艦娘がHLに遊びに来ましたっ!   作:林屋まつり

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十一話

 

 朝食を終えて、あれやこれや相談していると足音が聞こえてきました。

 扉が開いて、まずは、

「ミシェーラっ、久しぶりねっ、トビっちも元気そうで何よりよっ」

 眼帯をした金髪の女性。彼女は早速ミシェーラの手を取りました。

「久しぶりですっ! KKさんっ」「お久しぶりです」

 握手を交わし、KK、と呼ばれた彼女はこちらに視線を向けて、

「それで、貴女たちね? お客様は。

 クラっちから聞いてるわ」

「ええ、よろしく」

 ビスマルクと握手を交わして、…………ふと、

「あら? あらっ?」

 すい、と。移動。で、

「え?」

 彼女はユーの前に、腰を落として視線を合わせて、

「貴女、お名前は?」

「え? あ、ゆー、っていいます。

 あの、よろしくお願い、します」

 ぺこり、頭を下げるユー。で、

「ひゅあっ?」

 ぎゅっと、抱きしめられました。

「可愛いわーっ、ぷりちぃーわーっ!」

「ちょっ、KKさんっ?」

「ちょっとレオっちっ、こんなぷりちぃーな娘がいるならもっと早く言いなさいよっ! 水臭いじゃないっ!

 それで、ユーちゃん。今日、時間とれる? うちのお兄ちゃんと、ちょっとお見合いしてみましょうっ!」

「展開早っ! KKさんどんだけ必死なんすかっ!」

「お兄ちゃん優しくて真面目ですっごくいい子なんだけど、のんびりしてるからそのあたりお母さんが助けてあげなくちゃいけないのよっ!

 それに、可愛い子は早く紹介しないと、何かあったら遅いじゃないっ!」

 …………いや、落ち着いてください。息荒いですよ?

 けど、

「やー、ゆー、れおのお嫁さん、がいい、です」

 手遅れでした。

「…………………………」

 KKはユーを丁寧に降ろして、ゆらりと、崩れ落ちました。

「ば、……ばかな。

 もう手遅れだったなんて、……それも、うちのお兄ちゃん以上にあれなレオっちに、……」

「なんか、すげー失礼な事言われてる気がするっす」

「けど、KKには同感。すっごく意外。

 レオ、妹以外の女性と縁がないって思ってたのに、こんな小さい女の子を手籠めにしたんだ。…………あ、けど、きっかけがあれば案外ありかも」

 不意に、声。

「チェインさん?」

「やっ」

 とんっ、……と、どこからともなく現れたとんでもない美人。

「ミシェーラ、トビー、久しぶり。会えて嬉しいよ。

 他のお客さんもね。私はチェイン・皇。……ええと、レオの先輩。よろしく」

「おー」「へー」

「う、ん?」

 で、そんな彼女を羨望の眼差しで見ているレーベとマックス。

「え? な、なに?」

 思わぬ熱視線に後退するチェイン。……「解りましたっ」

「なにが?」

「ズバリっ、レーベとマックスはチェインさんのおっぱいが羨ましいんですっ!

 私もその気持ちわかりますっ!」

 びしっ、とプリンツが示した先、……羨ましいほど大きなおっぱい。

「ああ、これ?」

「…………確かに、あれは脅威だな」

「…………ぐ、ぐぐぐぐ」

 で、慄くグラーフとビスマルク。

「大きい、羨ましい」

「いいなあ、……僕も、せめて、あの、半分くらいあれば」

「抉れてますからね」

「抉れてないよっ!」「そんなわけない」

「マイナス?」

「「違うっ」」

 首を傾げるウィルに息の合った声を上げる二人。

「ふ、…………ふふ、そう、そうよね。

 いいわよね。胸が大きいって、いいわよねえ」

「ああ、KKさん。む「レオっち?」すんません」

「……す、すごい。

 銃を抜く瞬間が、見えなかったです」

 視線を外したつもりはなかったのですが。本当に気が付けば、レオは銃を突きつけられていました。凄いです。

 ともかく、両手を上げるレオ。

 で、「そうか」と、トビーは重々しく頷いて、

「ユーが義兄さんのお嫁さんか。

 そうなると、僕の義姉さんになる。よろしくね」

「え? ゆー、とびーのおねえさん?」

「「えっ?」」

 驚いたような声を上げるウォッチ兄妹。トビーはミシェーラの肩に手を置いて、「ミシェーラもね。ユーの義妹だよ」

「う、うん、確かにお兄ちゃんのお嫁さんなら私の義姉さんになるけど。

 あ、あれ? なんか。ユーちゃん、小っちゃかったような?」

 虚空を撫でて首を傾げるミシェーラ。トビーは頷きました。

「ミシェーラ、確かにユー、……義姉さんはまだ十代になったばかりの女の子だよ。

 けど、ここは超常の都市HL、その年齢で結婚してもいいんじゃないかな?」

「あっ、そうよねっ!

 ここは常識じゃ図れない場所よね。……え?」

「…………いや、それは関係ないと思うんだけど」

 納得しつつもこれでいいのか、と首を傾げるミシェーラに、ウィルは困ったように応じました。

 けど、

「ゆー、みしぇーらととびーのお義姉さん」

 むふー、と胸を張るユー。とりあえずその響きが嬉しいらしいです。

 ミシェーラはキョトンとして、穏かに微笑み。

「そうだね。……私、いろいろこんなんだから、ユーちゃんにはたくさん甘えちゃうね」

「う。うん、……えへへ、ゆー、がんばり、ます」

 甘えられるのが嬉しいらしい。笑うユー。で、トビーは真面目な表情で頭を下げて「ミシェーラともども、よろしくね。義姉さん」

「そっかあ、……ユー、結婚式には呼んでね」

 ウィルも頷き、ビスマルクは眼にハンカチを当てています。

「ユー、嫁いでいっても、姉と呼んでくれた私の事を忘れないでね。

 私は、いつでもあなたのお姉ちゃんよ」

「おめでとうっ! ユーちゃんっ!

 私も、ユーちゃん見習って頑張るわっ!」

「ああ、おめでとうユー。祝福させてもらう。

 私の分も、幸せになってくれ」

 いいんですかね、とは思うけど、いいんでしょうね。ここは超常の都市、HL。外見的に十代になったばっかりの女の子が結婚しても問題ありません。たぶん。

 きょとん、と動きを止めるレオ。で、

「グッドラック」

 びしっ、と親指を立てるチェイン。

「って、ちょっとまてぇぇぇええっ!」

 がちゃ。と、扉が開く音。

「ま、待ってよっ! レオ君のお嫁さんは僕だよっ!」

「ユー、だめ。私がレオのお嫁さんになるの」

 レーベとマックスはレオの右手と左手を抱え込み、徹底抗戦の構え。といったところで、

「…………あれ? 俺、来るところ間違えたか?」

「住所はここですよ。何言ってるんですか貴方は? ……ただ、目の前にいる彼は誰なんでしょうか?」

「そうだな。……初見の客ってみんな女だろ? お、トビーだ」

「そうですね。あと、ウィルと、…………?」

「って、なんでツェッドさんまで僕を知らない人扱いなんっすかっ?」

「……ま、まさか、……レ、レオ、君?」

「本気かっ?」

 ライブラのメンバーですか。ツェッドと、なら、もう一人はザップですね。聞いていたとおりです。

「変ですね。僕の知るレオ君が、両手に花?」

「あ、……い、いや、これには事情がありまして。

 って、ザップさんっ! なに燃え尽きてるんっすかっ? なにがあったんすかっ?」

「ちょ、ザップっちが、ザップっちの意識がとんだわっ!

 今、電気ショックをするからっ」

「というわけで、ザップとツェッドが合流し、メンバーが揃いました。

 HLの観光、好調な出だしでよかったです」

「どこがだっぁぁあああああああああっ!」

 

「マジか、…………おまえ、ほんとにレオだったのか」

「なんだと思ってたんだあんた?」

 敗残兵のような表情で立ち上がるザップ。

「いや、僕も驚きました。……特にレオ君自身に問題があるわけではないのですが、どうも女性と付き合っているイメージがまったくないので」

「そうだよなあ。

 まっ。いいじゃねぇか、こんなガキにも春が来たって事でよっ」

「ちょ」

 楽しそうにレオと肩を組むザップ。彼はにやにやと笑って、

「何かあったら俺に相談しろよ?

 大先輩だぜ? そこの魚類よりよほど頼りになるぜ?」

「あっはっはっ、あんたに相談しても有害にしかならないでしょ」

「んだと? この陰毛」

「だから、それマジでやめろ」

 なんか、……友達っぽいですねえ。……………ただ、さすがにその呼び名はどうかと思いますよ?

 ミシェーラとレーベ、マックス、プリンツは気まずそうな表情。グラーフとビスマルクは、……まあ、軽く眉根を寄せただけです。

 もっとも、彼自身、場が悪かった自覚はあるみたいで、やっちゃったっという感じの表情。けど、それだけでは終わりませんでした。

 つい、とザップは手を引かれました。そちらに視線を向けました。そこにはおっとりと首を傾げる、十代になったばかりの少女。まあ、ユーです。

「あの、……いんもー、ってなん、ですか?」

 

 そして、時が止まりました。

 

「え? あ、……あの、いん、むぐっ」

 おろおろとした表情のユーは、とりあえず黙らせておきます。

 で、……ええと、チェインの手がザップの首に入っているのですが?

 チェインは口の端を引きつらせて、かなり、引きつった笑顔。

「おさーるさん。

 なんて答えるの? もし、内容によっては、」

「ま、……マジ殺しっすか?」

「その音を出す喉を、ゴルフボールで栓してあげる」

「こわっ!」

「ああっ?」

 とりあえず、ウィルに倣って皆が十字を切りました。

 沈黙。冷や汗を流すザップと、笑顔のチェイン。そして、重たい沈黙。

「レオ様ぁぁあっ! レオナルド様あぁぁああっ!」

「やっぱりこっちきたっ!」

「た、助けてくれぇえええっ! こいつ本気だよっ!」

「幼女に変なこと言わせるからそうなるんっすよ。

 ああ、……ええと、」

 がしがしと頭を掻いて、…………ふと、にや、と笑いました。ザップは嫌な予感がしたらしいです。けど、

「いいかい、ユー」

 レオは腰を落として、ユーと視線を合わせて、

「それはね。とてもとても口汚い言葉なんだ。

 だから、ユーは覚えちゃだめだよ」

「え? ……れお、いじめられてる、のですか?」

「違うよ。ただ、つい出ちゃったんだ。

 だから、優しいザップ先輩はお詫びにご飯を奢ってくれるって」

「んなっ?」

「ねえ、優しい先輩っ」

「……ぎ、…………ぎぎ」

「もちろん、ユーも、皆も一緒にね。

 ね、先輩っ」

「…………ぎ、ぐぎぎぎ」

「いいところあるじゃない、優しい先輩。

 それじゃあ、先輩は優しいから私にも奢ってくれるよね?」

「はぁあっ?」

「それじゃあ、おごってもらおうか、ザップっち優しいから大丈夫ねっ!」

「って、おいっ?」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、みんな、昼飯は、アーティさんのところって事でヨロシクっ!

 あ、ウィル、場所知ってるよね?」

「ああ、大丈夫。……けど、あそこ結構値張らない?」

「あははっ、ウィルは優しいね。

 大丈夫、どうせこいつの給料なんてギャンブルでどっか流れるんだから、たまには可愛い後輩たちのためにご飯奢った方が生産的だよ」

「可愛くねえよっ! このい、……糸目もっ、魚類もっ!」

 また言いかけましたか。

「じゃあ、ザップさん。その意味教えますか?

 もし教えたら、僕、生きてる限りあなたを軽蔑する自信ありますよ?」

「っていうか、殺す」

「師匠に、兄弟子は幼女に卑猥な言葉を教えたから死にましたと伝えておきます」

「…………何でも好きなものを食べてください」

 涙を流して土下座をしました。……なるほど、

「レオの潔さは先輩譲りなんですね」

「あんな潔さマジでいらねぇっす」

 

 さて、それじゃあ行きましょうか。

 適当な組み分け、私はミシェーラ、トビー、ザップとツェッドと一緒となりました。

 玄関を出て、さて、行こうか、と思ったところで、動物の鳴き声。

「おわ、……っと。

 ソニックっ?」

 いつの間にか、レオの顔にくっつっているのは。……サル? でしょうか? 小さな白いサルです。

「ソニック? そういえば、見なかったね」

 ひょい、と覗き込むウィル。ソニック、という名前でしたか。

「ああ、ソニックは警戒心強いから。

 知らない人が集まってて警戒してたんじゃないかな?」

 こくこくと頷くソニック。けど、

「では、出てきたという事は警戒が解けたという事ですね」

 それは何というか、嬉しいといいますか。まあ、よかったです。…………小人?

「ってか、リール。なんでそんなところにいるんだよ?」

 ソニックの背中にいる小人に問いかけるザップ。

「あ、リールさんも、こんちわっす」

「うん、こんにちわ、レオ君。

 ソニックと遊んでたらこのまま連れてこられたよ」

 リールと呼ばれた小人はレオの肩へ。

「友達?」

 ひょい、とウィルはレオの肩に乗るリールに問いかけました。知らない、のですね。

「うん、…………あ、そういえばウィルは知らないか」

「そうだ。聞いとけよウィル。

 こいつ一時山脈みたいなデカさになってHLを騒がせたやつなんだぜ? いやあ、あの時はマジで大変だったわ」

 ウィルの右肩を組んでザップが真面目に言い。

「そうそう、もうちょっとでHLの危機だったわ。危なかったよね」

 ウィルの左肩を組んでチェインが頷き、

「…………そうっすね。修羅場と女子会、大変だったみたいっすね」

 レオがとても中途半端な微笑。

「いやあ、あの時は本当にお騒がせしました」

 ぺこり、頭を下げるリールにツェッドとKKは軽く手を振って応じました。

 で、

「…………あ、あの、レオ君っ、レオ君っ」

「ん?」

 つい、とレオの手を引くプリンツ。

「そ、ソニック。触っていい?」

「ああ、いいけど。

 ソニック?」

 ソニックは軽く首を傾げて、一つ頷き。伸ばしたプリンツの手の上に、そして、

「は、はわわ」

 感極まった表情で軽く抱きしめるプリンツ。

「か、……可愛い、です。

 可愛い、……いいなあ」

「ソニック、音速猿だね。

 レオナルドのペット?」

 プリンツにぎゅっと抱きしめられるソニック。そして、そんなソニックを撫でながらウィル。

「ペット、…………いや、僕が飼ってるわけじゃないけど」

「そういえば、よく一緒にいますよね?

 どこかで拾ったんですか?」

 ツェッドの問いに、ザップは溜息。

「堕落王に目ぇつけられたんだよ。この猿。

 で、何やかんやあってそこの糸目が助けてやったら懐かれた。ってところか」

「堕落王?」

 …………不吉な名前、ですね。

 当然、ウィルに重なり、彼の中で眠る悪魔。……絶望王。その名と重なります。

 そのウィルが困ったように口を開きました。

「13王、っていう、……超常人、このHLでも屈指の厄介者たちの一人だよ。

 そいつの目をつけられて、よく生き延びられたね」

 ぽんぽん、とソニックの頭を撫でる。そんな、大変な事ですか。

「懐かしいな。レオがうちのところに入ったのは、それがきっかけだっけ」

「そうっすね。ま、ソニックはその時に知り合ったんだ。

 ペット、っていうか、友達かな」

「へー」

「ね、ねえ。プリンツ。

 そ、そろそろ、私にも抱っこさせて」

 そわそわしているビスマルク。……ふむ。

「プリンツ、ちょっといいですか?」

「あ」「ちょっとシャルンっ、私が先約よっ!」

 ひょい、とソニックを抱き上げて、そのままプリンツの頭にセット。

「よし」

「え? 何がですか?」

 ソニックを頭にのせて首を傾げるプリンツ。いえ、これでいいんです。

「では、行きましょう」

「あの、シャルン? 私の頭にソニックをセットしてどうするんですか?」

「似合っていますよ。

 やはり小動物は頭にセットですね」

「はあ?」

 よくわかってなさそうに首を傾げるプリンツ。で、頭の上のソニックもそれに続きました。

「レオ、そのままプリンツの頭の上セットでいいですか?」

「ソニックがよければいいよ」

「よさそうですよ」

 ソニックは短い手でプリンツの頭に掴まっています。なら、大丈夫でしょう。

 ソニックとプリンツを一緒に撫でるビスマルク。彼女を見て、一息。

「では、HLの観光、行きますか」

 

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