規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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ミーユが一番常識人

 雑談をしながら進んでいると、遠くに森が見えてきた。

 リリーナが言う。

 

「あそこだ。竜人の里は、あの森の奥にある」

「では降りますか」

 

 オレは車を止めた。

 静かにおりて森を見る。

 遠くから見る限り、ちゃんとした森だ。

 空の青さとのコントラストが美しい緑の森。羽ばたく白い鳥も見える。

 のんびりと森林浴でもしたいような森だ。

 

 森の中に入る。

 ひんやりと涼やかな空気に、木漏れ日がまぶしい。

 道らしい道がないせいで歩きにくいところではあるが、基本的には綺麗な森だ。

 

「フハハハハ! 綺麗で気持ちよくって、爽やかな森だぜなー!」

 

 カレンが楽しげに走りだす。

 

「待てカレン。一見美しいこの森であるが……」

 

 リリーナは注意しかけていたが――。

 

「ぜなあぁ!!」

 

 カレンは落とし穴に落ちた。

 

「カレン?!」

 

 オレたちは駆け寄った。

 

「なにかヘンなのがくっついてくるぜなあぁ~~~~~」

 

 穴の底では、カレンが複数のグリーンスライムに襲われていた。

 カレンはバレーボールサイズのそいつらを、ひっぺ剥がして放り投げ、ひっぺ剥がして放り投げた。

 しかし多勢に無勢すぎて、どうしようもならない。

 服がかなり溶かされている。

 

「激しき風よ! 我が声に従い動け! リトルサイクロン!」

 

 ミーユが小さな竜巻を起こした。カレンの体が巻きあがる。

 竜巻に挙げられたカレンは、あられもない姿になっていた。

 スライムにやられた衣服が飛んでいき、スカートがまくれる。

 

「ぜなあぁーーー!!」

 

 と抵抗していたが、徐々に裸になっていく。

 すばらしい光景だ。

 地上にドサりと落ちたときには、一糸まとわぬ全裸になってた。

 リリーナが言った。

 

「一見美しいこの森であるが、危険な生き物も多数いる。地面を溶かして落とし穴を作り、落ちてきた獲物を捕食する森スライムはその一例だ。動くときは慎重にな」

「先に言ってほしかったぜなあぁ……」

「それはすまん」

 

 全裸で涙ぐむカレンは、とてもかわいらしかった。

 

「レイン。」

「どうした? マリナ」

「わたしも、落ちてきたほうがいい?」

「ええっとぉー……」

 

 さすがに答えに詰まってしまった。

 しかしマリナは、オレの詰まりを察してくれた。

 穴に近づきぴょいんと跳ねて、自ら餌食になりにいく。

 

「ご主人さまが、お喜びになられるのでしたら……」

 

 ミリリもぴょいんと飛び込んだ。

 

「んっ………。あっ………。」

「はにゃああっ……!」

 

 ふたりともスライムにやられ、服が溶かされていく。

 オレの希望とはいえ恥ずかしいとは思っているのか、身をくねらせる姿も愛らしい。

 

「バカかオマエらっ?! リトルサイクロン!」

 

 ミーユがふたりを助けるべく、竜巻を起こした。

 ふたりの体を舞いあがる。

 衣服がちりぢりになっていく。

 常識的な突っ込みがオレの眼福になっているのは、中々に皮肉だ。

 ふたりの体が落ちてきた。

 

「ミリリはわたくしが」

 

 リンがそう言ってくれたので、裸のマリナをお姫さま抱っこする。

 肉感的な重みが、ずっしりと伝わってきた。

 

「ん………♥」

 

 マリナはオレの肩に手を乗せて、お礼のキスをほっぺたにしてきた。

 むぎゅっと抱きついてくる。

 裸の巨乳が、オレの体に当たって潰れた。

 

「マリナは甘えっ子だなぁ」

「あなたのことが、大好き好き………だから。」

「はにゃあぁ……」

「どうしたのですか? ミリリ」

「ご主人さまのためと思っていたしましたが、実際に裸になると恥ずかしかったですにゃ……」

 

 それを言うミリリは、腕や股間を隠していた。

 甘えてくるマリナはかわいいが、恥らっているミリリもかわいい。

 オレは予備の服をだす。

 

「できれば、見ないでほしいですにゃ……」

 

 ミリリはオレに背を向け着始めた。

 ミーユが無言で壁になる。

 オレはマリナに服を渡した。

 

「………。」

「どうした? マリナ」

「あなたに、着せてほしい………。」

「仕方ないなぁ」

 

 オレはマリナの後ろに立った。マリナに万歳をさせる。伸びあがった腕に、衣服の袖を通させた。

 マリナの衣服はワンピースみたいな感じなので、着せるのが楽なのだ。

 白い衣服がおっぱいを通過するときにはおっぱいを触った。着せ終わったあとには軽く抱きしめ、お腹や股間をふにふに、ぷにぷに、したりした。

 

「やんっ………。」

「あっ………。」

「えっち………。」

 

 などと言うマリナだが、オレが手を離そうとすると――。

 

「いやっ………。」

 

 オレの手首を握りしめ、離させまいとする。

 かわいい。

 そんな感じでイチャつきながら、森の奥を進む。

 巨大なラフレシアをファイアボルトで威嚇したり、伸びてきたツルを切り払ったりして進む。

 少し変わったところでは――。

 

「なんだこれは……」

「双葉の行進だな。害はないから気にするな」

 

 足のついた双葉が、行列を作ったりもしていた。

 ただの双葉がザッ、ザッ、ザッ、ザッ、と歩く姿は、なかなかにシュールだ。

 オレたちは、双葉を飛び越えて進んだ。

 やがて川の前につく。

 幅の広い川である。向こう岸まで、百メートルはありそうだ。

 

「オレとマリナなら、ジャンプで飛び越えられそうだけど……」

「アタシは絶対無理だぜなっ!!!」

「ミリリも自信はないです……にゃあ」

「ボクも自分ひとりなら、風魔法でなんとかなるけど……」

「川を渡る必要はないぞ? 竜人の里は、この川をのぼっていった先にあるからな」

「そうだったのか」

 

 オレたちは、川に沿って歩き始めた。

 百メートルほど歩いたころだろうが。

 グオゴゴゴ――と地面がゆれる。

 振動から察するに――。

 

「地下からの攻撃かっ!!」

 

 オレはバックステップを踏んだ。

 

 ズドォンッ!!

 巨大な触手が、地面から生えた!!

 

 触手はするりと引っ込んだ。

 オレは川のほうを見る。

 巨大なタコが、ザバァ……と現れた。

 その額には、モンスターの証である魔水晶。

 ネズミ程度のモンスターでもライオンを越える強さにしてしまう、未知の水晶である。

 

「アレは……災害指定種のヘラクレスオクトパス?!」

「知っているのですにゃ?! ミーユさま!!」

「魔水晶でモンスター化したときに、災害級の被害をもたらす生き物のことだ! もしもモンスター化している災害指定種の存在が確認されたら、国に報告して軍に出撃してもらわないといけない!!」

「たったっ、大変ですにゃ……!」

 

 ミーユとミリリが色々と言っていたものの、オレはヒュオンと剣を振る。

 ズバアアッ!!

 

 タコは真っ二つになった。

 

「よし!」

「さすがは、ミリリのご主人さまですにゃあ……!」

 

 ミリリは両手を重ねあわせて、尊敬の眼差しでオレを見た。

 

「いや……。もう……。知ってたけどさ。レインが強いってこと、知ってたけどさぁ……」

 

 逆にミーユは、色々と言いたげだった。

 何気にミーユが、みんなの中で一番の常識人になっている気がする。


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