規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
リリーナが自画自賛していると、ローリアが言った。
「と……とにかく連れて行ってほしいっす!
勉強がしたいっす!
治癒魔法のエリートになって、色んな人を助けたいっす!」
「お待ちください! ローリアさま!」
「そのような、どこの馬の骨ともわからない輩についていくのは……!」
「そういうことなら、どこの骨かわかればいいのか?」
オレはミーユの胸元に手を伸ばす。
「きゃあっ!」
目的のものを探すついでに、ふにっとしたやわらかな触感を手のひらいっぱいに感じ、目的のものをだした。
「ボクのおっぱいを触る意味は、あったのかよ……」
頬を染めて胸元を両腕で隠すミーユは見ない振りをして、だしたカードを聖騎士たちに見せた。
「レイボルト魔法学園の、ミーユ=ララ…………グリフォンベール?!」
「あの三公の一角の?!」
「七英雄の中でも『最強にして別格』と言われたレリクス=カーティスと戦って負けたというが、それでもまだまだ威信を残した……」
父さんの名前も知っているのか。
「それなら、オレのカードも見せたほうがいいかな?」
オレはオレのカードを見せた。
「レイン=カーティス……?」
「まさか……レリクスさまのご子息の……?!」
聖騎士たちは固まった。
リーダー格の聖騎士が、恐る恐る言ってくる。
「失礼ですが……、レインさま」
聖騎士リーダーが目配せをした。
ローリアの周囲にした聖騎士はもちろんのこと、離れたところに控えていた聖騎士もやってくる。
その数、十六人。
剣と槍を持った前衛の聖騎士が五人ずつに、メイスを持った後衛の聖騎士が六人だ。
「もしもあなたが、レリクスさまのご子息であられますなら……。
この人数を相手にしても、勝利を掴めると存じますが……」
試すかのような口ぶりだった。
後衛の聖騎士の声が聞こえる。
(リーダーも意地が悪いな)
(まったくだ。
全盛期のレリクスさまご本人ならともかく、あんな若い息子程度が、この人数に勝てるわけがないだろうに)
(普通に断るとカドが立つから、適度に脅してうやむやに……ってわけか)
なるほどねぇ。
慎重なのは、よいことではあるが……。
「父さんの息子として試されているってなると、無様な姿は見せられないよね」
オレはパキリと指を鳴らした。
マリナたちにさがるよう目線で合図し、フウッと軽く息を吐く。
地を蹴った。
パアァンッ!
リーダーの聖騎士が吹っ飛んだ。
すごく手加減してみぞおちを手のひらで押しただけだが、超高速で吹っ飛んだ。
お星さまになりそうな勢いで吹っ飛ぶと、三階建ての建物の屋根の上に落ちた。
「は……?」
「ふ……?」
「へ……?」
オレは腹部に力を込めて、魔力を発した。
オレを中心に、炎のドームが広がった。
コンマ数秒で消えるように力を調節したドームだが、聖騎士たちの武器は溶けた。
父さんだったらちょっとにらむだけで消し飛ばせる魔法だが、聖騎士たちへの効果は絶大だった。
「なんだこれは?!」
「ににににっ、人間かっ?!」
溶けた武器を見て慌てふためく聖騎士たちの背後にまわり、頭の後ろを人差し指でちょこんと突いた。
その一押しで、聖騎士は気絶する。
ちょこん。
ちょこん。
ちょこん。
わずか一瞬で三人を倒した。
「本物だ……!」
「紛れもない、レリクスさまのご子息だ……!」
「レリクスさまのご子息でもなければありえない強さだが、レリクスさまのご子息であれば納得の強さだ……!」
わりと非常識なはずの強さだが、父さんの息子であれば――ということで納得された。
さすがの父さんである。
(レインって、レリクス
(ミーユさまのお言葉に同意いたします)
(ご主人さま、かっこいいですにゃあ……♥)
みんなの反応は様々だった。
サブリーダーと思わしき聖騎士が、吹き飛ばされたリーダーに代わって言ってくる。
「あなたが、本物のご子息さまであるという確信は得ました。
しかし今回は、いったいどのようなご用件で……?」
「修行の旅です」
「は……?」
「もうすこし強くなりたいと思って、修行の旅にでておりました」
「修行が……、必要……、なのですか……?」
サブリーダーは、口をポカンとあけていた。
「必要なのです」
オレがスパッと言い切っても、口はあいたままだった。
「で、どうなんでしょうか? オレにしてもミーユにしても、どこの骨かは明確にわかる者なわけですが」
「あっ、はい!
レリクスさまのご子息と、グリフォンベール家の関係者ともあれば、問題はございません!
必ずや、ローリアさまの身になるかと思われます!!」
ミーユとオレの父さんの名前は、なかなかに効果的だった。