規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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レイン十四歳。奴隷の女の子を手に入れる。

 そんな日々を送りつつ、目的の都市についた。

 塀で囲まれた都市の横手にある、部外所に行く。

 騎士団が運営しているという、犯罪者引き渡しのための部署だ。

 

「わたしだ」

「リリーナ様!!」

 

 リリーナが言うと、兵士はピシリと背筋を伸ばす。

 

「今日の用件は、見ての通りだ」

 

 先生は、縛られた盗賊たちを親指で示した。

 

「この数を引き連れてくるとは、さすがですな……」

「捕えたのは、わたしではないがな」

「はい?」

「敵は全員、少女と少年のふたりが倒した」

 

 先生は、オレとマリナを紹介するかのように前にだした。

 マリナは、人見知りをしてオレの後ろに隠れる。

 

「ハハハハ。リリーナ様も、ご冗談を言うことがあるのですな」

「冗談ではないぞ? なにせこの少年は――」

 

 先生は、間を溜めてから言った。

 

 

「レリクスの息子だ」

 

 

「なっ…………」

 

 兵士さんが絶句する。

 

「この年齢にして炎属性と雷属性の二種類の魔法を使いこなし、剣術も一流の域に達し、自身限定であるが回復魔法も使用することができる」

 

「物語の世界でしか、見たことがないようなお話ですが……」

「だがしかし、レリクスの息子だ。

 血の繋がりはないが、英才教育は受けている」

「さすがでございますな……」

 

 騎士さんは驚くが、素性を鑑みると理解する。

 本当にすごいな。父さんのブランド。

 

 それからリリーナは、手続きを始めた。

 受けた被害や罪状などを、淡々と述べていく。

 

 道中の道のりの話も入れて、『自分の思う適正な罪状』についても述べた。

 騎士の人はリリーナのほかに、盗賊や、さらわれていた人たちにも話を聞いた。

 

「この真偽結晶に誓って、真実であると言えるか?」

 

 水晶玉のようなものを用意して、そんな誓約も入れさせる。

 

「ウソを探知するアイテムですか?」

「そうなるな」

 

 先生はうなずいた。

 

「ただ読み取っているのは、相手の感情だ。

 本気でカンチガイしている場合や、暗示魔法で無効化されてしまう欠点もある」

「でもこれだけの人数から確認を取れば、精度が高いと言えるわけですね」

「本当に、キミは理解力が高いな」

 

 話していると、騎士の人が書類をまとめた。

 報奨金が渡される。

 どさっと重い皮袋には、金貨がたっぷり詰まってた。

 

「全部で580万ゴルドになります。ご確認ください」

 

 捕まっていた子のひとりが叫んだ。

 

「580万?!」

「そんなすごいの?」

 

「一般奴隷の一ヶ月の給金が、8万ゴルドぐらいです……」

「公営奴隷になりますと、15万ゴルド近くになりますが……」

 

「さすが……。レインさま……」

「雲の上のお人…………」

 

 ほかの子たちも、頬を染めてつぶやいた。

 気恥ずかしいが、悪い気はしない。

 オレは、騎士の人に尋ねた。

 

「ところで、ちょっといいですか」

「はい?」

「ええっと、ですね……」

 

 耳打ちをする。

 

「制度上は、できますが……」 

「じゃ、お願いします」

「はい……」

「なにを頼んでいたのだ? 少年」

「待っていればわかると思います」

 

 そう言って、じっと待つこと数十分。

 少女は、オレの前に現れた。

 

 奴隷の首輪を首につけた、黒髪の女の子。

 オレの趣味で要請した、水兵(セーラー)の服を着ている。

 

 

 そして頭の両脇に、白い羽。

 

 

 ぜなっ子のカレンだ。

 

「軽く会話した感じ、悪い子じゃなかったからね。

 ケジメもあるから完全無罪ってわけには行かないけど、目の届くところで奴隷になってもらうこと考えた」

 

「ふむ……」

「もちろんカレンの意志もあるから、イヤって言えば拒絶できるようにもしたけど……」

「負けたんだから、仕方ないぜな……」

 

 ということらしかった。

 

「よろしく……、おねがいするぜな……」

 

 カレンは静かに頭をさげた。

 マリナが、腕にくっついてくる。

 

(じ………。)と、なにも言わずにオレを見た。

 

「どうした? マリナ」

「わたし………いちばん?」

「それは当たり前だろ?」

 

 オレはマリナを抱きしめて、頭と背中をやさしく撫でた。

 

(ん………♪)

 

 マリナはうれしそうに瞳を細め、オレの背中に両手を回した。

 

 


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