IS IS学園って本来は女子校だから恋愛は基本的に百合なはずだよね? 作:セキエイ
陽は稜線に半ば身を沈め掛けている。
都内のとある高級ホテルのスイートルームで、男と女がテーブルを挟んで対面していた。
二人の間に雑音は無く、ただ闇の中に澄んだ空気だけがあった。
真紅のドレスに身を収めている女は、テーブルに置かれたウォッカをグラスに注いだ。
「飲みます?」
豪奢な金髪を揺らして女は言った。
いえ、結構。まだ仕事が残っています。
男、現日本国総理大臣藤堂新一はそう言って酒を断わる。
勿論仕事もそうだが、藤堂はウォッカが余り好きでは無いのだ。
表情をピクリとも変えずに佇む彼とは対象的に女、出会った当初から亡国機業所属のスコールと名乗る女は、至福の極みとでも言うようにグラスを呷る。
「んっ、美味しいわぁ」
グラスの氷が傾き、カランと涼やかに鳴る。
藤堂は黙ったまま、傍に置いた鞄からファイルとUSBメモリー取り出し、卓上に上げた。
ふふっと上機嫌な笑みを咲かせて、スコールも大きく開けたドレスの胸元から、その二つ乳房に挟めた二本のUSBメモリーを卓上に差し出す。
「この中身、本当に正しいのだろうな?」
藤堂はスコールを睨みつけ言った。
「そんな恐〜い目をしないでぇ。勿論ちゃんと正しいに決まってるじゃない。
チェルノブイリ原発事故の終始の記録と、各国の原発事故や関連する記録。貴方が仰った、【この世にある全て】の記録は無理だけど、機業が集められる限りものがこれに詰まってるわ」
藤堂はまだ睨み続ける。
「分かってるわよ、Mr.藤堂。貴方が一番懸念しているアレについても、ちゃんと纏めてあるわ」
そこでやっと、視線を外す。
やれやれといった様子で、スコールはもう一口ウォッカを口に含んだ。
「貴方こそ、このファイルとデータに偽りは無いんでしょうね?」
「抜かりは無い」
そこで、お互いは差し出された得物を手に取る。
スコールは早速ファイルを開いて確認を始める。
「先月のテロの件の詳細と米軍が近々シリアで行う化学兵器強奪作戦の情報、それに新鋭戦闘機のスペック、ちゃんと纏めてあるようね」
「さっきからそう言っている」
USBメモリーを鞄に放り込みつつ、ぶっきらぼうに言う。
「ふふふ、国民の前じゃあ誰にでも親しまれる優男なのに私の前じゃあこんなに堅物だなんて。
貴方の国の国民にはなるつもりは無いけれど、ちょっとあんまり過ぎない?」
「・・・煩い」
藤堂はこの女の纏う雰囲気か最初から肌に合わないと自覚していた、つもりだった。
していたつもりでも、今日は虫の居所後が悪いからか、彼女の接していると腹が立った。
「ところでMr.、あのテロ日から私の友達が帰ってきていないんだけどぉ、知らない?」
「知らんな」
彼は知らない、目星はついているが。
知っている情報が有るととすれば、鹵獲したISのコアの所在位の物だ。
「嘘おっしゃい。あの日映像で見せた娘よ、ISパイロットの」
「その娘の事は知っているが、あの日映像で見たその後については知らん」
「本当にぃ?」
「ああ」
少し酔って頬を朱に染めた表情に変化は無い、けれどその瞳は激情に染まっていた。
恐い女だ、と淡白に思った。
「ただ、コアとパイロットと一部パーツが抜き取られた所属不明のISの残骸が、戦闘後の都内で瓦礫の下から発見された」
「何?」
食いついた。
藤堂は語りを続ける。
「この件に関しては日本国もとい現場の自衛隊すら関与していないから、残された物的証拠から信憑性の薄い推測しか出せないが、諸外国の薄汚い工作員共による非正規戦があったと見ている」
「本当に?」
疑惑の眼差しはまだ解けない。
「こうして貴方達から猫の手を借りねばならない身だ、何かを隠して支援を受けられなくなれば総てがパーになる。黙った事で何のメリットも生じない。分かって頂けましたか?」
ええ、とスコールは疑念をぬぐいきれ無いように呟いて、またウォッカを呷った。
藤堂は立ち上がった、用事は済んだ。
「あら、もう行くの?」
「多忙な身でね、また今度」
振り返りもせずに、彼は部屋を出る。
次回、第二十話
お楽しみに。