規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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相変わらずなレリクス父さん

 完全に決着がついたオレたちは、暗黒領域をでることにした。

 魔力も体力も尽きているらしいネクロは、父さんにおぶさる。

 そうしてここは、基本的にダンジョンのようなものである。

 スケルトンやグールは普通にでてくる。

 だが父さんが、ギロと一睨みすると――。

 

(バチュンッ!)

 

 スケルトンの頭部が砕け、グールの胸元に風穴があいた。

 いくら相手が雑魚といえ、にらむだけで討伐できるのは|流石だ《おかしい。←ルビ振り直して下さい

 まぁでも、父さんなので仕方ない。

 

「さすがだねぇ……レリクス」

 

 父さんにおんぶしているネクロが、自身の人差し指をかじった。

 軽く振るって飛沫を飛ばす。

 ブラッドスケルトンが八体でてきた。

 

「魔力がほとんど切れちゃってるから、この程度しか出せないけど……」

 

 しかしレベルは、一体あたり70だ。

 今年の生徒が使役している中で一番強い奴隷であるリンのレベルが52と言えば、十分すぎることがわかるだろう。

 

 しかし父さんの仲間であるなら、魔力切れでもこの程度はできて当然という感じがしてくるから不思議だ。

 出口と思わしき光りが見えた。

 土がぼこりと盛りあがる。白骨化した手がでてくる。生きながらにして墓穴の中に葬られた死者が這いでてくるかのような禍々しい雰囲気を放ちながら現れるのは――。

 

 ガシャドクロ。

 

 一軒家ほどにも大きい、巨大なるガイコツ。

 心臓の位置にある紫色の魔水晶が、モンスターであることを示している。

 

 レベルは7250。

 平時であれば、なんということのない相手。

 しかし疲労している今だと――。

 

 なんて考えていたら、父さんが殺ってくれました。

 ネクロを背負ったままでギロとにらむと、肩と脇腹のあたりが爆散。

 続いてツイッと右手を伸ばすと頭部が爆散。

 八メートルの巨体は、なんということもなく崩れ落ちました。

 

「魔竜との戦いで受けた古傷の関係で、本気をだすことができないんですよね……?」

「だしておらんじゃろ?」

「……」

 

 常識外れにもほどがある。

 

 外にでた。

 ネクロは父さんの背からおりる。

 

「これからどうするつもりだ? ネクロ」

「彼女がいなくて辛いんじゃない。いてくれて温かかったんだ。

 そんな風に思えるようになりたい。だから彼女との、思い出の場所を回りたいと思う」

 

「そうか」

「安心してくれ――なんて言える立場じゃないけど、安心してくれ。

 こんなボクを友人と呼んでくれた相手を、二回も裏切ることはない」

 

「そこについては信頼している。キミはウソをつく男ではない。大切なことは伏せることはあるがな」

 

 リリーナは、苦笑しつつもそう言った。

 ネクロと拳を突つき合わせる。

 

「それでは、またいつか」

「またいつか」

 

 そしてネクロは去っていく。

 その背はとても爽やかだった。

 

  ◆

 

「ご主人さまあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 学園の敷地に戻ると、ミリリが飛びついてきた。

「とっても心配したですにゃあ。ミリリは心配したですにゃあ!」

「ごめんなぁ、ミリリ」

 

 オレはミリリの頭を撫でた。

 

「はにゃあぁん……」

 

 ミリリは涙ぐみつつも、オレのなでなでを受け入れた。

 ミーユやカレンにリンとも順番に抱擁する。

 

「いつの間にやら、すごいことになっておったのじゃのぅ」

「はい、まぁ、色々とありまして」

「まぁ、お互いの同意が取れておるならよかろう」

「ありがとうございます」

「しかし付き合いを深めた以上、裏切ることは許さぬぞ?」

 

 鋭い目つきと声音で言われた。

 もしもオレがみんなを裏切ったりしたら、撲殺ぐらいはされそうだ。

 だがしかし、裏切らなければいい話。

 オレは父さんの目を見て、まっすぐに言った。

 

「はい!」

「うむ!」

 

 父さんは、快活の笑顔でうなずいた。

 その日は、ひさしぶりに親子ですごした。

 

 七英雄最強とも名高い父さんがきたということで、学園が騒ぎになったりもした。

 ファンであるという少女や少年に囲まれて、強くなる秘訣や手合せの申し出。

 逸話の数々が事実なのかどうかの会話をしていた。

 父さんの話は、劇や本にもまとめられているのだ。

 

「レリクスさんのお話は、劇で何回も見ました。いったいどこまでが本当なのでしょうか?

 十歳のころに、五〇〇人の盗賊団を壊滅させたとあるんですが……」

 

「それはウソじゃな。実際は、二〇〇人ぐらいしかおらんかったはずじゃ」

「二〇〇人はいたんですか?!」

「騎士団に引き渡した時の報酬が、そのぐらいじゃったからのぅ」

「それでは二十歳のころに、三〇〇〇人いる傭兵部隊と戦って撃退したっていうお話は……」

「やはりウソじゃの」

 

 質問をした少年は、息を詰めて答えを待った。

 五〇〇人が二〇〇人であったというなら、三〇〇〇人は一〇〇〇人前後ということに――。

 と思ったら、父さんは言った。

 

「五〇〇〇人ぐらいじゃった」

 

「「「ええーーーーーーーーーーっ?!」」」

 

「そうは言っても、実際に倒したのは七〇〇人ぐらいじゃ。

 残りは勝手に敗走していったからの」

 

 ひとりで七〇〇人を倒しているだけでもかなりのものだが、父さんの感覚では普通であった。

 事実確認といった名前の真相語りがあまりにもぶっ飛んでいたせいで、半信半疑な者もでてきた。

 しかしオレをチラリと見ると、すぐにうなずき父さんを信じた。

 

「レインの父さんだもんな……」

「レインくんのお父さんだもんね……」

「レインくんのお父さんなら、それぐらいできて当然か……」

 

 オレが基準になっているだとっ?!

 父さんのことは尊敬してるが、これはちょっと腑に落ちないっ!!


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