生まれ持ったセレブオーラ。殺人炒飯の加古 望。
今回もよろしくお願いします。
■ 基地南部
ラルドの拡張斬撃により小南が緊急脱出。しかしヴァルクールの放つ錐は浩太の
■ 基地南西部
三輪 秀次の緊急脱出により、戦線が膠着。太刀川隊が救援に向かう。
■ 基地西部
嵐山隊、諏訪隊、風間がトリオン兵と戦闘中。半分ほど殲滅完了。
〈基地西部〉
『トリオン供給機関破損、
合成の音声が鳴り響くとともに、胸をファンネルのレーザーで貫かれた三輪 秀次が
「ほほう、負けても逃げられる機能ですか。いいですね。」
人型近界民はニヤリと口角を上げ、呟いた。加古はその様子を見て、二宮の反対側5メートルほど後ろに下がる。二宮が歯噛みしながら言う。
『まずそうだな。』
『迂闊に飛び込んでいくと焼き切られるわね。』
『ハウンドであのファンネルを狙っていこう。落とされないことを最優先に。』
『『了解』』
二人へそう指示を出すが、このままでは最後決めきれないだろうと東は感じていた。
〈ボーダー本部、司令室〉
ここでも東隊が苦戦していることを確認していた。その上、
「本部長、東隊から救援要請です!」
「三輪が緊急脱出したからか。」
三輪が落ちると東隊は決め手に欠ける。忍田本部長は口元に手を当てひとしきり考えてから、モニターを一瞥し嵐山隊、太刀川隊と風間に通信を入れた。
「だいたい片付いたようだな。」
『ええ、これからどうしましょうか。』
嵐山から余裕のある返事がかえってきた。ならば、余っていてかつトリオンに余裕のありそうな部隊は一つだった。
「太刀川隊!お前らは基地の西部へ向かって東隊の援護をしてくれ。嵐山隊と風間はそこに残って引き続きトリオン兵の殲滅を!」
『『了解。』』
嵐山と太刀川から返事がかえってきた。東隊は人型を一応やりくるめているようだ。だが要請が来た以上、隊員を向かわせないわけにはいかない。
基地南部でも小南が落ちたようではあるが、全体的に見ると防衛戦は終息に近づきつつあった。
〈基地南部〉
最後の一押し。もちろん
迅が切り上げた風刃をヴァルクールはかわしつつ、ガイボルガによる突き攻撃を放つ。
「うおっと…!」
錐が生成されるが、迅の右側、民家の上にいる浩太のシールドによって防がれ、生成される端から鉛弾によって行動不能にされていく。ヴァルクールは悔しそうな顔をしながらもう一度突きを繰り出す。
「……いい連携ですね。」
浩太にハウンドを打ち込まれたヴァルクールは、ガイボルガで直接撃ち落とすが、
「そいつはどうも!」
そのまま後ろに下がると同時に風刃の遠隔斬撃が叩き込まれる。そのとき迅のサイドエフェクトになにかかかるものがあった。浩太もなにか感じ取ったようで小南と通信を取り出す。
『桐絵!女の人型はどこにいる!?』
『浩太から見て5時の方向……300メートルよ!!』
『300メートル!?』
どうしてそんなところにいるのだろうか。裏を取りたかったのだろうがあまりにも遠回りすぎる。
『いい?あいつのトリガーの強みは飛ぶ斬撃と、拡張斬撃よ。多分数キロは伸びるわ!』
『だからあんな後ろにいるのか、ありがとう!!』
絶対勝ちなさいよ、と念を押された。負けるつもりなど毛頭ないが…どうしたものか。問題はラルドがいつ打ち出すのかわからないということである。浩太は迅に内部通話を持ちかける。
『迅、5分稼げるか?』
今でもヴァルクールの攻撃により、決して浅くない傷がつけられていく。ただ迅 悠一は、いつでも未来を見ている彼は、はっきりとした声で答える。
『任せろ。』
その芯の通った声を聞いた瞬間、浩太は全力でハウンドを打ち出し移動を開始する。
〈基地西部〉
太刀川隊が向かってくるとのことだが、それまでは人型を抑え込まなければならない。敵の攻撃手段のファンネルをハウンドで狙い撃ちにしつつ、トリオンを徐々に削っていく作戦に移行した。ただ大半のハウンドがファンネルから放たれるレーザーにより落とされる。完全に武が悪かった。それゆえの待ちの構えである。
「ふむ、迂闊に踏み込んでこなくなりましたね。ならば私から行きますよ?」
そう呟くと、人型近界民はファンネルのうちの一本をブレードに、もう一本をシールドにし、二宮へむけて接近する。
「アステロイド。」
二宮はトリオンキューブを三角錐型に24分割し、人型に向けて打ち出す。読んでいたかのように人型は3つのファンネルを使ってシールドを形成した。が、それが狙いである。200メートルほど離れたアパートからチカッと光が見えた。その光はまっすぐ人型へ。シールドを張ったファンネル1本ごと貫き、左足を弾き飛ばした。
シールドにだいぶ邪魔されたな、そう思いながら東は次の手を打つべく移動する。
「っ…!やりますね!」
少し嬉しそうに銀髪の近界民は呟くと、ブレードとして使っていたファンネルを投げた。
「なっ…!?」
飛来したファンネルによって、二宮の左肩はごっそり削り取られていた。頭に警告音が鳴り響く。トリオンを消費しすぎたのだった。加古の援護と思われるハウンドはあっけなく防がれ、もう一本ブレードが二宮へむけて打ち出された。今度はまだ遠いところでシールドを展開するが、それごと貫いた。
もうすぐ二宮に着弾するその時、
「『旋空』孤月。」
ファンネルが真っ二つになった。太刀川隊の到着である。
「だいぶ遅れちまったようだな。出水!」
「了解!!」
出水が両手でアステロイドを放った。反撃開始である。
〈基地南部〉
浩太はバッグワームを展開し、全力で走る。ラルドの姿を確認。ハウンドで攻撃を開始した。右手に拳銃を、左手にスコーピオンを持ち、対人戦闘に入る。残り時間は4分と少し。全力で倒す。
バッグワームを解除している浩太にラルドは尋ねる。
「本当に来てくれるつもりはないのですか?」
「ない。」
即答すると攻撃を開始した。向こうは受け太刀をするばかりである。徐々にトリオンが削られていく。
反撃しないのには二つほど理由がある。ラルドは先ほどの小南との戦いで
もう一つは単純にトリオンの残りが少ないということ。反撃しない、のではなく出来ないのだった。
鉛弾とスコーピオンを巧みに使い、機動力を奪いつつ削っていく。蟻地獄さながらである。ラルドがカラドボルグを横に振るうが、しゃがんでかわした。そのまま振り切られた太刀にすかさず鉛弾を打ち込む。ドンドンドンと三発。片足がないのも作用してラルドのバランスが少し崩れた。
「クソっっ…!!鋼の稲妻!!!カラドボルグ」
ラルドが崩れながら無理やり剣を振るう。拡張する斬撃。
「それか。」
浩太は冷静だった。右腕を犠牲に、まず左手を手首から切り落とす。
「まだ、まだだっっ!!」
太刀から斬撃が飛び出す。後ろから迫ってくるが、全てシールドで受け流した。
「悪いな。」
そして蒼白な表情をしているラルドの懐へ飛び込み、 左胸を貫く。僅か152秒で戦いは幕を閉じた。
一方迅は左腕が切り取られ、右足も錐が刺さり、使い物にならなくなっていた。風刃で斬撃を仕込みながらもう一度動き出そうとしたそのときだった。
ヴァルクールが少し反応する。未来が変わった。
「…ここまでのようですね。」
いままでほとんど動くことのなかったヴァルクールが、屋根へ飛び上がりながら走り出す。迅は追撃はしなかった。
「ふぅ〜〜。終わったか……」
そう迅はため息混じりに呟いた。
周りが爆煙に包まれラルドの換装が解ける。浩太がスコーピオンを携えながら、ジリジリと近づいていく。
「私をどうするつもりですか?」
「投降しろ、クソ
「そういうわけにはいきません。」
声の主はラルドではなくヴァルクールだった。
「撤退です、ラルド。」
そういうとヴァルクールはラルドを抱きかかえ去っていく。抱きかかえられたラルドと目があった。
真剣な目だった。
それを見つめ返している自分はどんな目をしていただろうか。
〈基地西部〉
太刀川が孤月でファンネルを切り落とし、人型
太刀川隊の到着から、相手に反撃させることなく徐々にトリオンを削っている。
「剣士の彼、強すぎやしません?」
「お褒めに預かり光栄だな。」
そう言いつつも太刀川は剣を振るい続ける。
そのとき加古の左側から大量の錐が飛来し、ラルドを抱えたヴァルクールが現れた。彼に向けて東は狙撃するが、エルのファンネルによって防がてしまう。
「ヴァルクール様!」
「エル!撤退しますよ。」
エルと呼ばれた
「またお会いしましょうね、玄界の皆さん。」
そう言うとエルは門の向こうへと吸い込まれていった。東隊と太刀川隊の面々は唖然とするばかりである。
その後数十分でトリオン兵の掃討も完了した。完成してからまだ一年のボーダーだったが、その防衛力の高さを白日の下に晒した。またこの戦いは同時に、各々に課題を突きつけることになる。
市街地侵攻防衛戦、終結。
林藤さんが「自分は近界民なんだ。」って言い出す夢を見た。