IS IS学園って本来は女子校だから恋愛は基本的に百合なはずだよね? 作:セキエイ
台風に雨に災害にと酷い夏でしたが、皆さんお身体には気を付けて(戒め)
IS学園の地下。
分厚いコンクリートに四方と上下を阻まれたこの正方形の小部屋は、元はIS用火器の弾薬庫だったという。
今でも名義上は弾薬庫なのだそうだ。
しかし、そこに弾薬は保管されて居ない。
この部屋に楯無を先導したこの学校の用務員の男は口を開く。
彼の視線の先、部屋の中央に置かれたベッドに伏す少女は、規則的な鼓動を脇に置いた心電図で代弁するだけ。
「この少女こそ、更織があの戦闘で得たものだよ」
楯無には彼の言葉の意味が解せない。
この少女が一ヶ月前の東京での戦闘で何の意味を持っていたのか、如何にして彼女を保護したのか。
「どういう、事ですか?」
楯無はゆっくりと、眠る彼女の傍に立った。
男は薄く笑う。
それだけ。
(いつまで情報を隠している積もりですか?)
チッと小さく舌打ちして少女を見た。
すこし吊り目気味な眼差し、凛々しさを垣間見せるその整った顔立ちは歳に似合わない美しさを湛えている。
ブリュンヒルデ、織斑一夏の姉とよく似た雰囲気を匂わせていた。
しかし黒いショートヘアは元々余り手入れをして居ないらしく、枝毛が見えるあたり千冬の冷徹なそれとは異なった、この少女の人間味というものが感じられた。
一見すると普通の少女にしか見えない、少なくとも楯無には。
「毛布を除けてみてくれないか?」
男は唐突に言った。
〜〜〜
さくら対ラウラ戦ではラウラが勝利し、その次に行った蘭対百合香戦では蘭が勝利した。
その結果を踏まえて千冬は蘭をクラス代表としてクラス代表戦に、さくらと百合香をタッグマッチ戦に出す事を提案した。
「皆これでいいか?」
さくらは即座に頷いた、百合香も特に反対は無いので肯定の意を示す。
併せて蘭も頷く。
「はい、けってぇ〜!」
出場するわけでは無いのに何故か居るカメリアが総意を述べる。
その一瞬なぜだか蘭とカメリアの目が合った。
「ねえ蘭?」
教室に戻る途中、蘭はカメリアに呼び止められた。
「何?」
「ちょっと、ね」
手首をきゅっと掴むと速足で歩き出す。
曲がり角を何箇所か曲がり、徐々に人の声が遠ざかる。
休み時間はもう幾ばくも無い、蘭は少し焦りを感じた。
「ちょっとカメリアさん、何なの。ねぇ?」
掴まれた手首に爪が食い込んでチリチリ痛んだ。
痛みに抗議するため、少しだけ自分よりも背が高いカメリアに目を合わせた。
彼女は笑っていた、しかしその真意は何故だか見えない。
そうだ、この女は最初から何をしようとしていたのか、まるで分からない。
少なくとも私、若しくは百合香や深角さくらの内の誰かに、いや全員に何かしら干渉しようとしている。
それだけは理解できた。
蘭は途端に自身の手首を掴んでいる女が、恐ろしい何かに変容して行くような気がした。
「いや、離してっ!」
本気で手を離そうと腕を引いた。すべすべしたカメリアの掌が、この時はとてつもなく気持ち悪い。
しかし、残念ながら彼女の手から逃れる事は叶わない。
それどころか一瞬腕捻られ、鋭い痛みを覚えた。
「ッつ!」
そして痛みに身体の力が抜けた寸瞬、少女マンガで彼氏役の男がそうするように、蘭は壁に背を押し付けられた。
「何、何なの?」
両手首を掴まれ、脚の間に彼女の脚が滑り込む、何より体重を掛けて壁に押し付けられているので動きが取れない。
この女は一体私に何をしようというのか。
「ねぇ?」
相変わらずカメリアは薄く笑みを貼り付けたまま。
「何よ、」
「だいぶ、ドキドキしてる見たいだね」
制服越しに蘭の乳房にカメリアの豊満な乳房が押し付けられている、分かって当然だろう。
「うるさいっ。それよりもカメリアさん何なのこの状況、早く退いて頂戴?」
顔と顔の距離は30cmも無い、今更になってそれに気が付いてそっぽを向いた。
「酷い顔をしてる、アナタ何に怯えてるの?」
お前だ!この得体の知れない女に叫ぼうとした矢先、カメリアは人差し指で蘭の唇を制す。
そしてどんどん顔が接近する。
「〜〜ッ!!!」
唇を交わす寸前の距離まで近づくと、彼女の顔は耳元に流れた。
豪奢なカメリアの金髪から不意に何か花の様な香りがして、心臓が跳ねた。
「私知ってるよ。深角さん、でしょ?」
怯えてる?いや違う。
私は嫌いなのだ。
いつも澄ました顔をして、何もかもを手にしているあの少女が。
「他の人は多分気付いてない、けど私には分かるんだぁ。
あ、でも南條さんはすこ〜し勘付いてるかも」
唇に置かれた人差し指を首を振ってどける。
「違う。私は嫌いなだけ、深角さくらが嫌いなだけよ。怯えてなんか無い」
三時限目開始のチャイムが鳴った。
反響、間延びしてまるでこの状況に合わない。
余韻が響く中、ふふっとカメリアは笑った。
「それが一番違う。アナタは深角さくらに対して僻みを抱いている。
僻んで僻んで僻んで僻んで僻んで、彼女よりも優位に立ちたくて見下したくて、でも出来なかった」
「違うっ!」
蘭は吼える、吼えた。
けれど図星だった。
「出来なかったから、そう。
嫌ったんだよね?」
その通りだった。
「嫌いって言うのはアナタの場合、勝つ事が出来ないがそれを認めたく無い、故に思考停止した果てに出て来た言葉」
こんな事聞きたく無い。
「うるさい、やめてよ・・・」
が、カメリアの語りは止まらない。
吐息が耳に掛かるこそばゆさなんて、どうでも良くなった。
どうしてこの女は私の心を如実に、精確に語れるのか。
何故ここまで見透かせるのだろうか。
「ねぇ、思うんだけど。
それって怯えてる事になるんじゃない?
五反田蘭ちゃん」
五反田蘭は嗚咽をあげて涙を流した。
「何なのよっぉ、うぐっ、私はぁああっ!」
自分よりも自分の心を把握されている恐怖。
自分の汚い部分を他人にまざまざと指摘された屈辱。
自分が意識的、無意識的に忌避していた対象へ今一度真正面から対峙してみて感じた無力感。
それらが綯い交ぜになって心を乱し溢れさせ、それが涙となって零れ落ちる。
それでも笑うカメリアの瞳には、よく切れる刃のような光が宿っていた。
そのまま、泣く蘭に身体を重ねた。
「な、何よおっ、そうやってえ。ううっ、汚い私をわらってぇっ、何が楽しいのよぉっ!」
そっと、そっとカメリアは手首を離した。
その手を蘭の背中に滑らせて、深くその身に抱く。
「っ!」
得体の知れない女に抱かれている、自分を見透かした女に抱かれている。
同情?憐れみ?
冗談じゃない
「離、せっ。ううっ、離せっ!」
弱々しい叫び、カメリアには通じない。
少しだけ背が高い彼女に抱かれて、何故か心地よさを感じている自分が居る。
それが悔しくて悔しくて仕方が無い。
「私はね、深角さくらに勝ちたいの」
蘭の耳元でカメリアはポツリと呟いた。
「私はロシアの代表候補生なんだけど、一度深角さくらとバトルした事が有るんだ」
「・・・っ、」
ぎゅっと、抱く力が少し強くなる。
抱き合って押し潰されたカメリア大きな乳房を通して、早鐘を打つような鼓動を感じた。
今度は自分の番と言う事か?
知った事じゃない。
「怖いの、深角さくらが。
戦ってみて私は恐怖に潰されそうになった、あんな経験は初めて」
先程蘭を攻め立てていた口調と打って変わり、酷く〈怯えて〉いる。
何なの?
「怖い、怖い、怖い、怖い。
戦っている時のあの真っ黒な瞳をみた事がある?
あいつは悪魔の目をしている、多分人を人とも思わずに殺す事が出来るわ」
具体的なようで中々に抽象的な語りは、もはや独り言のそれであった。
蘭はさくらの基本的な能力が高い事を重々承知し、それに怯えている。
だがカメリアはそれ以上らしい、まさに死の恐怖を味わったかのような。
「結局アンタも、私と同じじゃない」
「けどね、例えそうだとしても私は勝たなくちゃいけないの。深角さくらに」
少し落ち着いた蘭は顔を上げた。
「じゃあ、さ。
今私をこうしてけしかけたのは何で?」
ふふっ、カメリアは耳元で笑う、随分とまあコロコロ態度を変える奴だ。
しがみついた蘭の顔を見つめて、にへっと相互を崩した。
「ただ傷を舐め合いたかっただけ、一人じゃ怖い事も二人なら怖くないでしょぉ?」
はあっ、と蘭はひたすらに大きな溜息を吐く。
なんて奴だ、ただそれだけの為に私をコケにするなんて。
けどカメリアの眦には涙の粒が浮かんでいる、今言った言葉だけが全てでは無い事の証左である。
だから蘭はにやにや笑うカメリアの左右のほっぺたを掴んで、思い切り引っ張った。
「この寂しがりやがっ!
私をその程度の理由でここまで追い詰めて、タダで許すわけには行かないわよっ!」
「ふふぁふふぁ〜、ふふぉ〜!」
何を言っているか分からない、多分特に対した事は言ってないから別に良いだろう。
「そうね、アンタ1人だけで深角さくらに勝つのは癪だから、私にも協力させなさい。
絶対に1人では勝たせないわよ。
良いわねっ!」
そう言って、最後に思い切りほおを引っ張り突き放す。
「痛いよお〜、もうっ!」
両方のほっぺたを押さえてへたり込む、さっきとは別の意味で涙目になるカメリア。
「それよりも私とアンタの共同戦線、ちゃんと認めなさいよね!」
ならさ、カメリアは言った。
そんな事言える立場では無いだろう、そう反論が喉からでそうになったがカメリアが先だった。
「私のこと、カメリアって呼び捨てして?」
なんだ、そんな事か。
この、得体の知れない寂しがり屋で気分屋な女は本当に面倒臭い。
クラスじゃもっとサッパリしたキャラなのに、一体どうしたものだろうか。
百合回にしては雑ですね。
それに書いて見て思ったんですが情緒不安定過ぎだろwww
中学二年生かよwww
高校生はもっと大人びています、俺の周りでは少なくとも。
次回「第十八話」