規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
一晩あけて朝がきた。スズメとよく似た鳥の鳴き声で目を覚ます。
「病気……すこしは治まった?」
「うん………♪」
マリナは小さくうなずいた。
オレは軽いキスをして、ベッドから降りた。服を着ようとクローゼットに向かい、ドアの下から紙がでていることに気づいた。
「……?」
何気なく拾う。
そこには父さんの文字で、ハッキリとあった。
今日から三日は、完全自由休養日とする。
ふたりそろって、存分に
食事と水も、たっぷりと用意してある。
レリクス=カーティス
父さーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!
オレは声なき悲鳴をあげた。
やっておいて言うのもなんだが、公認されると恥ずかしい。
エロ本が見つかった時の気分って言えば、ご理解いただけるだろうかっ?!
(………。)
マリナがオレの背中にくっつき、父さんのメモ書きを見つめていた。
オレの肩にちょこんと頭を乗せていて、とてもかわいい。
メモを見たマリナは、ぽつりと言った。
「いっぱい………できる♪」
「まだするのっ?!」
「うん。」
マリナは小さくうなずくと、淡々と言った。
「3万6500回はしたい。」
「どこからでたの?! その数字!!」
「一日十回、三百六十五日。十年分で計算するとそうなる。」
一日十回という狂った前提を見さえしなければ、なにひとつ問題のない計算であった。
でも一日十回という前提が、とてつもなくおかしい。
これがまともだって言うんなら、トンカツを載せまくったパフェだってヘルシーだよ。
「あなたのことが好き好き病は、十年、ずっとだったから………。」
そういうことなら仕方ない。
オレはマリナを押し倒し、病気の治療をしてやった。
マリナは途中で疲れていたが、不眠不休でがんばった。
十年分はさすがに無理だが、三日で三ヶ月分はやった。
無理だ無理だと思っても、やってみればできるものだ。
無理って言うのは、ウソツキの言葉だね!
そんなこんなで、『お楽しみの三日間』は、あっという間に過ぎ去った。
オレとマリナは三日ぶりに服を着て、三日ぶりに外にでた。
外の空気は爽やかだった。
◆
四年がすぎて、オレは十四歳になった。
荒野で、父さんと戦う。
刃を落としたミスリル銀の剣を振るって、父さんと打ち合う。
ガリギャギャギャ。
打ち合うたびに火花が飛び散る。
「唸れ雷炎・ライトニングファイア!」
「必防奥義・避雷剣!」
オレの放った雷炎魔法に、父さんは剣の切っ先を当てた。
父さんの剣は、雷撃と熱の両方を吸った。
だがエネルギーは消えない。
凶器と化しているエネルギーは、刀身を伝って父さんの手に向かう!
それはコンマ一秒にも満たない、神速の速度。
でも父さんに、常識はなかった。
「ふぅんっ!!」
剣を握る手に雷炎が届くより早く、自身の剣を鋭く振るった。
あさっての方角に、溜まった力を飛ばしてしまう。
遠方にあった巨岩に、巨穴があいた。
しかしさすがの父さんも、今の技では隙が生まれる。
「凍てつき尽くせ――イズベルアイス!」
マリナの魔法で父さんの足元に魔法陣が生まれ、氷山がせりあがった。
父さんは、氷漬けになる。
それでも氷の中で熱を発して――。
「ハアアッ!!」
砕いた。
氷漬けになったぐらいじゃ、なんともないのがウチの父さんであるっ!
バラバラに砕けた氷が、散弾となってオレたちに向かうっ!!
「ファイアボール!!」
オレは軽く魔法を放ち、タンと地を蹴り突っ込んだ。
氷のツブテが体に当たるが、ファイアボールのおかげでもろい。
当たった端から砕け続ける。
オレは一直線に駆け抜けて、剣を父さんの胴体にっ!!!
その一撃は、完全なる寸止めを入れた。
もしも本物の剣でその気になってさえいれば、父さんは真っ二つである。
「うぅむ……」
感嘆の声を漏らした父さんは言った。
「ワシの負けじゃなぁ」
訓練が終わったので、お弁当である。
父さんが狩ってきたホーンラビットの肉と、家から持ってきた果物などを広げる。
父さんとオレは肉派だが、マリナは持ってきた果物派である。
蜂蜜みたいな色合いをしたハニーアップルを両手で持って、かぷりと咥える。
(かぷ………。しゃくしゃくしゃく。こくん。)
(かぷ………。しゃくしゃくしゃく。こくん。)
「おいしい?」
「うん。」
マリナはリンゴで唇を隠しつつ、こくりと小さくうなずいた。
このハニーアップルは、マリナのお気に入りである。
一日一個は食べている。
おかげでマリナとキスをすると、りんごの匂いがしたりする。
それは甘く爽やかで、思わずマリナの胸元の果実も収穫したく…………このへんにしておこう。
「しかしふたりに組まれると、ワシも勝てなくなったのぅ」
「でも父さんは、全力じゃありませんよね?」
「確かに加減はしておるが、おヌシたちを殺さぬためじゃ。
『殺さない範囲での』という意味では、先刻の戦いが全力じゃ」
父さんは、肉をかぶりと噛み千切る。
「十を越えて間もない程度の年齢でありながら、雷と炎の二属性を使用。おまけに剣技も、そこらの聖騎士であれば圧倒できるようになっているのが今のおヌシじゃ。その実力は、自信を持ってもよいぞ?」
「ありがとうございます」
(くい。くい。)
マリナがオレの袖を引く。
オレのことを(じぃ………。)と見つめ、父さんのほうをチラと見た。
「自分のほうはどうなのか、父さんに聞いてほしいって?」
「うん。」
マリナは小さくうなずいた。
「おヌシのほうは…………氷属性のあつかいがピカ一じゃのぅ。
単純な力では剣も魔法もレインに劣るが、属性が違うということで役に立てることも多いはずじゃ。
大陸で三指に入る魔術士になれる素養もあるじゃろうな」
「すごいな、マリナ」
「ん………♪」
マリナはうれしそうだった。
暮らしの中でもベッドの中でも大人しいマリナだが、地味に戦い好きである。
特にオレとの模擬戦は、かなりイキイキやっている。
「それではワシは、一足先に帰るとしよう」
父さんは立ちあがり、足にググッと力を込めた。
ドゥンッと高く飛び跳ねる。
森を超え、あっという間に見えなくなった。
魔法のような跳躍だったが、名前をつけると『ただのジャンプ』だ。
本当に、あの人はおかしい。
ただオレは、訓練とはいえあの人に勝てるようになった。
そう思うとうれしい。
気分が思わず高揚してくる。
空を飛んでみたいなとも思う。
ジャンプで飛ぶのは無理にしても、なにか別の方法で。
(一番簡単なのは風魔法だけど、オレはまだ使えない。火炎魔法にしても、体を宙に浮かすほどの出力はだせない。それ以外としては、ヘリコプターとか、飛行機か…………)
機械そのものを作るのは無理にしても、機械の原理を使ったなにかはできないものか。
考えていると、マリナの姿が視界に入った。
ふたつ目のりんごを両手で持って、かぷかぷと咥えてる。
それを見てたら閃いた。
純粋な意味で〈飛ぶ〉というのとはすこし違うが、爽快感はかなりありそうなアイディアである。
想像したらワクワクしてきた。
ついでにちょっと、ムラムラしてきた。
「マリナ」
手首を掴んでりんごをどかし、その唇にキスをした。
一息に押し倒す。
マリナのりんごが、ころりと転がる。
「あっ………。」
オレはマリナの巨乳を握り、たぷたぷとゆらした。
オレが毎日もんでるせいか、今やオレの手を挟めるぐらいには大きくなってる。
実際いろいろ、挟んでもらったりしてる。
手とか、顔とか。
「ふたり切り……だしさ」
マリナは頬を赤く染め、オレの視線から目をそらす。
「ここ………外。」
「外のマリナもかわいいよ」
「えっち………。」
オレはマリナにキスをして、りんごの香りを楽しんだ。
野外プレイも楽しんだ。
次は今日の午後十時ぐらいに投稿します。