-U7- ~海上の戦乙女たち~   作:堅物サンチェリオ

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1話 その名はセブン 8

赤い戦士「・・・・・」

 

ツ級を仕留めた赤い戦士は、空を見上げた。

 

摩耶「・・・おい、赤いの」

 

不意に呼び止められ、赤い戦士は、呼ばれた方を見る。すると、赤い戦士を睨む摩耶がいた。金剛達や一航戦 二航戦も赤い戦士に対し、未だに警戒をしている。

 

摩耶「あんた・・・何者だ?艦娘には見えねぇが・・・何処の所属だ?」

 

赤い戦士「・・・・・」

 

霧島「貴方が私達を助けてくれた事は、大変感謝いたします。ですが・・・貴方の様な特殊な方は、過去に見たことがありません・・・」

 

金剛「いくつかQuestion(質問)したい事がありマース。だから・・・私達の鎮守府に来てほしいデス」

 

榛名「・・・別に、貴方を捕まえて解剖しようとか思ってませんから、ご安心下さい♪」

 

比叡「榛名・・・その言い方は、逆に警戒するよ・・・」

 

榛名「・・・・・ふふふ♪」

 

榛名は、笑ってごまかす。それに対し、赤い戦士は、只黙って艦娘達を見ていた。

 

赤い戦士「・・・・・・」

 

北上「う~ん?」

 

大井「無口な人ですねぇ・・・」

 

加古「・・・もしかして、アタシ達の言葉が分かんねぇのか?」

 

赤い戦士に対し、コミュニケーションを取ろうとする艦娘達。だが、赤い戦士は黙ったままだ。

それに対し、耐えられなくなった加賀が、

 

加賀「こちらに対し、只々無視とは、どういう事かしら?何か喋ったらどう?その方が貴方の為だと思うけど?」

 

警告を発しながら、赤い戦士に対し、弓を構える。

 

赤城「加賀さん!?」

 

摩耶「おい!?やめろ!!」

 

慌てて止めようとする赤城と摩耶。それよりも先に、加賀の前に立ちはだかって止める者がいた。雪風だ。

 

雪風「やめてください!!」

 

加賀「どきなさい・・・雪風・・・」

 

雪風「どきません!!この人は、私達を助けてくれた命の恩人ですよ!?加賀さんだって!この人に、助けてもらったじゃないですか!?」

 

加賀「・・・そ、それは・・・」

 

雪風「雪風知ってます!!加賀さんがやっている事は“恩を仇で返す”って言うんですよ!!」

 

加賀「な・・・!?」

 

雪風「加賀さん!!・・・もし、この人に痛いことをしようとするなら!・・・この雪風が許しません!!」

 

加賀「・・・くっ・・・」

 

雪風が鼻息を荒くしながら、必死に加賀から赤い戦士を守ろうとする。流石の加賀も少し動揺するが、それでも弓を降ろそうとしない。

味方同士で睨み合っている二人を見て、赤城と摩耶は、ため息をついて天を仰ぐ。

すると、突然赤い戦士が、自分を必死に庇う雪風に近付いた。その動きに全員が一瞬身構える。

雪風は、すぐ横にいる赤い戦士に少し驚く。だが、すぐに赤い戦士に対し、

 

雪風「大丈夫!!貴方は、雪風が守ります!!」

 

と、笑顔をみせる。

赤い戦士は、笑顔をみせてくれる雪風に、

 

赤い戦士「・・・・・」 ポンポン

 

雪風「・・・?」

 

頭を撫でて答えた。それは、まるで―ありがとう―そう言っているかの様に。

赤い戦士は、雪風の頭から手をおろすと、再び天を見上げ、

 

赤い戦士「―・・・・・デュア!!―」

 

目にも止まらぬ速さで青空に消えていった・・・・・。

 

摩耶「・・・あちゃー・・・逃げられちまったな・・・」

 

霧島「・・・まさか、空を飛ぶなんて・・・」

 

蒼龍「しかも何よ、あの速さ・・・」

 

飛龍「私達の艦載機じゃ到底追えないよ・・・」

 

北上「あ~、霧島さん達は知らないんだよねぇ・・・アイツ~空から飛んで来たんだよぉ?」

 

比叡「そ、そんなバカな!?人が空を飛ぶなんて・・・」

 

大井「北上さんの言う通りです。実際見ちゃったんだから、しょうがないでしょ?」

 

浜風「た、確かに・・・」

 

加古「だよな~・・・しょうがないよな~・・・」

 

雪風「・・・・わぁ・・・・」

 

赤城「・・・本当、よく分からない人でしたね・・・加賀さん」

 

加賀「・・・ええ・・・そうね・・・」

 

赤い戦士の飛び去った空を見つめる摩耶達。

すると、金剛が、ぱんっ!と手を鳴らす。

 

金剛「HEY!!皆さ~ん?物思いにふけるのは、ここで終わりデース!!榛名!」

 

榛名「はい!皆さん?まだ任務は完遂されていませんよ?」

 

金剛「YES!鎮守府に帰るまでが任務デース!!忘れちゃNO!なんだからネェ~?」

 

霧島「・・・そう・・・ですね。了解です!・・・では、金剛お姉様!」

 

金剛「ハーイ!!」

 

霧島「金剛お姉様と比叡お姉様は、摩耶さん達の護衛をお頼みします!」

 

金剛「OK!!お姉さんに任せなサーイ!!」

 

比叡「気合い!入れて!守ります!!」

 

霧島「榛名は、浜風さんを曳航!」

 

榛名「はい♪」

 

霧島「一航戦 二航戦の皆さんは、索敵をお願いします」

 

赤城「ええ!お任せ下さい!」

 

加賀「了解しました」

 

蒼龍&飛龍「了解!!」

 

摩耶「・・・すまねぇ。頼んだぜ、皆」

 

霧島「ええ!頼まれました!さぁ・・・」

 

霧島は、一呼吸おいて・・・高らかに号令を発した。

 

霧島「作戦終了!!これより鎮守府に帰還します!!・・・帰りましょう!・・・私達の家に!!」

 

一同「―了解!!!―」

 

霧島の号令と共に、艦隊が帰路に着く。一人も欠けることも無く・・・。

 

 

 

 

 

 

 

――アマギ鎮守府――

 

長門「・・・そうか、分かった。では、帰りを待っているぞ」

 

そう言うと長門は、無線機を置いた。それを見ていたキリヤマは、

 

キリヤマ「・・・・・」

 

長門「・・・蒼龍より。作戦は成功。中破、大破した者もいるが、全員無事だそうだ」

 

それを聞いたキリヤマは、ふーっと息を吐いて、座っていた椅子の背もたれに身を任した。

 

長門「お疲れ様だな。提督」

 

キリヤマ「あぁ、お前もな。長門」

 

長門がフッと笑った。

 

長門「今回は流石に肝が冷えたってところか?」

 

キリヤマ「次から無線機の性能も考えなくては・・・、こんな事はもう二度とゴメンだ」

 

長門「・・・・・」

 

キリヤマ「ん? どうした?」

 

長門「・・・摩耶達の救援の際、霧島達は正体不明の生命体と接触したらしい」

 

キリヤマ「生命体?」

 

長門「・・・全身が赤く染まった人型、性別は恐らく男、こちらに対し協力的らしい。その力量は深海棲艦を圧倒する程で、共に深海棲艦を撃破した後、ものすごい速さで空へ飛びたったらしい」

 

キリヤマ「・・・赤い男・・・戦士か・・・」

 

長門「・・・提督・・・」

 

キリヤマ「あぁ・・・、貸しができたみたいだ」

 

長門「・・・正体不明の赤い戦士にか?」

 

キリヤマ「・・・それもデッカイ貸しがな・・・」

 

キリヤマはそう言うと、窓の外を眺めた。その先には沈みかけの夕陽に照らされる正門と小さな建物があった。

艦娘達とはまた違う、もう一人の功労者の帰りを、キリヤマは黙って待つのである。

 

―アマギ鎮守府 正門―

 

長門やキリヤマが艦隊の帰還を待ち望んでいる中、正門の受付の中にも、ある人物の帰りを待ち続ける者がいた。

 

山城「・・・・・あ~~・・・暇だわ・・・」

 

警備員のナガト リョウに仕事を押し付けられた戦艦 山城である。

 

山城「てかっ!?いい加減遅すぎでしょ!?いつまで巡回しているのよ!あの人は!?」

 

押し付けられた仕事だが放り出す訳もいかず、何とかこなしている内に夕方になっていた。

 

山城「電話しても出てくれないし、提督と長門さんは手が離せないし・・・もう!」

 

山城は椅子から立ち上がって外に出た。気分転換をするためだ。

 

山城「ん~~!!」

 

背伸びをして座りっぱなしでコリ固まった体をほぐす。仕事をこなした後だから、これがなかなか気持ちがいい。

 

山城(・・・・・まぁ一時は、どうしようかって思ってたけど・・・こなせば、なかなか楽しいのよねぇ・・・ここ)

 

先程まで散々文句を言っていた山城だが、思いの外この仕事を気に入っていた。

 

山城(訪ねてくる人も、普通にイイ人達だし、何か遭っても、あの人が作ってるマニュアルで動けば、殆ど大丈夫だし・・・てか、良く出来てるなぁ、あのマニュアル)

 

ナガトが、仕事の要領を事細かに書き記したマニュアルを作っていたお陰で、山城は何の苦もせず、夕方まで仕事をこなしてこれたのだ。

 

山城(艦娘の私でもこれだけ出来てるし・・・)

 

背伸びをした山城は腰に手をあて、

 

山城「もう艦娘なんか辞めて、警備員として雇って貰おうかなー!・・・な~んちゃって・・・ふふ♪」

 

???「や、山城・・・」

 

ふと、呼びれた方へ振り向くと・・・、

 

山城「扶桑姉様!」

 

山城の姉妹艦、扶桑型1番艦 扶桑の姿があった。

 

山城「姉様・・・!もしかして・・・私を迎えに来てくださ「ごめんなさい!!」・・・え?」

 

扶桑「・・・私が・・・私が不甲斐ないばっかりに、貴女に苦労ばかり掛けさせて・・・ごめんなさい・・・」

 

扶桑は、山城に対し、いきなり謝罪を述べ始める。その顔は暗く、涙目になっている。

対する山城は、何で姉の扶桑が泣きながら自分に謝っているのか、全く理解出来ずにいた。

 

山城「ね・・・姉様?わ・・・私、今の状況がよく呑み込めな・・・「いいの!それ以上言わなくても・・・!わかっているわ・・・」お、oh・・・」

 

扶桑「私が戦艦として欠陥が多く、前線に行く事があまり無いのは事実・・・」

 

山城「いや、欠陥については、私も同じ・・・「いいの・・・!いいの!山城!わかっているわ・・・!」お、oh・・・」

 

扶桑「・・・前線に出ても、速度と装甲の無さに、大破を繰り返し、ドッグに入り浸り、タンスの肥やしならぬドッグの肥やしとなり・・・」

 

山城「・・・若干それ、姉様じゃなく私の事言ってませんか?姉さ・・・「いいの・・・!いいの!山城・・・!そんなに自分自身を傷付けないで・・・」やっぱ言ってるじゃないですか~!?」

 

扶桑「だから・・・、好きなってしまったのでしょ・・・山城?」

 

山城「い、いやいやいやいや!?何を言っているんですか!?私はあんな仕事押し付けるヤツなんて!?好きになるはずないじゃないですか!?・・・わ、私が好きなのは・・・扶そ・・・「警備員と言う仕事を!!」・・・へ?」

 

山城は理解出来なかった。

 

山城(何?警備員?何で?私がいつ警備員をやりたいって・・・あ・・・)

 

どうやら扶桑は、山城の独り言を聞いて変に解釈してしまったらしい。勿論、山城は冗談として言っていただけで、本気で警備員になろうとは思っていない。

聞いた内容とタイミングが悪かった。扶桑は完全に勘違いしていた。

 

山城「ち、違うの!違うの!姉様!あれは、ちょっとした冗談で・・・」

 

扶桑「いいの・・・もういいのよ・・・山城・・・艦娘辞めたくなるほど・・・辛かったのね・・・!ごめんなさい山城・・・気付いてあげれなくて・・・」

 

扶桑は、困惑する山城に背を向け、

 

扶桑「・・・貴女が警備員になっても・・・私は・・・忘れないから・・・!」

 

山城「ち、ちょ!?ちょっと扶桑姉さm「さようなら山城!!元気でいるのよ!」お、oh」

 

扶桑は走り去った。風の様に去って行く扶桑を、山城はただ見ているだけ。

 

山城「・・・・・・ふ・・・ふ・・・」

 

実質、扶桑に見限られ・・・、どうしようもなくなった山城は、

 

山城「・・・・・・不幸だわあああああああああああああぁぁぁ―――・・・!!!!!」

 

そう沈むゆく夕日に向かって、叫ぶのだった。

 

 

 

―アマギ鎮守府 正門 夜―

 

ナガト「・・・・・や~れやれ・・・一仕事して戻って来たら、エライ目に遇った・・・」

 

ブツブツと小言を言いながら守衛室に戻って来た。

少し前、ナガトは、守衛室に帰った。

だが守衛室の中では、まるでこの世の終わりと言う様な顔をしている山城が、守衛室の机に突っ伏していた。

ナガトが声をかける。すると、山城はナガトの顔を見た瞬間、自身の艤装を展開し、恐ろしい形相で襲いかかった。

 

山城「オ、オ、オ、オノレェ、ナガト〰️!!!!!ι(`ロ´)ノ」ガチャコーン!!!

 

ナガト「!?待て待て待てぇ!?!?(゜ロ゜;ノ)ノ」

 

ナガトは、鬼の様な形相で襲いかかってくる山城を必死に止めた。そして山城から罵詈雑言を浴びせられ、そして扶桑の部屋を訪ねて何とか誤解を説いた頃には、空は満天の星空に変わっていた。

 

ナガト「って言うか・・・ここまで凄く長かったな・・・リアルに」

 

ナガトは、一体なんの事を言っているのだろうか。

意味のわからない事を言いながら守衛室に向かうと、何故か誰もいないはずの守衛室に明かりが点いている。

 

ナガト「あれ?出る時は、ちゃんと消したはず・・・?」

 

不思議に思うナガト、さらに明かりの点いた守衛室の中から、複数人の声が聞こえてきた。

ナガトは、恐る恐る守衛の扉を開けると・・・、

 

時雨「・・・あ、やぁ警備員さん。お帰り」

 

村雨「お帰りなさ~い♪」

 

白露「これでぇ・・・・上がり!!イエーイ!!!いっちば~ん!!!」

 

夕立「あ~!白露姉!ウノ!!って言ってないっぽい!!ノーカン!ノーカ~ン♪」

 

白露「ええぇ!?イ、イヤ!アタシ言って・・・あ~!!ヤっちまった~!!!」

 

守衛室のちゃぶ台を囲んでUNOをやっている白露型姉妹達と・・・、

 

雪風「はい!!上がりです!」

 

白露「な、何ぃ!?また1位だとぉ!?」

 

摩耶「はっはー(笑)またやられたな(笑)」

 

白露型姉妹に混ざってUNOをやる雪風と、受付の椅子に座ってチャチャをいれる摩耶がいた。

 

白露「クッソー!!!!」

 

時雨「あっ僕も上がりだね」

 

白露「時雨ぇ!?」

 

村雨「はいは~い♪私も上がり♪」

 

白露「村雨もぉ!?」

 

夕立「アタシも上がりっぽ~い♪」

 

白露「夕立ぃ!?お前もかぁ~!?ってアンタ達!ウノって言ってないじゃん!?」

 

全員「「「言いました~♪(っぽい♪)」」」

 

白露「クゥゥソォォ!!・・・もう一回!!もう一回やろ!!」

 

夕立「えぇ~、もう飽きたっぽい・・・」

 

時雨「まぁ・・・、確かにちょっと飽きてきたかなぁ・・・」

 

村雨「もう10回以上やったからねぇ・・・」

 

摩耶「その全て1位が雪風だからな・・・(笑)」

 

白露「えぇ~!?・・・じゃ!じゃあトランプやろ!!トランプ!!ババ抜きで勝負よ!!」

 

村雨「もう・・・本当に負けず嫌いなんだから・・・」

 

夕立「もう、負けず嫌いだけは1番っぽ~い」

 

白露「えぇ~!!ヤダ!!負けず嫌いじゃなくて、本当の1番になりたいの~!!」

 

そう言いながら白露は駄々をこね始めた。

 

浜風「・・・白露さん、もうゲームは終わりです。警備さんが困ってるじゃないですか。あ、お疲れ様です。どうぞ」

 

守衛室の奥から出てきた浜風が、お茶の入った湯呑みをナガトに手渡しながら言う。

 

白露「えぇ~・・・、じゃあ!警備員さんも一緒にやろうよ!!皆でやった方が楽しいよ!絶対!!」

 

浜風「・・・白露さん?」

 

白露「えっ・・・あ、はい・・・(´・ω・`)」

 

ナガト「お、ありがとうな。・・・俺の事は別に気にしないでくれよ。俺の方は、もう仕事はないからな」

 

浜風「えっ?・・・ですが、ずっと占領している訳には・・・」

 

ナガト「良いって良いって、賑やかなのも、たまには良いさ。気にせずやってくれ」

 

白露「イエーイ!!(≧▽≦)さっすが警備員さ~ん!!話がわっかる~!!」

 

ナガト「ただし!明日に支障がでない程にな?お互いの為にな?」

 

白露「は~い!分かってまーす!よっしゃ~!!リベンジマッチだぜぃ!!」

 

ナガトの許可を得て、嬉々としてゲームを再開する白露。その姿に他の者達はハァ・・・、呆れてため息をもらす。

 

浜風「・・・すいません・・・ありがとうございます」

 

ナガト「良いって・・・それより、もう動いて大丈夫なのか?今日、大変だったんだろ・・・?」

 

浜風「えっ?あぁ、はい、大丈夫です。ちょっと危なかったですが・・・駆逐艦は治りが早いので・・・」

 

ナガト「・・・そうか?そりゃ何より・・・ズズ~・・・」

 

ナガトは、浜風の煎れたお茶をすする。すると摩耶が、

 

摩耶「・・・てか、何でお前、今日の事知ってんだ?」

 

1つの疑問を投げかけた

 

ナガト「えっ?・・・あぁ、提督に会ってね。扶桑姉妹の件の帰りに、そこで聞いたんだ」

 

摩耶「・・・へぇー、提督もお喋りだな・・・」

 

ナガト「・・・・摩耶ちゃんが泣いた事も・・・(ボソッ)」

 

摩耶「ぶっ!?!?ちょ!?ちょ、テメェ!!何で知ってんだよ!?マジで!?」

 

ナガト「 だから、提督に聞いたって・・・「摩耶には頭が上がらん」ってさ・・・やるじゃん」

 

摩耶「うっせぇ!!・・・ったく、本当にお喋りだな・・・あの提督は、・・・・・・・クソが・・・(照)」

 

摩耶は頬を真っ赤にしながらボソボソと呟いた。そんな光景に、ナガトと浜風は微笑ましく思った。

 

浜風「・・・本当にありがとうございます。・・・摩耶さん、ちょっと今日の事で責任感じてたみたいなんです」

 

ナガト「そっか・・・そりゃ何より・・・ズズズ・・・」

 

そう言うと、ナガトは再びお茶をすする。

 

浜風「・・・・・」

 

ナガト「・・・?どした?」

 

浜風「あ、いや・・・何もお聞きにならないのですね・・・」

 

ナガト「?何を?」

 

浜風「・・・赤色の戦士の事です」

 

ナガト「・・・あ~、それねぇ・・・。なんだろうなぁ・・・そいつ」

 

浜風「空を自由に飛び、深海棲艦を圧倒する程の力を持つ赤色の戦士が、なぜ私達を助ける様な事をしたのでしょうか・・・」

 

ナガト「・・・その気になれば、自分達も殺す事が出来たかもしれないのに?」

 

浜風「・・・・・・」

 

ナガトの言葉に、浜風は黙りこんでしまう。一人思い詰めた表情の浜風を見て、

 

ナガト「・・・考え過ぎじゃないか?」

 

浜風「・・・えっ?」

 

ナガト「そいつが浜風達をどう思ってたかなんて誰も分かんねぇ。そいつが味方になって戦ってくれた。そして浜風達は無事戻って来た。それで万々歳じゃないか?」

 

浜風「・・・ですが!あの赤色の戦士が、この先味方として戦ってくれるとは限らない・・・。いつか私達に牙を向けてきたっておかしくは・・・!」

 

そう語る浜風の表情は、不安に満ちていた。それを見たナガトは、思わず天井を見上げる。

 

ナガト「そうかぁ・・・。やっぱそう思うよなぁ・・・」

 

浜風「・・・?・・・ナガトさん?」

 

ナガト「・・・だから、そうならない為にも自分達がやらなきゃならない事・・・あるんじゃないか?

浜風「・・・やらなきゃならない事?」

 

ナガト「・・・・・そんな奴に頼らなくなるくらい強くなるんだ。今回はその訳の分からない奴に助けられてしまったけど、元々君達は深海棲艦を退ける為にいるんだろ?油断しなければ深海棲艦に遅れを取る事はないさ」

 

浜風「・・・・・もっと強く・・・・・」

 

ナガト「まぁ、その赤色の戦士も、いくら強いからってピンチになるときが絶対あるはずだ。その時は逆に・・・」

 

浜風「・・・私達が助ける・・・?」

 

浜風がそう言うと、ナガトは静かに頷く。

 

ナガト「得体の知れない物を疑うのは間違っちゃいないが、まずは貰った借りを返す・・・っと、俺は思うよ」

 

浜風「・・・確かに一理あると思います・・・・・・ですが私は・・・!」

 

そう言葉を続けようとした、その時、

 

雪風「警備さ~ん!!(≧▽≦)」

 

ナガト「うぉ!どしたの、雪風ちゃん?トランプは?」

 

雪風「早く上がったので終わるの待ってます!!」

 

ナガト「えっ?早いねぇ・・・・あ」

 

ナガトがちゃぶ台の方に目を向けると、一枚のトランプを持って、ちゃぶ台に突っ伏している白露がいた。トランプの柄は・・・ジョーカー。

 

ナガト(ドンマイ、白露・・・)

 

雪風「ねぇねぇ!警備さん!!どうかしましたか?」

 

ナガト「えっ?あぁ、ごめんね。それでどした?」

 

雪風「はい!聞いて下さい!今日ですね!とんでもない人に出会ったんです!」

 

ナガト「・・・あぁ、例の赤色の戦士の事かい?」

 

雪風「そうなんです!赤い人はとても強かったんです!颯爽と空から飛んで来て・・・深海棲艦の砲撃を跳ね返し・・・パンチとキックで軽巡ツ級を圧倒してました!!」

 

自分が、まるで有名人にでも会ったかの様に自慢気に話す雪風。とても楽しそうだ。

 

雪風「そして最後のトドメは・・・・・ビィィィィィィィィム!!」ビシィ!!

 

赤色の戦士の真似なのか、両手を交差してポーズした。

 

ナガト 「おぉ~」パチパチパチパチ

 

雪風「えへへ♪」ニコォ

 

ナガトの拍手に、誇らしげに笑う雪風。

 

ナガト「へぇ~、そんな奴がいるんだな(笑)」

 

雪風「はい!それは、もう・・・・・格好よかったぁ!!」

 

満面の笑みで、その時の出来事を思い浮かべていた。しかし、浜風は冷静に雪風を諭す。

 

浜風「・・・だが、あの赤色の戦士が、まだ味方と決まったわけじゃない・・・。もしもの事を考えたら・・・・一切油断する事はない様に・・・」

 

その言葉に、雪風はムッとした顔をする。

 

雪風「むぅ・・・、浜風は警戒し過ぎです!雪風には分かります!あの人は、私達の味方です!」

 

浜風「どうして分かるんだ?あの赤色の戦士が私達の味方だと言う証拠なんて、どこにもない!」

 

雪風「証拠ならあります!!あの人は私の頭を、優~しく撫でてくれました!!あんな優しい撫で方をする人が、私達の敵な訳ないです!!」

 

浜風「そ、そんなことが証拠になる訳ないでしょう!?いい加減にして!!」

 

雪風「むむ~ぅ!そんなことって何ですか!!・・・・・大体、浜風は頭が堅すぎです!!そんなんじゃあ・・・オッパイまでカチンコチンになりますよ!!」

 

浜風「なっ!?・・・む、胸は関係ないでしょう!!??」

 

なにやら二人が赤色の戦士の話から脱線し始めてきた。すると・・・、

 

ナガト「あ~、お前達。今回はそのくらいに・・・」

 

時雨「あの~・・・ちょっと良いかな?」

 

夕立「ぽいぽ~い?」

 

言い争う雪風と浜風の間に時雨と夕立が割って入る。

 

時雨「言い争ってるところ悪いけど、ちょっと気になった事があってね」

 

夕立「夕立もすごく気になる事があるっぽい!」

 

ナガト「おお、どうかしたのか?」

 

ナガトは、とっさに話題を時雨と夕立へと変える。

 

時雨「うん、さっきから黙って聞いていたんだけど、赤い戦士や赤色の戦士とか・・・・・」

 

夕立「提督さんや長門さんも、未確認生命体とか赤い男とか言ってるぽいけど・・・」

 

・・・ナガトは、二人が言いたい事が読めた。

 

ナガト「・・・あ~、名前?」

 

時雨「そう、何かもっと・・・こう・・・しっくりくる様な名前が無いのかな?」

 

夕立「ぽいぽ~い!良い名前が無かったら皆で付けてあげたいっぽ~い!」

 

雪風「!!!!、賛成!賛成!大賛成です!!雪風も考えます!!」

 

雪風と夕立は手を合わせてはしゃぎ出す。

 

摩耶「ったく、まだ味方かもわかんねぇ奴に名前かよ」

 

雪風「え~!良いじゃないですか~!むぅ~!」

 

夕立「むぅ~!」

 

村雨「良いんじゃない?なんか面白そう!」

 

浜風「本来は、提督と長門秘書艦が決めるんですが・・・考えるくらいなら・・・」

 

摩耶「・・・んで?どんなのにするんだ?」

 

白露「はい!はい!はーい!!」

 

先ほどまでちゃぶ台に突っ伏していた白露が、急に手をあげる。

 

雪風「はい!白露ちゃん!!」

 

白露「よし!!いっちばーん!!ふふふ、白露型一番艦のセンスを魅せてあげるよ!!」

 

夕立「お~、頑張れ~っぽい!」

 

時雨「では、どうぞ。白露姉さん」

 

白露「・・・謎のベールに包まれた!正体不明の真紅の男!!その名は!!!!」

 

カッコつけているのか、よく分からない動きをする。

 

一同「・・・ゴクリ」

 

白露「・・・レッドマーン!!!!」デデーン

 

摩耶「・・・そのまんまじゃねえか!」

 

白露「え~、じゃあ摩耶さん考えて下さいよ~(・ε・` )」ム~

 

摩耶「・・・そんなのアタシの柄じゃねえよ」

 

白露「え~、考えて下さいよ~(・ε・` )」

 

摩耶「うーるさい、・・・他は無いのか?」

 

村雨「じゃあ、はい♪」

 

村雨が手をあげる。

 

雪風「はい!村雨ちゃん!!」

 

村雨「んー、謎の赤色の戦士だから・・・ミステリー・ザ・レッドマン!」

 

摩耶「・・・お、それ良いな」

 

白露「イヤイヤイヤイヤ!?そのまんまじゃん!?てか、私の言った奴にミステリー付けてるだけじゃん!?」

 

摩耶「・・・・・」ジー

 

白露「え、何?私もしかして嫌われてる・・・?(´;ω;`)」クスン

 

摩耶「・・・冗談だよ。そんな悲しい顔すんな」

 

夕立「ぽいぽ~い!」

 

次は夕立が手を挙げた。

 

雪風「はい!夕立ちゃん!!」

 

夕立「ぽい!その赤い戦士さんは、すっごく強かったんだよね?じゃあスーパーレッドマンで!」

 

白露「だーかーらー!私のレッドマンに付け足してるだけじゃーん!だったらレッドマンでいいよね!?レッドマンで!?」

 

ちゃぶ台をバンバンと叩きながら抗議する白露。すると摩耶が呆れながら口をはさむ。

 

摩耶「ったく、お前らレッドマンしか出てこないのか?もうちょっと捻ってみろよ?」

 

夕立「む~!だったら摩耶さんも名前考えて下さいよ~(・`ε´・)」

 

村雨「そーよねー、柄じゃないって言わずに考えて下さいよ~(・ε・` )」

 

白露「そーだ!そーだ!きたないぞー!(`Δ´)」

 

摩耶「だから、何でアタシが・・・」

 

摩耶が反論しようとするが・・・、

 

白露 村雨 夕立「・・・・・」ジー

 

無言の圧力。反論出来そうにない摩耶は、

 

摩耶「・・・ったく、考えりゃいいんだろ?考えりゃあ?」

 

白露 村雨 夕立「・・・・・」ニコォ・・・

 

折れて考え始める。白露達は満足そうに頷いた。

 

摩耶「んー・・・・・」

 

赤い戦士の名を考える摩耶。その顔は真剣そのものだった。

 

白露「お~お~、摩耶さん、すっごく考えてますねぇ♪村雨さん♪」

 

村雨「は~い♪これは凄~く期待できますねぇ♪ねぇ夕立ちゃん♪」

 

夕立「ぽ~い♪ウフフ~♪」

 

煽る3人に摩耶は気にせず考え続ける。そして、

 

摩耶「・・・!・・・よしっ!出来たぞ!“セブン”・・・でどうだ?」

 

白露 村雨 夕立「・・・・・セブン??」(?д?)

ナガト(・・・・お?)

 

名前にポカンとした表情になる3人。他の者も頭の上に?が浮かぶ。

 

浜風「ま、摩耶さん?何で・・・」

 

摩耶「セブンって名前が出てきたってか?分かってるよ。実はな?」

 

受付の椅子で足を組み直しながら、摩耶は語り始める。

 

摩耶「今回の件のより前に、えらい騒ぎになった事件があったのは、知っているよな?」

 

白露「ん~?何か合ったっけ?」

 

時雨「・・・あぁ、七夕だね?」

 

摩耶「そうだ。7月7日、七夕の夜、深海棲艦から輸送船を救援する任務中、出現したって言う“巨人”な」

 

白露「あっ!思い出した!新聞とかにも出てたよね?」

 

摩耶「あぁ、それを世間は、海の神の目覚めだ、極秘開発中のロボットの暴走だ、はたまた宇宙人の襲来とか言ってるだが、アタシはあの巨人と赤い戦士は同じ奴じゃないかって思ってんだ」

 

白露「え~、まっさか~!その時出たのは、推定で50m届く程あったらしいのに、今回出たのは成人男性位だよぉ?大きさが全然違うじゃない!」

 

摩耶「まぁ、そうなんだけどよ?・・・・・・」

 

浜風「・・・そういえば、摩耶さんはあの時現場にいたんですよね?」

 

摩耶「まぁな、アタシが現場に着いたときには、奴はデカい光になって空に逃げていったけどな」

 

浜風「空に・・・」

 

そう浜風は呟くと腕を組んで考え始めた。確かに空に飛び去るという2体の行動は良く似ているからだ。だが、第一大きさが違い過ぎる。片方は180㎝程、もう片方はおよそ50m。同一人物なら奴は体の大きさを自由に変えられるという事だ。それに空を飛ぶという事自体馬鹿げている。それも艦載機が追えない程速い。

体の大きさを変えて、空を飛び、深海棲艦を素手で渡り合い、トドメには殺傷能力の高いトサカと光線を放ち圧倒する。

浜風は身震いした。

 

浜風「・・・・・これがいわゆる“チート”ですか・・・・」ボソッ

 

すると、突然雪風が「アッ!」と叫んだ。

 

雪風「あ、そっか!だから“セブン”なんですね!」

 

白露「・・・どゆこと?(゚ω。)?」

 

まだ意味が分かっていない白露。

時雨と村雨はポンッと白露の肩に手をのせる。

 

時雨「要は、七夕の日だからだよ?」

 

村雨「そういう事ですよぉ?7月7日だから“セブン”~。もう分かるよね?」

 

白露「う~・・・、分かってますぅ~!惚けて見ただけですぅ~!」

 

プク~ッと頬膨らまし抗議する白露。

その顔が面白いのか、時雨たちはケタケタ笑った。

 

摩耶「じゃあ、名前はセブンで決まりか?」

 

白露「ちょっと待った~!」

 

摩耶「・・・んなんだよ!白露!!皆しっくりきてたじゃねえか!」

 

白露「・・・まだだ!まだ終わらんよ!!」

 

時雨「・・・姉さんはそれが言いたいだけじゃないのかい」

白露「聞いて!お願いだから聞いて!

摩耶「・・・なんだよ?」

 

白露「じゃあじゃあ!みんなの意見を全部集めて“ミステリー・ザ・スーパーレッドセブン”で・・・」

 

摩耶 村雨 時雨 夕立 浜風 雪風「「「「「「長い!!!」」」」」」

 

白露「辛辣!!」

 

ナガト「ハハハ・・・」

 

村雨「そもそもミステリー・ザって付けるって結構イタいわよね~」

 

夕立「それにスーパーレッドマンって、なんかありきたりだからあんまり好きじゃないっぽい!!」

 

白露「自分で付けてたよね!?私のパクって付けてたよね!?」

 

村雨 夕立「・・・・・」┐('~`)┌

 

白露「おのれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

時雨「赤い人でレッドマンっていうのも結構イタくないかい?白露姉さん」

 

白露「ほんげぇ!?」

 

摩耶「・・・じゃあレッドマン路線はボツな?」

 

白露「む、無慈悲!!」

 

白露は胸を押さえながら、再び机の上に突っ伏した。

 

雪風「だけど、セブンだけだと、ちょっと物足りない感じがします!」

 

摩耶「お?ここに来てまた新しい案か?」

 

時雨「確かにセブンは良いけど、ただの数字だからね。何か足してみようか?」

 

するとある者が、ゆっくりと震える手を挙げ

 

白露「・・・じゃ・・・じゃあ・・・」

 

己が爪痕を残す為、最後の力を振り絞り、手を挙げる白露だったが、

 

摩耶「お前はもう休め」

 

白露「む、無念・・・」バタッ

 

摩耶に阻まれ、力尽きた白露。それを見た周りの者は苦笑するしかなかった。

 

ナガト「・・・なぁ、ちょっと良いか?」

 

摩耶「ん?なんだよ警備さんよ?良い案があるのか?」

 

ナガト「何か足すんだろ?だったら・・・“ウルトラセブン”ってのはどうだろう?」

 

摩耶「ウルトラセブン?」

 

ナガト「そう、空を飛び、砲弾を跳ね返し、素手で深海の奴らを圧倒し、おまけにビームも出せる。“ウルトラセブン”・・・どうかな?」

 

摩耶「ウルトラセブン・・・」

 

村雨「ウルトラの意味・・・超越(ちょうえつ)だそうよ?」

 

浜風「超越した存在・・・ウルトラセブン・・・確かに、あの赤い戦士にぴったりですね」

 

雪風「ウルトラセブン・・・ウルトラセブン!はい!すごく良いです!すごく格好いいと思います!」

 

摩耶「アタシも文句はねぇな。良い名前だと思う」

 

時雨「じゃあ決まりかな?」

 

夕立「ぽーい!!ウルトラセブン!ウルトラセブン!!」

 

皆の答えがまとまった。すると突然白露がガバッと立ちあがり叫んだ。

 

白露「はい!!!決まりました~!赤い戦士の名はウルトラセブンで~す!!!!」

 

摩耶「あ、良い所だけ持って行きやがった」

 

白露「ふっふっふ~!白露型一番艦白露!!倒れても只では起きませんよ~?」

 

時雨 村雨 夕立「「「調子に乗るな!(ぽい!)」」」ペシッ

 

白露「あいたっ!」

 

守衛室は笑いに包まれた。どうやら名前はウルトラセブンに決まりの様だ。

異なる時空、異なる宇宙、異なる地球、それでもまた“ウルトラセブン”と呼ばれるとは、これもまた運命なのだろうか。

己が知らない世界に降り立った深紅の戦士“ウルトラセブン”、何故ここに降り立ったのか、これから何が待ち受けているのか、“ウルトラセブン”ことナガト・リョウはまだ知らない。

物語は、まだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――???―――

 

 

???「ツ級が殺られたらしい」

 

頭に2本の角を生やした者が言った。

 

???「・・・へぇー、別にいいじゃん、腕っぷしが強いだけの脳筋野郎でしょ~?いらないいらない(笑)」

 

???「私も同意見だ。奴は勝手に出撃して勝手に死んだだけ。嘆く価値も無い」

 

フードを被った者がキシシっと笑い、黒髪の長い者は興味が無いと言い捨てた。

 

???「うわぁ辛辣だね~(笑)」

 

???「貴方も大差無いと思うが?」

 

???「そうだそうだ~」

 

???「変わんねえぞ~」

 

フードと黒長髪が言い合うと黒長髪の背後から双子が出てきた。

 

???「ああん?」

 

??? ???「「ひいぃ」」ササッ

 

だがフードが威圧すると双子は黒長髪の背後に隠れた。

 

???「だが、ツ級はあれでも、かなり手練だ、簡単に死ぬ事があるのか?」

 

また違う長髪が意見を述べる。白髪だった。

 

???「・・・実は、この件は少々厄介なことが起きたらしい」

 

???「厄介な事?」

 

???「そうだ。生き残りの駆逐艦2隻の話だと、実はツ級はかなりの所まで艦娘共を追い詰めたらしい。だが、そこへ邪魔が入り、その邪魔者に殺られたそうだ」

 

???「邪魔者に・・・、背後からの奇襲か?なら、戦艦か空母かはたまた潜水艦か・・・」

 

???「いや、どれでもない」

 

???「・・・何?では、どんな艦娘が来たのだ?」

???「艦娘でもない」

 

???「?どういう事だ!?」

 

???「深紅の戦士だと言っていた」

 

???「深紅の・・・戦士だと?」

 

???「その者がツ級を亡き者にした。駆逐艦たちはそう言っていた」

 

???「・・・ふ・・・ふふふ・・・・ふはははははは!!!」

 

???「?」

 

???「面白い!!実に面白いぞ!!!ははははははは!!!」

 

???「・・・・・」

 

???「で、その深紅の戦士が現れたと言う座標は何処だ?」

 

???「・・・知ってどうする?」

 

???「無論!!手合わせしに行く!!ツ級を倒したと言うその力量を計りに行くのだ!」

 

???「そ~れ~は~ちょっと待ってくれない?」

 

???「!!」

 

白長髪の横からフードがスッと顔を出す。

 

???「なんだ?お主も深紅の戦士と一戦交えたいのか?」

 

???「そう言う事♪だからさ・・・邪魔しないでよ?」

 

???「そればかりは、応じれんな・・・!」

 

血気盛んな白長髪とフードの間で殺気がぶつかり合う。それを見ていた2本角は、ため息をはく。そして黒長髪に視線を送る。

 

???「お前は興味ないのか?」

 

???「私は興味がないと言えば、嘘になる。だが深紅とやらが現れた場所に行っても再び現れるとは思えないが・・・」

 

黒長髪は至って冷静。

 

???「そうだな、私もそう思う」

 

???「じゃあどうする?」

 

???「どうするどうする~?」

 

???「どうすんのさ~?」

 

いつの間にか、黒長髪の背後に双子がいる。2本角は手に顎を乗せ考えた。答えは直ぐに出た。

 

???「・・・今は情報が少ない。現れた座標から周りを潰していくしかないな・・・・・海図を」

 

???「・・・どうぞ」

 

2本角が海図を要求すると、何処からか、別の人影が海図を持って来るとそれを広げた。大きな帽子をかぶった者だ。黒長髪と双子が海図を覗く。白長髪とフードも殺気を解いて海図を見やる。

 

???「・・・現れた座標をここ、ここより周囲を探索し、新たに情報を手に入れる。今の段階は情報収集に重きをおけ。沈めるのはその後だ」

 

???「・・・了解した。だが・・・」

 

???「どうした?」

 

???「周囲を探索するに邪魔な建物がある」

 

すると、黒長髪がとある場所に指を指す。

 

???「・・・ここか・・・」

 

???「そうだ、探索の最中に奴らが邪魔して来ないとは限らん・・・・・故に、いち早く潰しておこう」

 

???「・・・出来るのか?」

 

???「・・・ふっ・・・私に考えがある」

 

???「名案?名案?」

 

???「はたまた迷案かな~?」

 

双子が背後で茶化すが、黒長髪本人は気にも止めていない。

 

???「・・・貴様達も来るんだぞ?」

 

???「え~やだ~」

 

???「職権乱用だ~」

 

双子のブーイングにやはり気にも止めていない黒長髪。

 

???「では、準備する故、これにて・・・」

 

黒長髪は踵を返しその場から消えた。双子も付いて行ったのだろう、いつの間にか消えていた。

そして、少しばかりの静寂・・・、口を開いたのは白長髪だった。

 

???「邪魔な建物とは、やはり・・・」

 

???「・・・鎮守府だ」

 

???「大丈夫か?あそこは少々の事をやっても堕ちんと思うが?」

 

???「・・・何か知っているのか?」

 

???「な~に、昔に少し・・・な・・・」

 

懐かしさでもあったのか、白長髪は、ふっと鼻で笑うとその場から消える。

 

???「え~!?帰っちゃったよ!あの白頭!ん~じゃあもういいや!じゃね~♪」

 

相手がいなくなったフードは、2本角に手を振りながら消えてしまった。思えば海図を持って来た、大きな帽子をかぶった者も、いつの間にか消え、その場にいるのは2本角のみ。

 

???「・・・・・」

 

2本角は、海図に再び視線を落とした。

元々この海図は、この者達の物ではない。人間の船を沈めた際、手に入った海図なのだ。

その海図に自身で手を加え、今の形になったのだ。そんな海図を愛でる様に指でなぞる。

すると、ある場所で指が止まる。

 

???「・・・・・」

 

そこは黒長髪が邪魔だと言っていた場所、

そこは白長髪が昔の出来事に関係する場所、

そこは深紅の戦士が現れた座標に最も近い場所、

その場所について海図には文字が書かれていた。少しばかり古い海図は、所々にじんで読めない場所あるが、その場所だけは、存在を訴える様に、綺麗な文字のままだった。

2本角は、その綺麗な文字をなぞる。最初は何が書いているか解らなかったが、長年に渡り少しずつ解読してやっと理解する事が出来た。

 

その場所は、こう書かれていた。

 

???「・・・・・アマギ・・・・・鎮守府・・・・・」

 

 

                       続く?

 




この度は長い間失踪していましたこと、誠に申し訳ありませんでしたm(__)m

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