全てを再確認する話   作:ベルトのつち

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もうちょい長くなる予定だったのですか今日中におわれなさそうだったので切りました。


第9話 「立木 浩太 ③」

 

浩太は抱きかかえられ、去っていくラルドの目を見ていた。その目はまっすぐ浩太を見つめている。少し潤んでいるのか、その目は揺れていた。それを見つめる浩太の心境が穏やかであるはずがなかった。

 

「そんな目で俺を見るなよ…」

 

ポツリと呟く。

一つの信念に従って敗北した彼女と、少しの意地だけで勝利した彼。どちらが全うな生き方をしているのだろう。浩太は考える。

 

「本部行くけどお前は来るか?」

「ん、ああ。行くよ。」

 

いつの間にか横にいた迅に話しかけられた。そしてそれが後々、とても気まずいことに繋がることなどそのときの浩太に知る由もなかった。

 

 

 

〈ボーダー本部、嵐山隊作戦室〉

 

綾辻はふぅ〜と一息はくと、嵐山に連絡を入れる。

 

「人型近界民(ネイバー)が撤退したそうです。」

『綾辻と充もお疲れ様だな!オペレートありがとう。』

「ありがとうございます。」

「お疲れ様でした。」

 

綾辻と時枝が順に答える。

 

綾辻がボーダーに入隊したのはつい6ヶ月前である。彼女も第一次近界民侵攻の時に浩太に助けられたうちの一人である。ボーダーに入ろうと決意したのはそのときだった。

 

問題は浩太に知られないように活動していたことである。驚かせちゃったかな、と綾辻は思う。そして何より気まずい。浩太とはあんなひどい別れ方をしたのだから。

綾辻は浩太が自分を守るためにそうしたのだと気づいていた。だからなおさら苦しく、もどかしい。

聞くところによると浩太はそれから不幸に包まれたらしかった。それから無意識に避けてしまっていた自分に腹が立つ。浩太だって立て続けにあんなことが起きて苦しんでいたはずなのに。

そんなこんなで中学校も一緒だったが、ほとんど話すことはなかった。

 

『…辻、綾辻!大丈夫か!?』

「は、はい!すみません!」

『これからどう動けばいい?』

 

嵐山の声によって綾辻は現実に引き戻される。

 

「目立ったトリオン兵の掃討が終わり次第、諏訪隊に防衛任務を引き継いでください。」

『分かった。』

 

無意識にまた息をはく。

 

「綾辻先輩、ため息多いですね。何かあったのですか?」

「い、いや別に大丈夫だよ。」

 

時枝に尋ねられ、すこし慌てながら答える。そうですか、と言って時枝は引き下がった。

 

これからどうしよう……

 

綾辻はなおさら思考の渦にのまれていくのだった。

 

 

 

〈ボーダー本部〉

 

城戸司令と忍田本部長への報告を終え、司令室を出た浩太と迅。迅はこれから行くところがあるらしい。本部長に報告書を提出せねばならないのだが、浩太の本心としては今日中に作り上げ、提出して帰りたいといったところである。玉狛第一の分なのだが、レイジは狙撃手合同で参加、小南が書いてくれるわけがない、ということで浩太が書くことになった。今の問題は手元にパソコンがないことだ。

 

「どーすっかなぁ…」

 

どこかの作戦室を間借りしてちゃちゃっとつくってしまおう。そう思ってA級の作戦室がある区画へ向かう。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

そして浩太は東隊の作戦室へ向かっていた。いたはずなのだが、浩太は嵐山隊の作戦室にいる。他の人々は席を外しているようだ。自分の目の前に座る綾辻 遥を除いて。

 

東隊の作戦室へ行く途中に時枝に捕まったのだった。報告書が作れるならそれでいいかな、そう思いながら嵐山隊の作戦室へ押し込まれた。するとこの様子である。

 

浩太は膝が震えてくるのを感じた。こ、こわい…

とりあえず重苦しい空気を振り払うべく、浩太から切り出した。

 

「お久しぶり、綾辻さん…」

「ひ、久しぶりだね。」

 

綾辻は心の中で、毎日会っているけど…と付け足す。

 

沈黙。

 

気まずい。

 

「えっと、今日はなんでここに?」

「いやあの、今回の防衛戦の報告書を…作りたくて、東隊の作戦室に行こうと思ったら、時枝がうちの作戦室でって…」

「そ、そうだったのね!ノートパソコン持ってくるよ。」

「お、おう。」

 

綾辻はそそくさとオペレータールームへと向かった。浩太はすこしあっけにとられる。浩太は綾辻が自分のことを攻めるものだと思っていたのだが、彼女はそうはしなかった。

 

「はい、どうぞ。」

「ありがとう…」

 

浩太にノートパソコンを渡すと、綾辻はまたオペレータールームへ行ってしまった。やはり気づいていたのだろうか。なんとも恥ずかしい話である。

 

立木 浩太は赤面した。

 

 

 

一方、浩太がいる部屋から再びそそくさと抜け出してきた綾辻。彼女の心境も穏やかではなかった。何か言わなければいけないはずなのに思い出せない。

 

あー!もやもやするー!

 

頭をぶんぶん振りながら考える。いつもの綾辻からは想像もつかない行動だった。あの綾辻 遥が頭をぶんぶん振るのである。髪の毛ばっさー!である。そしてバタッと机に突っ伏した。

 

はぁ、どうすればいいんだろ。

 

今日3度目のため息をつき、もやもやと考え続ける。しばらくそのようにしていると部屋の扉がコンコンとノックされた。2秒で髪を直し、扉を開ける。

 

「綾辻さん…」

「は、はい。」

「ノートパソコンありがとう。」

「もう終わったの?」

「ああ。助かった。」

 

そういうと浩太はお辞儀し、嵐山隊の作戦室から去ろうとする。

 

「ねえ、浩太くん。」

 

綾辻がそう呼び止めるとすこし抜けた感じの顔になった浩太が振り向いた。あの時と比べると、とてもいい顔をしている。

 

「どうした?」

「高校、もう決めたの?」

「いいや、行かなくていいんじゃないかなって。」

「な、ならさ、私と同じ高校に行かない?」

「遥と?進学校なんて俺に行けるわけないだろ。」

 

遥、そう呼ばれて綾辻の心はトクンと跳ね上がる。そして浩太が自分の志望校を知っているという口ぶりで答えた。なんだかんだ自分を見てくれてたんだ、綾辻をそう感じる。嬉しかった。

 

「私が教えるよ、勉強。浩太くん器用だから多分大丈夫。」

 

なぜそこまで俺を気遣うんだ?と問うのはやめておいた。また泣かせてしまいそうだ。もうあんなことは二度としないと誓った。あの言葉がどれだけ綾辻を傷つけたか。思い出すと今でも腹が立ってくる。

 

「勉強って器用とかでなんとかなるのか…?」

「授業真面目に受けてるもん、大丈夫だよ。」

「分かった、すこし考える。」

「うん。呼び止めてごめんね。」

「いやいや、それじゃあ。」

「またね。」

 

綾辻の四度目のため息と、部屋の外へでた浩太のため息が重なる。

その足で浩太は本部長室へ向かい、綾辻は仕事に戻った。部屋の近くの角で時枝と柿崎が隠れていたことなど、浩太に知る由もない。

 

「うまくいったのかな?」

「問題ねーだろ。」

 

彼らはとてもニコニコしていた。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

本部長室へ報告書を提出しに行ったあと、浩太は今度こそ東隊の作戦室へ向かう。そのためA級の作戦室がある区画にまたいるのだが、こんなところで綾辻と会ってしまうと、なおさら気まずい。足早に目標を目指す。

 

「どうもー、秀次いますか?」

 

飛び込んだ浩太を加古がにこやかな顔で迎える。東も二宮も月見も出ているようだ。

 

「三輪くんなら今はいないわよ、師匠。」

「だから師匠って呼ばないでくださいよ。」

「まあそんなことより、今から炒飯作るのだけれど食べる?」

 

加古炒飯。別名などはないが炒飯(チャーハン)と書いて炒飯(モンスター)と読む代物。先日「チョコミント炒飯」で諏訪隊の堤 大地が死んだらしい。もう炒飯ですらない。なんで炒飯にチョコミントを加えようという発想に至ったのだろうか。浩太には全く理解できない。加古以外は理解できないのだろうなぁ。

 

「い、いえ。堤先輩とニノさんが食べたいって言ってたから、二人にあげてください。俺は秀次を探しに行きます。」

「あらそう、残念ね。三輪くん少し落ち込んでたから、しっかり慰めてあげてね。」

「ええ、それじゃあ。」

 

手を振る加古をちらと見てから、そそくさと作戦室から出る。今度は屋上へ向かうことにした。悩んでいるときの秀次は基本そこにいる。あれだけ近界民を殺すと意気込んでいていたのだ。あっけなく倒された自分を責めているのだろう。

 

 

秀次は風に当たっていた。自分は今回の戦いで何もできなかった。何も。もっとやりようはあったのだ。もっと孤月をうまく扱えていれば、

 

「だから孤月はランク戦をしまくるか、別の師匠を見つけろって言ったんだぜ。秀次。」

「浩太…」

 

自分の心を読んだかのようにピッタリなタイミングだった。浩太がとなりで屈み込む。

 

「秀次、ランク戦やろうぜ。」

 

 




11巻でレイジさんが自分の頭をゴンってやるシーンが好きです。
あと13巻で三雲が緊急脱出したときの唯我もなかなか好きです。
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