規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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レイン十四歳。盗賊に出会う。

 ごとごとごと。

 馬車ならぬ鳥車にゆられて、オレたちは進む。

 ククルーという巨大な鳥が引く馬車と思えば、大体あってる。

 通っているのは、森よりは安全な草原ルートだ。

 

「ちなみに、学園って、入学試験とかありますか?」

「入学は、キミの父上に推薦状を書いてもらったから大丈夫だ。

手続きも、ク……クールで凛々しいわたしがしてやる」

「ありがとうございます」

 

「その代わり、特待試験は受けてもらう」

「特待試験?」

 

「入学後の待遇を決める試験だ。

これによって、入学費用や学費、寮の部屋のグレードなどにあつかいの差がでる」

 

「具体的には、どのくらいですか?」

「最高ランクに近づけば、学費は無料で寮も最高のものになる。

 逆に最低ランクだと、学費は城が買えるほどにかかり、まともな寮に住もうと思えば大金がかかる」

 

「城が?!」

「魔法の才に欠ける貴族が、ハクをつけるために入学することもあるからな」

「そういう貴族からは、相応にいただくってことですか」

「それのおかげで、平民も入れる――という側面もあるのでな……」

 

「でも一方で、貴族の人が、威張りまくっちゃうこともありそうですね……」

「校則上で、してはならんとなっているのだがな」

「ルールが存在していることと、ルールが守られていることとは違うお話ですしね……」

 

 地球でも、法律上はしてはいけない体罰とかが、当たり前にあったりしたしね。

 

「…………」

 

 先生が、頬を赤くしてオレを見つめた。

 

「どうしたんですか? 先生」

「キキキ、キミが年齢のわりに、妙に悟っているところがあると思ってな……」

「ええっと……」

 

「と……年相応にあどけない少年はもちろんいいが、不相応に賢い少年や、発展途上ながらも強くしなやかな筋肉を持っている少年も、それはそれで…………だな」

 

「少年だったら、なんでもいいように聞こえるんですけど……」

「はぐっ?!」

 

 まったく自覚がなかったらしい。

 ショタコンエルフ先生は、ハトがバリスタ(巨大弓)でも食らったかのような顔をした。

 

「ななななっ、なんでもいいということはないぞっ?!

 例えば……そうだな。

 情けない姿であれば放っておけぬと思ってしまうし、小汚くしていれば洗ってやりたいと思うし…………ふわあっ?!」

 

 考えれば考えるほど、思考が詰んでいったらしい。

 先生は、自分自身に驚いた。

 最後には、顔を両手でおおって認める。

 

「少年には、すばらしい少年と、よりすばらしい少年の二種類しかいない…………」

 

 先生のショタコン属性(病気)には、筋金が入っていた。

 

「ちなみに……オレが成長したらどうなりますか?」

「少年が、成長したらか……」

 

 先生は、オレを見つめて想像を始めた。

 赤かった顔が、さらに赤らむ。

 

「しょ……少年のころを知っている以上、ギャップでメロメロにされてしまう気がするな……」

 

 しかもその筋金は、オリハルコンで作られていた。

 そんなアホな話をしてると、先生の顔が急にシリアスになった。

 エルフの耳が、ぴくぴく動く。

 

「止めてくれ!」

 

 鳥車の御者に、指示をだして止めさせる。

 

「感じるか……? 少年」

「はい……」

 

 オレはマリナと先生を連れて、鳥車を降りる。

 目の前にあるのは、茶色い道だ。

 左右を五〇センチほどの、背の高い草原で挟まれた道だ。

 

 絵画にすれば、のどかな風景。

 しかし魔竜殺しの英雄である父さんに訓練を受けたオレに見せれば、殺気という名の黒い霧が充満しているようにしか見えない。

 

「この世界での盗賊って、どういうあつかいになってます?」

「基本的には、動物やモンスターと同じだな」

 

「潜伏している人が、ただの狩人さんである可能性は?」

「ないとは言わん」

 

 先生は、短く言って続けた。

 

「しかし道路の左右一〇〇メール以内に潜伏していた場合、盗賊と誤認されても文句は言えないことになっている。

 ハンターギルドに所属してれば、真っ先に叩き込まれる決まりだ」

「どちらにしても、殺って構わないってことですね」

 

 ちなみにメールってのは、この世界での単位だ。

 一メールで一メートルだと思えば、大体あってる。

 

「ただ盗賊は、アジトを持っていることがある。

 懸賞金も、生け捕りにしたほうが高い」

「なるほど」

 

「それでは頼むぞ。レイン、マリナ」

「先生は、戦わないんですか?」

「わ……わたしが非力であることは、よく知っているであろう……?」

 

 先生は、頬を赤らめて言った。

 同時にそれは正論だった。

 

 補助や回復魔法はすごい先生だけど、単体の戦力としては微妙だ。

 ひとりいれば一〇〇人の雑兵を、一万人の精兵に匹敵するほどの軍団にすることもできる。

 だけど先生ひとりだと、三、四人が精一杯だ。

(逆に言うと、三、四人なら倒せる)

 

 自分に補助をかけるにも、強力な補助魔法は持続させるために集中していないと難しいので微妙だ。

 軽い補助ならなんとかなるが、それを使って『三、四人は倒せる』である。

 補助魔法がなかったら、スライムにも負けてしまうらしい。

 

 とにかくそういうわけだから、前線にだしてはいけない。

 

「じゃあオレがでるから、マリナはサポートを頼むな」

「うん。」

 

 オレはゆっくり前にでた。

 盗賊ではない可能性も、一応考えて叫ぶ。

 

「何者だ?! どうしてそこに隠れてるっ?!」

 

 にわかに空気がざわついた。

 草むらの奥でのひそひそ話が、風に乗って耳に届いた。

 

(おっ……おい、どうする)

(気づかれたのは面食らったが……見ればまだガキじゃねぇか。

 魔力察知だけはお得意で、取り巻きやガールフレンドにいいところを見せようとしているだけのおぼっちゃま(・・・・・・)ってところだろうよ)

 

(生け捕りにすれば、いいお値段になりそうってことか……)

(後ろに立っているエルフと嬢ちゃんも上玉。イザとなったら、アレもある)

(だなぁ……)

 

 舌舐めずりしていそうな声がして、草むらから男がでてきた。

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