艦娘がHLに遊びに来ましたっ!   作:林屋まつり

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十話

 

「おはようございます。皆さま」

 みんなで決めた起床時間。集まってみたら声の大きい執事。もといフィリップがいました。

「がるるー」

 で、ビスマルクの影に隠れて警戒音を発するユー。フィリップはちょっと寂しそうです。……まあ、いいのです。

「…………クラウス様から、キッチンの場所を案内するように指示をたまわっております。

 こちらです」

「声はちゃんと抑えられるのだな」

 感心したように頷くグラーフ。「一応、時間はわきまえます」

「ほら、ユー。

 あんまり警戒しちゃだめだよ」

「き。気を付けます」

 フィリップの言葉にユーは頷き、警戒音が止まりました。

 ほどなく、キッチンに到着。……さすが、広いですね。

 その広いキッチンの中央にあるテーブルには、

「依頼されたものはすべてそろえました。

 私は隣室に待機していますので、何かあったら遠慮なく声をかけてください」

「そう? 悪いわね」

 マックスの問いにフィリップは首を横に振り、

「私は、ラインヘルツ家に仕える執事です。

 皆さまはクラウス様のお客様なら、その助けをするのは当然の職務です」

「「おおー」」

 思わず、拍手をするレーベとマックス。「さすがは、執事」と、慄くグラーフ。

「そうですね。声が大きいだけの事はあります」

「それは、……関係ないような」

 困ったように呟くプリンツには「まあいいではありませんか」と適当に返事。

 まずは一通り見て回っていたビスマルクは、一つ頷きました。そう、あとは旗艦の言葉を待つばかり。

 注目を受け、我らが旗艦は重々しく頷いて、

「さて、これから朝食を作るわっ!

 レオやウィルもいるのだし、気合入れてる作るわよっ!」

「「「「「「おーっ!」」」」」」

 拳を振り上げる旗艦。なんとなく同じことをやってみました。……なんなんでしょうね、このテンション。

「…………ところで、麦酒は?」

「朝っぱらから何飲もうとしているのよ。貴女は?」

 手を上げてみたらビスマルクに冷たい目で見られました。休みの日はたまにやるんですけどね。朝食に麦酒。

 

 パンにハム、ソーセージ、サラダにゆで卵、ジャム、バター、チーズ、メープルシロップを添えたパンケーキとフレンチトースト、オムレツ。飲み物はコーヒーとミルク。

 ちょっと多い気もしますけど。人も多いですしね。問題ないでしょう。

「ううん、……朝食だとあんまりお料理って感じしないよね」

 ずらり、並んだ料理を見てレーベが苦笑。マックスは頷いて「調理しないから、あんまり」

「そうなのよね。……けど、まあ、仕方ないわ」

 ビスマルクも苦笑。仕方ないのです。そういうところですから。

「では、配膳しましょう。カートとかは、……フィリップに聞けばいいですね」

「そうだな。では、取って来よう」

 グラーフも頷き、二人で隣室へ。戸を叩くと「はい」とフィリップ。

「調理終了したので配膳します。

 カートはどこにありますか?」

「それなら私がやります。

 皆さまはご休憩ください」

 その言葉に、……ふと、閃く事。時計を見る。まだ、早い時間ですね。

「いや、その「わかりました。お願いします」むぐっ?」

 グラーフの頭を押さえるように下げさせ、私は告げてキッチンへ。

「フィリップ?」

 カートではなく執事を伴ってきた私たちにレーベは首を傾げました。まあ、そうですよね。

「配膳は彼がしてくれるそうです」

「いいの?」

 プリンツが首を傾げました。フィリップは「お任せください」と拳を握っています。

「なにか、他にやる事があるのか? シャルン」

 不審の視線を向けるグラーフ。私は頷いて親指を立てました。そう、朝にやるべき事といえば、ただ一つ。

「寝顔拝見」

 

「ふぁー」「わー」

 …………よだれ、ちょっと出てますよ?

 

 ウィルの寝顔を見て動かなくなるビスマルクとプリンツ、ほう、と感嘆の吐息をつくグラーフ。……まあ、そっちはいいのです。で、

「ふーん、レオってこんな顔で寝てるんだ」

「えへへ、ちょっとかわいい、かも」

 こちらも眠るレオの周囲に集まる女の子。マックスが手をうずうずさせています。

「マックス、どうしたのですか?」

「…………頬っぺた、つついてみたい」

「あ、僕も、……さ、触ったら怒られる、かな」

「どうでしょうね。……寝ているところを起こされたら、不機嫌になるかもしれません」

「あう、……そ、そうだよね」

「気を付けるから、し、慎重にやれば、起こさない。かも」

 で、もそもそと、

「ん、ぬくぬく、です」

 情け容赦なくレオのベッドに潜り込んだユー。その思い切りの良さに慄くマックスとレーベ。

「ゆ、ユーっ、だ、だめっ!

 お、男の子と一緒に寝ちゃだめだよっ!」

 小声で怒鳴るという不思議なことをするレーベ。で、

「私も」

「マックスっ!」

 もぞもぞとベッドに潜り込むマックス。

「…………うー、……ぼ、僕もっ!」

「入れるんですか?」

 もぞもぞとベッドに潜り込むレーベ。

「狭い、レーベ、出てって」

「うーっ、ゆー、落ちそう、です」

「ユー、ちょ、ちょっともうちょっとレオ君から離れて、僕もぎゅってしたいっ」

「やーっ!」

 ベッドの中でごそごそしているレーベとマックスとユー、……で、そっちを見て愕然とした表情のグラーフ、なぜか地団駄を踏むビスマルクとプリンツ。

 で、

「ちょっとお兄ちゃんっ! いつまで寝てるのっ! さっさと起きてよっ!」

「……義兄、……さ…………ん?」

「あ、み?」

 なんとなく楽しそうに突撃するミシェーラと、苦笑して入ってきてそのまま固まるトビー、目を開けるレオ。で、

「って、な、なんでいるんだぁぁぁっ!」

「へえっ? な、なに、なにっ? お兄ちゃんっ? どうしたのっ?」

 跳ね上がる絶叫。まあ、仕方ありませんね。

「おはようございます。レオ」

「あ、はい。おはようございます」

「それで、寝心地はいかがですか?」

「い、……いかが、って?」

「女の子と同じベッドでの寝心地は、と聞いているのですよ?」

 頬に手を当てて、楚々と、おっとりと聞いてみました。客観的に現状を告げられ、顔を真っ赤にするレオ。で、

「お、に、い、ちゃ、ん?」

 ひゅんひゅん、と引っ叩くための素振りを始めるミシェーラ。

「トビー」「御意」

「御意じゃねぇえっ! トビーさんっ! 僕そんな事してないっすよっ!

 一緒に遊んでたからわかるでしょっ!」

「なにして遊んでいたのだ?」

 にゅっ、とグラーフが顔を出しました。レオは頷いて、

「ターンごとに酒飲みながらウノ」

「何やってるんですか貴方たちは?」

「ああ、最終的にルール無視してテンションだけでカード叩きつけてたよ。義兄さん。

 まあ、それはそれで面白いからそのまま流してたけど」

「ええっ? 僕、ちゃんとやってたつもりだったのに」

 うなだれるレオ。そして、

「レオ、……おまえは、なんで、そんな事をしていたんだ?」

 重い声。グラーフはレオをベッドから引きずり出して、

「レオ、他に、やる事があるだろう」

「え?」

 解ってなさそうな男の子ですね。まったく、

「そうですよね。せっかく女の子が待ち望んだ再会です。

 男同士で意味不明な遊びに興じるよりも、他にやる事があるでしょう」

 重々しく頷くと、レオは溜息。

「そう、だったよね」

「ああ、そうだ。せっかく頑張って選んだ下着を履いてたのに、なんで夜這いに来なかったっ!」

「やるかあぁぁあっ!」

「くっ、……恥ずかしいのを、我慢して買ったのに」

 素振りからシャドーボクシングに変わるミシェーラ。

「まあ、というわけだ。義兄さん」

 羽交い絞めにして婚約者に義兄を引き渡すトビー。

「ちょ、トビーさんっ?」

「ミシェーラも、本気じゃないよ」

「うそだろっ! 狙ってるしっ! 絶対みぞおちストレート狙ってるしっ!」

「……………………」

「なんかいえよっ!」

 淡々とレオをミシェーラの射程距離に引き渡すトビー。けど、

「ま、待ってみしぇーら」

 ぎゅっと、ユーがそんなミシェーラを押しとどめました。

「ユーちゃん」

「あ、あの、れおがお休みしているところに入ったの、ゆーたち、です。

 れお、暖かそうで、みしぇーらに、ぎゅってしてもらった時みたいに、ぬくぬくしてそうで、だから、……あ、あの、」

 急いで言葉を紡ぐユー。レオは無罪が証明されて感涙です。ミシェーラも困ったような表情で拳を引っ込めました。安心です。

 ユーは、顔を真っ赤にして、もじもじと口を開きました。

「それに、れおと寝たの、二度目、だから、大丈夫、です」

「ふんっ」「ごぶはっ?」

 

「…………ん、ん、」

 あ、ウィルが目を覚ましたようです。

「あっ、おはよっ、兄さまっ」「おはよう。ウィル」

「ん、……」ウィルは、少し寝ぼけた様な表情、けど、にっこりと笑顔で「おはよう、プリンツ、ビスマルク」

「……はぅ、に、兄さま、可愛すぎますー」

「ウィルーっ」

「わっ!」

 堪え切れない、といった感じでウィルに抱き着くプリンツとビスマルク。

「おはようございます。ウィル」

「あ、うん、おはよ。シャルン」

「ずいぶんと可愛らしい寝起きでしたね」

「え? そうかな?」

 まあ、わかるわけもありませんね。

「二人とも、」ウィルに仲良くしがみつくビスマルクとプリンツを示して「それが理由でしょう」

「そう、……そんなものなんだ」

 よくわからなさそうにウィル。まあ、いいでしょう。

「ともかくおきましょう。もう朝食は出来ていますよ。

 はい、眼鏡」

「あ、ありがと。シャルン」

 ウィルは眼鏡を装備して、ふと、首を傾げました。

「ところで、何やってるの? レオナルド」

「き、聞かないでください」

 心身ともにぐったりしているレオナルドは、床に突っ伏したまま呟きました。

 

「あら、おはようみんな。

 ずいぶんと仲良くなれたみたいですわね。何よりですわ」 

 嬉しそうに微笑む提督。もっとも、……彼女は苦笑。

「弱冠一名、何やら疲れているようですけど、大丈夫ですの? まだ、朝ですわよ?」

「だ、大丈夫っす」

 あれから、一度目もユーが潜り込んでいて、特に何もなかったことを話して何とか誤解が解けました。レオも安心です。

 もっとも、誤解が解けるまでの間、レーベとマックスとミシェーラから物理込みの追求と、グラーフから「なんで私のところに来なかったんだ」と、何か危なさそうな追及を受けて心身ともに疲弊しましたが。

 ともかく、これでみんな揃いましたね。では、

 みんなが席に座る。ややぐったりしたレオナルドはレーベとマックスに支えられて、ミシェラーの隣にはトビー。私は提督の隣に腰を下ろして、……では、

「いただきます」

 そんな声が重なった。

 

「今日は、みんなでHLを見て回るのだね?」

 朝食をとりながら、クラウスの言葉に私たちは頷きました。楽しみです。

「ええ、その予定よ」

 パンを食べながらビスマルク。クラウスは「そうか」と頷いて、

「不本意かもしれないが、あまりみんなで一緒に行動をしない方がいい。

 悪目立ちしてしまうからね」

「そうですね。…………それで、酒飲みながらウノしてたお二人。

 何か妙案は?」

「まあ、とりあえずそれぞれで見て回ろうか。

 ええと、ビスマルクさんたちも、ミシェーラたちもHLに慣れてないだろうし、慣れている人と一緒に、ってなるけど」

「……それだけど、俺とクラウスはギルベルトさんと話があるんだ。残念だけど、同道出来ない」

「そうですか?」

「代わりに、KK達を呼んだから、そっちに任せるよ」

「すまない」

 丁寧に頭を下げるクラウス。ビスマルクは少し驚いた表情。

「いいのよ。どっちかといえば驚いたわ。

 そこまで気を使ってくれなくてもいいのに」

「なに、少年の友達だしね。俺たちにとっても身内みたいなものだよ。

 もちろん、ミシェーラたちもね」

 にっ、と笑ってスティーブン。もちろん、他意のある言葉なのは解っていますが、そういってもらえるのは嬉しいですね。

「そうそう、私も同道出来ませんわ。

 その話に私も参加したい、ので」

 おや?

「では、私も一緒にいた方がいいですか?」

 一応、秘書艦ですからね。HLを見て回れないのは残念ですが、職務をないがしろにはできません。

 問いに、提督は首を横に振りました。

「貴女たちはHLを見て回りなさいな。

 それが後に必要なことですのよ?」

「了解しました」

 では、

「問題は、誰が誰と行くかですね?

 ビスマルク、私と二人きりでデートしますか?」

「冗談じゃないわ」

 そうでしょうね。期待していませんよ。

「案内には何人派遣してくださいますの?」

「ザップとツェッド、KKとチェインには声をかけたよ。

 みんな、ミシェーラとも顔見知りだから都合いいしね」

 ライブラのメンバー、ですか。……ただ、驚きではありますね。

 ヒマ、とは思えないのですが。まあ、必要なのでしょう。

「あっ、また皆さんと会えるんですねっ」

「ああ、特にKKなんかは楽しみにしてたよ」

「はい、スティーブンさん」

 不意に手を上げるレオ。彼は真面目に頭を下げて、

「ザップさんはせめて、せめてツェッドさんと一緒にしてください」

「解ってるよ少年。……まあ、ええと、ミシェーラ。

 悪いけど、トビーと、あと、ザップとツェッドと見て回ってくれないか?」

「はい、わかりました」「わかったよ」

「いいのかね? レオナルド君と、ではなくて」

 素直に頷いたことが意外なのか、クラウスが困ったように問いかけ、ミシェーラは微笑。

「今夜、お話しするみたいだから。

 それに、……せっかくなら、好きな人と、ね?」

「……う」「み、ミシェーラ」

 顔を赤くするレーベとマックス。で、したり顔のミシェーラ。

「はいっ、じゃあ、プリンツは兄さまと一緒ですっ!」

「私も当然、ウィルと一緒よっ! 絶対に譲れないわっ!」

「朝食の席でいきなり立ちあがらないでください」

 ばばっ! と、そんな感じの二人にジト目。二人は座り直しました。

 さて、どうなる事やら。……まあ、誰と行くにせよ。楽しそうなのは変わりませんけどね。

 

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