IS IS学園って本来は女子校だから恋愛は基本的に百合なはずだよね?   作:セキエイ

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百合を目指しているのに、男の方が多い(泣)


第四話

「始まりましたわね、でも大丈夫ですの?」

都内高級ホテルの一室、ホームシアターに写された衛星映像を見て女は嗤った。

「当然、第二世代ISといっても、自衛隊の戦闘機にしてみれば化物ですから」

L字に置かれたソファに肘をかけ、深く座っていた男も笑みをたたえて返す。

映像に移っているIS、リヴァイヴ・(ライト)は第二世代型初期の機体で非固定部位(アンロックユニット)が無く、背部から伸びたアームに推進器の類が繋がれているのが特徴であった。

また操縦者の体と顔を隠す為装甲が追加され、武装も出力可変式電子砲を装備しているため近~長距離をカバーできる、オールマイティーな性能を獲得していた。

ただ、現在主流の第二世代後半のISに比べれば、性能は劣る物である。

「ふふっ、五年前と違う所は特に無いわね。これじゃあエムもつまらないと思うわ」

「それはどうでしょう、ミセス。自衛隊はこの五年で装備も刷新し、隊員の錬度向上にも努めました、あの頃とは……」

「でもどうせ、本質的な体系は変わってないでしょ?」

くるくると指先で豪奢な金髪をもてあそぶ。

「貴方はどっちの見方なのよ、」

「ははは、痛いところを突きますな」

今年で齢73を迎える男であったが、若々しく見られる彼は、いたずらっ子のような若い笑みを浮かべた。

「勿論、そちら(亡国機業)の味方に決まっているでしょう?」

 

 

 

 

「織斑先生、緊急事態です!」

例によって、ばたばたと必要以上に慌ただしい動きで駆け寄る山田に、振り返った千冬は歩きを止めた。

「どうした?」

「ちょっとこっちへ」

所用で二年生の階に居る為、ここは平常通り生徒が多い。

山田はわりかし人の少ないロッカーの影に千冬を連れ込む。

「少し落ち着け山田先生、そして何があった」

「はい、その約十数分前から……」

 

 

 

(ふっざけんな、どうして攻撃許可が下りない!)

操縦桿の交信ボタンをいっぱいに押し込んで、Gに耐えつつインカムに怒鳴った。

「「今、政府は緊急で閣議を行っています、この結果が出るまで攻撃の許可はできません」」

紅く発光させた粒子ビームが、機体の直ぐ上を掠めた。

荷電粒子の電磁パルスによって、一瞬計器類付いたり消えたりをし、ヘッドホンにはノイズの嵐が通過した。

(何故だ、今俺達は攻撃されているんだぞ!正当防衛という名目で攻撃は可能なはずだ)

「「いいえ、現状攻撃をされては居ますが、受けては居ない筈です。したがって正当防衛、専守防衛には当てはまりません」」

つまり、こちらが殴る為にはあちらから殴られなければいけない、そういう事だ。

(くそっ)

南条は臆面も無く舌打ちをする。

(あんな攻撃、F15じゃ一撃ですら耐えられるわけが無い)

3連射された粒子ビームが、旋回中の機体を挟み込むように上下に擦過した。

明らかに、わざと外している射線だった。

(舐めてやがる、俺らが攻撃できないのを知っていてあいつは撃って来てるんだ)

後方を飛行する前田が苦々しく呟く。

既に乗機、僚機のF15に搭載された空対空ミサイルAIM-9BL(サイドワインダー)の射程には入っているのだ。

機首をIS本体の方へ向け、トリガーを半押しすればロックオンが可能で、それを全て押し込めば発射される。

(くそっ、くそっ、くそっ!)

乱れた電波が回復し、通信士の声が聞こえた。

「「カイザー1、2。小松基地よりF15二機が上がりました、二分後に戦闘空域に到達します」」

(了解、閣議決定はまだか?)

「「まだです」」

それじゃあ増援がきても変わらない。

(頼む、急いでくれ!)

口中に呟く。

そんな時、レーダーに映る目標の輝点が僅かに動き出した。

「「こちら中央指揮所、目標が移動し始めている、状況を知らせろ!」」

 

 

 

 

 

自衛隊戦闘機への攻撃が止んだ。

宇佐部のにその報告が舞い込んだのは直ぐであった。

そして、一瞬好転したかのように見えた事態は次の報告で急転する。

時速一キロほどの速度で、不明ISが日本へ進行しはじめたのだ。

 

 

「進行ルート、割り出しました」

正面の大型スクリーンをバックに担当官の声を聞き、航空自衛隊総隊司令部司令官、加々見原(かがみはら)空将はそれを示すよう指示した。

長年この職に就いている癖で、一度この中央指揮所をさっと見渡す。

革靴の足音と共に近づいてきた管制官は一礼し、持ってきた地図を広げた。

「このまま目標が直進を続けた場合ですね」

出現地点にはバツの印が付けられていて、そこからリアルタイムで更新される情報から逆算して、地図にペンで赤いラインを引いた。

「これは…」

加々見原は息をつぐんだ。

担当官は渋面を作って言った。

「通過地点で重要箇所は二つ。首都東京、それとIS学園です」

 

 

 

 

 

 

自室待機が後十分ほどで終わろうとしている最中、学園寮207号室で春の午後の妙に眠気を誘う空気が流れている中、さくらの携帯が鳴った。

瞼が下りようとしていた百合香は、それで一気に覚醒した。

さくらも同様のようで、制服の襟元を無意識に開けていたのかやや乱れていた。

ポケットから携帯を出すと、その電話の相手を確認する。

ピクリと眉が動くのが分かった。

チラッとこっちを警戒するような一瞥をして、暗に聞かないでくれというサインを送る。

私は人の話に聞き耳を立てるほど趣味が悪く無い

合わせられた視線を反対側に外すことで、自分の意志を現す。

そうして初めて、未だ鳴っている携帯に耳をつけた。

百合香はまずさくらが息を呑んだことに気が付く。

続けてさくらは、えっと言っていた。

約一分ほどの電話である。

最後に小さく、了解と言ったのが印象的だった。

百合香はそっぽを向かせていた頭を戻し、さくらを見た。

「み、深角さん、何かあったの?」

これは百合香自身にも言い聞かせるものであった。

自分の親は、常に死の危険と隣り合わせの仕事に就いている。

その為いつ自分にもこういった電話がかかってきて、最悪の事態が起こり知らされる事を覚悟していなくてはいけない、このことを再認識したかったのだ。

「……なんでも、ない」

俯きがちにさくらは言った。

嘘が下手だなと、百合香は思った。

 

さくらは手にリモコンをつと、壁にはめ込まれたテレビをおもむろに着けた。

「?」

パチパチと真剣な目をしてテレビを切り替える。

この時間帯、入っているのは通販やニュース番組、一昔前のドラマ位のものだが。

一通り目を通したが、民放の中にはお目当ての番組がなかったようで、最後にNHKに切り替えた。

丁度そのときだった、何年か前の連続テレビ小説の再放送をしている中で、画面の上部に速報を伝えるメロディと共にテロップが流れたのだ。

 

《石川県沖で、国籍不明の航空機(・・・)による領空侵犯が発生。国籍不明機は本土上空に侵入した模様》

 

 

 

 

網膜に直接投影された、状況と状態に最も合うように設定された無機質な外部風景が、エムの気持ちを高めるのには丁度良かった。

五年前とほぼ同じ戦闘の経過と言い、まったく手を出してこない戦闘機隊と言い、全てがエムを飽きさせていたのだ。

当たらないようにギリギリでビームを外す事は彼女にとって造作も無い事だが、敵を撃破出来ないという事に関しては戦闘シミュレーションよりもつまらないと思っていて、事実その通りである。

今回の作戦プランは、このまま日本を縦断し首都とIS学園、その周辺の威力偵察というものであるため、今回は偵察が目的である為スクランブル機の撃破は許されていないのだ。

「………」

攻撃を止めた辺りで、やっと領空侵犯についての警告と退去勧告が中国語、ロシア語、朝鮮語で共通回線によって聞こえてくる。

再三にわたる警告が煩わしく、回線を閉鎖させた。

 

偵察もそうだが、作戦前スコールに訊いて見たところこの任務は、日本現政権を崩す為のものでもあるらしい。

つまり政治の道具にされているのだ。

だからこそ、少し遊んでみようという邪心が生まれた。

時速一キロほどの速度で寸分たがわず直進していたのを、下方に見える青々とした木々の茂る尾根へ向かい急降下させる。

「…ククク、どこまでついてこれる…?」

命令違反の後ろめたさを知覚しつつも、退屈しないという事だけで高揚感はそそられるのだった。

命を賭ける戦には程遠い物の、それだけで舞い上がれるくらいに自分は飢えている、妙だが改めてそれを自覚する。

光量が抑えられた太陽をふと見てから、荷粒子砲の照準をおもむろに上空へ向けた。

追従する銃身が、基部の荷電粒子加速器で重く震えている。

苦笑に近い性質の笑みを、口端に現す。

とくとくと鼓動が熱を帯びて早まって居る。

たいした戦場ではないはずなのに。

トリガーのばねの反発力が指に心地よく、当てるつもりなど毛頭無い荷電粒子の焔を、やけになったかのように春の晴天へと打ち込んだ。

 

 




俺って恋愛物書けるのかな…、最近不安になってきました。

次回:「第五話」
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