噴煙が上がる街を駆け抜ける。
今日はあいにくの雨だが、そんなことを気にしている場合ではない。
すぐそこの民家の裏に現れた黒い空間から押し合いながら現れるトリオン兵。
そのうちの一体、モールモッドと呼ばれるトリオン兵がこちらに気づき向かってくる。
俺はモールモッドの弱点である目に向けて照準を合わせ、突撃銃の引き金を引く。
ズドドドドッ、という轟音とともに打ち出された
同じように他のトリオン兵も始末していく。
「ひどいな…」
とつぶやいたのは黒髪の少年だった。
予測されていた未来だったとはいえ、予測と実際目にするのとは全く違う。
『立木、首尾はどうだ?』
「レイジさんか。こっちはだいたい片付いた。」
『よし、迅と合流して東からのトリオン兵を押し留めてくれ。』
「了解。」
ここ三門市は今、
立木 浩太は屋根の上へと飛び上がり、迅の元へと向かう。開く
〇━〇━〇━〇
迅 悠一も立木と同じく、トリオン兵と戦闘を繰り広げていた。襲いかかってくるモールモッドの攻撃を避けつつ孤月で切り伏せると、それを踏み台に前方へ跳躍。市民を狙う捕獲型トリオン兵、バムスターの目を一閃。地面に着地した時、林藤 匠から連絡が入る。
『迅、トリオン兵は片付いたか?』
「だいたいはね。」
『そっちに浩太が向かっているはずだ。合流して東へ向かってくれ。』
「了解。」
とりあえず目の前のトリオン兵は片付いた。次にするべきことは合流するまで生存している市民を探すことである。
「ねえ!助けて!!」
不意に呼びかけられ、迅は振り向く。そこには女性を抱えた少年がいた。
「姉さんが……!!」
トリオン兵は所有しているトリオンが多い人を生けどりにし、少ない人からはトリオン器官だけを取り除くようプログラミングされている。
その女性はまだ息はあるようだ。トリオン器官は心臓のすぐ近くに存在しているため、そこから取り除かれるとき普通は絶命する。取り除かれそうになったときに味方がトリオン兵を倒したのだろうか。
「姉さんが死んじゃう!!」
迅は未来が見える「未来視」という
傍目から見ればその女性は助けられるように見えるかもしれない。迅にとっては違った。その女性の死は確定未来だったのだ。
「姉さんを助けてよ!!」
それでも迅は動けなかった。
決まってしまった未来には逆らえない。迅は誰よりもそれを理解しているつもりだ。
「すまない、俺にはその人を助けられない…」
「どうして!?まだ息はしてるのに!!」
「まだ生きているのか?」
少年に駆け寄ったのは迅と合流するために向かってきていた浩太だった。
「おい、迅!なにして……」
不意に迅と目が合った。
目は口ほどに物を言う。
その瞬間、浩太も全てを悟ってしまった。その女性はもう呼吸もしていないだろう。
「…生存者は西へ向かってくれ。400mほど行けば仮設の避難所があるはずだ。」
「なんで…なんで姉さんを助けてくれないんだよ……」
「もう死んでる。いいから早く行け。」
「さっきまで生きてた!!もう少しあんた達が来るのが早かったら!姉さんは死なずに済んだかもしれないのに!!!」
「悪かった。」
「あんたが…あんた達が姉さんを殺したんだ!!」
「ならお前が代わりに死ねばよかっただろう。」
「ッッ…!!」
「早く行け。お前がするべきことを考えろ。」
少年が姉を抱きかかえながら、避難所に向かうのを見送り、浩太と迅は東へ向かう。
「浩太、すまなかった。」
「仕方がない。人間は死ぬからな。」
迅はとても辛そうな顔をしていた。人は死ぬ。頭ではわかっている。それでも15歳という年齢に第一次近界民侵攻がもたらした「死」はあまりにも多すぎた。
あの少年は「あんた達がもう少し来るのが早かったら…」と言った。すべてを救えればベストである。でも迅は全ては救えないことをサイドエフェクトによって知っていた。
現実は残酷である。
目指すはちょっとアレ系。
苦手な方はブラウザバック推奨です。