規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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奴隷同士の訓練風景

 ダンソンを放逐してから、半月がすぎた日の朝。

 目覚めたオレは、裸のマリナにキスをする。

 

(………ぎゅっ。)

 

 マリナが抱きついてきてしまったので、あいさつ代わりにえっちする。

 ミリリやリンに、ミーユやリリーナがもじもじとし始めたので、全員とやる。

 

「でもミーユ、よかったのか? 避妊魔法かけなおしちゃって」

「赤ちゃんは……ほしいけど…………」

 

 ミーユは口元に手を当てた。

 ベッドの上に転がりながら、上目使いでオレを見つめる。

 

「『おあずけ』に、なっちゃうから……」

 

 そう言って、股を開いた。

 恥ずかしそうに顔をそむけてはいるものの、完全なM字開脚だ。

 

「ううぅ……」

 

 オレが黙って見つめていると、怒ったみたいな目を向けてきた。

 見ているだけの焦らしプレイは、やめてほしいという抗議だ。

 かわいい。

 オレはたっぷりかわいがる。

 

「はあっ、あっ、あっあっあっあっ……」

 

 喘ぐミーユは愛らしかった。

 コトが終われば服を着る。部屋をでて、食堂に向かう。

 

「おはようございます!」

 

 金色の髪に、青い瞳の少年が声をかけてきた。

 偽ミーユだった少年だ。

 今は髪を後ろで縛り、執事服を着ている。

 

「おはよう、ニール」

「はい!」

 

 偽ミーユ――改めニールは、元気なあいさつをしてきた。

 このニール、とても律儀な性格をしている。

 あのダンソンにも、恩義を感じていただけのことはある。

 

「ふたり目の息子ができたような気分じゃのぅ」

 

 父さんも、うれしそうだった。

 食事が終われば、訓練をする。

 学園の復帰もできそうなのだが、手続きに時間がかかるらしいのでヒマなのだ。

 オレたちはもちろんのこと、ニールも参加だ。

 

「どの武器を選ぶんだ?」

「では……これで」

 

 ニールは、いくつかある訓練用の武器の中から、レイピアを選んだ。

 裏庭にでる。

 

「それじゃあまずはミリリとだけど……。

 魔法はなしでね」

「にゃあっ?!」

 

 オレが言うと、ミリリが動揺を見せた。

 

「今回見たいのはニールの実力なんだけど……。

 ミリリが魔法を使うと、すこし強すぎになっちゃうから」

「はにゃうっ……♥」

 

 ほめられてうれしかったらしい。

 ミリリが頬を赤くした。

 うれしそうにトンファーを構える。

 ニールもレイピアを構えた。

 右腕だけをミリリに伸ばすかのような、フェンシング風のスタイルだ。

 

「けっこうサマになってるな」

「ミーユ様の本物としても違和がないよう、武芸の訓練も受けておりましたので……」

 

 などと答えるニールだが、ミリリへの視線は外していない。

 言うだけのことはある。

 

「にゃっ!」

 

 ミリリがタンッと踏みだした。

 右トンファーの一撃。

 ニールは素早く後ろに下がる。

 トンファーがレイピアに当たった。

 

 カアァン!

 甲高い音が鳴る。

 しかしニールは下がっていたため、隙らしい隙はない。

 ミリリにカウンターを入れる。

 

「にゃんっ!」

 

 ミリリは左のトンファーで受けた。その勢いを利用してキック。

 ニールは直撃を受けた。

 ただしミリリの蹴りは軽い。

 ニールは地を蹴り距離を取る。

 衝撃を最小限にいなし、三連突きを放つ。

 

「にゃにゃにゃっ……!」

 

 ミリリは押された。

 

「緑の風よ、我の力に――ウインドショット!」

 

 そこに左手で魔法。

 

「はにゃあっ……!」

 

 ミリリは風に煽られる。

 逆に言えばその程度だが、近い距離では致命的。

 ミリリの白い首筋に、ニールのレイピアが突きつけられた。

 

「にゃうぅ……」

 

 ミリリのよさの半分もだせない魔法禁止というハンデ戦だが、ミリリは悔しかったらしい。

 しょんぼりとうなだれた。

 

「まぁ、ニールの力を見ることが今回の目的だしな」

「それでも悔しいです……にゃあ」

 

 ということだった。

 励ましてやろう。

 オレはミリリの頭とアゴの下を、同時に撫でた。

 

「はにゃあっ……♪」

 

 ミリリはうっとり目を細め、ノドをごろごろと鳴らした。

 お尻の尻尾もピィンッと立った。

 かわいい。

 

「それでは次は、アタシが行くぜなっ!」

 

 カレンが訓練用の棒を構えた。

 

「はいっ!」

 

 ニールも構え、マリナが始まりの合図を入れようとした――直前。

 

「ぜなあぁ!!!」

 

 カレンは奇襲をかけたっ!

 

「えっ?!」

 

 ニールは咄嗟に回避しようと身を屈めたが、背中に棒の一撃を受けた。

 かろうじてレイピアを振るものの、カレンはすでに射程外。

 射程の外で土を蹴り――。

 

 目潰しっ!!!

 

「ううっ!」

「ヒャッハーだぜなぁ!!!」

 

 そして大きな声をだし、自分の位置をニールに教える。

 しかしニールがレイピアを向けると、気配を消してニールの背後に。

 

「ぜなあぁ!!」

 

 背後からぶん殴る!!!

 ニールは倒れた。

 カレンはニールの背を踏んで、高らかに叫んだ。

 

「勝ったぜなっ!」

「お卑怯ですにゃあ……」

 

 ミリリはぽつりとつぶやいた。

 しかしカレンは、拳を握って言い切った。

 

「楽してズバッと勝てるなら、楽したほうがいいに決まってるぜなっ!」

「…………」

 

 ミリリはいまだ、釈然としない様子であった。

 格下が格上に勝つための策略はともかく、同格か格下な相手に卑怯な手を使うのは……といった感じだ。

 オレは言う。

 

「まぁでも、カレンを当てたのは『汚い手口にどのくらい対応できるのか』を見たかったからでもあるし」

「ぜなぁ?!」

 

 カレンはなぜか、ショックを受けた。

 

「だけど実際使ったじゃん。汚い手」

「汚いって言われるのは、心外なんだぜなっー!

 知恵があるとか頭いいとか、そういうふうに言ってほしいんだぜなー!」

「なるほど」

 

 オレは、ハハハと笑ってみせた。

 

「ううぅ……」

 

 いまだ倒れ伏しているニールへと言った。

 

「カレンを卑怯と思うかもしれないけど、負けたらどうしようもない戦いってのもあるからね。

 そういうところでは、卑怯な手を使ってでも勝つか、臆病でもいいから逃げるとかしなよ?」

「しかしそれでは、レイン様やレリクス様の名誉が……」

「そういうのいいから」

「…………」

 

 ニールは、なぜかほうけてた。

 ミーユが小さな声でつぶやく。

 

「名誉を汚すぐらいなら死ねっていう考えあったからさ。

 ボクのうち……」

 

 トラウマでもあるのだろう。

 ミーユの声は重々しかった。

 ミーユに伝える意味も込めて言う。

 

「とにかくウチは、名誉とかそういうの気にしないから」

「あえて言うなら、名誉などを気にした結果、『家族』に死なれてしまうことが不名誉じゃのぅ」

「は……はい!」

 

 オレと父さんが言うと、ニールは感動してうなずいた。

 

「それでは最後は、わたくしが戦いましょうか」

 

 リンが前にでた。

 木製の槍を構える。

 

「っ……」

 

 ニールも構える。

 

「硬くならずともよろしいですよ?」

 

 リンは言うが、ニールは硬い。

 それはリンの威圧感のなせる技だ。

 リンはミリリに敗北したが、あの戦いでのミリリは、道具と魔法を使ったりもした。

 単純な近接戦で言えば、ミリリもカレンも圧倒できる。

 そういう意味で、ニールに勝ち目はないだろう。

 

(まぁでも、相手の強さがわかるのも強さのウチだよな)

 

 オレとしては、そんな風に評価するけど。

 

「いきますよ」

 

 リンが言った。

 同時に地を蹴る。

 槍の先が、ふらりとゆれた。

 と――思いきや。

 

 ドンッ!

 

 ニールは首に突きを食らって吹っ飛ぶ。

 

「ぐうぅ……」

 

 完全にダウンしていた。

 マリナが静かに手をあげる。

 

「リンの………勝ち。」

 

 勝利するとは思っていたが、ここまで圧倒的だとは思わなかった。

 ミリリが成長しているのとおんなじくらい、リンも成長しているようだ。


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