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入試も終わり、今日は3日後の合格発表日。天気はすこし曇り。浩太は防衛任務が入ったため、午後の合格発表にはいけないらしい。その代わりに綾辻は合格発表を見に高校へ来ていた。もちろん綾辻は推薦であるため、ここに番号はない。浩太は別に行かなくてもいい、って言っていたけれどやっぱり気になるのだ。
「受かってるといいな…」
仮に落ちていた場合綾辻が浩太より先に結果を見るということは、そういうことになる。それはとてもアレだ。
「302…302……」
一心不乱に浩太の受験番号を探す。えっ、ちょっと待ってどこ!?あ、
「よかった……!」
浩太の番号はしっかりと印刷されていた。
一方、立木 浩太はというと小南と共に防衛任務をしている真っ最中である。屋根の上で寝転んでいたり、座っていたりするが、任務真っ只中だ。一応。
「ねぇ、あんた今日合格発表じゃないの?」
小南がぱかーーっと口を開けながら、空を見上げている。口を閉じろ。
「おう、そうだよ。」
「見に行かなくていいの?」
「防衛任務入っちゃったしな。」
「受かってると思う?」
「まあ最善は尽くした。」
浩太はそう答えたものの、正直落ちた気はしなかった。
『
出てきたのはモールモッド3体、バムスター5体である。ただしこの二人を相手にするには、少々役不足だった。
「桐絵、お前右な。」
適当に境界線を決めてから、トリオン兵に二人の怪物が襲いかかる。片方は手斧と大斧をぶん回し、切り捨てていく。もう片方は突撃銃から弾をばら撒き、物量で殴る。まさに地獄絵図であった。ものの数分で戦闘は終了。回収班を要請して、またダベり出した。
一方、合格発表を見終えた綾辻だが迷っていた。浩太に電話をするかどうかを。
仕事中だしまずいかなー、でも浩太くんに知らせたいし。いいや、かけちゃおう。
綾辻はケータイを取り出し、浩太くんという項目をタップする。
「悪い、電話かかってきた。」
「どうせ遥でしょ。」
たまに勘がいい小南 桐絵。まあこの勘があるからあんな戦闘ができるのだろう。そんなことを考えつつ浩太はトリオン体の通信機能を使い、応答する。
「もしもし。」
『あ、浩太くん。今大丈夫?』
「おう。」
「あのね、受かってたよ。」
『おー、よかったよかった。』
「うん。それだけなんだけれどね。防衛任務頑張って。」
そういうと綾辻は電話を切る。春からも同じ学校に通えるんだ…!そう考えると綾辻の心は、舞い上がる桜の花びらさながらだった。ふわふわと大空へ飛んで行ってしまいそうである。
「どう?受かってた?」
「もちろん。」
桐絵の問いにそう答えた。そのとき警報がまた鳴り響く。すぐ近くにできた
「こんなけだったっけ。」
「おう、こんなけだったぞ。」
狩りおわったあとの小南は、すこし物足りなさそうである。
「回収班を…?も、もしもし??」
「どした?」
「通信がいきなり切れたのよ。」
「もう一回やってみろよ。」
そう言いつつ浩太も本部に通信を持ちかけてみる。繋がらない。
「おかしいわね。」
そう呟いた桐絵の数十メートル後ろで、
開いた
「お迎えに上がりました。」
「あんたはっっ…!!」
「待て、桐絵!」
小南がラルドめがけて飛び出すがその時、ラルドの首ではなく、小南のの首が飛んだ。ガードしようとした大斧ごとぶった切られたようである。そして小南の換装が解け、ベージュの長い髪が現れた。
「なんで緊急脱出しないんだ!?」
「トリオン阻害装置を使わせていただきました。立木殿、この女が殺されたくなければ私どもと一緒に来てください。」
そうラルドは言う。小南の首にはラルドの太刀が当てられていた。すこし小南の顔が青ざめる。
「そっちに行くから、桐絵を離せ。」
「先にこちらへ来てください。」
いままでに出したことのない声で浩太は言うが、ラルドは怯まない。すこしずつ浩太は小南の方へ近づいていく。そしてラルドに腕を掴まれた。 太刀が桐絵の首から離れる。
「桐絵を、離せ。必要なのは俺だろう?」
「わかりました。」
桐絵が拘束から解かれた瞬間、浩太は相手の左腕を切り落とす。次は首だ。いままでにないほど鋭い一撃が飛ぶ。
スコーピオンの刃が当たりかけたその時だった。浩太は錐によって滅多刺しにされる。ヴァルクールだった。小南と同じく浩太の換装も解けてしまう。
「クソ
「さあ、行きましょうか。」
「いいか、桐絵!迅にこのことをすぐ伝えろよ!あと遥には何にも言うな!!」
そう言い残すと浩太は
〇━〇━〇━〇
小南は呆気に取られていた。目の前で、浩太が、前撃退したはずの人型
「じ、迅。浩太が…浩太が!」
『まさか、連れ去られたのか!?』
うろたえながらも、小南は迅に起きたことを説明する。この未来を引く確率は迅の活躍により、 1割程度まで下げられていた。だがそれでも引くときは引いてしまうものである。
『いいか小南、とりあえずレイジさんに連絡して迎えに来てもらってくれ。本部にはおれから連絡するよ。』
そういうと迅は電話を切る。内心で自分のことを毒づきながら、急いで本部へ向かう。ここからは時間との勝負だ。
〇━〇━〇━〇
合格発表の次の日から、卒業式の日まで浩太が来ることはなかった。綾辻は心を決め、春休み初日に玉狛支部へと向かう。
「こんにちはー…」
扉を開けるとそこにいたのは雷神丸、その上で寝転ぶ林藤 陽太郎(2)である。
「遥ー!いきなりどうしたの?」
「いや、あのー、浩太くんは…?」
小南は誤魔化すのが下手くそである。小南に口止めなど頼まず、ありのままを伝えるよう言えば良かったものを、浩太はそうしなかった。
「い、いまはちょっと外出中よ!」
「15日からずっと学校来てないんだけど…」
「そのときもちょっと外出中だったのよ!」
「桐絵ちゃん。」
「は、はい!」
浩太は口止めを頼む相手を間違えた。そのまま小南は、菓子折りを渡され、玉狛支部のリビングにて、綾辻と二者面談である。
そして小南 桐絵は何もかも、包み隠さず綾辻に説明する。重要機密になってしまった、小南が知り得るすべての情報を話してしまった。綾辻はワナワナと震えるばかりである。
「桐絵ちゃん。」
「は、はい…」
「どうして黙ってたの?」
「浩太に喋るなって…」
「浩太くんが?」
「うん、あと重要機密になっちゃったし…」
「あ、そっか…」
二人の間に沈黙が降りる。綾辻は物分りが良かったのだ。この様子だと助けに行こうにも行けなかったということは、簡単に推測できた。
「私、本部に行くね。」
「うん…。黙っててごめん。」
「大丈夫!仕方がないもの。それじゃあね。」
ことさら明るい声を出して、別れを告げる。その足で綾辻は本部へと向かった。
本部に入って、A級の作戦室がある区画へ向かう。
浩太くんが近界民に連れ去られた。生きてるのかな。でも浩太くんが死ぬなんてありえない。ありえないよね?そんな悪い思考回路を払拭するかのように、足早に嵐山隊の作戦室へ向かう。廊下を曲がった瞬間、綾辻は人とぶつかった。
「あ、」
「ご、ごめんなさい!大丈夫で……?」
目の前にいたのは、綾辻が探し求めていた黒髪の少年。
立木 浩太、本人が立っていた。