全てを再確認する話   作:ベルトのつち

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三人称視点で試行錯誤。
苦手なひとはブラウザバック推奨です。

それでは、どうぞ。


第3話 「三輪 秀次」

四年半前、三門市を近界民(ネイバー)が襲った。三輪 秀次もその被害者だった。

その日のうちに秀次は自分の帰る場所と、最愛の姉を失う。

 

両親はともに外交官だった。世界を飛び回り、家にいることの少ない親の代わりに姉は面倒を見てくれた。

彼にとって家族は姉だけだった。

秀次にとって姉は全てだった。

 

 

そんな最愛の姉も、もういない。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

雨の降る日だった。三門市の空が(ゲート)で覆われ、そこからトリオン兵が溢れ出した。

 

秀次は姉と逃げていた。白い化物から。

突然姉が秀次の視界から消えた。慌てて振り向くと姉は倒れていた。

 

「姉さん!」

「大丈夫、すぐ立つから先に行って…」

「そうじゃない!後ろ!!」

 

一口だった。たったの一口でちっぽけな人間は蹂躙されてゆく。

 

「姉…さん……」

 

秀次の顔が絶望に染まり始めたときに現れたのは、迅だった。

捕獲直後のスキを逃さずバムスターを駆逐、横から襲いかかってくるモールモッドの攻撃を避けながら切り伏せる。それを踏み台にもう一匹のバムスターも一撃で叩き落とした。

駆逐されたバムスターの裂かれた腹からこぼれ落ちた姉を抱えながら秀次は言った。

 

「ねえ!助けて!!」

 

藁にもすがるような気持ちでその人に声をかける。

 

 

「姉さんが……!!」

 

「姉さんが死んじゃう!!」

 

 

まだ息はしている。この人なら助けてくれるかもしれない。頼れるのは近界民(ネイバー)に抗えるこの人だけだった。

 

「姉さんを助けてよ!!」

 

コンマ数秒でも秀次にとって、迅が口を開くまでの時間は永遠かと思うくらい長かった。

 

 

「すまない、俺にはその人を助けられない…」

 

 

頭が真っ白になる気がした。なぜこの人は生きてる人を見捨てるのか、秀次には全く理解できなかった。

 

「どうして!?まだ息はしてるのに!!」

 

そのとき秀次に駆け寄る一つの影があった。浩太である。

 

「まだ生きているのか?」

 

浩太が秀次のそばに座り込み、姉に応急手当をしようとする。そうか、あの人はなにかおかしかったんだ。この人なら姉さんを助けてくれるかもしれない。

 

「おい、迅!なにして……」

 

浩太が迅に向かって話しかける。それにつられるように迅の顔を見た。

 

 

わけのわからない顔をしていた。

 

 

突然、浩太がこう切り出す。

 

「…生存者は西へ向かってくれ。400mほど行けば仮設の避難所があるはずだ。」

 

なんで…なんで誰も姉さんを助けてくれないんだよ……

 

「もう死んでる。いいから早く行け。」

 

さっきまで生きてた!!もう少しあんた達が来るのが早かったら!姉さんは死なずに済んだかもしれないのに!!!

 

「悪かった。」

 

あんたが…あんた達が姉さんを殺したんだ!!

 

「ならお前が代わりに死ねばよかっただろうが!」

 

「ッッ…!!」

 

「早く行け。お前がするべきことを考えろ。」

 

何も言い返せなかった。

この人が言っていることが正しいと秀次はわかっていたから。

 

事切れた姉を抱えながら秀次は避難所へ向かう。心ではわかっていても受け入れられなかった。

 

浩太はまだしも、迅は助けようとする素振りすら見せなかったのだから。

 

最初に呼び止めたときなら、まだ助かったかもしれないのに。あいつは動かなかった。

 

姉さんが死んだのは、あいつのせいだ。

 

その日を境に秀次は、力を欲するようになる。全ての近界民を殺せるような力を。

秀次は、復讐のためだけに力を欲した。

 

 

怒りとは酸である。

 

 

自分は近界民を全て殺すために生きている。そう感じるようになった三輪 秀次は、第一次近界民侵攻の数日後に表舞台に上がった回境防衛機関「ボーダー」に入隊することを決意する。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

入隊の日はすぐ訪れた。その頃には秀次はあまり感情を表に出さないようになっていた。しかし、彼のドス黒い何かは日に日に増していく。

 

「今日の監督を行う木崎だ。まずはボーダーに入隊してくれてありがとう。」

 

木崎と名乗った男性はそう喋り始めた。

 

「このなかには先の侵攻で被害を受けた人もいるだろう。一緒に任務に就けることを楽しみにしている。」

 

秀次の姉を見捨てた黒髪も前に立っていた。周りを見渡すと、爽やかイケメンと角刈りの男、凛とした目つきをする女性がいた。

上から嵐山 准、柿崎 国治、沢村 響子である。

 

「次にトリガーについて説明する。」

 

トリガーは元々は近界民の文明を支えていたテクノロジーだった。それをボーダー用に量産したものが支給されている。トリガーはトリガーホルダーの中に入っており、セットできるトリガーの種類は8つである。トリガーホルダーに触れ、起動する意思がある場合に、自分の体はトリオン体に換装される。

トリガーには攻撃手用トリガー、銃手用トリガー、狙撃手用トリガーの3つがある。

 

攻撃手用トリガーには、日本刀を模した「孤月」というものがある。

また銃手用トリガーには突撃銃(アサルトライフル型)、拳銃(ハンドガン型)がある。銃手や射手が打ち出す銃弾にもいくつかの種類があり、アステロイドと呼ばれる通常弾、メテオラと呼ばれる炸裂弾がある。

 

またトリオンに関する説明も受けた。トリオンとは心臓の近くにあるトリオン器官から生み出される未知のエネルギーだ。トリガーを起動すると生身の肉体はトリオンで作られた戦闘体に入れ替えられる。トリオン体には動きのイメージを戦闘体に伝えるトリオン伝達脳と、トリオン器官から送られるトリオンを管理するトリオン供給機関が存在し、このどちらかを破壊されると戦闘体が維持できなくなるというわけである。

 

「これでトリガーとトリオンに関するだいたいの説明は終わりだ。それではトリガーホルダーを受け取ってくれ。今までの試験などから自分にあったポジションとトリガーが選ばれる。」

 

秀次は言われるがままに、浩太からトリガーホルダーを受け取る。適正トリガーは孤月だった。木崎の説明は続く。

 

「次に合同訓練について説明する。」

 

合同訓練は週に2回ある。その訓練で良い成績を取れば訓練生は卒業となり、正隊員に昇格できるという仕組みだ。

 

「だいたいの説明は終わった。これから訓練に移る。俺についてきてくれ。」

 

と言われぞろぞろとついていく。すると秀次に話しかける一人の人物がいた。立木 浩太だった。

 

「久しぶり、だな。」

「なぜ姉さんを見殺しにしたんだ?」

 

怒気をはらんだ口調で秀次は尋ねる。

 

「あの日、俺が来る前に茶髪の男と話してただろ。そいつは未来が見えるんだ。言っちゃ悪いがお前のお姉さんの死は、確定未来だった。」

「だから見捨てたのか?」

 

目の前の少年は少し目を逸らした。無言は肯定の証だ。

 

「死ぬことが決まっていたら、見捨ててもいいのか!?」

 

秀次は吐き捨てた。心の底に溜まった何かとともに。

そのまま、前の訓練生についていく。 浩太は後ろで立ったままだった。

浩太にとって、死が確定した人より生きている人を助ける方が重要だった。秀次はそのことに気付けない。

 

「怒りは酸である。」とマーク・トゥエインは言う。注ぐ相手よりも自分自身を溶かしていく。秀次はもう盲目も同然だった。

 

 

そんな彼を傍目に訓練は進んでゆく。成績は悪くなかった。すぐにでも正隊員に昇格できるだろう。最後に行われるのは実戦訓練だった。前に見た景色がフラッシュバックし足が竦む者もいる中で秀次、嵐山、そして沢村は非常に目立った。この訓練はバムスターと1人で戦闘するというものである。嵐山は突撃銃で蜂の巣に、沢村は急所を的確に一閃、そして秀次は怒りに任せ乱暴に切り捨てた。

 

彼は無事正隊員に昇格し、トリオン兵を切り捨てることに明け暮れた。

 

それから数ヶ月後、三輪 秀次は立木 浩太に模擬戦を申し込む。もっと力を得るために。すべてのを殺すために。

 

 

 




三輪が、、、三輪がやばいやつだ。
次回は浩太との戦闘を書くうもり。
ちなみに浩太は14巻現在高2という設定です。

ジャンプは土曜発売ということでワタクシうきうきがとまりません。
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