規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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最強の死霊魔法使い、ネクロ=ネテロ=クラウド
最強の死霊魔法使い、ネクロ=ネテロ=クラウド


 リンとミリリの決闘が終わった、次の日の朝。

 制服を着たオレは、ミーユの部屋から寮の廊下へとでた。

 

 右の腕には嫁であるマリナがくっつき、左側にはミーユが立ってる。

 ミーユは腕を組んだりはしていないが、距離は近い。

 そして背後には、黒髪ショートの猫耳少女のリンがいた。

 

「ずいぶんと、平気な風でいらっしゃるのですね……」

 

 リンはぽうっと頬を染め、もじもじと太ももをこすらせていた。

 昨日はミーユやマリナと営みをしちゃうついでに、リンともやってしまった。

 その予定はなかったのだが、完全に勢いである。

 

 リンは澄ましているわりに、とてもいい体をしていた。

 声もかなりのものだったため、ほとんど一晩やりまくりの突きまくりの出しまくりであった。

 

 そんな昨日の今日なので、もじもじしてしまっているわけだ。

 オレの部屋で寝ていたミリリやカレンとも合流し、食堂に向かう。

 食堂の中は平穏であったが、オレたちが入ると同時にざわついた。

 

(レインだ)

(レインだな)

(弱いはずの『シロ』な奴隷を、『クロ』のリンに勝てるほどに鍛えたらしいぜ)

(リンって確か、『献上品』だろ。奴隷商のほうで、すごい貴族が入学する年に合わせて学園に渡すやつ)

(シロでそれに勝たせるとか……)

(七英雄の関係者って、やっぱりどこかおかしいな)

 

 ひそひそ声だが、そんな話をされていた。

 

「にゃうぅ……」

 

 オレはわりと平気だが、ミリリは恐縮して縮こまってしまった。

 マリナがオレの手を引いて、椅子に座らす。

 同時にミリリを、オレの隣に座らせた。

 

「ここ。」

「はにゃっ?!」

 

 マリナはミーユも手際よく座らせて、離れたところから椅子を引っ張ってきた。

 オレの後ろにちょこんと座る。

 

(ぴと………。)

 

 体を密着させてきた。

 すばらしい巨乳が、オレの背中でふにゅりと潰れる。

 

「ええっと……」

「この形なら、ミリリとミーユに配慮しながら、あなたにくっつくことができる。」

「食べにくくない……?」

「そこは………あーん♥」

 

 マリナは口をあけてきた。

 気配りができる上にさびしがり屋で甘えん坊とか、最高すぎる。

 

「わたし、あなたのいいお嫁さんになれると思う。」

「実際そうだね。無人島に誰か連れてくってなったらマリナを選ぶよ」

 

 いつも通りにイチャついて、食事を食べる。

 食堂は、いつも以上にざわついた。

 注目を浴びていたのはリンだ。

 オレやミーユたちと同じく、椅子に座って食べているのだ。

 ミーユに言った。

 

「そこまで合わせなくていいんだぞ?」

「そういうわけじゃないよ。悪いことしてないのに地面で……ってのは、やっぱりひどいなって思っただけ。

 今までは、自分の頭で考えてなかったから、『そういうもの』ってことで納得してた……けど」

 

「なるほどな」

「オマエひとりが強いだけなら、オマエの才能がすごいだけって風にも言える。

 けど今回は、リンとミリリで戦ったわけだからな。

 ボクたちが常識だと思ってることって、けっこうアラがあるんじゃないかって考えようと思ったんだよ」

 

 ハッキリとした成長に、マリナがミーユの頭を撫でた。

 いい子いい子の、よしよしよし。

 

「……ありがと」

 

 ミーユは、ぽうっと頬を染めてつぶやいた。

 その様子を見ていたほかの生徒たちが、自分の奴隷に声をかける。

 

 ひとり、またひとりと、椅子に座って食べ始めた。

 ナイフやフォークの使い方がわからない子もいたが、マスターの子が教えてあげていた。

 

 これがきっかけで世界各地に、『犯罪奴隷でないなら椅子に座らす』という作法が常識として定着するようになるのだが、この時のオレはそんなこと知らない。

 床で食べていたカレンが、満面の笑みで言った。

 

「いい傾向だぜなっ!」

「カレンは、それでいいのか……?」

「悪いことしていない子がちゃんとしたあつかいを受けるのは当然だぜなっ!」

「カレンは、椅子に座りたいとか思わないのか?」

「作法を学ぶぐらいなら、床のほうがマシだぜなっ!!」

 

 それは見事な言い切りだった。

 漫画だったら、ビシュュュュュュウンッ!! って効果音が背景に入ってる。

 カレンらしいと言えば、カレンらしくはあるのだが。

 

  ◆

 

「みんな元気か! わらしは元気だ! だからダンジョンにもぐるぞ!」

 

 草原の上の青空教室。

 座り並んだオレたちに、アリアが言った。

 頭にハチマキをつけた、小さなネコミミの教官である。

 テンションが高いのも、舌っ足らずなのもいつも通りだ。

 

「そもそもダンジョンとは……」

 

 教官は、ミーユのほうをチラりと見やった。

 

「ダンジョンとは……魔力の層がなんらかの理由で特別に濃い場所に現れる迷宮です。

 この学園が管理しているところはふたつ。関与しているところは北方にひとつあります」

 

「さすがは首席合格者! 満点の解答だな! 成績優秀なオマエたちが入る目の前のダンジョンは、学園の権限があれば入れる中では三番目の真ん中だぞ!」

「……」

 

 ミーユはなぜか、オレのほうをチラと見た

 

「どうした?」

「ボクの何倍もすごいオマエがいるのに、ボクが首席でいいのかなって……」

「別にいいだろ。オレはダンジョンが、そんな原理で生まれてるとか知らなかったし」

「オマエ見てると、首席だからすごいとか思ってたすこし前のボクが恥ずかしくなってくるよ……」

 

 本当に成長してるな。

 そんな感じで会話してると、リリーナがやってきた。

 

「少々よいか」

「リリーナ! 今日は一番簡単な迷宮でサポートをしてくるんじゃなかったのか?!」

「もちろんその予定だが、それとは別にちょっとした用件ができてしまってね」

 

 リリーナが言うと、その後ろから男がでてきた。

 漆黒の髪に、包帯を目に巻いている。

 粗雑な服を着てはいるが、その佇まいから常人ではないことがうかがえる。

 ステータスもこうである。

 

 

 ネクロ=ネテロ=クラウド

 

 レベル  14800

 HP  74000/74000

 MP  296000/296000

 筋力  103600

 耐久   98000

 敏捷  124000

 魔力  310000

 

 

 個人レベルでは絶対に手をだしてはいけないと言われている、特殊指定危険生物――大王スクイッドがこうであることを考えると、相当に高い。

 

 

 レベル 2270

 HP  58920/58920

 MP    0/0

 筋力  42880

 耐久  53580

 敏捷  12200

 魔力   0

 

 

 ちなみに父さん。

 

 

 レベル 48200

 

 HP  530000/530000

 MP  397500/397500

 筋力  463750

 耐久  430625

 敏捷  450500

 魔力  457125

 

 

 うん、おかしい。

 伝説の邪神が相手でも、『たたかう』だけで勝てそうだ。

 しかしこのステータスを見ると……。

 オレが思いを馳せてると、バカ貴族のマゴットが言った。

 

「誰だ貴様は! そのようなみすぼらしい姿で、由緒あるこの学園に入っていいと思ってるのか?!」

「……キミは?」

「マゴット=ロンドーだ! 三公さまの傘下に位置する十二爵のひとり、ロンドー家の長男でもある!」

「即ちキミは、聡明であるのか?」

「もちろんだっ!」

「ふむ……」

 

 ネクロは小さくうなずいた。

 次の瞬間――。

 

 

 消えた。

 

 

 ただし魔力は感じない。

 単純な敏捷と、歩行術の組み合わせただと思われる。

 ネクロはマゴットの背後に立つと、その首筋に短剣を突きつけていた。

 

「わたしの名前はネクロ=ネテロ=クラウド。

 キミが聡明であるのなら、この名前だけでわかるだろう?」

 

 オレはさっぱりわからなかった。マリナとカレンもそうだった。

 だけどオレたち三人以外は、驚愕に目を見開いていた。

 誰かが言った。

 

「魔竜殺しの七英雄にして、最強の死霊魔法使い――不死者の王ですかっ?!」

「七英雄と言っても、魔竜を殺しただけの人間にすぎない――というのが実情だがね」

「ひいぃ……!」

 

 マゴットは震えた。

 七英雄にもいろいろいるが、リリーナ以外は『ひとりで国と戦争ができる』

 三公や国王ですら、よほどの暗愚でもなければコトを荒立てたくないと考える。

 

 その下の十二爵程度では、トカゲの尻尾よりも容易く切り捨てられる。

 七英雄が横暴であれば話はまた変わるだろうが、今回横暴だったのはマゴットだし。

 

 ネクロが軽く力を抜いた。

 マゴットは、いとも容易く崩れ落ちる。

 

「大にしろ小にしろ、自分がそれをする理由と相手の実力は天秤にかけるべきだね」

「それでネクロさんは、なにをしに?」

「リリーナが学園にきているというのでね、あいさつにきたのさ。そしたらキミの話を聞いた」

 

 ちょっと気になるワードがでたが、ネクロは淡々と話を進めた。

 

「なんでもキミは、レリクスの息子らしいじゃないか。

 面倒なことは好きになれないわたしだが、好奇心と天秤にかけたら、こずにはいられなかったよ」

 

 ネクロさんは、オレを見てにやにやと笑った。

 

「なるほど、なるほど。顔とか体格といった外見的な特徴は似ていないが、放つ雰囲気はレリクス同様、英雄的だね。

 今はともかく十年後には、ちょっとわからなくなってるよ」

「フフフフ、そうであろう」

 

 なぜかリリーナがうなずいた。

 

(………♥)

 

 ついでにマリナは、頬を染めてくっついてきた。

 隙あらばオレにくっついてくる子だ。

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