艦娘がHLに遊びに来ましたっ!   作:林屋まつり

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二話

 

 一通りのあいさつを交わして、バスに乗りました。

 バス、といっても中央に通路があり、両側、向かい合うように長い椅子が並んでいるタイプですが。ともかく、

「けど、驚いた。

 お兄ちゃん、ドイツまで行ったんだ。クラウスさんたちって、世界中飛びまわったりもしているんですか?」

「もしそうなら、うちの近くに来たときは是非寄ってください。歓迎します。

 義兄さんも、たまには顔を出してほしい」

「あ、……いや、すまないが、その件は非常に珍しいケースでね。基本的に私たちはHLから出る事はないのだよ」

「では、レオがこちらに来たのも、結構な冒険だったのですか?」

 彼は、とても優秀な人ですから。私の問いにクラウスは苦笑。

「そうだね。今だから言ってしまうが、レオナルド君が抜けた穴は思っていた以上に大きかったようだ。

 問題が起きないようにするのに、想像以上の労力が必要だった」

「へー、お兄ちゃん、優秀なんだね」

「は? あ、いや、僕は優秀な事なんてないけど」

 マックスと何か話していたレオは反射的に声を上げて、ミシェーラは楽しそうに「お兄ちゃんだもんねっ」

「…………いや、なんかそういわれると腹立つなあ」

「義兄さん。過ぎた謙遜は嫌味だと思うよ?」

「謙遜っていうか、ほんと、僕、事務仕事とかほとんどできませんよ?」

「そうだよなあ。ドイツで一緒に働いてた時、レオナルド全然手伝ってくれなかったよね?」

「うぐ、……い、いや、…………ごめんなさい」

 意地悪いウィルの言葉にうなだれるレオ。

「いや、ウィル。問題はそこではない。

 レオが仕事を手伝わないせいで、ウィルの仕事が増えてビスマルクやプリンツに構う時間が減った。真に憂慮すべきはこの事だ」

「レオは敵ねっ! 私は負けないわっ!」

「敵っ? いや、負けないって、僕、絶対に勝てませんけどっ?」

「お兄ちゃん、かっこ悪い」

「………………ごめんな、ミシェーラ。だめな兄ちゃんで」

 ちなみに、フォローできないのが困ったものです。いえ、レオはだめな兄ちゃんとは思いませんけど。私たちの事も言えませんから。

 ミシェーラにしてみれば、女性に即白旗のお兄さんですね。

「いや、それは違うよ。ミシェーラ」

 トビーは真面目に首を横に振りました。

「義兄さんは、女性に手を上げるくらいなら潔く負けを認める。

 僕はとても紳士的な行為だと思う」

「…………そ、そうなの、かなあ?」

 どーなんでしょうね?

「れお、紳士? 騎士様?」

「ど、どっちも違うんじゃないかなあ?」

「僕にとって、レオナルドはヒーローだよ」「僕にとって、義兄さんはヒーローだよ」

「意気投合してんじゃねぇよ」

 がしっ、と手を握るトビーとウィルに胡散臭そうな視線を向けるレオ。

「え? え? あ、あの、ゆーも、れおのこと、ヒーロー、だと思ってます。

 だ、だめですか?」

「だ、だめっていう事はないん、だけど。……ええと、さすがに、照れるっていうか。

 …………って、義兄さん?」

 なんでレオは不思議そうなのでしょうか? そして、問われた先にいるトビーも不思議そうに「変かな?」

「お兄ちゃん、トビーは私の婚約者よ?」

「…………あ、いや、まあそうだけど。

 前に来たときは名前で呼ばれてたから」

「ああ、その事か。……そうだね。クラウスさんや、義兄さんの先輩から話を聞いているうちに、義兄さんと家族になれて嬉しいと思うようになったんだ。

 強くて優しい、トータスナイトとね。だから、義兄さんと呼びたいんだ。不愉快じゃなければ、だけど」

「あ、いや、不愉快なんてことはない、けど、………………ってか、トビーさんまでそれいうか」

「いいのではないかね? 私は、レオナルド君の事をよく表していると思う」

「クラウスさんまで、……いや、ほんとナイトとか勘弁してほしいし、っていうか、なんだよ、亀って?」

「格好いいじゃないかトータスナイトっ」

「絶対楽しんでるだろっ?」

 最後、肩を叩いて笑うウィルにじっとりとした視線を向けるレオ。……そして、笑う声。

「あ、……ご、ごめん。

 なんていうか、やっぱりレオ君だなあ、って思って」

 楽しそうに笑うレーベ、同感です。

「なんだよそれ?」

「ちょっと安心した。っていう事」

 言葉通り、安心した表情を見せるレーベにレオは首を傾げました。

「そうだ。レオ、約束通り私たちはHLに来る事が出来た」

「あ、そうだね」

「れお、ゆー、頑張りました。

 だ、だから、……ご褒美、欲しい、です」

 とことことレオのところに来てユー。レオは「そうだったね」と、微笑んで、

「頑張ってくれたんだね。ありがと、ユー」

 微笑んで丁寧に頭を撫でるレオ。ユーは頬を紅潮させながら嬉しそうに微笑みました。

「えへへ、嬉しい、です」

「では、私もご褒美をもらおう。

 では、レオ、私を、抱いてくれる、か?」

「はいいぃいっ?」

「…………お兄ちゃん?」

 微かに頬を紅潮させ、問うグラーフと、じとー、と。レオを見るミシェーラ。

「……ええと、レオナルド君。

 そういう事は、場所と時間をわきまえてやってもらえないだろうか?」

「真面目っ? いや、やりませんよっ?」

「むぅ」

 そして、面白くなさそうなグラーフ。何か期待していたのでしょうか? ……っと、そうそう、そうでした。私は荷物を手に取って、

「それでは、レオ。今夜は付き合えますか? お酒もありますし、HLの事、改めて聞きたいです」

「あ、私もいい? 前来たときは結構ドタバタしてたし、お兄ちゃんがどんな生活しているか聞きたい」

「というか、クラウス君。

 皆で泊まる場所はありますの? 事前に連絡したときは宿はあるというお話でしたけど? それと、」提督はミシェーラとトビーに視線を向け「予想外のお客様も来たようですわね?」

「そういえば、ミシェーラたちはどこに泊まる予定だったんだ?」

「え? お兄ちゃんのところだけど?」

「義兄さんなら泊めてくれるって信じてるよ」

「いきなりそんなことあてにするなよっ!」

「ああ、それなら問題ない。

 ミシェーラ君、トビー君も、彼女たちは私の家に泊まってもらう事になっているのだが、二人もどうかね? もちろん、レオナルド君、ウィリアム君も」

「え? いいんですか?」

 レオは意外そうに応じました。…………ただ、少し残念です。

 視線を向けるとレーベとマックス、グラーフも少し残念そうですね。

「そうか、……それは、まあ、ありがたい、か」

「泊まりたい場所があるのかね? ならば無理は言わないが」

 ぽつりと零れたグラーフの言葉にクラウスは首を傾げて、

「いや、レオの私室を「是非お願いしますっ! クラウスさんっ!」」

「あ、私もお兄ちゃんの私室を「みんなで一緒に泊めてもらえるなんて、嬉しいっすっ!」」

「…………ま、まあ、それならそれでいいのだが」

 意外な剣幕に少し引くクラウス。

「……レオの部屋、見てみたい」

「私っ! 兄さまの暮らしている部屋見てみたいですっ!」

「わ、私は、ウィルの部屋で一緒に寝てもいいのよっ?」

「クラウスさんっ! ありがとうございますっ!」

 深く頭を下げるウィルにクラウスは苦笑。

「せっかくHLに来たのだ。

 レオナルド君、スマホは持っていてほしいが、彼女たちの滞在中は執務室に来なくてもいい。彼女たちに付き合いたまえ。

 どちらにせよ、HLの案内も必要であろうからね」

「あ、ありがとうございます」

「HLの観光案内か。どんなところ見て回ろうかな」

「兄さまの部屋」「ウィルの部屋」

「よし親友、今夜、……は、だめか。

 明日、朝にでも作戦会議しようねっ!」

「そうだなっ! みんながびっくりするような場所を探しておかないとっ」

「クラウスさん。お兄ちゃんってどこに暮らしているか知っていますか?」

「クラウスさん。僕たちは義兄さんの家族として、どんな生活を送っているのか知っておくべきだと思います」

「なるほど、そうだね。では、「ちょ、ちょーっと待ってくださいっ!」」

 スマホを取り出そうとしたクラウスをレオは大慌てで止めました。ふむ。

「なるほど、レオ。

 つまり、貴女の部屋には妹に見せたくないものがある、というわけですか?」

「えろい本か」

「ちょっと待てっ!」

 グラーフと一緒に親指を立てました。びしっ! と、

「れ、レオ君、やっぱりそういうの、す、好きなの?

 あ、……あの、ぼ、僕、………………僕、あ、あの、その、」

 なにを想像したのか顔が真っ赤になるレーベ。トビーは物珍しそうにそんな彼女を見て、

「いい、お兄ちゃんっ!」

「あ、はい」

「えっちなのはだめだよっ!」

「するかーっ!」

「…………あ、HLに入りましたわ」

 不意に提督が呟きました。では、

「どれ、どんなところなのでしょうね。HLは」

 ユーも椅子に膝をついて窓に張り付きました。そして、私も振り返ります。窓の向こうに視線を向けました。……もちろん、事前に映像は見ました。ドイツもHLに入っていろいろと情報収集はしていますから。

 だから、その映像は見たことがあります。けど、

「実際に見てみると、ずいぶんと違いますね」

「ほわー、……す、すごいです」

 異形と狂騒の都市、HL。まさにその言葉通りの場所。

「実際見てみると凄いですね。……これは、今から楽しみです」

 と、

「楽しみなのはいいが、みんなで一緒に見て回るのは避けたまえ。

 さすがに、その人数では目立つからね」

「あ、そうですね」

「レオナルド君、出かけるときは教えてくれたまえ。

 手の空いている者を回そう」

「いえ、そこまで「車椅子のミシェーラ君を連れて、迅速に逃げる事が可能かね?」あ」

 それもそうですね。少し、困ったような表情のミシェーラ、クラウスは困ったように「すまない」といって、けど。

「ここは危険な都市でもある。

 ミシェーラ君、兄に会いに来た君の思いは尊重したいが、だからと言って危険な目に遭わせるつもりはない。どうか、わかってくれたまえ」

「はい、……お心遣い、ありがとうございます」

 丁寧に頭を下げるミシェーラ。クラウスは微笑。

「KKはもっとミシェーラ君と話をしたかったと悔やんでいたよ。

 もし、ミシェーラ君が良ければ彼女を呼ぼう」

「はいっ、お願いしますっ」

「うん、確かにみんなで見て回ると目立つし、私たち不慣れだから、そういうのは避けたい。

 …………そう、観光には綿密な作戦会議が必要ね」

 うん、と頷くマックス。ビスマルクはしんみりと、

「観光にも作戦会議が必要、……さすが、HLねえ」

「頑張って楽しみますっ!」

 プリンツが拳を握りました。

「あ、……あの、ゆー、れおと、うぃるにまた、会えて嬉しい、です。

 それに、みしぇーらたちとも会えて、嬉しい、から、……あんまり、観光、出来なくても、大丈夫、です」

 おずおずと手を上げるユー、クラウスは微笑。

「そこまで口煩く言うつもりはないが、まあ、我々が危険と判断した場所には近づかない、程度の制限は掛けさせてもらおう。

 代わりに、滞在中は何でも言ってくれたまえ、出来る限りの事はしよう」

 そして、クラウスは一息。

「そうだね。では、滞在場所も決まったことだし、皆はこのまま私邸に案内しよう。中に担当の者がいるから、彼から話を聞いて使う部屋などを決めて欲しい。

 それと、」

「ええ、私と、」提督は私の肩を軽く叩いて「シャルンで、軽くお話合い、ですわね?」

 頷きました。ビスマルクは艦娘たちの取りまとめをしてもらいたいので、提督の秘書は私になっています。

「わかった。では、それで仕事の話をしよう」

 クラウスは頷きました。

 

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