今回は浩太メイン。
それではどうぞ。
「俺と、模擬戦をしてくれ。」
三輪 秀次は浩太にそう言った。
「何が目的だ?」
「強くなりたい。」
強くなる。目の前の少年はもっとたくさんの
復讐のため、力を手に入れる。
「いいぜ。訓練室に行こう。」
歩きながら浩太は秀次に尋ねる。
「お前、孤月以外に何か使ってるか?」
「サブにはシールドとバッグワームしか入れていない。」
「なるほど。」
浩太は確信していた。こいつは強くなれる、と。ただ問題は、
訓練室に入り、浩太は秀次に言う。
「とりあえず俺も孤月を使う。かかってこい。」
秀次が斬りかかる。浩太はそれを軽くいなし、斬撃をくぐり抜け、秀次の首を飛ばす。
「まだまだだな。どんどん行くぞ、秀次。」
次の戦いは浩太から動いた。秀次は右から振られる孤月をシールドで受け止めるがすぐ破られる。浩太が孤月を振り切ったスキを逃さず、少し下がりながら孤月を横にふって首を切ろうとする。しかし浩太は孤月をかわすためしゃがみ込みつつ、シールドを秀次の孤月と平行に合わせ、自分の身を守る。それと同時に秀次は下から胸を孤月で貫かれ、ダウン。
結果は0勝28敗だった。
「なるほど、つい先日まで訓練生だったとは思えない動きだな。ただ、俺は銃手だ。」
そんな俺に孤月で負けているようじゃあ話にならない、そう言いだす前に秀次が口を開く。
「浩太。俺を弟子にしてくれ!」
「俺はお前の姉の敵だろう?それに俺なんかより強い孤月使いは他にたくさんいる。」
「違う、お前が銃手だからこそ頼みたい。俺は孤月だけでは勝ちを取りに行くのは難しい。」
「サブで銃手トリガーを使いたいってことか。」
少し間を空けて浩太が答える。
「いいぜ。そのかわり条件がある。」
その条件とは先日導入された、戦闘員のランク分けとポイント制に絡めたものだった。
「孤月で6000ポイント取ってこい。話はそれからだ。」
秀次は現在4500ポイント。1500ポイント近く稼がなければならない。
「中途半端な孤月の腕前ではただの器用貧乏になる。あと俺は孤月は教えられない。師匠を見つけるなり、ランク戦をしまくるなりなんなりとしろ。」
秀次と別れた浩太は考える。秀次は復讐に取り憑かれすぎている。それはどうしようもないのだろうが、あのままではいずれ潰れてしまう。その前に何か対策を考えないとな。
ふと浩太は気付く。
なぜこんなにあいつを気遣ってるんだ?と。
人間は変わるものである。人と関わることを避けてきたはずなのに、いつの間にか弟子にするなどと話が進んでいる。
このまま秀次と関わり続けていいのだろうか。一抹の不安が頭の中を過る。
自分がいることで周りに迷惑がかかるのは、もうごめんだ…
〇━〇━〇━〇
そんな浩太をよそに秀次は孤月でのポイント稼ぎに明け暮れる。
太刀川に勝ったり負けたり、風間に勝ったり負けたり、迅に勝ったり負けたりしながら時は過ぎてゆく。
秀次の孤月が5500ポイント近くにになった時、
「秀次、俺とランク戦してくれねえか?」
「浩太か。わざわざ本部に来たのか?」
「そうだ。で、してくれるのか?」
浩太と再び対戦する機会が訪れる。秀次は頷きながら言う。
「ああ、頼む。」
「今回は俺は自分の装備で行くからな。」
と言ってブースへ入っていく。秀次もそれに続いてブースへ入った。
浩太のトリガー構成は、
メイン
突撃銃:アステロイド
拳銃:アステロイド
シールド
鉛弾(試作)
サブ
スコーピオン(試作)
ハウンド(試作)
シールド
バッグワーム
である。
開始の合図が鳴り響く。場所は市街地。転送場所はそれなりに離れているのか、秀次の姿は見当たらない。
浩太はバッグワームを展開するとともにレーダーの精度をあげる。
発見したのは秀次が先だった。バッグワームを身につけたまま、アパートの上を陣取っている浩太へと接近する。
「見つけたぜ。」
道路を走ってくる秀次を発見した浩太は、突撃銃での掃射を開始。
たまらず秀次は家の影に隠れる。秀次の姿が見えなくなると移動を開始。あまり近づかないよう気遣いながら、秀次を探す。
一方秀次も中距離戦は圧倒的に不利だと理解しているため、気づかれないよう背後から接近、孤月で切りつける。
「疾ッ!」
「くっ……」
間一髪で避けた浩太にもう一太刀浴びせかけるため、孤月で切り上げる。脇腹を掠めトリオンが溢れ出すが、致命傷にはならない。浩太もバッグワームを解除し、
「ハウンド。」
トリオンキューブを発現させる。それを上空に向けて打ち出しながら、突撃銃で応戦する。
咄嗟に秀次はシールドを使って身を守ろうとするが防ぎきれず、上空から降り注いだハウンドによって緊急脱出した。
すぐに2本目が開始される。今回は二人はちかめに転送された。浩太は咄嗟に右手に拳銃を、左手にはスコーピオンを構え、秀次と切り結ぶ。
踏み込んでくる秀次をスコーピオンでいなしながら、できるだけ中距離を保つため、バックステップで下がりながら拳銃で応戦する。
浩太に突撃銃を取り出されると、秀次が勝てる確率はぐっと下がってしまう。それを防ぐため秀次が前に出て、浩太が追撃を嫌って後ろに下がるというのを繰り返していたが転機はすぐに訪れる。
突然浩太が前に出たのだ。咄嗟に首に向かって浩太の左側から孤月を振横に振るがるが、浩太は首から小さい刺又のようなスコーピオンを出し、孤月を受け止める。スコーピオンにヒビが入るが砕ききれず、右手の拳銃がドンドンドンッと火を吹く。
避けるため秀次は斜め後方に下がるが、被弾した左腕に風穴が開き、使い物にならなくなる。
「くっ…」
「まだまだ。」
その瞬間浩太はマガジンを入れ替え、秀次に向けてハウンドを打ちながら接近。右手の拳銃を放つ。
秀次はその弾を防ぐためにシールドを展開するが、その黒い弾丸はシールドをすり抜けた。
「…ッ!?」
ガキンという音を立てながらその弾丸のうちの数発が秀次の右腕と腰に命中する。
「重い……!?」
「ああ、それは鉛弾って言う弾だ。試作だけど50キロくらいあるはずだぜ。」
満足に身動きの取れない秀次はスコーピオンで切り刻まれて緊急脱出した。
結果は9-1で秀次の負け。1本は不意打ちが決まり、浩太が負けた。
「強くなったな。数カ月前の模擬戦とは動きが格段に良くなってるよ。」
浩太はそう褒めたが、秀次は悔しそうな顔をしていた。そこに秀次の一番嫌いな人が現れる。迅 悠一だった。
「よう、秀次。浩太にボコボコにされたのか?」
「迅…!お前には関係ないことだ。じゃあな、浩太。」
秀次は迅を一瞥すると、去っていった。それを見送りながら迅は浩太に問いかける。
「どうにかなりそうか?」
「正直わからない。まだソロだけどそのうち隊に打ち込んでやろうと思う。」
「浩太がそこまで干渉するとはね。」
「うるせえ。あんなことが立て続けに起きたら俺だってトラウマになるわ。」
一時はトゲトゲしていた浩太だが、だいぶ丸くなってきたと迅は思う。それでもまだ一押しで砕けてしまうような不安定さが残っていた。それを振り払うように、少し明るい声で迅は浩太に声をかける。
「そろそろ帰ろうか。」
「そうだな。桐絵に何か買って帰ろうぜ。」
会話の後、A級隊員2人は本部を後にした。
〇━〇━〇━〇
玉狛支部。
先日ボーダーが放棄された水道施設を買い取り、改装を加えることによって作られた支部である。
「ただいまー。」
支部の中に入ると玄関先に何かいた。上に林藤 陽太郎が乗っかって寝ている。
「なあ、迅。こんなのいたか?」
「いや、いなかったしこの未来は俺は見てないぞ。読み逃したのかな。」
その何かはのそのそと動き出し、リビングへと入っていく。浩太は唖然としながら口を開く。
「…入ってったぞ?」
「入ってったな。」
とりあえず、その何かに続いて浩太と迅はリビングへ入っていく。
「おい、桐絵。この大きな何かはなんなんだ?」
「支部長(ボス)が連れてきたのよ。陽太郎は雷神丸って呼んでたわ。」
ますますわけがわからない。大きな何か、雷神丸はむしゃむしゃと草を食べている。迅は雷神丸を触りに近づく。陽太郎は背中に乗ったままだ。
「…どら焼き買ってきたぞ。」
「本当!?ちょうどどら焼きが食べたい気分だったのよ!!」
「あ、小南ー。レイジさんは?」
「今は防衛任務ね。あと今日泊まっていくから。」
「じゃあ晩飯は浩太、よろしく。」
「お、おう。」
迅は雷神丸を触り、小南は幸せそうにどら焼きを食べる。平和な日常そのものだった。
それでも迅の表情には少し影があり、浩太もたぶん複雑な顔をしていただろう。
何せ第一次近界民侵攻から半年しか経っていないのである。平和な日常は嬉しいが、それは浩太にとって何かの予兆でしかなかった。
土曜発売のジャンプは好きだけど、来週寂しくなるジレンマ。
あともう一つドカンとしたものを考えたいのですが、思い浮かびません。