規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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開戦

 父さんが、使者に『アホウ』と伝えてから一週間目の朝。

 大軍勢がやってきた。

 軍勢というのは軍勢であるがゆえ、隠密行動ができない。

 ヨロイのガチャガチャと鳴る音がすれば土煙もあがるし、周辺にいる鳥などは飛び立つ。

 

 対するオレと父さんは、見晴らしのよい平原にいた。

 それ以外には誰もいない。

 ミーユはもちろん、マリナやカレンやリンも留守番である。

 

『わたしも行きたい。』

『ダメ』

『行きたい。』

『だからダメだって。もし別働隊とかがいたら、この屋敷を狙われる可能性は高いし。』

『ミリリもミリリもがんばりますが、レリクス様かレイン様かマリナ様がいてくださらないと、不安ではございます……にゃあ』

 

 マリナはリンを、一撃で吹き飛ばしたことがある。

 だからリンはもちろんのこと、リンと互角の戦いをしたミリリからの評価も高い。

 イメージを抜きにしても、オレと父さんに次ぐ三番手の実力者だ。

 本当の理由は『危険そうな前線にはだしたくない……』なんだけどね。

 

(………。)

 

 しかしマリナは、そんなオレの考えも察知してしまっているような感じだ。

 物言いたげな目を向けてくる。

 

(ちゅっ………。)

 

 そしてオレに身を寄せて、ほっぺたにキスをしてきた。

 豊満なバストをオレの胸板で潰すかのような勢いで押しつけ、そこはかとなく悲しみの漂う声で言った。

 

『続き………待ってるから。』

『うん』

 

 オレはマリナを抱きしめた。

 マリナは、くすん、と鼻を鳴らした。

 

『お守り………。』

 

 ということで、ミサンガを手首に巻いてもらったりもした。

 そんなやり取りがあって、オレは今ここにいる。

 負けるわけには、けっしていかない。

 父さんが息を吐く。

 肩をぐるぐる回したりもした。

 

「軍勢と戦うのは、ひさしぶりじゃのぅ」

「でもよかったんですか? こんな場所で待ち構えていて」

「どういうことじゃ?」

「こういう戦いって、深い森とか狭い街道とかでやるイメージだったんですけど……」

「そのふたつでは、無駄に時間がかかるじゃろう」

 

 一般常識→広いところでの戦闘は、一度に大人数と戦うことになるから数の不利がでやすい。

 父さん常識→広いところでの戦闘は、一度に大人数を倒せるから楽。

 

 これが父さんクオリティです。

 

 軍勢の先頭が現れた。

 甲冑に身を包んだ上で巨大な槍も持っている、オーソドックスな騎士隊だ。

 

 人数も膨大だ。

 オレは軽く飛び跳ねた。

 軽くと言っても二十メートルぐらいはあるので、けっこうな高さだ。

 

 軍勢はすごかった。

 まず端が見えない。

 軽く推定するだけで、五万……六万。八万……十万……? ぐらいはいそうだ。

 

 軍旗の数も豊富であった。

 三公の一角であるグリフォンベール家の紋章に、その配下たる十二爵の紋章。

 さらにその配下や、グリフォンベール家と同盟関係にある貴族などもきているようであった。

 

 確かに常識で言えば、これはグリフォンベール家の勝ち戦である。

 圧倒的七英雄の父さんではあるが、貴族としては弱小だ。

 へき地にいるのも、『魔竜との戦いでケガをした関係で隠居している』と言われていたりもする。

 

 実際、間違ってはいない。

 父さんがへき地にいるのは、権力争いなどに疲れた――というのが一番の理由ではある。

 

 一方で、魔竜との戦いでケガして疲弊したのも間違いではない。

 本人が言っていたのだから間違いはない。

 ただし重要な点として――。

 

 

 ケガして疲弊し弱っていますがあの強さです。

 

 

 まぁしかし、普通はそんなの想像できない。

 ゆえに勝ち戦という評判が参加者を集め、集まった参加者で勝算が濃くなってまた別の貴族が参戦の意志を示す。

 敵のゲスっぷりを思えば、参加しないとあとあとうるさそうだし。

 

 そうして膨れあがったのが、今回の軍勢というわけだ。

 オレは地面に降り立って、軽い柔軟をした。

 軍勢が、一〇〇メートルにまで接近してきた。

 先頭の騎士たちが、おかしいことに気がつく。

 

『なっ……』

『ふたりか……?!』

『それも、このような場所で……?』

『降伏の使者では……?』

『しかしそれなら、恭順の旗を振っているはずだが……』

 

「それではわが息子レインよ。軍勢と戦うにはどうすればよいか、父であるワシが教えてやろう」

 

 父さんは、軍勢へと向かった。

 推定10万を相手にひとりで。

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