規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
レインの指導のもと、訓練の日々は続いた。
ミリリのレベルは、日に日にアップしていった。
ただし初日ほどの勢いで伸びたのは、初日ぐらいなものである。
レベルが低いとあがりやすく、高いとあがりにくくなる現象だ。
それでも一般的な奴隷たちの、数倍近い早さであがった。
シロと呼ばれて蔑まされていた奴隷時代にも、基礎トレーニングは欠かしていなかったからであろう。
きっかけさえあればすぐにでも上昇する成長の種が、きっかけを得たことで咲き誇った。
そして決闘の日。
レインが鑑定を使ってみると、ミリリのステータスはこうなっていた。
レベル35
名前 ミリリ
種族 キャットガール(ホワイト)
レベル 18→34
HP 207/207(↑92)
MP 170/170(↑80)
筋力 235(↑109)
耐久 188(↑80)
敏捷 244(↑110)
魔力 167(↑73)
つい先日に集められた奴隷の中では、トップクラスのステータス。
初めてあった時がこれだと思うと、かなりの成長である。
レベル 8
HP 64/64
MP 38/38
筋力 56
耐久 50
敏捷 60
魔力 44
一方のリンも、これであった。
レベル 41→52
HP 316/316(↑55)
MP 0/0
筋力 274(↑48)
耐久 238(↑50)
敏捷 273(↑40)
魔力 0
伸びた幅はミリリほどではないものの、相当な訓練は積んでいる。
奴隷科の先生が、審判として叫ぶ。
「それではこれより、決闘を始める! ふたりそろって、ご主人さまに誓いを立てるのだ!」
「我、リン=グリフィンベールは誓います! 我があるじ、ミーユ=ララ=グリフォンベールの名に恥じぬ戦いをすると!」
「わたし、ミリリ=カーティスは誓うにゃん! 大好きなご主人さまが、ミリリをほめてくれるようがんばると!」
「それでは両者、敗北よりも、誓いに背くことを恥として、いざ粛々と――――始めっ!!」
戦いが始まった。
同時にミリリが両手をかざす。
「小さき者よ舞いあがり、望む形を作ってください! サンドエレメンツ!」
砂がぶわっと舞いあがり、剣士のような形を作った。
「これはっ……?!」
「ご主人さまがミリリのために作ってくださった、砂魔法ですにゃっ!」
「ふんっ!」
リンは棒をヒュンッと振るった。
砂の剣士は四散する。
「このような魔法を使えるようになっていたとは驚愕ですが、わたしの相手をするに至るにはまだまだですっ!」
砂の剣士を四散させたリンが、タンと地を蹴り前にでるが――。
「はうッ?!」
こけた。
砂の剣士と同時に作られていた出っ張りに足を引っかけて。
こけた。
それは単純な攻撃であったものの、地味に重いダメージを与えた。
同時にミリリは砂を巻きあげ、会場の視界を埋め尽くそうとする。
「姑息な真似を……」
「ミリリも、そう思うですにゃん……」
ミリリはそれを認めつつ、卑屈な様子は見せなかった。
「「「卑怯だぞー!!」」」
バカ貴族にして、ミーユの腰巾着の位置を狙っている貴族たちが罵声を飛ばした。
ゴミがいくつも投げ込まれる。
「はにゃあ……」
気の弱いミリリは縮こまるものの、レインはハッキリ言い切った。
「卑怯者は黙ってろ!!!」
予想外の発言に、会場が静まった。
「卑怯汚いは強者の俗言! 弱い相手から策略を奪うことで、自分たちが負けない土壌を作ろうとする、卑劣で野蛮な人間の使う言葉だっ!!」
反論できる者はいなかった。
それは同時に、真理であった。
反則をしているわけでないなら、それはその人間の知恵で力だ。
それを外部からの圧力で封殺しようとすることは、卑劣で野蛮なおこないだ。
というかそれを封殺されると、弱者は絶対、強者に勝てない。
「まったく、正論ですね――」
リンがふらりと立ちあがった。
「弱者の策をも飲み込んでこそ強者。誇り高き三公、グリフォンベールの戦士に相応しいと言うものです」
息を吐く。
砂は激しく、目をあけているのも厳しい。
眉をしかめて薄目で見やる。
地面にはたくさんのでこぼこができていて、視界には、薄茶色の砂が霧のようにかかっていた。
ミリリの姿は、砂で見えない。
(しかしこれでは、ミリリもわたしが見えないのでは――?)
思った直後、真横から気配。茶色のトンファー。
(くっ!)
超人的な反射神経でいなすが、隙のできて右足に蹴りを食らった。
見るとミリリは、目元にふしぎなアイテムをつけていた。
「それはっ――?!」
「ご主人さまが作ってくださった、『ごぉぐる』ですにゃっ!」
「そのようなアイテムが、この世に存在していたとはッ!」
ミリリはそこから一気に押した。
トンファーでの突きから始まり、ミドルキックにローキック。
リンが振るった鋭い槍をしゃがんで回避し、足払いのカウンター。
リンの体がゆらいだところで、サマーソルトキック。
リンのアゴはかちあげられた。
ノックアウトには至らないものの、かなりのダメージが入ったと思われる。
が――。
槍がヒュオンと伸びてきた。
ミリリは宙で身をよじり、直撃は回避する。
けれども槍は器用に動き、ミリリの脇の下に挟まる。
「はにゃっ?!」
ミリリの体は宙を舞う。
「はにゃあぁーーーーーーーーーんっ!!!」
180度回転し、体を叩きつけられた。
ガオンと激しい音が鳴り、地面にクレーターができる。
「にゃあ……」
ミリリが苦悶にうめいてリンを見る。
リンは瞳を閉じていた。
そのネコミミが、ぴくぴくと動いている。
「音でミリリを察したですにゃ……?」
「視界が遮られてしまったのでね」
「さすがは、………………ですにゃ」
「あなたも――なかなかのものではございましたよ?」
リンはゆっくり、すり足でにじり寄る。
ミリリが作ったでこぼこを足で察知し避けながら、ゆっくりと迫る。
その佇まいは、勝利を確信した人間のそれだ。
もしもミリリが動いても、動いた音を察して動ける。
一方のミリリは、座ったままで言った。
「さすがは……、ご主人さまですにゃ………………」
先の言葉は、リンを褒めたものではない。
自身の主人の、レインを褒めたものである。
懐に手を入れ、それをだす。
現れたのは、丸っこい手榴弾。
リンはミリリが何かを取りだした気配を察知し、迎撃の構えを取った。
しかしミリリの行動は、リンの予想を超えていた。
ミリリはそいつを、自身の手元で使用したのだ。
ピンを引き抜き、耳を押さえてしゃがみ込む。
ガアァンッ!!!
轟音が響く。
観客席の七割近くが、耳を塞ぐ轟音だ。
「ガッ、アッ、アッ……」
リンも怯んだ。
いかに投擲を警戒していようと、音には対処できない。
響く頭痛に、よろめいてしまう。
「ご主人さまは、すごいお人ですにゃ……!
視界を封じる攻撃をしたら、耳に頼ってくるって予想していたですにゃっ……!」
そう言うミリリも、辛そうではあった。
それでも覚悟していた分、リンのダメージよりは軽い。
リンの体に、背中からしがみつく。
「トンファー奥技……じごくデスぐるまですにゃー!」
タンと地を蹴り高く跳ね、回転しながらリンの脳天を地面に叩きつけた。
「はにゃっ……、はにゃっ……、ふにゃっ…………」
自身もぐるぐる目を回してしまったが、かなりのダメージを与えた。
よろけたリンは、仰向けに倒れる。
しかしまだ、決着ではない。
いつもありがとうございます。
実はわたくし、プロ作家です。
今回は、新作が発売となりました。
地球丸ごと異世界転生
http://www.sbcr.jp/products/4797389869.html
規格外れの~~~からエロ要素をやわらかくしたようなものだと思えば、大体あってます。
amazonさんなり書店さんなりで見かけたときは、よろしくお願いいたします。
とらのあな、アニメイト、ゲーマーズ、メロンブックスなどでは特典もつきます。
※あとがきで宣伝することについては、「軽くならいいよ」と運営さんから許可を得ました。