規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
「それでは入試成績の上位五名であるミーユ=グリフィベール、レイン=カーティス、マリナ=カーティス、マゴット=オスマン、ケルヴィン=スミスから、好きな奴隷を選ぶし!」
「好きな子でいいんですか?」
「よい奴隷を見定めるのも、授業の一環であるし!」
「なるほど」
オレは、奴隷の子を見て回った。
鑑定を使用して、軽く調べる。
国内トップクラスの学園に渡されるだけあって、レベルとステータスは高い。
町のおっさんのレベルが5とか6なのに対して、10から30は当たり前にある。
ついでに手足もチラチラ見るが、真新しいアザや傷はなかった。
でもちょっとした古傷がついている子は、それなりにいた。
特に古傷がひどかった子に、オレは声をかけてみる。
白い髪が印象的な、猫耳の少女だ。
体格は、オレの体で包めそうなほど小さい。
「名前は?」
少女はびくっと身をすくめ、怯えながらつぶやいた。
「ミリリです……にゃ」
「ミリリか」
「はい……」
「体についている傷の原因とか、聞いても平気?」
「お母さん……だった、ひとに、森で狩り、してこいって、言われて……」
「失敗しちゃったわけか」
「にゃあ……」
ミリリは、うつむくようにうなずいた。
「それで、もう。いらない……。から、って、」
酷い親だな。
奴隷の環境もけしてよいとは言えなさそうだが、それでもその親よりはマシなような気がする。
「あっ……あのっ、」
「ん?」
「わたし、でしたら、えらばないほうが、いいです……よ?」
「そうなのか?」
「よわい…………ですから、」
「確かにレベルは、高いとは言えないな……」
鑑定を使うと、こんな感じだ。
名前 ミリリ
種族 キャットガール(ホワイト)
レベル 8
HP 64/64
MP 38/38
筋力 56
耐久 50
敏捷 60
魔力 44
隣の女の子なんかは、こんな感じである。
名前 タチアナ
種族 ヒューマン
レベル 15
HP 93/93
MP 0/0
筋力 75
耐久 62
敏捷 77
魔力 0
しかもこの女の子でも、全体からすると弱いほうだ。
その弱いほうの子よりも弱いミリリは、本当に弱い。
ただちょっと、ふたつのことが気になった。
「ミリリは、魔法が使えるのか?」
「はっ、はい……」
ミリリは、小さくうなずいた。
ここのメンバーは、前衛役として連れてこられている。
それだけに、魔力とMPはゼロの子が多い。
けれどミリリは、魔力を持ってる。
そんなミリリではあるものの、すぐに補足を入れてきた。
「でででで、でもっ、ほんとうにっ、簡単なものぐらいです……にゃ」
「属性は?」
「はにゃっ?!」
「属性だよ、属性」
「つちです……にゃ」
土か。
土木工事に便利な属性である。
将来、領地に帰ることを考えると、それなりにほしい。
そういう意味では、もうそれ一点で選んでもいいが……。
オレは気になったもうひとつのことを確認するべく、いろんな奴隷を見て回った。
リザードマンのガルニード。
レベル 30
HP 211/211
MP 0/0
筋力 145
耐久 137
敏捷 116
魔力 0
犬獣人のバルバーダ。
レベル 28
HP 188/188
MP 0/0
筋力 128
耐久 115
敏捷 134
魔力 0
このへんが上位だ。
そしてふたりを凌駕するのが、赤い瞳に黒い髪が印象的な、猫耳巨乳の美少女だ。
名前 リン
種族 ブラックキャット
レベル 41
HP 261/261
MP 0/0
筋力 226
耐久 188
敏捷 233
魔力 0
この中では相当に強いガルニードと比較しても、さらに上を行っている。
ちなみにカレンは、このぐらいである。
名前 カレン
職業 レインの奴隷
レベル 35
HP 240/240
MP 0/0
筋力 192
耐久 168
敏捷 188
魔力 0
次点のリザードマンよりも強い。
でもそんなカレンより、このリンって女の子は強い。
その時だった。
「おっ、おいっ!」
ミーユが、オレに声をかけてくる。
「その子は、ボクが先に目をつけてたんだぞっ!!」
「えっ?」
「確かに時系列で言えば、ミーユさまが先着でした」
リンは淡々とした、事務的な口調で言った。
「競合した場合、コイントスだけど……」
逆にミーユのほうは、申し訳なさそうに顔をそらした。
むかしのクセで叫んじゃったけど、すぐ冷静になって自分の行為にクズが入ってたことを恥じている感じだ。
まだまだ変われていないとはいえ、変わろうとしていることは偉い。
「まぁいいよ。オレは別な子、選ぶから」
「そ、そっか……」
「なんか、すこしうれしそうだな」
「オマエの場合、ボクに気を使ってるわけじゃないってわかるからさ……」
確かに気を使うオトコなら、襲ったりはしないな。
オレはミリリの元に行き、首輪についてるクサリを握った。
「はにゃ……?」
「オマエを選ぶぞ? ミリリ」
「えっ……いやっ、そのっ。ですけどですけど…………」
「今のミリリは確かに弱い。それでもオレは、可能性を感じたんだ」
「お気持ちは、ううう、うれしいですっ、けどっ……」
ミリリは胸元を握りしめ、困ったように目を伏せる。
それでも、うれしさは隠せないらしい。尻尾がピイィン――と立っていた。
ほっぺたも、ほんのり赤く染まってる。
ここまで露骨に喜ばれると、ますます選ばないわけにはいかない。
その時だった。
「おいおいおいおい、おいおいおーいっ! よりによって、シロを選んじまうのかよーいっ!」
バカ貴族のマゴットが、オレを指差してきた。
「シロ?」
「わたしの、髪の色です……にゃ」
「確かに、ミリリの髪は白いけど…………それがどうかしたのか?」
「シロと言えば劣等種だって、一〇〇〇年前から決まってるだろおぉ?!」
「そうなのか?」
オレは、ミーユのほうを見た。
「じゅっ、獣人奴隷の基礎知識って本には、そう書いてあった……かな」
「これだから、田舎者は、イナカッてるネェ!」
バカの態度に、ミリリは可哀そうなほどに恐縮した。
オレはミリリを背後から抱いた。
「それでもオレは、ここにいるみんなの中では、この子の可能性を一番に感じているよ」
バカの目を見て、ハッキリと言う。
「特にオマエの発言で、確信に変わった」
「だったら……賭けるかい?」
「?」
「ミーユさまが選んだこの奴隷と戦って、負けたほうが勝ったほうの言うことを、なんでも聞くっていう賭けさ」
(えっ?!)
急に巻き込まれて驚いたミーユに、マゴットはニヤッとゲスい笑顔を向けた。
小さな声でぽつりと言う。
(お膳立ては、しておきましたぜ)
ミーユのほうは、声なき声で叫んでた。
(するなよおぉ!!!)
マゴットに限らず。
学園全体の生徒や教師からすると、オレとミーユは犬猿の仲だ。
勝てる勝負でイビれるのなら、当然、狙ってくるだろう。
まぁ実際には、完全にデキているわけだけど……。
昨日もオレのチン○にバックから突かれて、あんあん鳴いてメスイキしてたし。
ミーユは、オレとマゴットら貴族を、交互に見やった。
涙目で言ってくる。
「クッ……クク、クビを洗って待ってろよ!
後悔しても、遅いんだからな!
もももも、もう本当に、手遅れなんだからなぁ!!」
威勢のよい言葉だが、オレの耳にはこう聞こえた。
『もう本当に、手遅れなんだからなぁ! ボクが!!』
「決闘は、二週間後ってことにするし!」
先生が叫んだ。
「やっても大丈夫なんですか?」
「ケンカは子どもの特権なんだし! 思い切りぶつかって、熱く和解するんだし!」
なるほど。
そういう系のノリなのか。
「それに具体的な目標があったほうが、トレーニングにも気が入るんだし!」
合理的な理由もあるなら、否定しないのも当然か。
オレは、決闘の約束をした。