IS IS学園って本来は女子校だから恋愛は基本的に百合なはずだよね? 作:セキエイ
流石に年明けまでには投稿しないと、と思い投稿しました。
言い訳をさせて貰えるなら、某ゆゆゆや某セレクターとかを見ていたので書く暇がなかったんです(泣)
チャイムが鳴って久しく、教室に戻るには遅過ぎる時間なので二人は仲良く保健室のベッドに横になっていた。
幸いこの時間は実技科目ではないのでIS操縦技能で皆に後れを取る心配は無い。
保健室付きの養護教諭には体調不良と伝えているが、仮病なので罪悪感はあった。
それにしても隣で眠る奴、本気で熟睡するなんて。
罪悪感の欠片すら見当たらない。
そんなカメリアを横目に、全く目の冴えている蘭はさっきの事を改めて思い返して見てこう思った。
「コイツ、訳分からない」
動機は分かるが、何故自分に対しそこまで突っ込んだ事をしたのか。
何故私にだけ、弱味を見せたのか。
今までは私はカメリアとは、少し仲のいいクラスメイト程度でしか無かった人間だ。
なのに普通ここまで心を許せるのか?
蘭には分からない。
今はこうして彼女の安心しきった寝顔を見る事しか出来ない。
無論起きていたとしてもそれを聞けるかと言えばそんな事は無い。
ふと、寝返りをうったカメリアの頬を金髪が流れる、乱れた制服の襟から豊満な胸の片鱗が覗いた。
(黒か)
釣られて見えた下着をしっかりと目撃して、まるで盛った男子中学生のようだと自嘲する。
その胸がさっきは私の胸に押し付けられて居たのかと思って、心臓が一瞬跳ねた。
重ねられた柔らかい肢体と伴う少しだけの痛み。
時間が経って気持ちの整理が終わると、身体に残ったその感触だけが矢鱈と鮮明に思い出される。
そこに嫌悪感は介在しない、ついさっきまではそれに全身を溺れさせていたのに。
さっきとは全く異なる思考で、鼓動が加速して行く。
(ダメだ、ダメだよ)
紛れもない劣情のそれだった。
身体が火照る、ストッキングの下の地肌が汗をかく。
蘭はベッドから立ち上がった。
「はぁ、もぉなんなのよ。なんでこんな奴でドキドキしてるのよ、バカ!」
言い訳だ。
制服が少しシワになってるのも意に介さず隣のベッドに近づき、恐る恐る人差し指でカメリアのほっぺたに触れた。
「カメリア、全部貴女が悪いんだから」
半ば自暴自棄で、今一度彼女のほっぺたを突く。
もちもち、ぺたぺた。
それなりに弾力もあって、すべすべしていて。
「羨ましいなんて、思ってない」
嘘だった。
次いで、震える手で金髪を優しく梳いた。
光を柔らかく透過する髪、どうしてかこれを独り占めしたい衝動に駆られる。
シャンプーと少しの汗の匂いが混ざったカメリアの香りが鼻腔を刺激した。
梳いた髪を鼻に近付けると、やっぱり良い匂いがした。
日なたの匂いに似ていると思った。
反対の手で、突くのではなく今度は頬を優しくなでてあげる。
「んっ、うぅ」
カメリアは小さく呻く。
それが妙に艶っぽくて一瞬息が詰まった。
「な、何よ。驚かせないでよ、もう」
陽を受けてしっとりと輝く形の良い唇が蠱惑的で、どんどん身体の火照りが加速する。
むしゃぶりつきたい、という欲望を頑張って意識の外に追いやった。
それでもキスの代わりに、さっきカメリアにされたのと同様に顔を近付ける、これで我慢。
気付くと、寝息さえも確かに感じられる距離に顔を近付けていた。
カメリアの美しさを自分一人のものにしている気がして、愉悦を口元に浮かべる。
嗚呼、眠り姫の如き彼女が、今はとても、とても愛おしい。
「勝てないな、私」
蘭は呟いた。
しかしこの一言が一方的に幸せを享受していた空間を自壊させた。
「・・・、勝て無いよ。」
この一言のせいでまた一つ、自分の格と相手の格の違いを身を持って知ったのである。
燃え盛っていた謎の衝動がすごすごと冷めて行くのが分かった。
また一つ、コンプレックスが生まれたらしい。
「私、何やってるんだろ」
我に帰る。
弄んでいた金髪を離す手の平に力は無い。
「変態じゃん」
無心でカメリアの居住まいを正しシーツを掛け直すと蘭は自分のベッドに戻る、そこにはまだ身体の火照りの余韻がまだ残っていた。
(本当に、何やってるんだろう私は)
今、身体を覆い掛けたシーツのように蘭を飲み込むのは自己嫌悪である。
織斑一夏という心に決めた相手が居るのにも関わらず、一瞬でも心をときめかせてしまった、しかも同性に。
その事実が彼女の心に澱を積もらせ、自己嫌悪させる。
何より初めて、同性をほんの僅かとはいえ性的な目で見て触れた事に恐怖した。
〜〜〜
「なんだ、今日は五反田とカラシュニコヴァは居ないのか?」
「はい、何か二人とも体調不良だとか」
大会までまであと3日、しかし蘭とカメリアは放課後の訓練に来なかった。
百合香は二人とも体調不良で休むからと、伝言を頼まれていた。
が、実際の所カメリアはただ何と無く面倒臭かったから休んだのであり、蘭は今日はもう精神的に一杯一杯でとてもじゃないが参加でき無い、というのが理由であった。
しかしそんな事などこのアリーナに居る百合香、さくら、千冬の三人には知る由もない。
「全くこんな大事な時に。仕方ない、今日の訓練は取り止めだ」
普段は鬼教官の千冬も、今日に限って訓練についてはアッサリしていた。
「南條、深角二人のISのカスタムを行って今日は終わるぞ」
専用機所有者は兎も角、学園所有のISを使用する生徒が大半である全校競技の場合、一般生徒には一時的に使用機体をカスタムする事が認められて居る。
カスタムと言っても、精々自分に合った武装や後付け装備を追加したり装甲を減らすくらいの事しか出来ないが、それでも出来無いよりなマシである。
優秀な生徒であれば性能格差が大きい専用機を相手にしてもそこそこに戦える、という前例があった為の措置だった。
百合香もこの通例に沿って、自らの機体をカスタムする事を以前から申告していたのだった。
千冬は二人の機体の調整と言ったが、殆ど百合香に付きっきりである。
〜〜〜
「南條の使うISは打鉄Gen3ブロック45、だな?」
ハンガーの中で、クレーンに釣られた機体を眺めつつ百合香は頷く。
打鉄、戦国時代の武将が纏うような外観した純国産IS。
これが私の機体。
「機体のコードナンバーは覚えているな?」
端末を操作しつつ、千冬が言った。
「は、はい。コード2005is108jpです。」
「よし、機体のロックが解除された」
彼女がコードを打ち終わると、ハンガーに吊るされた打鉄がハンガーごと此方に近づき、百合香の前で装甲を解放した。
乗れ、という千冬の一言でその打鉄を纏う。
「気分はどうだ?」
「大丈夫です」
そう言うと、再び端末を操作する。
同時に傍のさくらにもISを展開させて、そして二人の前に立った。
「これから機体のカスタムを始めが、その前にどういった方向性の元でカスタムを行うかを見極める必要がある」
千冬は指を二本掲げた。
「カスタムは基本的に自分の能力を引き出す為、味方の能力や弱点を補完する為の二つに大別される。
さて南條、お前はまずこの二つから方向性を選ば無いといけない。
どうする?」
突然そんな事を聞かれて、咄嗟に答えられるほど百合香はISに親しんでいない。
濃紺の六枚羽の僚機に視線を逃がす。
「え、えっと。まず先に深角さんの機体の特性を聞いてからでも良いですか?」
「ああ構わん。深角、貴様の機体の特性を答えろ」
突然振られたさくらは数秒目線が驚きで忙しく動くが、直ぐに口を開いた。
「・・・み、ミラージュ・ダンスはステルス機能を最搭載した中距離戦機です。
ステルス機能を優先してるので、エネルギー効率が悪いビーム兵器は基本使えない、です」
「なるほどぉ」
「・・・それとあの、ステルス機能を使用中は排熱処理の問題で、スピードを余り出す事が出来無い、です」
さくらは顔を赤らめて俯く。
「結構偏った性能をしているようだな、このISも。にしてもビーム兵器が使えないとなると、確かにISバトルのような短期戦闘は難しいな。
どうだ南條、これだけでも方向性が見えて来ただろう?」
「はい、」
その時ふと、百合香はある事に気が付いた。
「深角さん、もう一つ聞いて良い?」
こくんと頷く。
「ステルス機って事は攻撃を受けて機体の表面が壊れたりすると、その効果は低くなったりするの?」
「・・・うん。ミラージュ・ダンスはこのシールドバインダーのせいで防御力が高いように見えるけど、これはミラージュ・ダンスのステルス機能の大体を満載したものだから、当然効果は低くなる」
「ほう、つまりは攻撃を受ける事さえ許さない仕様だと、そういう事か」
「はい」
ふふ、と千冬は笑んだ。
中々面白い、相変わらず何を考えているか分からない小娘だが。
(戦うときは、ああも化けるのに)
「なら私、防御力と火力を重視したカスタムにします」
百合香は言った。
防御を厚く火力を高く、さくらを補完する為にはカスタムの方向性としては至極真っ当だ。
それに初心者の装備としても悪く無い。
「そうだな」
反対する理由は無い。
次回、第十九話
お楽しみに。