規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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修行の始まり

 前回のあらすじ。

 オレは強くなるため、竜人の里にやってきた。

 しかし自分を強くしてくれるはずの幼女スケイルは、あまり強くなかった。

 弱いわけじゃないんだけど、オレとは互角で、父さんより弱かった。

 

 カレンを強くすることにも失敗していたし……。

 大丈夫なんだろうか?

 なんて考えていると、幼女スケイルは叫んだ。

 

「貴様その顔! わっちの力を疑っておるなっ?!」

「あっ、はい。すいません」

「しれっと謝るでないわぁーーーー!!」

「無礼なのは謝りますが、父さんよりも弱くてカレンも強くできないんじゃ、不安に思うのは仕方ないと思います」

 

「本当に、ハッキリと言うのう……」

「オレが心の中で思ってただけのことを、わざわざ拾ったのはスケイルさんですし」

「本当にハッキリと言うのぅ!!」

 

 全力で叫んだスケイルは、オレをビシッと指差した。

 

「しかしわっちがすごいところは、『方法』をたくさん知っておることじゃ!

 六千年とも言われる竜人族の歴史のうちの、五百年分の知識は頭の中に入っておることじゃ!

 大小あわせて六八〇〇の『技と魔法』を知っておることじゃ!

 その者が習得したい技能に合わせ、三二〇〇ある『訓練の方法』から、もっとも適切なものを選べることじゃ!」

 

「それはすごいですね」

「わっちを尊敬するがいい!!」

 

 スケイルは、えっへんと胸を張った。

 

「スケイル殿は、今日も褒められたがりであるな」

 

 リリーナ二八〇歳が、他人ごとのように言った。

 

「…………」

「いや待て少年! どうしてわたしを、奇妙なものを見る目で見たのだ?!」

「イミハ アリマセン」

「発音がおかしいぞっ?! 少年は、わたしがスケイル殿と変わらんレベルの褒められたがりであるというのかっ?!」

 

 まさかの自覚なしだった。

 かなり残念なところだが、リリーナなので仕方ない。

 オレの中ではもうすでに、『リリーナと書いて残念と読む』の図式ができあがっている。

 それはさておき。

 

「訓練の方法を三二〇〇も知っているなら、早くやってはもらえませんか?」

「わっちの話を聞いてはおらんかったのか? わっちは中立じゃ。一方の陣営に肩入れなどをするつもりはない。掟でもそうなっておる」

「陣営に肩入れとかではなくて、単に入門者として強くしてください、という理由でもダメですか?」

「確かにその理屈なら、掟的には問題ないが……」

「ないがなんです?」

「おヌシはさっき、わっちを小ばかにしたからのぅ……」

 

 早くも根に持たれていた。

 

「だけどオレ、このままじゃ撤回はしませんよ?

 さっきのカレンじゃないですが、口先ではなんとでも言えますから」

「ぐぬぬ……」

 

 それは安い挑発だったが、幼女スケイルは乗ってきた。

 このへんは、カレンへの対応を見ての計算尽くである。

 

「フンッ」

 

 スケイルは、すねたかのようにそっぽを向きつつ、光る玉を投げてきた。

 ビー玉サイズの小さな玉だ。

 

「飲んでみい」

「はい」

 

 オレは素直に飲み込んだ。

 その直後、スケイルが叫ぶ。

 

「グラビティ!」

 

 全身が、ずっしりと重くなった。

 

「今飲ませたのは、耐性弱化の宝玉じゃ。あらゆる魔法への耐性が、五分の一に低下する。その上で、わっちは重力が二倍になる魔法をおヌシにかけた」

 

「つまり今のオレは、いつもの十倍の重さがあるってわけですか」

「そういうことじゃ」

「…………」

 

「無言になってどうしたのじゃ? 重力魔法を操れるわっちを、早くも見直したのか?」

「あ、いえ、すごいとは思ったんですが、ディアギルムはこちらの重力を無条件で百倍とかにしてきてたよなぁ……と思いまして」

「これでもわっちを認めんのかー! あんまり言うとスネるぞ?! わっちスネるぞ?!」

「いやほんとすいませんでした」

「わかればよいのじゃ!」

 

 スケイルは胸を張った。

 その時だ。

 

(ふにっ………♥)

 

 不意に背中に、やわらかな触感。

 マリナであった。

 オレの背中にくっついて、意味ありげな視線を向けてる。

 やわらかいのは、豊満にして放漫なおっぱいであった。

 

(………。)

 

 マリナは無言でオレを見つめて、スケイルを見た。

 

(ぴと………。)

 

 オレの背中に顔をうずめる。

 マリナはけっこう、人見知りする。

 オレが攻撃されて怒ったりしているときは平気だが、冷静になると人見知りする。

 これで大丈夫なのだろうか、と思って話してみたことはあるのだが――。

 

(あなたが、いてくれるから………。)

 

 と言われてしまったので、甘やかしたままである。

 ハッハッハ。

 そんなマリナを代弁するべく、オレは口を開こうとした。

 だがその前に、ミーユとミリリが同時に言った。

 

「「あのっ!」」 

「どうしたのじゃ?」

「えっ、ええっと……」

「ミーユさまから……」

「いや、ミリリからで……」

「ミリリはミリリは、奴隷の身でございますし……」

「それを言ったらボクだって、レインの恋人してるだけの平民…………えっ、へへへへ」

「ミーユさま……?」

「いや、ごめん。『レインの恋人』って普通に言ったけど、実際に口にだしてみるとついニヤけちゃってさぁ…………えへへへ」

 

 かわいい。

 

「それでなにを言おうとしていたのじゃ?」

 

「あっ、はいっ!

 ええっと……レインに飲ませたその球を、ボクたちにも飲ませてください!!」

 

「ほぅ?」

「ボクたちが修行して、どこまで強くなれるかはわかりません。

 でも黙って見ているなんて、絶対にできないんです!!」

(こくっ。こくっ。)

 

 ミーユが強く力説すると、オレの背中のマリナもうなずく。

 

「ミリリもミリリも、まったく同じ気持ちですにゃ!」

(こくっ! こくっ!)

 

 ミリリが言うと、マリナも強くうなずいた。

 

「ミリリが言ってミーユさまがおっしゃるのでしたら、わたくしも後ろにいるわけにはございませんね」

 

 リンも静かに前にでる。

 

「ほっほっほっ。よい娘たちに好かれておるのぅ」

「オレもそう思います」

 

 その時だった。

 

「どうして誰も追ってきてくれないんだぜなあぁ?!」

 

 一度泣いて逃げたカレンが、もっと泣いて現れた。

 

「知らない土地でひとりになって、とっても不安でさびしかったぜなぁー!!」

「自分から逃げておいて泣きじゃくるとは、すさまじい理不尽でございますね……」

 

 ○(>△<)○な顔で叫ぶカレンに、リンは冷静に突っ込んだ。

 

「それはそれとして……。

 お戻りになられたということは、カレンさまもお修行をなさるのですにゃ?」

 

「どういうことなんだぜな?」

「スケイルさまは、潜在能力をパーッと引きだす以外にも、色々なお修行法を知っているらしいのですにゃ。ミリリたちは、そのお修行を受けようと思っていたのですにゃ」

 

「まさか戦うつもりなのぜなっ?!」

「おっしゃる通りなのですにゃ」

 

「だけど相手は、レインでも勝てないような相手ぜなっ! アタシたちが修行して、どうにかなるとは思えないぜなっ!」

 

「例えばディアギルムには、部下を引き連れてくる可能性もございます。

 そのような場合は、わたくしたちがお役に立てる可能性もございますかと」

 

「ぜなあぁ……!」

 

 例え役に立つ場合でも、戦いたくはないらしい。

 カレンは瞳をうるませて、ぷるぷると震えた。

 

「いや別に、無理はしなくてもいいんだけど」

 

 するとカレンは、両手をパタパタと動かして叫ぶ。

 

「みんながいなくなったら、アタシはまたひとりぼっちだぜなー!

 ひとりはさびしいんだぜなー!」

 

 こうしてみんな、オレの修行につきあうことになった。

 魔法耐性をさげる宝玉を飲んで、体を十倍の重さにしてもらう。

 

「うわあっ!」

「はにゃあぁ……!」

「全身が重たいぜなあぁ……!」

「くッ……!」

 

 ミーユがその場でべちゃりと潰れ、ミリリとカレンは立てずに四つん這いとなる。

 リンですら、槍を杖代わりにしてかろうじて――という有様だ。

 

(………。)

 

 唯一普通にしてるのは、オレのマリナだけであった。

 

「マリナは平気か?」

 

 マリナは静かに首を振る。

 

「すこし、おも………。」

「おも?」

「………。」

「マリナ?」

 

「重くない。」

 

「ん?」

「わたしは、ぜんぜん、重くない。」

 

 オレのマリナは、体重的な意味での『重さ』を気にしていた。

 そんなことを気にできるあたり、余裕はいくらかありそうだ。

 

「しかしいきなりこんなんじゃ、修行のために体を動かすことも難しいんじゃ?」

「それについては簡単じゃ。この状態でも体を動かせるようにすることが、最初の修行と言ってよい」

 

 そう言うと、スケイルはジト目で補足した。

 

「そもそも『重力十倍』は、この土地で十年近く修行を積んでからようやくおこなう荒行じゃ。それを受けて普通に立っているおヌシらふたりがおかしいのじゃ」

 

 確かに重力十倍って言えば、元の体重が五十キロなら五百キロ。三十キロでも三百キロの負荷がかかるっていうことだもんな。

 普通はキツいと言われたら、その通りだとは思う。

 

「もしもわたしがいなければ、四人とも自らの体重で圧死しているであろうな」

 

 それを言うリリーナは、四人に意識をやっていた。四人が『重くて大変』で済んでいるのは、リリーナが補佐しているからだ。

 スケイルは言う。

 

「そしてこの状態でも体を動かせるようにする方法は、筋肉をつける以外にもうひとつある」

「なんですか?」

「魔力を高め、流れを理解することじゃ。魔力を高めて理解し、わっちの重力魔法を軽くでも弾けば、その分、体が軽くなる」

「なるほど」

「そもそもこの修行は、そちらのほうがメインじゃからのぅ」

 

「という感じらしいよ。ミーユ、ミリリ」

「う、うん……」

「わかりましたです……にゃあぁ……!」

「その理屈だと、魔法を使えないアタシやリンは一生このままぜなぁ……?!」

 

「魔法は使えないのなら、『気』で弾く、という手もあるぞい?」

「気……ぜな?」

「すべての命に備わっている、魂のようなものじゃ。ただし魂と違い、全身に流れておる」

「よくわからないんだぜなぁ……!」

 

 カレンは涙目になった。

 

「まぁこの修行は、三二〇〇あるわっちの修行法の中でも、上から数えたほうが早いぐらいに厳しく難しいものじゃからのぅ。できん可能性のほうが高いぐらいじゃ」

「ぜなあぁ……!」

「それはそれとして、訓練を続けるなら『場』も変えてやろう」

 

 スケイルは、くるりと踵を返す。

 

「レインにマリナよ。倒れている者たちを連れてくるのじゃ」

「はい!」

 

 オレはミーユを抱きあげて、ミリリを背中におんぶした。

 

「ごめん……。レイン」

「申し訳ないですにゃあぁ……」

「気にするなって」

「申し訳ありません……。マリナさま」

「ぜなあぁ……」

 

 リンとカレンは、マリナが普通に運んでいた。

 

「大丈夫か?」

「うん。」

 

 オレたちは、スケイルについていく。

 




この作品の四巻が、28日に発売です。
マリナの新衣装とロリリーナが目印です!
書店で見かけたら是非!

http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-75202-1.html
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