なんかなっかなかのうまいこと書けんです。いろいろ矛盾点が…違和感が…
〈ボーダー遠征艇〉
イラプセル到着まであと約42時間。
迅 悠一は未来を見ていた。
立木 浩太の未来を。
荒波に揉まれる藁のような未来だった。
死ぬ確率が高くなったと思えば、すぐに生きて帰る未来に変わる。またすぐにそこに取り残される未来になったりした。
イラプセル到着まであと約35時間。
立木 浩太の未来は確定した。
死亡する未来は全て消え去った。しかし次に現れたのは無事生存する未来とそうでない未来。そうでない未来というのは昏睡状態であるという未来。そして大怪我を負っている未来。その二つ。
どうか無事であってほしい、そう迅は願うばかりである。
イラプセル到着まであと約12時間。
立木 浩太の未来は大きく三つに分かれる。
無事生存する未来。何かしら怪我を負っている未来。そして、自分たちと合流できないという未来である。
自分は浩太の未来を変えられるところにいない。そう分かっていても悔しいものは悔しいのである。
逸る気持ちを押さえつけ、迅は浩太の無事を祈る。
〈イラプセル:王城〉
迅の到着まであと34時間。
時刻は午前10時。
イザヤは浩太を城の部屋へ運びこんだ後、緊急会議へ向かう。
出席しているのは、アリス、国防兵長、開発支援部長、イザヤである。ラルドは死亡、浩太は意識不明、ヴァルクールは負傷の手当を受けているため欠席である。
「それでは会議を始める。まず国防兵長、被害報告からだ。」
「はっ。被害報告です。」
■被害報告
第一防壁から第二防壁までの領土を放棄。
市民1万5621人うち8名が死亡、7253人が行方不明。生存者8360名のうち約2000人が負傷。
国防兵235名うち92名が市民の救助、トリオン兵の戦闘を務める。現時点で救助に当たっていた28名が死亡、36名が行方不明。帰還した28名のうち、負傷者が5名。
近衛兵84名に被害無し。
黒狼部隊(ブラックハウンド)37名うち8名が死亡、4名が行方不明。帰還した25名のうち1名が負傷。
剣撃部隊18名うちラルド部隊長を含む12名が死亡、6名が行方不明。帰還者無し。
「…となっております。」
「…報告ご苦労だった。」
被害報告が終わったあと、暫く喋り出すものはなかった。
「コータとヴァルはどうなっておる?」
沈黙を破ったのはアリスだった。その問いにイザヤが答える。
「立木 浩太は意識不明。ヴァルクール殿は軽症です。」
「そうか、やはりサイドエフェクトの影響だろうか。」
「うまく適合したように見えたんですけどね。なかなか負担が大きかったようです。」
「そうか。」
「これからどうしましょうか。」
と国防兵長。アリスの答えを待つ。
「…そうだな。多分相手のトリガー使いが復活し次第攻めてくるであろう。籠城戦の構えでいく。第二防壁が突破されそうになった時が潮時であろう。」
一度口を閉じるが、また話し出す。
「妾の母親と相談して降伏のタイミングを決めておく。あとで通達しよう。」
「女王様はどうするのですか?」
「妾は降伏前に母トリガーになろうと思う。」
「ど、どうしてですか!まだ寿命も持つはずですよ!?」
開発支援部長が慌てた声を上げる。
「アフトクラトルの母トリガーの寿命が近いらしい。敵国の母トリガーになるくらいなら、ということだな。降伏後は母親とヴァルに頼む。見捨てるようですまないな…」
文句を言うものは誰もいなかった。誰も言えなかった。今まで戦線を裏で支えてきたのは他でもない、アリスなのだ。
アリスがいなければ防壁もなく、あっという間に征服されていただろう。市民への被害もこれだけではすまなかったかもしれない。
これは最高責任者として責任を負った形であり、アフトクラトルに対するささやかな反抗である。
イザヤが口を開いた。
「立木 浩太はどうしましょう?」
「こちらから遠征艇は出せないだろう。迎えが来たら返すつもりだ。」
アリスがそう答え、さらに続けた。
「これで会議は終了とする。国防兵長は兵の再編成の続きを、他のものはしっかり体を休めてくれ。以上。」
パラパラと部下が席を立ちだし、アリスもそれに続いた。自分の母親に会議で決まったことを話し、投降のタイミングを決定した。全体への通達が終わったあと、浩太の部屋へ向かう。
「浩太は起きておるか?」
「いえ、目を覚ます様子はありません。ただ心音は安定しています。過労のようなものではないでしょうか。」
「そうか…」
そしてアリスは浩太の顔を眺める。その心中は誰にも計り知れないだろう。浩太が持っていたボーダーのトリガーを手に握らせ、黒トリガーを枕元に置く。
そうしてアリスは自分の部屋へ帰って行った。
時刻は午後12時を回っていた。
〈アフトクラトル遠征艇〉
午後1時
「卵の到着はあとどれくらいかかりそうだ?」
ハイレインがミラに問いかける。
「あと4時間くらいでしょう。」
「エネドラ、ランバネイン、あとどれくらいで戦闘体は回復する?」
「1日と少しくらいですかね。」
「俺もあと1日はかかりそうだな。」
エネドラとランバネインが順に答える。
「ヴィザは?」
「最短で1日強といったところですな。」
「そうか。」
そういうとハイレインは口に手を当てる。
「明日の日が完全に落ちた後にもう一度一斉攻勢に出る。それで決める。エネドラは敵のトリガー使いの相手をしろ。ランバネインは大砲の破壊。ヴィザは第二防壁のシールドの破壊を任せる。それまでは体力の回復に努めろ。以上。」
〇━〇━〇━〇
浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。
カットが浩太の耳元で呟いた。
「ありがとう、殺してくれて。」
浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。
カットが浩太の耳元で呟いた。
「殺されるのが敵でよかった。」
浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。
カットが浩太の耳元で呟いた。
「だって味方に…ハイレインに殺されるのは、あまり気分がよろしくないもの。」
カットが浩太の耳元で呟いた。
「できることなら、もう少し生きていたかったかな…ヒュースも置いてきちゃったし。」
カットが浩太の耳元で呟いた。
「ねえ、私はどうするべきだったと思います?」
浩太の耳元で呟いた。
「あなたは仇を討てて幸せ?」
耳元で呟いた。
「私を殺せて、幸せ?」
耳元で。
何度も。
何度も。
何度も。
何回でも繰り返す。
もう何度目かわからない。
目の前にはあの女神の微笑み。
浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。
カットが浩太の耳元で呟いた。
「どうして私を殺したの?」
その問いの答えが見つかるまで、浩太は殺し続ける。その問いに答えられるまで、殺し続ける。
浩太の右手が、カットの左胸に突き刺さる。
浩太が浩太の耳元で、呟いた。
「答えろ。」
「お前が殺した女より、俺は幸せか?」
「お前は、俺は真っ当に生きているのか?」
浩太の右手がカットの左胸に突き刺さる。
〇━〇━〇━〇
〈第二防壁:東門〉
迅の到着まで残り僅か。
時刻は午後8時を指している。
第二防壁をぐるりと囲むように門が発生した。そこから溢れるのはトリオン兵の数々。アリスがボソッと呟く。
「…気張れよ。」
イラプセル防衛戦、最終攻勢が始まる。
〈ボーダー遠征艇〉
シュゥゥゥという音とともに、ボーダーの遠征艇が北門の外側に到着する。
「い、いいか。24時間だから…な。」
「わかってますよ。冬島さんも出発までに治しておいてくださいね。」
船酔いしている冬島を置いて、迅は城壁の中へ向かう。そこは凄惨な状況だった。あちらこちらに赤黒い血が飛び散り、家も崩れていたり倒れていたりしている。
奥に見える城の周りには大量のトリオン兵がいた。
「…籠城しているのか。」
この状況なら誰かトリガー使いが戦っていてもおかしくないのだが、上の大砲が火を噴くばかりである。
襲いかかってくるトリオン兵をいなしながら進み続け、城壁へ到達する。その時、地面から迅をぐるりと囲むように壁が生えた。前は城門へと繋がっている。
その中にいるトリオン兵を倒し終わったあと、上から何か降りてきた。ヴァルクールである。
「立木殿のお迎えで?」
「ああ。どこにいるんだ?」
「こちらです。」
そう言ってヴァルクールは迅を城門の中へ案内する。連れて行かれたのは一つの部屋。扉を開けると浩太がいた。
「寝てるのか?」
「いえ、昏睡という表現の方が正しいかと。」
「そっちか……連れて帰るぞ。」
「どうぞ。この度は申し訳ありませんでした。」
恭しく礼をするヴァルクールを横目に、迅は浩太を抱える。冬島と連絡を取りながら、遠征艇への道を急いだ。
やばい(確信)