規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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レイン十四歳。盗賊のアジトを壊滅させる。

 二〇〇メール先に進むと、それはあった。

 ほかの大差ない緑の草に覆われて、わずかな割れ目が地面についてる。

 そうと言われて注視しないと、絶対にわからない入り口だ。

 

「ふぅむ……」

「どうかしたんですか? 先生」

「先のドラゴンもそうであったが、一介の盗賊が使うにしては、高度すぎると思ってな……」

 

「そこも含めて、聞く必要があるっていうことですか」

「そうなるな」

 

 オレは地面に手をかけた。

 盗賊の言葉を思いだして、呪文を唱える。

 

「バルス!」

 

 微妙に足りない呪文だったが、地面はうまく開いてくれた。

 焼かれたハマグリのように、口をパックリあけてくる。

 

 オレはタンッと小さく跳ねる。

 二メールほど落下して着地。

 

「おう、帰ったか…………いや、違う。

侵入――「ライトニングファイア!」ギャッ……!」

 

 見張りらしき男はいたが、一瞬でやっつける。

 

「さすがだな、少年」

「ありがとうございます」

 

 降りてきた先生に、礼を言った。

 先生は、黙って地面に右手をつけた。

 

「なにしてるんですか?」

「魔力の流れと地の振動で、敵の気配を探ってる」

「そんなこともできるんですか」

「エルフだからな」

 

 エルフすごい。

 

「魔力らしい魔力は感じぬが、大きな振動は感じるな。

鍛えた大人が…………五〇人と三人。

あとはおよそ三〇名が、狭い部屋に密集しているな」

 

「密集?」

「尋常ではない密度から、一ヵ所に監禁と思われる」

 

「土魔術士は?」

「それらしい気配は感じん」

「魔力を隠しているだけってことは?」

「それはない。

 わたしのサーチから魔力を隠すには、わたし以上の力が必須だ」

 

「そんな術士さんが作ったドラゴンだったら、オレが一撃で倒すなんて無理……ってことですか」

「流れの術士に作成を依頼した……ってところが濃厚だろうな」

 

 先生は、立ちあがって進んだ。

 ところどころで立ち止まり、指を差して指示をだす。

 

「そこの壁には、トラップがあるな」

「マリナ」

「うん。」

 

 マリナがうなずき、手をかざす。

 トラップは氷結し、効力をなくした。

 

「………。」

 

 マリナがじっと、熱っぽくオレを見てくる。

 

「………ほめて。」

「そっ……そうか」

「ん………♪」

 

 オレが頭を撫でてやると、マリナは満足そうにした。

 

「ぐうぅ……」

 

 先生も、ジト目でオレを見つめた。

 でも要求らしい要求はなかったので、見かなかったことにした。

 

「もももっ、戻ったら、まとめてしてもらう…………からな」

 

 しかしポツリとつぶやいたので、戻ったらまとめてしてあげることにした。

 トラップをマリナに封じてもらい、見張りをライトニングでやっつけながら進む。

 

 先生は、曲がり角の手前にくるたび、地面に手をつけて音を探った。

 それを何度かくり返していると、通路の奥から声が聞こえた。

 オレの耳でもわかるぐらいの、下卑た大きな声である。

 

『ブヒヒヒヒ、今日も大量だったなぁ』

『まったくですなぁ、ブヒュ』

『オンナ……。オンナ……。ハァ、ハァ』

『見て使う分にはいいが、触ったりはするんじゃねぇぞ? 売値が下がる』

 

 声の先には、粗末な牢に閉じ込められている女の子たちがいた。

 たまたまなのか、獣人にはそういう子が多いのか、ケモミミの子たちが多い。

 

「…………ゲスだな」

「…………ゲスですね」

「………ゲス。」

 

 先生のしかめ面に、オレとマリナが答えた。

 

「しかし被害者がいるとなると、強い魔法は使いにくいな」

「地下ですから、崩れる可能性もありますしね」

 

 オレはアイテムボックスを起動した。

 鞘のついた剣を取りだす。

 

「それは?」

「敵を制圧する用の、研いでない剣です」

「無意味に殺したくないのはあるが、無理やりに生かすこともないのだぞ?」

「難しいと思ったら、魔法をまとわせます」

「なるほど……」

 

 先生がうなずいたのを見計らい、マリナに言った。

 

「マリナ」

「うん。」

 

 マリナはうなずき、詠唱を始める。

 口をもにょもにょ動かして、ブリザードを放った。

 

『『『ぐああああああああああああああ!!!』』』

 

 氷風を受けた盗賊たちが、悲鳴をあげて凍りつく。

 

 オレは一気に躍りでた!

 

 氷風の軌道線上にいなかった盗賊に向かって、剣を振って振りまくる。

 肩を殴って脇腹を払い、三人、四人とぶっ飛ばす。

 

「ライトニングファイア!」

 

 捕らわれの少女たちに近づいた男のことは、紅いイカヅチを放って焼いた。

 九割近く片付くと、ボスらしき男が三人の取り巻きを連れて、部屋の隅にいるのが見えた。

 その三人は、人間ではなくオークであった。

 

「なっ……なかなか、やるじゃねぇか」

 

 余裕を見せようとしているボスであったが、膝はガクガク笑ってた。

 無理をしているのが、見るからにわかる。

 オレは、ギン――と鋭く睨んで、圧力をかけた。

 

「ブヒイィ……」

 

 ボスはあっさり気絶する。

 

「さすがだな……」

「うん………。」

 

 先生とマリナが、頬を染めてつぶやいた。

 オレは持っていた剣をしまい、腰の剣に手をかけた。

 しっかり研がれた、ちゃんと切れるやつである。

 

「危険だから、下がってて」

 

 牢の中の子たちに言って、抜き打ち際に斬撃を放つ。

 牢の格子が、スパッと切れる。

 

 だが女の子たちは、でてくる様子を見せなかった。

 牢屋の中で、おどおどとしている。

 

「どうしたの?」

「ええっと……」

 

 その時だった。

 

「食らえ――ぜなあぁ!!」

 

 

 牢の中から(・・・・・)女の子が飛びだしてきた。

 

 

 腹部にトスリと、鋭い触感。

 見てみると、ナイフがぶすりと刺さってた。

 

(えっ……?)

「ハハハハハ、バカめが、ぜなあっ!!」

 

 粗雑な服を着込んでた、捕らわれだったはずの女が距離を取る。

 オレはそいつが自己紹介をするより早く、鑑定を使った。

 

 

 名前 カレン=ロローシュ

 種族 ウイングヒューマン

 職業 盗賊

 

 レベル  35

 HP   240/240

 MP    0/0

 筋力   192

 耐久   168

 敏捷   188

 魔力    0

 

 ◆

 オークス盗賊団の幹部。

 捕らわれた少女に紛れ込み、救助にきた人間を騙し討つのが得意。

 使用するナイフには、象をも三秒で昏倒させる麻痺毒が塗られている。

 処女。

 

 

「なるほど、ねぇ……」

 

 オレはその場に、バタリと倒れた。

 腹部から、血がドクドクと流れる。

 

「少年!」

「レイン!」

「おおっとぉ」

 

 リリーナ先生とマリナの声が響くが、カレンは手近な女の子を人質に取った。

 オレの頭を踏んづけて言う。

 

「急所はちゃんと外しているし、毒は死ぬようなものじゃないぜな!

 みんなで奴隷になることはあっても、殺すことだけはしないぜなっ!

 食べないものと恩人は、殺しちゃいけないのが常識だぜなっ!

 これの意味、しっかりわかってほしいぜな!!」

 

 勝ち誇るカレンに、オレは言った。

 

「わかるぜ?」

「ぜなっ……?!」

 

 

「つまりオマエは、バカだってことだろっ?!」

 

 

 オレはカレンの足を払った。

 鋭く転ばせ、馬乗りになる。

 カレンは、信じられないものを見る目でオレを見つめた。

 

「どうして…………?」

「回復魔法も使えるからな、オレ」

「オマエは、魔法剣士だったはずだぜな……!」

 

「魔法が使えて剣が使えて、回復魔法も使えるってだけだが?」

「……? ……? ……?」

 

 カレンはなぜか、理解できていなかった。

 

「キミの年齢でキミが使っている火炎魔法と雷撃魔法をあつかえるだけでも、数万人にひとりいるかいないかの才能だからな。

 そんなキミが剣も使えているのなら、それ以上はない――と考えるのが、常識ではある」

 

「なるほど……」

 

 そして会話している隙を、カレンは逃してこなかった。

 口からプッと針を吐く。

 

 ただ今回は、オレもしっかり警戒している。

 顔をスッと横にズラして、あっさりと回避した。

 

「なっ……」

「オマエ……全然懲りてないみたいだな」

 

 オレは正直ムカついた。

 それと同時に、サディスティックな気持ちがでてきた。

 

 カレンはすこし薄汚れているが、顔立ち自体は整っている。

 髪は綺麗な、黒髪ロングだ。

 頭の両脇についてるヴァルキリーっぽい羽も、ポイント高い。

 

 オレはカレンをひっくり返した。

 腹部はオレのヒザに乗せ、お尻をぺろんっと露出さす。

 

「なにするぜなっ?! なにするぜなあぁ?!」

「この体勢ですることと言えば、ひとつだろ?」

 

 

「なあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

 オレはカレンが大人しくなるまで、お尻ぺんぺんしてやった。

 

「許してぜなぁ! 反省するぜな! 反省するぜなあぁぁ!!!」

「そういうことは、人を刺す前に言おうな」

「ぜなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

 

 おしおきが終わった。

 休憩のつもりで地べたに座ると、マリナが四つん這いで寄ってくる。

 オレのことを見つめつつ、カレンにチラッと視線を送る。

 そのほっぺたは、ほんのりと赤い。

 

「ええっと……?」

「悪いことしたのに、お尻ぺんぺんは………ずるい。」

「どういうこと???」

 

 

「わたしも………。されてないのに………。」

 

 

「されたいのっ?!」

「すこし………。」

 

 マリナには、エム属性もあった。

 しかもえっちだ。

 胸は巨乳だ。

 

 NHKならぬ、MHKな女の子である。


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