IS IS学園って本来は女子校だから恋愛は基本的に百合なはずだよね?   作:セキエイ

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これからは更に投稿のペースが落ちます。
一体いつまで領侵犯ネタで引っ張るつもりなのかと思うでしょうが、次にはなんとかしめるつもりです。


第五話

ごうっと周囲の草木をはためかせつつ、ISを追って南条は一気に谷へと降下した。

(いた!)

緑色の視界の先にちらちらと、墓石の色をした影が見える。

一度見失った機影だったが、降下した地点から数キロ先に姿を見つけられた勘は、ひとえに彼の経験と操縦センスに裏づけされたものである言えた。

何はともあれ、茂る草木によって姿は確認し辛いものの何とか視認は完了した。

特にこういった渓谷域は斜面や別の山陰等で簡単に索敵用の電波が乱反射されやすい為、自らの目で確認するのは重要なのである。

しかし僅か数キロ先の全高3メートル弱しかないISを、この状況下で捉え続けていられるのは至難の業であった。

勿論、自機も超低空飛行はしているが、そもそもの機体サイズや制動性能の違いから少なくともISよりも、高い位置を飛行しなければならず、不利なのだ。

だが、山岳地帯での低空飛行は造作も無い、と言えば嘘になるが、元飛行教導隊仮想敵部隊(アグレッサー)副隊長を務めた彼には可能な芸当ではあった。

顎を生温い汗が数滴流れていくのを感じる。

(くっ、はあはあ)

特に天候が荒れていないのが幸いした。

吹き込む風が連なる山々で幾筋にも分散し、渓谷低空域特有の乱気流が偶に機体を激しく揺さぶるが軸線をブレさせるほど強い風ではない。

きらりと途切れた山の稜線から陽光がさし、反射して輝くISの存在を浮き彫りにさせた。

(距離は全く変わらずぴったり前を取っている、律儀なんだかなんなんだか。クソッ)

錆び付くのを防ぐ為、完全に湿気を取り除かれたエアを大きく吸うと、上空に居る僚機を一瞬見た。

鷹の名を冠した西側第四世代最強の翼が、吊り下げられた純白の空対空ミサイルが、自らの法で雁字搦めにされたF15Jの姿がそこにはあった。

(まだ攻撃許可は下りていない、か……)

視線を戻した。

ギリギリの飛行をしていると、どんどん思考がクリアになっていくのが分かった。

 

敵を憎む血は熱く、敵を追い詰める知は冷たく

 

学生の頃愛読していた小説の一文である。

また座右の銘であった。

さっと、輝いていたISの機影がまた途切れた。

次の山が太陽を隠したのだ。

数秒後、こちらの視界もまた陰る。

(俺も二番機も、燃料にはまだ余裕がある。今の内か……)

乾いたエアを、今一度意識して吸い込んだ。

(二番機、アレを行う。次の尾根で一気に決めるぞ!)

上空で追従する二番機に呟き、アフターバーナーを全開に叩き込む。

 

 

 

 

「総理、それでは攻撃許可は…」

「下す、なんとしてでも東京に入れさせるな!公式発表では航空機(・・・)と表現しているんだ、もしISだとばれたらマスコミが騒ぎ立てて面倒な事になる。それと周辺駐屯地から追加で戦闘機を上げろ、米軍にも要請しろ。以前制作した《緊急時防衛戦闘指南書》に則って第一次、二次防衛線の構築も急げ」

秘書がはいと頷こうとして、更に言葉を入れる。

「ただ各交通機関はストップさせるなよ。一番が怖いのは民衆がパニックなった時だ、あくまで日常の延長を演出するんだ。でも警戒は最高レベルに、この国に浸透した某国の連中が行動するかもしれない。警察消防には全力で対処するように」

秘書官は改めて頷いた。

だが宇佐部は休む暇なく携帯を取り出し、短縮コールを押した。

相手は笹山。

「…ッ、笹山か。一応彼女をいつでも出撃()せるようにしておいてくれ。学園から一番近くの自衛隊基地にむかってそこで待機しているんだ。とりあえず投薬段階までだ、いいな?」

一方的に言ってから、通話を終了する。

はやる気持ちを落ち着ける為に一度深呼吸、革張りの大きな椅子に座った。

「…ったく、入学式から帰ってきていきなりこんな事態だとは、はああ」

そこで、米軍に援助要請をするために携帯を耳に当てていた秘書官が、おもむろに顔を上げた。

「米軍は横須賀から艦載機二機と電子偵察機を一機、嘉手納から新型を二機回してくれるそうです」

「そうか、アメリカもアメリカだな。新型の実地テストをしたかったらしいしな、体のよい戦場という訳か」

「そういう、事でしょうね」

 

 

 

電話を終えたさくらは一分ほど立ち尽くしたまま床を睨み付ける様にしていたが、突然さっき届いたダンボール開封し始めた。

百合香はまったく知らないだろうが、事態は急を要している。

ガムテープで強力に封されている箱を、力任せに破り開け中から半透明のチャックつき小袋を取り出した。

その乱雑に開け方に、こちらを凝視しているルームメイトは別にどうでもよかった。

自分の正体さえバレなければ、こんな女なんて気にすることは無い。

小袋の中の固い感触を弄びながらバネ仕掛けのように立ち上がり、そして百合香を見据えた。

「……見ないで」

「えっ?」

声が小さくて聞こえなかったのだろう、小さくした打ちした。

「……見ないで。見ないで…なにも聞かないで、今何かあってもこの中に入ってこないでっ!」

自分としては叫ぶようにしてルームメイトに言葉を叩き付ける。

更にルームメイトに、追い討ちを掛けるように睨みを聞かせる。

「……ッ…お願い…」

「う、うん」

困惑した返答を背中で聞いて、バスルーム飛び込む。

 

 

 

チャックを開ける。

入っているのはプラスチックの外観を持つ、太めのボールペンに似た注射器だった。

 

カートリッジに薄色の薬物が注入済みなのを確認すると、ひとまず置く。

その手で学園の白い制服の前をはだけ、更に中に着たワイシャツの胸元も同様に緩めて、蝋のように血の気を感じられない肌を露出させた。

今脱衣所は温度設定を調整していないので、やや寒く感じる。

そっと指を首筋に這わせる。

つっと動かしてゆくと、規則的に微動する脈を特定した。

基本的にはきめ細かい滑らかな感触の肌だが、そこだけは傷口に傷口を重ねた瘡蓋の様な、醜悪に硬い肌となっている部分である。

自然と瞑っていた眼を開け、無造作に注射器を掴んだ。

アレルギー用の携帯注射を流用したそれは、病院などでよく見られるピストンタイプの注射器と違って、先端を肌に押し付けることによって針が飛び出し体内に薬物を放出するというものである。

別に体の何処の血管にでも使用は可能だが、薬を首から打った方が脳に速く回るのだ。

手のひらの温みで、プラスチックの注射器が気持ちの悪い温度になる。

注射針を覆うシリコンのカバーを、首筋にあてがう。

 

「……んッ…!」

ひんやりとしたシリコンに、体が勝手に震えた。

背を這い回るような、ぞくぞくする恐れ。

(…ひといきでやれば、)

ぐっと、手に力を込めた。

針が刺さる鋭い痛み、薬液が注入される。

「…ひっ、ああぁぁ」

瞬後、全身を貫く激痛とも快感ともいえるような、絶対馴れる事は無いだろう名状しがたい高ぶっていく感覚。

立ち続ける力さえ維持できなくなり、壁に背を預けずるずると腰を落とした。

天井がぐにゃりと歪むのを幻視する。

意識が溶けて再構築されていくような、脳髄を掻きまわされているような。

「ああ……あぁぁぁっ!」

肺から空気がこぼれて、声帯を独りでに震わせた。

視界がブラックアウトしホワイトアウトし、モノクロのトンネルを高速でくぐりつづけている気がする。

得体の知れない不快感が、腹の底から突き上げる。

ビクビクと体が断続的に痙攣し、開ききった瞳孔の瞳から一筋涙が伝った。

幻視している空間が吐き気を催すような、原色の極彩色に彩られた。

乾いたスポンジに水がしみこむように、記憶が心そのものが書き換えられていく。

違う自分にシフトする。

 

 

 

 

「見るな聞くなって、一体何をするのよっ」

頬が少し火照って、胸がどきどきする。

それはつまりなんだ、口に改めて言い出してから、何故かあんなことやそんなことを連想している自分が居た。

「う~っ、もう」

昼間から何妄想しているんだか、と軽く流そうとするも一度生まれたそういう疑念は中々拭えないものがある。

やるせないその感じに、特に意味なく結っていた髪を解いて、ばたりとベッドに倒れこんだ。

ふわりと散った髪が重力に引かれて不規則にシーツの上に散らばると、百合香はそれが少しうっとおしく思った。

「…なんなのよ、」

それは今日一日で溜まった、ストレスの噴出であるともいえた。

意識はしていなくとも、彼女の心の奥底ではルームメイトが何でこんな奴なのか、という不満が当然として存在していたのだ。

高校一年といえども数ヶ月前までは中学生だったただの少女だ。

高校生と言う区切りで思考回路を、たったその数ヶ月で大人と同じにしろ、というのは酷な話である。

それでなくても今日は入学式と言う日、これまでとは違う環境見知らぬ人間、個人差はあれどストレスがたまらないほうがおかしい。

このまま悶々として過ごすのかと嘆息してる百合香だったがしかし、直後バスルームからの嬌声で飛び起きる羽目になったのは言うまでもなかった。

 

 

 

早く繋がれよ、くそ。

焦燥感から、内心毒づきつつ学園へ電話をかけている笹山は、上空を忙しく駆けていく自衛隊の攻撃ヘリを認めた。

四コール目でやっと学園の担当教師繋がる。

「「はい、こちらIS学園です。現在生徒主任教師は不在の為、変わって用件をお伝えください」」

「はい、今年入学した一年の深角さくらの保護者ですが、緊急に家へ連れて行かなければいけない用事あるので、帰らせてもらえませんか。急いでいるんです」

言いなれて無い、いや言ったことの無い台詞を口にするのはやはり無理があったと痛感した。

明らかに不自然である。

まあ、それでも笹山の口調から極めて緊急の用事であることは理解したようだった。

「「分かりました、では正門から入って守衛の指示に従って待っていてください」」

 

 

 

 

 

 

 

前方に広がる地形は、それまでの緩やかな斜面に囲まれたそれと異なり、土と岩の色が剥き出しな切り立った物となっていた。

まあそれでも高さはたいして無いし、地面に近い所はやっぱり変わらず緑に覆われている。

山と山の間が100メートルも無い、峡谷というべき地形が数キロに渡って続居ているのが問題ではあるが。

だがエムにとっては、図体が数倍も違うカモを誘い込むのには丁度良いと考えた。

「後ろからビームを掠めれられれば、勝手に墜落してくれるかもしれないな。フフッ」

アフターバーナーに点火し追い縋ってくるF15を尻目に、口元をほころばせた。

わざと高度を上げ、蛇行と軽いローリングを行って挑発する。

そこから一気に峡谷の底へ飛び降りると、案の定先行している編隊長機と思われる機体も追ってきた。

僚機も変わらず上空から追尾している。

さあ、遊んでやろうじゃないか。

 

そう思った直後である。

網膜スクリーンの端の方に、タブが追加されるのがわかった。

しかもそれは作戦命令の類、苛立ちながら開く。

「あーあー、エム聴こえている?」

直接音声通信であった。

「…はい、」

「あーじゃあ言います。あのエム、別に遊んでもいいのだけれど作戦変更よ。日本はいま貴女の事を、ISではなく領空侵犯した航空機として報道しているの。多分自衛隊と米軍で、首都に入る前にケリを付けるつもりみたい」

「……」

「そこでなんだけど、それを突破して東京で一暴れして欲しいなって。そうすれば日本の現体制は確実に崩壊するわ、目的達成よ。そういうことだから偵察任務は破棄して構わないわ。撃墜命令は出せないけれど、回収ポイントも変わらないしそれに援軍も出す。ね、簡単になったでしょ?」

甘ったるいよう蜜のような口調。

微かに衣擦れの音が混じる

「、援軍はいらない」

押し殺した声量の中に激情を込めて言い放った。

誰かの助けを借りる、この事実がどうしても彼女のプライドを抉ったのだ。

「あら失礼、援軍という言い方は少し違ったわね。現在貴女は全ての自衛隊と在日米軍に戦力を向けられているの」

「大丈夫だ。たとえ日米両軍の兵器で掛かってきたとしても、ISなら全てをねじ伏せられる。だから援軍は…」

「話を最後まで聞いて頂戴。いい、上層部からのお達しで撃墜の命令が出せないということはこのままだと、自衛隊はともかく米軍に後をつけられて、回収ポイントが露呈してしまう危険が有るの。だからこの状況をもっと混乱さてうやむやにする為に戦力を投入するの」

「でもッ!」

「いい、その援軍もどうせ死んだって構わない消耗品だから気にする必要は無いわ。もうその戦闘機は発進させたのだし。念を押すようだけどこれは命令よ。じゃ後は頑張って」

通信は一方的に切れた。

「チッ」

とりあえず、場所を考えないで全速力で突っ込んでくるバカなF15を、オーバーシュートさせた。

 

 

 

 

 

 

「「カイザー1、2聞こえているか?たった今、国会の安全保障理事会で、不明ISへの撃墜命令が発令された。小松や百里、米軍の新型が増援に駆けつけているが、速くても2分は掛かる。どうにか押さえ込んでくれ」」

恐らくオーバーシュートをし背後から攻撃をしようとしているISに向かいフレアを放出した所で、この通信が聞こえた。

(タイガー!)

(ああ、ロックオンできたら確実に当ててくれよ)

一泡吹かしてやるぜ。

ぐっと操縦桿を握りなおした。

追い越した後、やはりつかず離れずの位置に張り付いているISをサイドミラーで確認すると火器管制をON、短距離ミサイルに設定する。

HUDにミサイル用の照準が現れるのを確認した。

(セイバー、行くぞッ!)

TACネームで呼びつけるとエアブレーキ、機体上面の抵抗板が開き、握り締めた操縦桿を手前に引き込んだ。

(クッッ、ううう)

強烈なプラスGが飛行服の体を射出座席に縫い止める。

胸をGに押さえ着けられ、肺から空気が抜ける。

奥歯をかみ締め一番キツイところを終えると、大きくエアを吸い込んだ。

重力を尻から背中に移ったのを感じ、視界が晴天の蒼の一色に染まる。

(ははは、突撃趣向のあるバカな新米パイロットとでも思っていただろ。残念、これでも俺はパイロット歴八年だ)

 

急激な速度低下と機首上げで、機体が進行方向に対して垂直になる。

F15の機体全体でエアブレーキをかける形となり、更に速度が低下した。

そして、そのままこれまで変わらない進行方向に突き進む。

翼端の接触、完全な失速、突風、バードストライク、留意することはいくらでもある。

所謂コブラと言う戦闘機動であった。

 

速度を維持したままISは、垂直に直立したF15と左右の切り立った崖で文字通り囲まれた。

唯一残った後方の退路も、急降下してきた二番機がロックオンをして塞いだ。

「なっ、クソ!」

思わずエムは声を荒げ、急停止する。

灰色のISに、隙が生まれる。

(撃て!セイバーァァッッ!!!)

(フォックスツー!!!)

ヘッドホン一杯の声量の叫び。

そしてたいした間も空かず、南条の頭上がオレンジ色の染まる。

(ぐッうぅ)

衝撃波で機体が揺れる。

即座に推力を調整、このタイミングで前方から吹き付けてきた風が爆風との均衡状態を作り一時的に機体が安定した。

しかし、このままバランスを崩せば即墜落である。

そもそも通常こんな低空域かつ閉鎖空域でコブラを行うのは、馬鹿としか言いようが無い所業であった。

しかもコブラ機動自体超がつくほどの高等技であり、本来ならF15の空戦機動性能でそれをするのは無謀であるのだ。

至近の爆発でピトー管が弾け飛んだのか、HUDに一部の情報が表示されなくなった。

額に汗が伝う。

ともかく、相手はIS。

対空ミサイル2発程度で撃破できたとは考えられない。

頭を上に振り向けて見えていたISが上空へと飛び去る。

(バカめ!)

バランスを崩さない程度に絞っていた推力を復活させ、すぐさまそれを上昇力へと変化させる。

四方を囲まれた敵が上空に逃げる事は、容易に想像できた。

機体が上昇し始めたタイミングで、まず管制レーダーがISを捉えた。

次いで拭い去ったミサイルの爆煙の向こう、快晴の空の中にぽつんと浮かんでいるISが見える。

南条の読み通り、先に上空に機首を向けていたF15の射線上に飛び込む形になった。

(喰らえよ)

避ける暇さえ許さずミサイルを放つ。

立て続けに前田も二回目のミサイルを放った。

(まだだ!)

機体を水平に戻さないで、以前上昇をさせる。

火器管制をGUN、所謂内蔵された機銃に変えると、照準の中央にミサイルを受けて煙に巻かれているISを入れた。

更に増速、トリガーを引く。

(航空自衛隊をなめんじゃねえ!)

煙で見えないISに向け、視界の右端から中央にかけて、二十ミリ機銃弾が吸い込まれていった。

当たっているかは不明だが、すれ違うその瞬間までトリガーを引き続ける。

(前田、上空2000メートルまで退避しろ。)

(了解!)

スクランブル発進機程度の火力でISを落とせるとは思っていない、これが二人の共通理解であった。

だからそう指示を出したのだ。

(時間は稼いだ)

(あとは、落とされないことを祈るのみってね)

援軍の第一陣、小松基地からのF15二機の影がレーダーに移りこむ。

 

 




次回:第六話
IS戦にやります。
それとF15でコブラとか、あほすぎですね。
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