全てを再確認する話   作:ベルトのつち

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なんかなっかなかのうまいこと書けんです。いろいろ矛盾点が…違和感が…


第18話 「迅 悠一 ③」

 

 

 

〈ボーダー遠征艇〉

 

 

イラプセル到着まであと約42時間。

 

迅 悠一は未来を見ていた。

立木 浩太の未来を。

荒波に揉まれる藁のような未来だった。

死ぬ確率が高くなったと思えば、すぐに生きて帰る未来に変わる。またすぐにそこに取り残される未来になったりした。

 

 

イラプセル到着まであと約35時間。

 

立木 浩太の未来は確定した。

死亡する未来は全て消え去った。しかし次に現れたのは無事生存する未来とそうでない未来。そうでない未来というのは昏睡状態であるという未来。そして大怪我を負っている未来。その二つ。

どうか無事であってほしい、そう迅は願うばかりである。

 

 

イラプセル到着まであと約12時間。

 

立木 浩太の未来は大きく三つに分かれる。

無事生存する未来。何かしら怪我を負っている未来。そして、自分たちと合流できないという未来である。

自分は浩太の未来を変えられるところにいない。そう分かっていても悔しいものは悔しいのである。

逸る気持ちを押さえつけ、迅は浩太の無事を祈る。

 

 

〈イラプセル:王城〉

 

 

迅の到着まであと34時間。

 

時刻は午前10時。

イザヤは浩太を城の部屋へ運びこんだ後、緊急会議へ向かう。

出席しているのは、アリス、国防兵長、開発支援部長、イザヤである。ラルドは死亡、浩太は意識不明、ヴァルクールは負傷の手当を受けているため欠席である。

 

「それでは会議を始める。まず国防兵長、被害報告からだ。」

「はっ。被害報告です。」

 

■被害報告

 

第一防壁から第二防壁までの領土を放棄。

市民1万5621人うち8名が死亡、7253人が行方不明。生存者8360名のうち約2000人が負傷。

国防兵235名うち92名が市民の救助、トリオン兵の戦闘を務める。現時点で救助に当たっていた28名が死亡、36名が行方不明。帰還した28名のうち、負傷者が5名。

近衛兵84名に被害無し。

黒狼部隊(ブラックハウンド)37名うち8名が死亡、4名が行方不明。帰還した25名のうち1名が負傷。

剣撃部隊18名うちラルド部隊長を含む12名が死亡、6名が行方不明。帰還者無し。

 

「…となっております。」

「…報告ご苦労だった。」

 

被害報告が終わったあと、暫く喋り出すものはなかった。

 

「コータとヴァルはどうなっておる?」

 

沈黙を破ったのはアリスだった。その問いにイザヤが答える。

 

「立木 浩太は意識不明。ヴァルクール殿は軽症です。」

「そうか、やはりサイドエフェクトの影響だろうか。」

「うまく適合したように見えたんですけどね。なかなか負担が大きかったようです。」

「そうか。」

「これからどうしましょうか。」

 

と国防兵長。アリスの答えを待つ。

 

「…そうだな。多分相手のトリガー使いが復活し次第攻めてくるであろう。籠城戦の構えでいく。第二防壁が突破されそうになった時が潮時であろう。」

 

一度口を閉じるが、また話し出す。

 

「妾の母親と相談して降伏のタイミングを決めておく。あとで通達しよう。」

「女王様はどうするのですか?」

「妾は降伏前に母トリガーになろうと思う。」

「ど、どうしてですか!まだ寿命も持つはずですよ!?」

 

開発支援部長が慌てた声を上げる。

 

「アフトクラトルの母トリガーの寿命が近いらしい。敵国の母トリガーになるくらいなら、ということだな。降伏後は母親とヴァルに頼む。見捨てるようですまないな…」

 

文句を言うものは誰もいなかった。誰も言えなかった。今まで戦線を裏で支えてきたのは他でもない、アリスなのだ。

アリスがいなければ防壁もなく、あっという間に征服されていただろう。市民への被害もこれだけではすまなかったかもしれない。

これは最高責任者として責任を負った形であり、アフトクラトルに対するささやかな反抗である。

イザヤが口を開いた。

 

「立木 浩太はどうしましょう?」

「こちらから遠征艇は出せないだろう。迎えが来たら返すつもりだ。」

 

アリスがそう答え、さらに続けた。

 

「これで会議は終了とする。国防兵長は兵の再編成の続きを、他のものはしっかり体を休めてくれ。以上。」

 

パラパラと部下が席を立ちだし、アリスもそれに続いた。自分の母親に会議で決まったことを話し、投降のタイミングを決定した。全体への通達が終わったあと、浩太の部屋へ向かう。

 

「浩太は起きておるか?」

「いえ、目を覚ます様子はありません。ただ心音は安定しています。過労のようなものではないでしょうか。」

「そうか…」

 

そしてアリスは浩太の顔を眺める。その心中は誰にも計り知れないだろう。浩太が持っていたボーダーのトリガーを手に握らせ、黒トリガーを枕元に置く。

そうしてアリスは自分の部屋へ帰って行った。

時刻は午後12時を回っていた。

 

 

 

〈アフトクラトル遠征艇〉

 

午後1時

 

「卵の到着はあとどれくらいかかりそうだ?」

 

ハイレインがミラに問いかける。

 

「あと4時間くらいでしょう。」

「エネドラ、ランバネイン、あとどれくらいで戦闘体は回復する?」

「1日と少しくらいですかね。」

「俺もあと1日はかかりそうだな。」

 

エネドラとランバネインが順に答える。

 

「ヴィザは?」

「最短で1日強といったところですな。」

「そうか。」

 

そういうとハイレインは口に手を当てる。

 

「明日の日が完全に落ちた後にもう一度一斉攻勢に出る。それで決める。エネドラは敵のトリガー使いの相手をしろ。ランバネインは大砲の破壊。ヴィザは第二防壁のシールドの破壊を任せる。それまでは体力の回復に努めろ。以上。」

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

 

 

浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。

カットが浩太の耳元で呟いた。

 

「ありがとう、殺してくれて。」

 

浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。

カットが浩太の耳元で呟いた。

 

「殺されるのが敵でよかった。」

 

浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。

カットが浩太の耳元で呟いた。

 

「だって味方に…ハイレインに殺されるのは、あまり気分がよろしくないもの。」

 

カットが浩太の耳元で呟いた。

 

「できることなら、もう少し生きていたかったかな…ヒュースも置いてきちゃったし。」

 

カットが浩太の耳元で呟いた。

 

「ねえ、私はどうするべきだったと思います?」

 

浩太の耳元で呟いた。

 

「あなたは仇を討てて幸せ?」

 

耳元で呟いた。

 

「私を殺せて、幸せ?」

 

耳元で。

 

何度も。

何度も。

何度も。

 

何回でも繰り返す。

もう何度目かわからない。

目の前にはあの女神の微笑み。

 

 

 

浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。

カットが浩太の耳元で呟いた。

 

「どうして私を殺したの?」

 

 

その問いの答えが見つかるまで、浩太は殺し続ける。その問いに答えられるまで、殺し続ける。

 

 

 

浩太の右手が、カットの左胸に突き刺さる。

 

 

浩太が浩太の耳元で、呟いた。

 

 

「答えろ。」

「お前が殺した女より、俺は幸せか?」

「お前は、俺は真っ当に生きているのか?」

 

 

浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。

 

 

 

 

〇━〇━〇━〇

 

〈第二防壁:東門〉

 

 

迅の到着まで残り僅か。

時刻は午後8時を指している。

 

第二防壁をぐるりと囲むように門が発生した。そこから溢れるのはトリオン兵の数々。アリスがボソッと呟く。

 

「…気張れよ。」

 

イラプセル防衛戦、最終攻勢が始まる。

 

 

 

〈ボーダー遠征艇〉

 

 

シュゥゥゥという音とともに、ボーダーの遠征艇が北門の外側に到着する。

 

「い、いいか。24時間だから…な。」

「わかってますよ。冬島さんも出発までに治しておいてくださいね。」

 

船酔いしている冬島を置いて、迅は城壁の中へ向かう。そこは凄惨な状況だった。あちらこちらに赤黒い血が飛び散り、家も崩れていたり倒れていたりしている。

奥に見える城の周りには大量のトリオン兵がいた。

 

「…籠城しているのか。」

 

この状況なら誰かトリガー使いが戦っていてもおかしくないのだが、上の大砲が火を噴くばかりである。

襲いかかってくるトリオン兵をいなしながら進み続け、城壁へ到達する。その時、地面から迅をぐるりと囲むように壁が生えた。前は城門へと繋がっている。

その中にいるトリオン兵を倒し終わったあと、上から何か降りてきた。ヴァルクールである。

 

「立木殿のお迎えで?」

「ああ。どこにいるんだ?」

「こちらです。」

 

そう言ってヴァルクールは迅を城門の中へ案内する。連れて行かれたのは一つの部屋。扉を開けると浩太がいた。

 

「寝てるのか?」

「いえ、昏睡という表現の方が正しいかと。」

「そっちか……連れて帰るぞ。」

「どうぞ。この度は申し訳ありませんでした。」

 

恭しく礼をするヴァルクールを横目に、迅は浩太を抱える。冬島と連絡を取りながら、遠征艇への道を急いだ。

 

 

 

 






やばい(確信)

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