全てを再確認する話   作:ベルトのつち

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ヴィザ翁強すぎンゴ…
倒せないンゴ…



第17話 「イラプセル防衛戦 ②」

 

 

 

〈東門:内部〉

 

「おいアリス!シールドが…」

『取り敢えず城のところには張りなおしておる!すまんが中のトリオン兵は頼む!』

 

シールドが崩れた後、それを見越したように内部に門が発生する。

 

「全体には張り直せねえのか!?」

『一度に張るとなると時間がかかる。城壁を作りながら徐々に張っていく!』

 

歯噛みしながら通信を終え、トリオン兵を端から潰していく。バムスターを叩き落とし、モールモッドを捻りつぶす。そのとき14歳くらいの少女が目に入った。

 

「おい!早く逃げろ!」

 

彼女の手の中に誰かが抱えられている。

母親…だろうか。

胸の部分が赤く染まっていた。

秀次の姉を見捨てたときのことを否が応でも思い出してしまう。

 

「ま、ママが…」

「早く逃げろ。」

 

浩太が少女の手をとって引っ張る。その先を言わせんとするかのように。

少女の顔は今にも泣き出しそうで、真っ白だった。

横から来たモールモッドをトリオンボールで仕留める。

 

「早く行け。」

 

少女が駆けていくのを見つめつつ、バドを二匹撃ち落とす。

 

やっぱり、自分は何も救えないのか。

 

 

〈西門:内部〉

 

「ここから先は行かせませんよ。ヴィザ翁。」

「ほほう、私の名前をお知りだとは。」

 

ヴァルクールが持つ

ガイボルガの両端に高密度のトリオンが集まり、錐を生成。それをヴィザに向かって撃ち込む。

ヴィザは落ち着いていた。さすが達人である。

 

星の杖(オルガノン)。」

 

呟いたあと、ヴィザが手を添えている杖の先に三つのリングが現れる。次の瞬間、周りの民家はズタズタになっていた。もちろん、ヴァルクールの錐もろとも。

 

「これがオルガノン…!」

 

それでもヴィザを撤退させないと、この国は救えない。覚悟を決めヴァルクールの間合いに持ち込むべく接近を開始する。一つ目のリングを飛び越え、錐を飛ばし、二つ目のリングを受け流し、近づいていく。

彼は杖のリングが一つ増えていることに気づかない。

三つ目のリングを超え、残り5メートル程。とても大きな、戦士の間。

 

 

 

〈北門:第二防壁物見櫓〉

 

 

「ラルド!そこから40ほど言ったところにトリガー使いがおる。任せたぞ。」

 

「イザヤはトリオン兵を倒しながら徐々に退がれ!」

 

「ブラックハウンドは市民をトリオン兵から守れ!第二防壁の中までしっかり撤退するのだ。」

 

物見櫓にてアリスは指揮を行っていた。第一防壁、いわゆる城壁は突破された。しかしあと二つの防壁に加え、本拠地である城は残っている。敵の戦力がどれだけ残っているかわからないが、こちらの黒トリガー使いは生きている。まだまだ勝機はある。

次の分かれ目は第二防壁で籠城戦に持ち込めるかどうか。城壁を使って籠城戦はできなかった。広すぎてアリスでは全ての大砲などの兵器を指揮下に置けないからである。しかし第二防壁まで下がってしまえば、だいぶ効率よく指揮ができる。

そのためには今出てきてトリガー使いの二人を何としてでも止めなければならない。

未来はヴァルクールとラルドにかかっていた。

 

 

 

〈東門:内部奥〉

 

 

浩太は市民をトリオン兵から守りながら撤退していた。いくら黒トリガーといえども、全ての人々を守りきることなど不可能だった。今も(ゲート)からどんどん追加されている。

浩太の目の前で血が飛び散り、浩太の目の前で人々が攫われていく。

一人はバムスターの口の中に、一人はモールモッドに串刺しにされ、一人はバンダーの砲撃に飲み込まれる。

 

「くっそがァァァ!!」

 

バムスターを叩き潰し、一人殺される。モールモッドを爆破し、一人いなくなる。バンダーを引きちぎり、敵の数を減らしていく。敵の数とともに、守るべき人も減っていく。

 

『コータ、第二防壁に着き次第ラルドの救援に行ってくれ。』

「…了解。」

 

精神とトリオン兵と人々を擦り減らしながら、浩太は中央の第二防壁へ向かう。

その時、20メートルほど先にある時計塔が音を立てて崩れ落ちた。

右からくるバムスターをトンファーで殴って吹き飛ばし、スラスターを駆使してモールモッドを潰す。バンダーの目に右手のトンファーを投げて倒し、急いでそこへ向かった。

浩太の目に映るのは二つのトリオンの流れ。

 

 

 

〈北門:中央〉

 

 

ラルドもまた満身創痍だった。右足が切られ、左肩が抉れている。トリオン兵に蹂躙されていく人達を見ながら、それでもカットと戦闘を続ける。

一瞬でも長く、こいつと戦って時間稼ぎをしなければならない。そうすれば浩太が助けに来てくれる。

カットが紫色の筆を降って絵の具を散らし、ラルドが斬撃を飛ばしながら筆を受け止める。周りに飛び散った絵の具から斬撃が飛び出す。しゃがんでかわしながら、カットの右足を切り飛ばした。

 

「はぁ、ぁ。やっとまともに当たりましたね。」

「無駄口を叩いている場合ではないでしょう。」

 

ズドン、という音とともに、黄色い筆でラルドは吹き飛ばされる。太刀でガードしても衝撃は流せず、背中から時計塔へ突っ込んだ。崩れる時計塔から必死に抜け出し、倒れこんだ。

10メートル先にカットの姿。もうトリオンが残り少ない。

 

片足で立ち上がり、太刀を構える。

目を瞑る。

息を吐く。

目を開ける。

 

カットが紫色の絵の具を空中に塗り、斬撃を飛ばし出した。それをラルドも斬撃で落としながら、好機を待つ。

 

この一度を逃すと、自分に訪れるのは死だ。カットに向けて、斬撃を飛ばす。それは楽々とかわされ、どんどん接近される。

 

残り3メートル。

 

ラルドが左足で地面を蹴った。

 

残り2メートル。

 

斬撃を斬撃で落としながら近づく。

 

残り1メートル。

 

赤色の筆とカラドボルグが激突し、太刀が真ん中から折れた。折れた刃は空へ舞う。

 

「まだ…!もう少し!!」

 

自分を鼓舞するかのように、ラルドが叫ぶ。折れた太刀を伸ばしながら、全力で横に振るった。

カットがそれをしゃがんでかわし、太刀を持つ右手を手首から切り飛ばす。そして切り返した筆がラルドの右胸あたりに突き刺さった。トリオンが黒い煙となって漏れ出す。

ラルドは笑っていた。左手で筆を掴み、こう叫ぶ。

 

「来い!!鋼の稲妻(カラドボルグ)ッ…!!!」

 

その声を太刀が聞いた途端、空中にあった折れた刃が伸ばされていく。それは後ろに下がろうとしていたカットの左肩を切り裂き、地面に突き刺さった。

そしてもう一つ。

切り飛ばした右手の中の太刀が、ラルドの右肩を突き抜けながら、カットの左胸に突き刺さる。

二人の目があった後、トリオン体が爆散し換装が解けた。

 

粉塵が巻き上がり、晴れていく。二人の目はあったままだった。その直後にラルドは口から血を吐き、崩れ落ちる。

ラルドの左胸にはカットのサバイバルナイフが刺さっていた。

 

「私の、勝ちです…」

 

そう発したのはカットではなく、地に伏せるラルドだった。カットは一瞬驚いたように目を見開き、その後全てを察した。

 

 

 

〈東門:中央〉

 

 

浩太の右手がカットの左胸を貫いていた。血が自分の手と、地面を赤黒く染めていく。

口から血を吐きながら、カットは呟く。浩太にだけ聞こえるように。

浩太は呆気にとられて顔を上げた。

目に映ったのは、カットの微笑みだった。

口から血を流しながら、女神のように微笑んでいた。

 

「早く、手を抜いてくだ、さい…」

 

言われるがままに右手を抜くと、カットはゆらりと後ろ向けに倒れた。浩太の目からカットの電磁波が消える。

生きていた証が消えていく。

今の今まで戦っていた二人は、浩太の目の前で屍体へと変わる。

 

 

〈アフトクラトル遠征艇〉

 

「カットの生体反応が消えました。」

「そうか。敵が始末してくれたのなら手間が省ける。ヴィザはどうだ?」

「敵の黒トリガーと戦闘を続けています。」

「ふむ、攻め落とすには少々卵が足りないか。」

「一度撤退ですか?」

「ヴィザが不利になったら一度撤退。卵を追加、二人の戦闘体の再構築を待って再び侵攻する。」

「了解です。」

 

 

〈東門:第二防壁付近〉

 

 

浩太は生気の抜けた顔で、連れてきた市民を中に入れる。最初は200名ほどいたが、もう50名ほどになっていた。

 

『…タ、コータ!!』

「…何だ。」

『ヴァルのところに行ってヴィザを止めてくれ!』

「トリオン兵は?」

『妾が何とかする!!早く!』

「了解。」

 

指示どおりに第二防壁をぐるりと迂回しつつ西門へ向かう。浩太の右手は血に濡れたままだった。

 

 

 

〈西門:内部〉

 

 

「私に剣を抜かせるとは…なかなかお強い方だ。」

 

そう言いながらヴィザはオルガノンを振るう。ヴァルクール後ろに下がって少し距離をとる。ヴィザはそういったが、ヴァルクールは力の差をひしひしと感じていた。

ヴァルクールは部位の欠損こそないものの、あちこちからトリオンが漏れ出している。対するヴィザは少し傷がついた程度である。

 

『ヴァル!そこにコータとイザヤを向かわせておる!それまで耐え抜いてくれ!!』

「了解です。女王様。」

 

そうは言ったもののあと何分持つかわからない。それに攻撃を加えるにしろ時間稼ぎをするにしろ、5本のリングをくぐり抜ける必要がある。

一息吐ききった後、もう一度オルガノンの間合いに入っていく。

一本目はすぐにくぐり抜けた。ここからが問題である。次からは後ろと前に気を配りながら進まなければならない。しかもヴィザが動くとともにリングも動く。錐を飛ばし、二本目のブレードを受け流しつつ飛び越える。

 

「はぁぁっっ!!」

 

三本目を押し上げ、ブレードの軌道をずらす。その隙を四本目のブレードが左から、そして前からヴィザの剣が斬りかかってくる。すぐにガイボルガを二つに分割し、受け止めた。

 

「やりますな。だがオルガノンの間合いで止まってはなりませんぞ。」

「くっっ…」

 

まだまだヴィザは余裕そうな表情を崩さない。次の瞬間ヴァルクールの両足は吹き飛んでいた。体勢が崩れたところを切ろうとするそのとき、目の前にトリオンボールが浮いていた。

 

「これはッ…!」

 

すぐさま真っ二つにし、後ろを振り向く。そして浩太の拳を剣で受け止める。

その瞬間ヴィザと浩太の目があった。

 

「…どうしてそんな目をされているのですかな。」

「うるせえよ。」

 

後ろからオルガノンのブレードが迫るが、ファンネルのレーザーブレードによって受け止められた。周りにはトリオンボールが浮いている。

 

「スラスター。」

 

バシュッッという音とともにヴィザが吹き飛び、相手の剣によって浩太の左腕が宙に舞った。

吹き飛ばされてヴィザが着地したところに(ゲート)が発生する。

 

「撤退です、ヴィザ翁。」

「ふむ、もう少し遊びたかったのですが…」

 

浩太が無言でトリオンボールを放つが、ミラたちに当たることなく空に消えていった。

 

「一度戻りましょうか、浩太さん?」

「…あぁ。」

 

換装の解けたヴァルクールを抱えたイザヤが言った。第二防壁へ歩き出そうとした時、浩太の視界がぐるりと反転した。

 

 

そこから浩太の記憶は途切れている。

 

 

迅の到着まで残り35時間。

 

 





先日、斉藤和義のライブに行ってきました。

あと次回だいぶ無理矢理です。ごめんなさい。
今回もですねすいません。
全部ですねすいません。
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