IS IS学園って本来は女子校だから恋愛は基本的に百合なはずだよね? 作:セキエイ
前回の投稿からやっぱり間が開いてしまいまて申し訳ありません。
相変わらずな駄文で有りますが、今回は文字数が少ない(当社比)ので割と見やすいかと思います。
「まだ、起きてたんですか一夏さん」
「そういう蘭ちゃんこそ」
深夜2時、五反田蘭は寮の自販機コーナーで一夏と会った。
恋い焦がれている当の本人と突然遭遇し、しかし余りにもラフな格好をしている自分と状況に困惑し、完全に言葉に詰まる。
頭が真っ白になった。
「どうしたんだ、眠れないのか?」
始めての場所で緊張して居ると理解した一夏の言葉は、見当はずれながら蘭を救う形になった。
「えっと、そのまだ、慣れなくて」
しりすぼみに小さくなる言葉が恨めしい。
それでも一夏は笑みを絶やさない。
「まあ、仕方ないよな。俺だってそうだった、でも慣れれば良いところだよ」
しかし、ふと一夏の表情が陰るのを蘭は見落とさなかった。
前髪をさっきから仕切りに弄っている、妙に落ち着かない。
今更ながら雨音が窓の外から聞こえるのを知って、蘭は反射的に側の大きな光取り窓を覗いた。
「どうしたんだ?」
窓の反射で片想いの相手を見ると、やはり険しい顔をしていた。
「いえ、雨止まないかなって。特に意味無いです」
振り返り笑い掛ける、まともに一夏を直視して顔が熱くなった。
「止まない雨は無いさ」
その言葉は蘭にではなく、まるで自分自身に言い聞かせているように感じられた。
下ろした彼の拳が硬く握られたままなのが、その裏付けであるように。
「ジュース何飲む?奢るよ」
しばしの沈黙の後、不意に背負い込んだ重い気持ちを投げ捨てるように一夏はさも明るく言う。
「えっ、いやあのいいですよ!」
「良いの良いの、蘭ちゃんが始めてまともに話した後輩なんだよ。それが嬉しくってさ、これはそのお礼だ。気にしないでくれ」
始めて、これが蘭の心に優しく響いた。
(一夏さんの、始めて!)
はたから見れば曲解される事間違い無しだ、にやけるのを全力で我慢しながら蘭はCCレモンを選ぶ。
「はは、やっぱりな。蘭ちゃん昔からCCレモン好きだもんなぁ、はいどうぞ」
「ありがとうございます」
受け取ったCCレモンのボトルは持ち慣れた丸みで、これまでの日常とは余りにもかけ離れている場所にいるのに身近にあるものが手を伸ばせば届くという現実が滑稽に感じる。
が、不安に揺れていた心が静かに落ち着くのもまた事実だった。
「ふふ、」
「?」
女の子の心は分からないな、一夏は自分の飲み物を買おうと再度自販機の前に立つと、僅かな逡巡の後ボタンを押す。
ガタンと割りに大きな音がして一夏は自販機から飲み物を取る。
「一夏さんは何を買ったんですか?」
「これだよ」
顔の横に掲げたのは無糖のコーヒーだ。
それもホット。
一夏は小気味の良い音と共に回栓し一口目を呷った、極々最近慣れたばかりの苦味が口中に広がる。
その味はまるで今日の自分の心の中を味に現したようで、少し目を眇めた。
暖かいこの液体の温度も、空虚に感じる。
だがそんな内心を蘭は知る由もない。
バレないように目で追った一夏の横顔、蘭は男を感じて胸が高鳴るのであった。
昔から兄とつるみ遊んでいたこの男に憧れていた自分を改めて再確認する。
そんな事は露知らず、一夏は一気に缶を開けるとそのままゴミ箱に空き缶を捨てた。
「一夏さん、大人ですね」
「いや、そうでもないよ。ブラックなんて最近やっと飲めるようになったばかりさ、それに弾の方が昔から飲んでたろ?」
「兄貴は別です、見慣れてるし」
「ははは、厳しいな。そういえば弾はどうしてる、元気か?」
兄の顔はつい今朝見たばかりなのに、もう一ヶ月ほど経過した感覚に囚われて不意に笑みが零れた。
「ええ、いつも通り馬鹿に毎日やっています。でも兄貴、将来はISの技師になるんだーとか言って勉強してますよ」
一夏はぼうと雨の降る光取り窓に視線を向けた。
「あいつも、頑張ってんだ」
口に含むように小さく呟く。
その時だった、一人の少女がすぐ奥の通路から駆けて来たのだった。
「一夏、ここにいたんだ。ラウラが目を覚ましたよ!」
呼吸が荒く少し乱れた金髪と汗が、蘭にはとても美しく見えた。
「本当かシャル!大丈夫なのか?」
一夏は目に見えて慌てていた。
シャると呼ばれた少女は大きくうなずいた、そして極々自然に手をつなぐ。
(えっ!?)
「急ごう一夏!」
「ああ!」
そのまま二人は駆け出そうとする。
突然の金髪女子の介入で蘭は完全に空気と化していた、何よりものすごく自然に手を繋いだ事がショックだった。
負けたと自覚した。
目頭が熱くなるのを堪えて、しかしせめてもの抵抗だろうか。
走り出した一夏のその背中に
「あ、あの。ジュースご馳走様でした!」
と叫んだ。
「明日は授業があるから、早めに寝ろよ!」
と、一旦立ち止まり返してくれたのが蘭へのせめてもの救いだった。
〜〜〜
仕切り板の反対側にいる少女からは既に寝息が聴こえている。
時刻は午前零時を迎えて久しい。ドア側のベッドに寝ている百合香は眠れないでいた。
理由は簡単である、父親の安否である。
幾度となく携帯の画面を確認するも、やはり着信は無い。
授業が終わってから、一時間に一回程のペースでメールを送り続けているが一向に反応が無い。
それが彼女の不安を増長させた。
包まった毛布の中は熱い。
「・・・大丈夫だよね、お父さん」
〜〜〜
擲弾による白煙が破壊され掛けの街道に充満する。
これらは全てあのドクターヘリから放たれたものであった。
「「状況、ガス!」」
直後、呉坂は隊員をガスへの対策をさせ街道の両端に移動させて、コンビニの瓦礫に埋れてるであろう不明ISの確保を指示した。
即ち呉坂は、この事態を敵性ユニットによる攻撃ないし何らかのアクションと判断したのだ。
そこからの自衛隊の精鋭中の精鋭、特殊作戦群の動きは速い。
予め編成していた五つの分隊の内、呉坂を班長とする隊をISの確保だけに集中させ残りを周囲の全力警戒に回すという行動計画を、隊員達は迅速に行い始める。
非常に濃密な煙幕で約十m程に近づくまで目視出来ずにいたが、やっと薄く目標が埋まる瓦礫が確認出来た。
が、銃声が響き渡ったのもまた同時であった。
この濃煙の奥で一体何が起こっているのか、それを知る術は無い。
断続した破裂音にも似た銃声が再び木霊して、呉坂を先頭として率いた第一班に微かな動揺が走る。
「誰が撃ちやがった?」
しかし、後ろに控える隊員は揃って首を横に振る。
とすると他の班の奴か、けれどもこんなロクに敵味方識別ふのうな視界状況の中で撃つような訓練を、自衛隊ではしてない無い。
それかその様な状況下でも撃たざるを得ない状態なのか。
「「隊長、何か瓦礫の向こうから声みたいなのが聞こえませんか?」」
一歳年下のSCARを持った隊員が声を上げた。
「声だァ?」
口を噤み、テッパチを少しずり上げて耳を澄ますと、銃声の暇に確かに何か声らしき音が聞き取れる。
「「英語?」」
目をつむりながら隊員は呟く。
「いや、その他に朝鮮語らしき声も聞こえるな」
自らそう発言し、身体を強張らせる。
どうも自身が予想した中で、最も最悪な構図に状況が推移しているらしい。
少なくともこの銃声は敵性ユニットによる攻撃的アクション、若しくは攻撃を受けた味方による反撃に他なら無い。
そう、これは機能を停止したIS確保を巡る、非正規部隊同士の戦闘だ。
(これはマズイ・・・!)
そして後ろに居る先程のSCARを持った隊員に、そっと耳打ちする。
「これより目標ISの即時確保を始める、同時にこの銃声と声を敵と認定する。後ろの奴に伝えろ」
頷くと更にそれを後方の隊員にも伝達を始めた。
濃煙の中、呉坂はこの様な攻撃を仕掛ける輩の大まかな設定をする。
(まず、現状この日本に於いて武力を持つ。次に朝鮮語と英語の両方かどちらかを話せる連中となると・・・)
「ちと、ヤバイな」
無意識的に眉間にシワが寄る。
後方に見えるように無言で手にしたMP7を掲げて、チャージングハンドルを引く動作をした。
弾込め確認の意味で、後ろから控えめに確認をする金属音が聞こえた。
ややあってそれも収まると、やはりさっきと同じく手を掲げる。
指を三本立てて、一秒刻みで立てた指を倒す。
突入のカウントダウンである。
最後の人差し指が倒れた瞬間、呉坂率いる第一班が埋まったISの元目掛けて飛び出したのだった。
「後は知っての通りですよ」
自衛隊が設営した簡易救護所の端で手当てを受け横になった呉坂は、傍に立つ男に言い放った。
この男は呉坂と同じく自衛隊特殊作戦群所属、今回の作戦に於いては作戦司令部東京の隊長として総指揮を任されていた人間であった。
名前を梅岡と云う。
「梅岡さん。あの後、現場確認で何か分かった事は有りますか?」
救護所のテントの屋根を雨粒が弾く。
「言おうか迷ったんだがな、この際言ってしまうか」
微かに後悔の念を浮かべながらも梅岡は更に口を開いた。
「まずあの場に埋まっていたIS本体に関してだが、君たちが抜き取ったコアの他に幾つか欠落して居るパーツがあった。愚問だが君たちはコア以外抜き取ってない筈だろう?」
「ええ、そうです。コア以外の部品は破壊こそしましたが持ち去る事はしていません」
呉坂は辛うじて動く首を立てに振る。
「その筈なのに、抜き取られて居る部品があったんだよ。
しかもその部品と云うのが、主に筋力補助用の人工筋肉シリンダーと各部位の高性能コンデンサだ。これらはISに於いてコアに次いで重要とされるパーツだ」
「敵性ユニットの目的が俺たちと同じく、IS確保が目的だった事への証拠となるわけですか」
「そう云う事だ」
梅岡は頷く。
しかし敵の目的は分かった物の、肝心のその正体が掴めないのは釈然としない。
「呉坂、君が次に言いたい事はよく分かるよ。
奴等の正体を特定する手がかりになりそうなものだろ?」
一瞬含んだ笑いを浮かべて、梅岡は戦闘服の襟を正した。
「7・62×39mmと5・56×45mm口径小銃弾、更に45ACP.の空薬莢が自衛隊が使用した弾薬の他に大量に発見された」
呉坂は息を飲んだ、敵性ユニットの正体の影を目の当たりにして。
「君も察していることだろう?
前者は東側のAK47小銃用の弾、後者はNATO規格の小銃用の弾と45口径拳銃の弾だ。加えて戦闘中君たちが聞いたと云う英語と朝鮮語。
ここまでヒントが有ればもう答えは出たも同然だ」
やっぱりか、雨の跳ねるテント屋根をぼんやりと眺めた。
ぱちぱちぱちぱちと、鳴り止む事は無い。
「・・・前者は北朝鮮若しくは韓国からの工作員、後者は在日米軍ですか」
「そうだ。あの時君たちが装備して居た銃器の口径は新型バトルライフルに使用した7・62×51mm旧NATO規格弾とヘッケラー&コッホ社サブマシンガン用独自規格の4・6×30mm弾、9ミリ拳銃用の9mmパラベラムの3種類。落ちて居た弾はこのどれにも引っかからないからな」
それを聞き、呉坂は天井に向けて、ふうと溜息を着く。
それはこの日起きた出来事による疲労を、身体から吐き出しているようにも見えて梅岡は潮時だなと思った。
「まあ俺の元に来ているの今の所こんな物だよ。新しい情報が入り次第君に伝えよう、今日はこれで失礼する。
早く怪我治せよ」
足早に上官が去った。
その背中を消えるまで見送る事なく、呉坂は瞼を閉じた。
よくよく考えれば自分達は、恐らくだが米軍と北朝鮮の特殊部隊と渡り合い、辛くも目標を手にしたのである。
しかしその代償もまた大きく、殆どの仲間を失う結果となった。
隊長として失格だと強く強く呉坂は心に刻み付ける。
そうしているうちに、彼は深い眠りの泥濘へと沈み落ちた。
序章 完
蘭ちゃんはCCレモンが好きという設定は、作者のオリジナル設定ですのでご了承下さい。
作品に対するご意見、ご感想お待ちしております。