「やっと、やっと追いついたぞコータ!」
いやお前ガン待ちしてたじゃん、そう心の中で突っ込まざるをえない。トリオン体に換装しているはずなのに、肩を上下させている。
「とりあえずどけよ。姫さん。」
「ここは通さぬ。国の命がかかっているのだ。」
「俺の命は?」
「黒トリガーがあるなら負けるわけなかろう。」
浩太はため息を吐く。全く話にならない。トンファーを握り、構えを取る。
「ふむ…どうしたものか…」
呟くアリスをよそに、残った右足で地面を蹴った。後ろから迫る錐をトリオンボールの追尾機能で撃墜する。渾身の正拳突きをアリスに繰り出したとき、ガキンという音が鳴り響く。
「…あ?」
「妾の黒トリガーはなかなか防御よりでな。」
ボーダーで使っているのに似たシールドが展開されていた。そしてアリスの左手には円形のバックラー。呆気にとられる浩太をシールドチャージで吹き飛ばす。
吹き飛ばされながら上を見ると矢の雨が。転がりながらシールドで防いだ。トリオンボールを10個ほどその場に生成し、射線を切るべく民家に近づく。そのとき、
「甘いわァ!!」
アリスが左手ではなく、右手の剣で切りつけてきた。咄嗟に右に避けようとするが体が動かない。
「なっ…!?」
「破ァ!!」
そして突き出された剣がトリオンボールを貫く。カッという音とともに小爆発を起こした。浩太の後ろに生成して待機させていたトリオンボールと、自分を入れ替えたのだ。
「ふむ…やはり強いな。」
浩太はアリスの呟きを無視し、トリオンボールをまっすぐ並べる。
一点にぶちこめば割れるだろ!
そのままアリスへ向けてトリオンボールを撃ち込んだ。迫ってくる錐は続けて生成したトリオンボールで防ぐ。
ガガガッという音とともにシールドが割れる音がするが手応えはない。追撃するため右足で地面を蹴ったとき、屋根から白兵が二人。トリオンボールを撃ち込むがそこにアリスのシールドが展開された。それにしっかり阻まれる。
「くそっ…強えじゃねえか。」
その隙に白兵は浩太を挟み込むように地面に着地。右の白兵のナイフをトンファーで受け流し、左の白兵の足元にシールドを生成。それにつまづいて、体勢が崩れた瞬間に回し蹴りを食らわせる。そのあと少ししゃがみ込み、敵の狙撃を前の白兵に当てた。
と思ったがそれも後ろのアリスのシールドで守られる。
「女王さんの黒トリガーも性能おかしいだろ。」
「お褒めにあずかり光栄だな。」
「しゃーなしか…」
浩太はそう呟くとトリオンボールを40個ほど生成。10個を自分の背後につけ、残りの30個をアリスと白兵に向けて、1つは城壁の方へ撃ち込んだ。シールドがアリスと白兵を囲むように展開されるが一箇所に大量にぶつけて穴を開ける。
「もう対応したのか…しかし中に入ってきては袋の鼠だぞ?」
アリスがペラペラと喋るが浩太の耳には届かない。これでヴァルクールの錐は防げる。アリスに接近するが、前に白兵が立ちはだかった。
「せっ!!」
ナイフで突きを放ってくるが、軽々かわし持ち替えたトンファーで腕を叩く。ガキンという音。アリスのシールドが展開されている。
右前方からはアリスのシールドチャージ。白兵を蹴り飛ばし、アリスに正拳突きを食らわせる。
「…片足で器用だな!コータ!!」
アリスのバックラーと浩太の拳が激突し、アリスが弾き飛ばされる。その後背中のトリオンボールを5個だけ携えて、追撃を開始する。後ろから襲いかかってくる白兵。背中のトリオンボールを撃つが、アリスのシールドに阻まれる。
「なんのために半分置いてきたと思ってんだ。」
その後白兵の背中に5つの穴が開き、換装が解けた。トリオンボールを追加で生成しながらアリスに迫る浩太。周りのシールドが解かれていたのか、ヴァルクールの錐と自動で迎撃するトリオンボールが当たる。後ろに作っていたものはなくなったが、新しく生成したものをアリスに撃ち込んだ。だがアリスはまだ余裕そうな顔をしていた。
「この黒トリガーはな、シールドや盾を出せるだけではないのだよ?」
そういうとアリスと浩太の間に壁が現れた。まるで城壁である。サイズは5縦横ともに5メートルほど。耐久力も申し分なく、トリオンボールを当てても少し欠けるくらいであった。
その城壁の上にあるのは、大砲。大砲の死角に入るため、さらに距離を詰めようとするが体が動かない。アリスのシールドで固定されていた。大砲が浩太の胴体に照準を合わせたとき、浩太の姿が消えた。
「飛んだのか!どこに飛んだ!?」
周りを見渡すが見つからない。ヴァルクールが横に降り立つ。
「どこに行かれたのですか?」
「くそっ、全く見当もつかない…」
当の浩太は城壁の外で、うつ伏せに倒れ込んでいた。
「ここまでトリオンの消費が多いとは…」
もうトリオンの残りもわずかである。ただ数キロまでは入れ替えができるということに気がつけたのだ。代償が大きすぎるからあまり連発はできないが。起き上がろうとしたそのとき、浩太を悪寒が包む。
この感じ…第一次侵攻の……?
そのとき浩太の周りに
「このタイミングでかよ…!」
急いでトリオンボールを生成する。5個しか生成できないがないよりはマシだろう。出てきたのはモールモッドを中心とするトリオン兵。バドやバムスターも混ざっている。
神の国のイラプセル侵攻が幕を開ける。
〇━〇━〇━〇
その頃アリスも対応に追われていた。
「いいか、市民を急いで城の方へ避難させろ。ヴァルクールとイザヤはトリオン兵の迎撃。まだトリガー使いの姿は見えない!急げ!」
そういうとブラックハウンドの残りの面子は避難誘導に、ヴァルクールは北へ、イザヤと呼ばれたものは城から出撃し西へ向かった。アリスはそこから一番近い東門へ向かう。
そして東門の城壁の上に登る。そのアリスの目に飛び込んだのは、奮闘する浩太だった。一匹は顔面から粉砕され、一匹はトリオンボールの餌食に、もう一匹はトンファーを突き立てられる。獅子奮迅という言葉がお似合いだった。
「なんだ、あんなこと言いながら結局のところ協力してくれるではないか。」
「なんてあのお姫さんは思ってんだろうな。」
なんせあれだけ協力することを拒んでいた浩太が、トリオン兵を蹴散らしているのだから。数も一点集中しているだけでそこまで多くない。しかも城壁の内部には
30分ほどの戦闘で大体収束し、トリオン兵は撤収していった。他の二門の状況まではわからないが、浩太のサイドエフェクトで見れる範囲に目立った被害はない。しかし一つの疑問が浮かんでくる。
「なんでアフトクラトルはここでやめたんだ?もっと攻めれば落とせるだろうに…」
〇━〇━〇━〇
〈アフトクラトル、遠征艇〉
「門が全て都市の外に発生しています。しかもトリオン兵はすべて黒トリガーによって蹂躙された模様。」
イラプセルでも噂になっているワープ女ことミラがハイレインに説明した。
「なるほど、やはりあの女王のトリガーは厄介だな…」
「どうする?隊長。」
口に手を当てるハイレインにランバネインが問いかける。
「なぜここは都市の中に
「女王が黒トリガーで都市を覆っているからですよ。カット様。」
ヴィザがカットと呼ばれた黒髪を後ろにくくっている女性の質問に答える。
浩太も疑問に思っていた、都市の内部に門が発生しないという問題はなかなかに脅威だった。必然的に周りの城壁を崩してからでしか、内部に攻めこめない仕組みになっている。城壁はバンダーの砲撃はそこそこ耐え、しかも入り口は門が三つあるのみ。その上一つの門に一人、黒トリガー使いを確認していた。
「これだけのトリオン兵を出しても、向こうは今までと変わらず、黒トリガー以外のトリガー使いを出していない。黒トリガー使いは一人増えて四人になっていたな。そしてこちらも四人。」
「ならば、黒トリガー使いを全員固めてしまい、その間に門を突破するというのが一番ですかな。」
ハイレインに対してヴィザが提案する。今回のアフトクラトルの目的はイラプセルの陥落。そして属国化である。
「ならば…」
決まった作戦は以下の通り。
まず北門にトリオン兵の大集団を送り込む。黒トリガー使いが一人でも出てきた時点でランバネイン、カット、エネドラをそこに送り込む。
次に東門にイルガーを混ぜたトリオン兵を少し送り込む。
そして最後にヴィザを東門、もしくは西門に送り込む。もし東門に敵が集中しているなら西門から、東門が壊滅しているならそこからということになる。
「ミラ、卵の準備を始めろ。それが終わり次第戦闘に入る。」
〇━〇━〇━〇
ハイレイン一行が作戦会議をしている間、浩太を含めたイラプセルも会議を行っていた。
出席者は女王アリスが勝手に呼び出した面々である。アリスに加え、ヴァルクール、ラルド、イザヤ、イラプセルの開発支援部長、国防兵長、そして浩太である。まずアリスから話し出す。
「夜遅くに呼び寄せてすまないな。会議を始めよう。なにぶん時間がない。」
「その前に女王様、この者は?」
「コータ・タチキ殿だ。」
「あぁ、あのタチキ殿ですか。だいぶ若造なのですな。」
そう答えたのは国防兵長。少し上から目線で浩太の方を見てくる。なぜこの国にはこんなに浩太を苛立たせるやつが多いのだろうか。
「あまり舐めない方がいいですよ、国防兵長さん。」
そう言ったのはラルド。浩太のイライラは募るばかりである。会議が一向に進まない。ただ自分が発言するのさらに物議を呼んでしまう。
「その辺にしてください。そろそろ始めないとなりませんぞ。」
「今回攻めてくるのはアフトクラトルだ。まず防衛なのだが…」
「黒トリガーの使い手に任せればいいのでは?」
開発支援部長が言う。トリオン兵の運用はここに任されているらしい。
何故こんな戦場を知らねえやつが兵隊の運営してるんだよ…
「いや、黒トリガーがいくら強いとは言え直接戦闘に出れるのは3人だ。あの大量のトリオン兵を抑えるには手が足りなさすぎる。」
「でもこれ以上トリオン兵を出すと財務大臣が…」
金の心配してる場合かよ…国がなくなって搾取されまくるか、今年赤字になるかどっちかなんだよ。
「構わない。大臣は妾が黙らせる。今ある在庫はどれだけだ?」
「モールモッドが40、バムスターが80、バンダーが20です。」
少ない。少なすぎるくらいだ。さっきの戦闘でも、東門だけでそれの倍以上いただろう。
「ふむ、あとは妾の兵隊でどうにかしよう。」
「女王様、都市の中に
浩太は質問を飛ばす。敬語だとそこまで波風立てないだろうと思ったが、イザヤと呼ばれる男と近衛兵長から睨まれる。
「妾のシールドで囲っておるのだ。」
「なるほど。」
門の発生を抑えられるシールドとは…性能がとんでいる。しかもシールドを張りながらあれだけ大砲を撃ちまくるのだ。この女王のトリオン量もずば抜けている。
「国防兵長。トリガー使いは何人使えるのだ?」
「そうですね。国民の防衛をするものを除くと…100人程度でしょうな。」
防衛するものを除いて100人のトリガー使いとは。ボーダーの総戦力が50人強であるから多いのかわからないがこれはなかなか強みではある。しかし問題は脱出機能がないため負けが直接死に繋がることだろう。
「なかなか厳しいな…」
「とりあえず敵の出方を見てから、門で兵を送るしかなさそうですな。」
ヴァルクールもそう付け足す。
「よし、とりあえずコータ、イザヤ、ヴァルは仮眠の後で門の上にて待機。あとはブラックハウンドと国防兵、そしてラルドの剣撃部隊を三分割して城壁で待機させる。開発支援部長は
号令とともに各々が動き出す。残ったのは浩太とヴァルクール、イザヤ、そしてアリス。イザヤが浩太に向かって話しかける。
「ねえ、あなた強いんです?
「お前も来てたのかよ。」
「ええ、髭の生えたアホっぽい男の人が強かったですね。」
太刀川のことだろう。初対面の
「妾とラルド、ヴァルにブラックハウンドの攻撃を切り抜け、しかも東門のトリオン兵を一掃したのだ。なかなかの使い手だぞ。」
アリスがそう口添えをする。
「ふぅん。」
「なあアリス。」
「ん、何だ?」
「お前のそのトリガーどういう能力なの?」
単純な疑問から浩太はそう口にする。
アリスの説明によると名前は
余談だがこの城や城壁も昔の使い手が作ったそうだ。無論国宝である。
「完全に性能が壊れてんな…」
「それでも妾はトリオンが足りないから使いこなせんのだ。先代国王が一番すごかったらしい。まあ今はもう
「
「知らぬのか?
そうアリスが説明するが、まるっきり初耳である。
「じゃあうちの国にもあるのか?」
「さあな、
「これが終わったら帰してくれるんだろうな?」
「もちろんだ。褒美も弾むぞ。」
そう会話した後、浩太は自分の部屋に案内された。現在時刻は浩太の腕時計で午前2時。ここに来てから6時間ほど経過したことになる。
浩太はベットに倒れこむとよほど疲れていたのか、すぐに睡魔に襲われた。
午前4時にメイドに起こされる。寝ぼけ眼をこすりながら担当の門へ向かった。浩太は東門、イザヤが北門、ヴァルクールが西門というふうに担当は割り振られている。東門の上でトリガーを起動し待機。
そして朝の光が差し込み出す午前5時。いきなり北門の方から爆音が聞こえてきた。
アフトクラトルによるイラプセル侵攻、本格始動である。
迅 悠一の到着まで、あと約39時間。
パスポートを取りたかったんですけど、本籍地が自分の住んでるところと違って詰んでます。始業式間に合わねえ。
ここから下、今日発売のジャンプのネタバレあり。
単行本派の方は別ページにお飛びください。ああ、ネタバレ?かもんかもん、って人はどうぞ。
香取隊…仲悪っ。多分そういう隊もあると思ってましたが。
それに対して柿崎隊の安定感に加えて、和み感。そしてこの部隊はここにいるべきじゃないという発言。
それから玉狛第一の工夫の成果。次も楽しみです。
あとニセコイもトリコもBLEACHも銀魂も終わりそうでどーすんねやろ、ジャンプ。