規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
そんな日々を送りつつ、目的の都市についた。
塀で囲まれた都市の横手にある、部外所に行く。
騎士団が運営しているという、犯罪者引き渡しのための部署だ。
「わたしだ」
「リリーナ様!!」
リリーナが言うと、兵士はピシリと背筋を伸ばす。
「今日の用件は、見ての通りだ」
先生は、縛られた盗賊たちを親指で示した。
「この数を引き連れてくるとは、さすがですな……」
「捕えたのは、わたしではないがな」
「はい?」
「敵は全員、少女と少年のふたりが倒した」
先生は、オレとマリナを紹介するかのように前にだした。
マリナは、人見知りをしてオレの後ろに隠れる。
「ハハハハ。リリーナ様も、ご冗談を言うことがあるのですな」
「冗談ではないぞ? なにせこの少年は――」
先生は、間を溜めてから言った。
「レリクスの息子だ」
「なっ…………」
兵士さんが絶句する。
「この年齢にして炎属性と雷属性の二種類の魔法を使いこなし、剣術も一流の域に達し、自身限定であるが回復魔法も使用することができる」
「物語の世界でしか、見たことがないようなお話ですが……」
「だがしかし、レリクスの息子だ。
血の繋がりはないが、英才教育は受けている」
「さすがでございますな……」
騎士さんは驚くが、素性を鑑みると理解する。
本当にすごいな。父さんのブランド。
それからリリーナは、手続きを始めた。
受けた被害や罪状などを、淡々と述べていく。
道中の道のりの話も入れて、『自分の思う適正な罪状』についても述べた。
騎士の人はリリーナのほかに、盗賊や、さらわれていた人たちにも話を聞いた。
「この真偽結晶に誓って、真実であると言えるか?」
水晶玉のようなものを用意して、そんな誓約も入れさせる。
「ウソを探知するアイテムですか?」
「そうなるな」
先生はうなずいた。
「ただ読み取っているのは、相手の感情だ。
本気でカンチガイしている場合や、暗示魔法で無効化されてしまう欠点もある」
「でもこれだけの人数から確認を取れば、精度が高いと言えるわけですね」
「本当に、キミは理解力が高いな」
話していると、騎士の人が書類をまとめた。
報奨金が渡される。
どさっと重い皮袋には、金貨がたっぷり詰まってた。
「全部で580万ゴルドになります。ご確認ください」
捕まっていた子のひとりが叫んだ。
「580万?!」
「そんなすごいの?」
「一般奴隷の一ヶ月の給金が、8万ゴルドぐらいです……」
「公営奴隷になりますと、15万ゴルド近くになりますが……」
「さすが……。レインさま……」
「雲の上のお人…………」
ほかの子たちも、頬を染めてつぶやいた。
気恥ずかしいが、悪い気はしない。
オレは、騎士の人に尋ねた。
「ところで、ちょっといいですか」
「はい?」
「ええっと、ですね……」
耳打ちをする。
「制度上は、できますが……」
「じゃ、お願いします」
「はい……」
「なにを頼んでいたのだ? 少年」
「待っていればわかると思います」
そう言って、じっと待つこと数十分。
少女は、オレの前に現れた。
奴隷の首輪を首につけた、黒髪の女の子。
オレの趣味で要請した、
そして頭の両脇に、白い羽。
ぜなっ子のカレンだ。
「軽く会話した感じ、悪い子じゃなかったからね。
ケジメもあるから完全無罪ってわけには行かないけど、目の届くところで奴隷になってもらうこと考えた」
「ふむ……」
「もちろんカレンの意志もあるから、イヤって言えば拒絶できるようにもしたけど……」
「負けたんだから、仕方ないぜな……」
ということらしかった。
「よろしく……、おねがいするぜな……」
カレンは静かに頭をさげた。
マリナが、腕にくっついてくる。
(じ………。)と、なにも言わずにオレを見た。
「どうした? マリナ」
「わたし………いちばん?」
「それは当たり前だろ?」
オレはマリナを抱きしめて、頭と背中をやさしく撫でた。
(ん………♪)
マリナはうれしそうに瞳を細め、オレの背中に両手を回した。