コア
あらゆる概念が集まり、結晶化した石。
割れると数枚のカードが生成される謎に満ちた物質。コアの破片はカードを活性化させるエネルギー体であり、触れれば力が具現化――――――もしくはカードの絵の物自体が具現化される。
錆びたソードブレイヴを持ち出した妹達を追いかけているものの、途中で見失った。
「はあ……はあ……一体どこにいるの……」
あれは未知数の力を持っている謎の剣――――――――なにが起きても不思議じゃないわ。ことが起きる前に早く見つけなきゃ。
「いやーっ!?」
近くに悲鳴が響き渡る。今は国民の安全を最優先にすべきね。
すぐに聞こえる方向へ駆けつけに行くことにした。
○●○
「ウオォー!」
大通りに未知の青い巨人兵士が雄叫びを上げ、国民に恐怖を与える光景をわたしは目撃した。
「あれはゲイムギョウ界じゃ見たことない……スピリットと思ってもいいわね」
駆除できるならしておきたいけど、わたしにはデッキがない。
でもデッキがなくても、全力でダメージさえ与えれば少しは怯むはず。
わずかな希望を持ったわたしは、自前の巨大なハンマーを召喚して手に取る。
「少し黙ってなさい……!」
体を中心に全力でぶん回して勢いが付いた直後、横に投げ出した。
ハンマーはヌンブンとブーメランのように回り、巨人兵士に強い衝撃で鋸の如く連続で叩きのめす。
巨人兵士は衝撃に耐えるけど、ここでわたしの猛攻は終わらない。
回り続けるハンマーにめがけて走り出し、受け止める。
残った回転力がわたしを振り回し、わたし自身が軌道を縦に変えて地面を叩いて高く飛び跳ねる。
「ハートブレイク……ッ!これがわたしの最大火力!」
回転しながら降下する勢いを利用して巨人の頭を狙い、1撃をかます。
巨人兵士は耐えようにも強い衝撃で隕石が落ちた跡のように地面がえぐられる衝撃の強さにはダメージはさすがに残る。そう確信した。
けど―――――――現実は上手く行かないもの。
ハンマーに亀裂が入り、粉々に砕け散っていた。
「何……!?」
動揺した一瞬を付いて巨人兵士は拳を一発入れる。
「があ……ッ!」
逆にわたしは突き飛ばされ、地面に這いつくばる。
「やっぱりネプテューヌの言ってたことは本当みたいね……この世界の兵器も魔法も効かない、唯一スピリットに対抗できるのはカードだけだっていうのは……!」
必殺技級の技をかましてもまるで蚊に刺されたのようなこの様子。一刻を争う問題と言っても過言じゃないわ……!
「せめてわたしにもデッキがあれば……!」
協力者によれば、デッキがあれば撃破が出来るって聞いた。けど今のわたしにはデッキがない……どう打開しろと言うの!?
現状、詰み状態のその時―――――――――大地から伝わる振動が響く。
「そこをどいて!!お姉ちゃん!!」
「どいて……!!」
妹たちの声が聞こえる……まさか巨大化の魔法でゴリ押しするつもり……!?
「ダメ……!どんな攻撃でもいまのわたし達じゃ……!?」
振動元からの方向を振り向いたわたしは、衝撃の光景を目にした。
あの振動は妹たちじゃない……なぜなら小さい体で一生懸命に倍に大きい剣を担いで走っている。
あの振動元は――――――――
「ウォォォォーーーーーーッ!その剣刃は余の物だ!返してもらうぞ!!」
今、わたしが相手にしている巨人よりもはるかに上回る大きさ――――――――黄金の鎧を纏う蒼き巨人が妹を追いかけている!
あれがこの巨人の親玉!でも都合が悪すぎる!
「ふぇぇ……重いよ……(はぁはぁ)」
「もうちょっとよ!もうちょっとだけ頑張って!」
息を切らしかけて弱音を吐くロムをラムが励ましている……。
ラムは一体なにを……?
妹達はわたしを通り過ぎて、わたしが相手にしていた巨人兵士に向かって走り出す。
「――――――――ッ!!」
向かってくる妹達に、巨人兵士は槍で阻もうとする。
「乗り込むよ!ロムちゃん!」
「……うん!」
一閃で貫こうとする槍が地面を砕いた瞬間妹達は槍の上を渡り――――――巨人兵士の肩まで乗り込んだ。
「そこを動くなァーッ!!」
黄金の鎧の巨人は砂浜に立つ旗を取るように、剣へ飛び込んで取ろうとした――――――――――
「今だよ……!」
「そりゃっ!」
飛び込んだ瞬間を狙って、妹達は肩から飛び降りる。
「いけない……!」
とっさに駆け込んだわたしは誰よりも早く巨人兵士を通り過ぎ、落ちていく妹達をわたしの体でクッション代わりに受け止めた。
黄金の鎧の巨人は見事巨人兵士にぶつかり――――――衝撃で約1kmまで地面に擦って行った。
「……これは相当な被害ね」
巨人が滑り込んだ側を見ると、地面のレンガがえぐられている上に建物が何軒も破壊されている。
「でも、結果オーライね」
巨人兵士の方はいつの間にか消えて、少し歩いた先に1枚のカードが落ちている。
この結果から推測すれば、スピリットをカード化するにはスピリットの力でないと無理だというのが完全に理解した。
「えへへっ、お姉ちゃんが倒せそうになかったあいつを倒せたね!」
「うん……勝っちゃった(どきどき)」
「えぇ、そうね……」
「……お姉ちゃん?」
「やっぱり……怒っちゃう?(そわそわ)」
「ったりめーだろうが!!国民に被害が出てないからまだいい!でもな!町はどうなんだよ!?これじゃ生活できねぇだろうが!!」
「あぁ……でも、すぐに直るじゃん!」
「どれだけの費用がかかると思ってんだ!?それによく考えてみろ!下手したら新アトラクションが体験できなくなっちまうんだよ!」
「ごめんなさい……やっぱりやめたほうがよかったんだよ……楽しみがなくなっちゃった……(しょぼん)」
「うぅ……ごめんなさい」
説教している間、黄金の巨人は立ち上がった。
「……!説教してる時間はないみたいね」
「余の……余の剣刃……ないッ!」
手の平を見た黄金の鎧の巨人は動揺してこちらに視線変える。
「ざーんねん!剣はこっち!」
ラムが挑発するように剣を持ち上げて見せびらかす。
「てめぇ……人の国へ勝手に上がった上にこんなに荒らしやがって!そもそも!何のつもりでここに来たんだよ!?
あいつは闇雲にここを踏み入れた訳じゃないはず、目的がわかっているのは―――――――この錆びた剣を狙っていること。
「決まってる!その剣刃を返して貰うために来た!」
「んなこたぁわかってんだよ!他に目的あんだろうが!」
「お姉ちゃん落ち着いて!」
「怖いよ……これ食べていつものお姉ちゃんに戻って……(ひょいっ)」
ロムから小さな棒付きキャンディを口の中に入れられた。
「ふむ……ならば教えてやろう!その剣刃の錆びを取れる者――――――青き剣眼を持つ者を探しに来た!」
光の青の剣眼……ってことは
それにしてもこの飴、なかなかイケるわ。
「それはわたし達も探しているわ。でもまだ見つかってないわ」
「ふむ……それではこの国にはいないのか……これは失礼した!其方も探しているとは予測してなかったものでな!ではこれで失礼する!」
「待ちなさい、あなたには前科があるわ。理由はもちろん……わかっているわよね?」
「ふほうしんにゅうときぶつそんがいで……えっと……」
「あなたが国民を不安にしたからよ!かくごのじゅんびをしなさい!近いうちにうったえるから!」
「さいばんも起こすから……さいばんしょにぜったいに来てもらうよ……(じーっ)」
「いしゃりょうも準備もしておきなさい!あなたははんざいしゃよ!」
「わたしのデッキにぶち込まれるのを楽しみにしてなさい……いいわね……!」
こんな奴に裁判起こそうにもどう起こすというのかしら……。
「裁判?それは余の国と同盟を結んでから言ってほしいものだ」
「ムカつく……あの金ピカ!ぜったいにさいばん起こすから!」
「こんな下らんことをしているより、まず青の剣眼を持つ者を探し出すんだな。ふっははははは……!」
黄金――――――いや、金ピカは高笑いしながら来た方向の逆の道を走って去って行った。
「はぁ……一難去ってまた一難……また来られたらどうしようもないわ」
「そうね!あんなのボッコボコにしてやりたい!」
ラムの言う通りそうしたいところだけど、カードがないわたしには無理な話ね……仕方ないわ。ここはネプテューヌかノワールに救援を―――――――
「お姉ちゃん(きらきら)」
ロムが輝いた眼差しでこちらを見てる。きっと税金的によからぬ作戦ね。
「ロクでもない作戦は反対――――――――」
いや、希望はあるわ。【光の戦士ランダル】――――――――これでなにか掴める!
Save_The_Data……
どうもアポドラです。
アイツのデッキ発売おめでとうございます!(今更感)今後もバトスピをよろしくお願いします!
そんなわけで、復帰勢も来れば当然バトスピなりきりも増える現象が当たり前のように来ますね。自分は大歓迎です、ぜひ増えてください!
今回はデッキを持たないブランがどう戦うかで悩まされましたが、結果的にこうなりました。セリフがラムちゃんばかりですが、自分はロムちゃんが好き。
ホワシスになって剣ぶん回す展開も考えましたがそれじゃマンネリ化するのでやめました。
さあ、光の戦士ランダルが鍵となったブラン達はどうするか!続きを楽しみにしてください!
これでターンエンドにします!