規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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vs三魔騎士

 戦いが始まった。

 オレは紫の騎士に切りかかる。

 ガキィンッ!

 紫の騎士はオレの剣を剣で受けた。

 火花が散ってつばぜり合い。

 

「中々の実力ではあるようだが……。

 先のご老人には劣るな」

 

 紫の騎士が、ザッと下がって剣を振る。

 三日月状の斬撃が、オレに向かって飛んでくる。

 

「んっ!」

 

 マリナが氷のツララをぶつけ、相殺した。

 

「ファイアボルト!」

 

 オレは雷属性が混ざった炎を放つ。

 それは甲冑に吸収された。

 

「我に魔法は通じんと、先刻教えたばかりのはずだが?」

 オレの魔法が、増幅されて跳ね帰る!!

 

「やっぱりダメか……」

 

 フャイアーボールをぶつけ、爆発させて横に転がる。

 手を伸ばし、魔法――といきたいとこだが放ったところで意味がない。

 自重する。

 

 爆風に乗じて突っ込んだマリナが、紫の騎士に拳を入れた。

 ズガガガガンッ、五連撃。

 さらにタトンと宙を跳ね、華麗なる回し蹴り。

 

「硬い………。」

 

 しかしダメージを受けたのは、むしろマリナのほうだった。

 騎士の体はグラリとゆらぐが、大したダメージには見えない。

 騎士がブオンと振るった剣を、バック宙で回避する。

 

 騎士に大きな隙が生まれる。

 やはり魔法を使いたいところだが、魔法は効かない。

 オレは地を蹴り切りかかる。

 

 しかし斬撃に対しては、騎士の反応は早い。

 きっちりと対応し、剣を振り上げ受け止める。

 ギャリィンッ!

 二度目の火花が散った。

 

「斬撃はきっちりとガードするあたり、食らえばダメージは行くみたいだな」

「机上の空論というやつだな」

 

 オレと紫の騎士は、剣を重ね合わせてにらみあう。

 声がした。

 

「クックック……。

 それでは我も、参戦させていただこうかネェ……」

 

 黒い騎士の声だった。

 後ろの聖騎士たちを殺した、死の音を発する。

 意識がボワッと遠ざかりかける。

 

「戦闘しながらになると、不快指数が段違いだな……」

「本当に、不快で済んでるのかネェ……」

「力の衰えを感じるぞ……?」

 

 魔騎士の指摘は正しかった。

 オレのステータスは、単純に低下している。

 それなりに鍛えた聖騎士複数人を即死させるような呪いの言葉を、実力者を相手取りながら聞かされて無事で済むはずはないのだ。

 

「確かに厄介な呪いだが――。

 わたしがいれば、どうにでもなる」

 

 後方のリリーナが、自身の指をパチッと鳴らした。

 低下したステータスが元に戻る。

 

「ナニ……?! 我の発した、死の音ガ……?!」

 

「遠い昔に猛威を振るったのが貴様らと聞くが……。

 ヒトは常に進化している。

  猛威を振るっていたのが遠い昔という時点で、もはや大した存在ではない」

 

 リリーナは、右手を前にだしながら接敵していく。

 

「ぐ……。ググ……!」

 

 黒い騎士は死の魔力で空間を満たそうとするが、リリーナが張った白いバリアに押されていく。

 

「増してわたしは、貴様らの天敵である聖属性の使い手だ。

 貴様らが――わたしに勝てる道理はない」

 

「このロリ餓鬼ガァーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 黒騎士が剣を振りあげ振り下ろす。リリーナは紙一重で回避すると、手刀を入れた。

 ザンッ!

 黒騎士は真っ二つになる。

 

「クリストフたちさえいない時代ナラ……。

 世界は、我ラ魔騎士団のものと思ったのニ…………」

 

「考えが甘いな」

「グギャアアァー…………!」

 

 リリーナの光に包まれて、黒騎士は消えた。

 右手だけがガチャリと残る。

 

 リリーナは、「さて……」とつぶやき踵を返す。

 オレの横を通りすぎ、さらりと言った。

 

「そちらの紫は頼むぞ、少年。

 キミやマリナにとって強敵ではあるが、勝てない相手ではない。

 わたしはこちらの、殺された聖騎士たちを蘇らせる」

 

「そんなことができるのか……?」

「死体の状態がよい上に、死後間もないからな。

 蘇生できる可能性は高い。

 これが心臓を潰されていたり、死後一日でも経っているとどうしようもないのだが」

 

 リリーナは、こともなげに言った。

 瞳を閉じて、意識を集中させていく。

 

「やはり蘇生に問題はなさそうだが……。

 立ち込める瘴気が少々邪魔だな。

 ローリア。少し手伝え」

 

「ど、どうすればいいっすか?!」

「聖魔法のバリアを張って、わたしを包め」

「はいっす!」

 

 ローリアが、光りのバリアを張った。

 紫の騎士が、唖然としてつぶやく。

 

「シュバルツがやられ、シルバと互角のやつもいる。

 この世界は本当に、我らがいた世界なのか……?」

 

「リリーナが言った通り、ヒトは進化するってことなんだろうよ!」

 

 オレは戸惑う紫の騎士に切りかかった。

 

「ぐううっ!」

 

 紫の騎士の騎士は、左手からも剣をだした。二刀流だ。

 オレの斬撃を、自身の剣を(クロス)させて受ける。

 ギャリィンッ!

 三度目の火花。

 

「調子に乗るなよ……小僧!」

 

 騎士の瞳が怪しく光る。鋭い悪寒を感じたオレは、首をツイっと横にズラした。

 ギュオンッ!

 まばゆい閃光がオレの横を通過して、背後の壁に穴をあけた。

 もしも直撃していたら、死んでいてもおかしくなかった。

 

 紫の騎士が、追撃をかけてくる。

 オレは剣を両手で握り、迎撃の構えを取った。

 

 ギャリィン! キキィン! ガキィンッ!

 互いに打ち合う。

 オレが徐々に押されていく。

 やはり二刀が相手では、手数の面で劣る。

 そのときだ。

 騎士の右足首が、カキィン――と凍る。

 マリナであった。

 

「魔法だとっ?! どういうことだ?! わたしに、魔法は――」

「だからわたしは、あなたを凍らせてはいない。」

 

 マリナは騎士の、足元を指差した。

 

「わたしが凍らせたのは、あなたの足首の周りの空気。」

「くッ……!」

 

 騎士はすぐに足を引き抜く。

 その一瞬を、オレは狙った。

 

「食らええっ!!」

 

 オレの鋭い斬撃が、騎士の右腕を飛ばした。


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