ただ、それだけのお話。
「よく我が宮殿に入り込めたものだ」
その男の金色の鎧が、かしゃり、と心地の良い音を立てる。
その宮殿の洗練さ、華やかさは、ギリシアのそれを思わせる。
「これはこれは、英雄王、ギルガメッシュ直々のお出迎えとは、光栄だね」
対して、そのギルガメッシュの目の前に立つ男はカジュアルな装いである。話す言葉も、どことなく砕けている。
「なに、退屈していたものでな。不届き者を裁くのも、王の勤めだ」
ギルガメッシュは、右手をスッと上げる。それと、同時にその背後にいくつもの空間の歪みができた。そして、そこからは何やら剣が覗いている。
それらは全て、名剣、名刀と呼ばれた宝具である。
「さすがは英雄王。お宝の数は半端じゃないね」
男はそう言うと、一枚のカードを取り出した。
「むっ」
ギルガメッシュの顔が、ほんの少し歪む。
「ただの紙きれではないな? 貴様、何者だ?」
男は不敵に笑う。
「僕は、元祖通りすがりの仮面ライダーだよ」
そして、その手に持った銃、ディエンドライバーにカードを差し込み、
「変身!」
真上に向けて、トリガーを引いた。
『KAMENRIDE DIEND!』
ディエンドライバーからその音が発せられると、幾つかの立方体が飛び出し浮かび、男の体はライダースーツのようなものに防具が取り付けられたような装いに変化した。また、頭はヘルメットのような仮面に覆われている。
そして、その仮面に、浮かんでいた立方体か取り付けられる。
ギルガメッシュは、それを眺めていた。
「ふむ、受肉した我を見つけ出したのだ。それなりの力は持っているということか。ディエンド、と言うのか、それは」
男はそのディエンドライバーを肩に乗せる。
「そう、仮面ライダーディエンド。このディエンドライバーで変身した姿だ」
ギルガメッシュは顎に手を当てる。
「ふむ。よかろう、献上を許す」
「おやおや、流石は英雄王。世界のお宝は全部自分のものかい?」
「当然であろう。さあ、差し出すがよい」
ディエンドは首を振る。
「まあ、待ちたまえ。僕も勝算なく、ここに来たわけじゃなくてね」
そして、そう言うと、いつくかのカードを取り出して、ディエンドライバーにセットし、空へ向かって打ち放った。
同時に、音が鳴り響く。
「KAMENRIDE AOZAKITOHKO!」
「KAMENRIDE KAKINETEITOKU!」
「KAMENRIDE YAGAMIHAYATE STRIKERS !」
「KAMENRIDE VEGETA SUPERSAIYAN3!」
その後もディエンドはカードを入れ替えながらトリガーを引き続け、音は鳴り終わった頃には、十数人の陣営がギルガメッシュを取り囲んでいた。
「僕も、お宝の質には自信があってね。どうだろう。お眼鏡に叶うかな?」
「…なるほど、盗人ではなく、強奪の類であったか。よかろう、真の強さを知り、ひれ伏すがいい」
ギルガメッシュが、すっと手を前に差し出すと、後ろに控えていた名剣、名刀は、ディエンドに向けて射出された。それと、同時にディエンドが呼び出した陣営も飛び出す。
世界最大級と言える戦いの幕が、切って落とされた。
そして、その戦いの後に広がっていたのは、原型を残さずに崩れ去った宮殿と、地に仰向けに倒れたギルガメッシュ、そして体にいくつもの切り傷を負った男の姿だった。
ディエンドが出した陣営は、既に消えている。
男はギルガメッシュの元に辿り着くと言う。
「まさか、ここまで苦戦するとは思わなかったね」
ギルガメッシュは、鼻で笑う。
「好きにするがいい」
「急に気前が良くなったね。どうしたんだい?」
「我という障害を打ち倒したのだ。お前にはその権利がある」
「なるほどね、流石だ。確かに、みっとも無く喚き立てるなんて、君には似合わない」
そう言って男は、ギルガメッシュに言う。
「僕は海東大樹。できれば君の力が欲しいんだけど」
海東と名乗った男は、取り出した白紙のカードをギルガメッシュに見せる。
「なるほど、我の力をそれに写すというのか」
「そうして欲しいんだけど…」
「断る」
「まあ、そうなるよね」
海東は、ギルガメッシュの回答を予測していた。
「負けたが故に貴様の侵略行為は認めるが、我が貴様に屈したわけでない」
海東は、ギルガメッシュを背にして歩き出す。
「あーあ、折角、世界全てのお宝が手に入ると思ったのになぁ」
ギルガメッシュは、その後ろ姿に声をかける。
「何故立ち去る。貴様は宝が欲しかったのだろう」
海東は、立ち止まり、
「そうさ。でも、お宝ってのは、それだけじゃ魅力半減なのさ。それに見合う人と、その想いが無いとね」
そう言って、また歩き始めた。
「待て!」
ギルガメッシュのその声に、海東は歩みを止める。
「貴様…なかなかに愉快な奴だ。退屈しのぎには十分だな」
ギルガメッシュはそう言うと、動かぬ体に鞭を打って立ち上がる。
「これからどこに行く」
「そうだね、とりあえず『空の境界』って世界かな。君を倒すって、力を借りた橙子さんに挨拶に行かないとね」
「我も連れて行け」
「へえ? どんな気まぐれかな?」
「我を倒したものに興味が湧いた。退屈もしなさそうなのでな。それに」
ギルガメッシュは不敵に笑う。
「我が欲しければ、そう思わせてみせよ」
その言葉に海東は、吹き出して笑った。
「なるほど、君は僕を知りたい。僕は君を奪いたい。実に良い関係だ」
「そうであろう?」
ギルガメッシュは口の端を持ち上げてニヤリと笑う。
「いいね、実にいい! じゃあ行こうか、ギルガメッシュ?」
「その『空の境界』という世界はどのようなところだ? 海東?」
「いや、すごいところだよ。人外の巣窟って感じだね」
「ふはは、それは愉快だな」
二人はそういいながら、グニャリと歪んだ空間に足を踏み入れた。
その歩みの先に何があるかはわからない。だが、二人は遠くない未来に手に入れることになる。友という宝物を。
思いついてしまって、書かないとモヤモヤしてきたので、吐き出してみました。すっきりしました!
もう、一話完結と決めてサクサクっと。
「これ、BLじゃないよね? 違うよね?」と思いながら書いてました。意味深な台詞多すぎでした。