね! くれぐれも余計なことを吹き込むんじゃないわよ!」

 

流れるような金の髪は神埼のように綺麗にストレートに流れるのではなく、豪奢に見えるようボリュームあふれるように見えるウェーブをかけており、自分の豊満なバストの谷間を見せ付けるかのような露出度の高い上着、短めのタイトスカートは惜しげもなくシミ一つない真っ白な太ももを見せ付ける。

100人が100人美人だと認める美女はE組の英語教師の「イリーナ・イェラビッチ」という。

中学生相手にムキになっている姿からは想像しにくいが、世界中を飛び回る殺し屋の一人で、世界でも有数のハニートラップの達人でもある。

彼女は殺の数日前にE組に着任して殺せんせーの暗殺を狙うも失敗、その後多少のすったもんだがありながらE組に教師として残ることが決定した。

彼女の暗殺テクニックは殺せんせーにこそ失敗したがその実力は本物で、世界中を飛び回った経験を生かし今はE組で教鞭をとりながら殺せんせーの暗殺チャンスを待つというスタンスを取っている。

 

殺の様子がおかしいことに最初に気づいたのは席が近い神埼である。

ビッチ先生と目線を合わせないようにやや下を向き、緊張にこわばった顔つきを見れば誰だって様子がおかしいことに気づくだろうが。

神埼は殺がビッチ先生と知り合いなのかな? と予想を立てつつ本人に尋ねてみようと意を決する。

 

「えっと殺君。どうしたのかな?」

「あ、ああ。まだ、だ大丈夫だ。俺は今のところ正気だ」

「えっと、ビッチ先生と知り合いなの?」

「……知り合いというわけではない。むしろあの人がチームにいたらどれほど頼もしいことか……」

 

誰がどう考えても挙動不審な答えを返す殺。二人が知り合いという予想は外れたが逆に疑問がわいてくる。どうしてこんなにも短い時間なのにビッチ先生の評価が高いのだろうかと。

しかしもう授業が始まっている。今すぐ考えることではないと疑問を隅に押しのけ授業に集中することにした。殺が大丈夫といっている以上今すぐどうなるというわけではないだろうし。

その英語の授業はいつもどおりに進んだ。授業中適当な生徒に答えさせ。間違えば罰ゲームのディープキス。正解してもご褒美のディープキス。E組生徒のファーストキスの相手はほとんどがビッチ先生に奪われている様子を見た殺の顔がますます強張った。

 

「やっぱりなれないよね。でもいつものことだから心配しないで。」

「……いつも……だと……?」

「う、うん、そうだけど……」

「後であの先生のことを教えてくれないか?」

「あ、うん。別にいいけど」

「頼む」

 

殺自体は読み書きがおぼつかないためキスの被害を受けることはしばらくないだろうがいずれ餌食になってしまうことは想像に難くない。

殺の内心は対策を練ることでいっぱいであった。

 

そして放課後……。

神埼は自分の知る限りのビッチ先生の情報を殺に伝えていく。自分が今までにここまで人に教えることはなかったなと内心苦笑しながらも自分の知る限りの情報やエピソードをすべて伝えていく。

神埼が話し終わった後、真剣な顔つきで殺が何かをノートに書き出していく神埼は好奇心を抑えきれずチラッと見てみるがいくつかの単語が書かれているだけであった。

すべてひらがなで書かれているが、一日で覚えたにしては割と覚えがいいと神埼は思った。

そこには

 

海千山千

誘いうけ

妖婦

長いお別れ

両刀使い

氷の微笑

 

と書かれている。ひとつひとつの単語の意味はわかるがどういった理由でこの単語がかかれているかがわからない。

ちょっと聞いてみようかなと思ったとき、別の人間がこの場に乱入してきた。

 

「なになに? さっちゃんビッチ先生にほれてるのかい~?」

「興味あるな~。ああいうのがタイプなの~」

 

ニヤニヤとした笑みを貼り付けながら登場したのはE組が誇るいたずらペアである。赤羽業と中村莉桜だ。からかう気100%の表情をしている。どう考えてもろくなものではないだろう。

だが殺はあっさりと自分の好みのタイプを白状する。

 

「今の好みは確か『頭のいい同い年』だ」

「あれれ~? その割にはやけにビッチ先生のこと気にかけるねぇ」

「怪しいなぁ」

 

だがその程度で追及を緩めるような野次馬コンビではない。なおも食い下がってくる。あっさり白状したあたりで違うということは察しつつもからかうネタに飢えているのだろう。

 

「ああいう手合いは、今のような敵とも味方ともいえない立場が一番危険だ。純粋な戦闘型と違って時間をかければかけるだけ落としやすくなる。だから最大限の警戒と対策をしておくのは当然だ」

「うーん、さすがにここからからかうネタを拾うのは難しいね」

「ここまでまじめな回答が返ってくるとは思わなかったわね」

「でもさ~、そんなに警戒するような人? 俺はそうは思えないけどね」

「だよね~結構間が抜けているし」

「ふむ、神埼もそう思うか?」

「うん、ビッチ先生。悪い人じゃないと思う」

「ならますます警戒しないとな」

「え?」

「完全特化型は型にはまると強いのが通説だ。特に搦め手の恋愛型ならなおさら……」

「……ワケわかんないんだけど」

「それは同感」

 

殺の思考は完全にオオサカ由来のものであるため予備知識のない3人にはちんぷんかんぷんだった。

殺は純粋な恋愛型に対抗するためのシミュレーションをなんパターンか思考してそのほとんどが不可能であることに至る。

 

(道化師の衣装ならロマンスを完全にシャットアウトできるが、そもそも趣味があわない上に制服の着用が義務付けられている状況ではどの道無理がある。チームメンバーに対処してもらおうにもさすがにアレをそう簡単にトリコにできる同級生は存在しない。先手を取って殺害の手段が認められるとは思えない。お願いをそう簡単に拒否できるとは思えない。自分で言うのもなんだが熱くなりやすいタイプだしな。とすると残る手段はアレか……完全に防げるわけではないが予防にはなる。自分の恋愛は朴念仁だがだめもとで挑戦するのもいいだろう。いきなり押し倒されるよりはましだと考えよう)

 

結局殺が思いついた手段はオオサカではもっとも一般的な予防法だった。

 

「神埼……頼みがある」

「ん? どうしたの? ずいぶん考えてたみたいだけど」

「ああ、考えがまとまったよ。結局これしかないらしい」

「ねぇねぇ中村さん。なんかすごい面白いことが起きる気がする」

「今度はなにを言い出すんだろうねぇ~」

「うむ、単刀直入に言おう。俺と付き合ってくれ」

「「「へ?」」」

「俺と恋人関係になってほしい」

「ええぇぇーーー!!」

「ちょちょちょ、いきなり!! 唐突過ぎない!!」

「初日で告白ってどんだけプレイボーイなのよ!!」

「プレイボーイとは心外な。俺は『朴念仁』だから複数と付き合えることはない」

「いやいやいや!!」

 

その予防法は恋人を作るであった。恋人ができればほかの異性に目移りしづらくなるため他人からのロマンスを防ぐ手段としては手軽かつ一般的な方法だ。チームを組んで数日でチームメンバーが恋人だらけになることも珍しいことではない。オオサカでは常識である。

だが通常の現代日本の常識からするとどう考えても一般的ではない。ここは二人きりになった瞬間に押し倒される可能性のあるオオサカではないのだ。

その被害をまともに受けた神埼の心中は推して知るべしである。

転校生が来たと思ったらその転校生があまりにも常識に疎くて、読み書きすらできなくて、でも物覚え自体は悪くなさそうだし運動神経もよさそうだし、まぁ顔はそこまでひどくないとしても、いきなり口説いてくるのはいかがなものか?

 

「打算もあるが何も適当に告白したわけではない。こちらが好みに合致しているのもある。もちろん断ってくれてもかまわない。恋人としての義務は果たしたいと思ってるし、チームメンバーが異性と乳繰り合っているのを見てうらやましいと思ったことももちろんある。その相手が君なら十分すぎる」

「すごい口説き文句ね」

「ゴリ押しだねぇ」

「ええと、ええと、でも私たちまだ知り合ったばかりだし」

「たいした問題じゃあない。ちょっと言い換えようか。君が好きだ、君がほしい。友達からなどといわず、恋人から君とスタートしたい」

「うっわぁー。神崎さん顔真っ赤」

「そりゃそうでしょうよ」

「どうだろうか……?」

「ぇぇと……はい……私でよければ」

「そうか。ありがとう」

 

気合を入れて口説いたのが効を奏したのか、はたまた強引なタイプが好きだったのかはともかく。殺はゴリ押しで何とか恋人を手に入れたのだった。

下校時間が迫っているなか紳士的に神埼を家まで送る殺。二人は恋人同士としてはごく自然に連れ立って帰るのだった。

 

一方まさか神埼がOKするとは思わなかった赤羽と中村の両名は呆然と教室に立ち尽くしていた。

 

「馬鹿ってすごいね」

「ごり押しってできるもんなのねー」

 

こうしてオオサカから来た男は初日から波乱を巻き起こした。

彼が日本になじむ日は果たしてくるのだろうか?

 




サタスペ解説(友人のアドバイスによりあとがきにまとめました。ほかにも解説してほしい用語やほしい項目の補足などのリクエストは受け付けます)

恋愛について
サタスペの目玉の一つであり、ジョーカー的な役割の一つ。4種類のロマンスを駆使して対象を『トリコ』状態にして対象の行動を操ることができる。
作中でチラッと触れましたが、頭に血が上りやすい激情家は戦闘に有利ですが敵からの恋愛耐性が低く、自殺しろといったお願いも受け入れてしまう可能性があるため殺からするとビッチ先生は天敵なようなものです。
途中殺がノートに書いていた単語は恋愛系を補助する異能の種類です。相手の異能を把握するのは亜侠の基本。

『朴念仁』について
サタスペの環境値にはそれぞれどの程度なのかを示す単語があります。
朴念仁は恋愛1になりますね。
恋愛2が奥手、恋愛3で十人並み、恋愛4で人気者、恋愛5で遊び人、恋愛6で御洒落、恋愛7で色事師、恋愛8で快楽天となります。
ビッチ先生快楽天とかいってそうだなぁ……。

告白が成功した理由について
恋愛1のさっちゃんが告白に成功したのは『気合でブースト』を行ったためです。精神点(RPGのMPみたいなもの厳密に言うと結構違う)というポイントを消費して各行動の成功率を上げる行為をしています。
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