規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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レイン十四歳。エルフのリリーナと出会う。

 二週間がすぎた。

 この段階になると、オレがすることは特にない。

 教えを受けた村人が、自分たちで作ってる。

 

 ただし氷の維持だけは、マリナでないと難しい。

 夜はオレのアイテムボックスに収納するが、削る時は出しっぱなしにする必要がある。

 海水を溜めておくための風呂を作る計画もあるが、二週間では難しい。

 

 ゆえにオレの役割は、マリナの抱っこだ。

 マリナを膝の上に乗せ、マリナに氷を維持してもらう。

 

 最初は隣に座ってた。

 一〇センチほど離れた、わりと近い距離である。

 

 けれども、マリナには足りなかった。

 身を寄せて、肩をぺたりとつけてくるようになった。

 

 それでも、マリナには足りなかった。

 太ももも、ぺたりとくっつけてくるようになった。

 

 まだまだ、マリナには足りなかった。

 頭をぺたんと、オレの肩に乗せてくるようになった。

 

 そんな感じで距離が縮まり、最終的には抱っこになった。

 マリナの体はやわらかいので、完全な役得である。

 さりげなくおっぱいを揉んでも、文句などは言われない。

 

「あっ………。」

 

 とかわいい声をあげ、頬を染めるだけである。

 服の隙間に手を差し入れて、直接さわっても平気だ。

 オレのマリナは、超絶天使だ。

 

 そんな毎日を送っていたが、オレは思った。

 

「そろそろきてもいいと思うんだけどな……。治癒魔法士の人」

「うん………。」

 

 おっぱいを揉まれているマリナは、頬を染めつつもうなずいた。

 その時だった。

 

「リリーナ様がいらっしゃったぞー!」

「「「リリーナ様が?!」」」

 

 村人たちは目を輝かせ、作業の手をとめた。

 村の入り口のほうに行く。

 オレも行こうとしたのだが、マリナに手を握られてしまった。

 

(………。)

 

 マリナは神秘的な無表情で、オレのことをじっと見つめた。

 

「手を繋いで、移動したいのか?」

「うん。」

 

 マリナは、こくっとうなずいた。

 オレはマリナの手を握り、入り口のほうに移動した。

 

 そこにいたのは、美形のイケメンエルフだった。

 水色の瞳に、流れるような金色の髪。優美なる衣装。

 そして漂う雰囲気が、とても知的で穏やかだ。

 

 もしもオレが女だったら、出会って五秒で惚れてたかもしれない。

 マリナの手を握る力が、思わず強くなってしまった。

 

 不安な気持ちが、伝わってしまったのだろう。

 マリナはキュッと握り返すと、まっすぐに言ってきた。

 

「わたしの王子さまは、どの世界でもあなただけ。」

 

 心臓が跳ねた。

 改めて恋をする。

 

 さっきは天使と言ったけど、もはや女神かもしれない。

 しかも巨乳だし。

 

 なんて感じ入ってると、病気の人たちが広場に集められた。

 その数、ざっと一〇〇人超。

 みんなそろって顔色が悪く、ひとりでは立てない人もいる。

 

 リリーナさんは、指を立てて詠唱を始めた。

 エルフ語なのだろうか。オレには理解ではない言葉で延々と詠唱を続け、最後に叫ぶ。

 

「我と盟約を結びし風よ!

 白き癒しを、病魔に侵されし者たちに運べ!

 広域治癒魔法――ティエーラ・ディスポイズン!」

 

 リリーナさんの指から、緑の光と水色の光が螺旋を描いて宙に昇った。

 ふたつの光が広場を駆け抜け、光が雪のように降り注ぐ。

 

「おお……!」

「治った! 治ったぞー!」

「パパー!」

「心配かけたなぁ、ローラよ」

 

 村の人たちは、口々に歓声をあげた。

 完治の喜びを、家族と抱き合って分け合っている人たちもいる。

 

 だがオレは、驚愕していた。

 長い詠唱があったとはいえ、これだけの人数を一瞬で治してしまうとは……。

 この治癒魔法士、只者じゃない。

 

「今回も、ありがとうございました」

「レリクス様の、お頼みですから」

 

 しかしレリクス(父さん)の知り合いと聞いて、納得いった。

 単位で言えば、めらごっさである。

 

 父さんの知り合いが、規格外。

 それはケーキ一個に含まれるカロリーは、ケーキ一個分である――という命題に等しい真実だ。

 

「それにしても今回の病……わたくしの到着が遅れてしまったわりには、症状が軽くありましたね。

 かなりの腕の治癒魔法士を手配することができたのですか?」

 

「それは恐らく、レインさまが作ってくださったお薬のおかげでしょうなぁ」

「レイン?」

 

「レリクスさまの、ご子息さまのお名前です」

「レリクス、の…………?」

 

 リリーナさんは、なぜかショックを受けていた。

 錆びついたゴーレムのようにぎこちなく首を動かして、酔っぱらった泥人形のようにふらついて寄ってくる。

 

「顔立ちなどは、あまり似ているとは言えないが、立ち込める非常識の雰囲気は、確かに…………!」

 

 親子を感じるポイントそこぉ?!

 確かにオレも立場が逆なら、常識の有無(そこ)で判断しそうだけどさ!!

 

「レリクスと雰囲気が似ている上に、少年。少年か……」

 

 いったいどういうわけだろう。

 リリーナさんは頬を染め、吐息をほんのり荒げてた。

 そこはかとなく、春の日の変質者的な空気がでている。

 

「…………リリーナさん?」

「ふわっ?!」

 

 リリーナさんはすぐにハッとし、咳払いをして聞いてきた。

 

「……ご子息。母君殿は、どのような女性であるのだ……?」

「母さんはいません」

「なに?」

 

 リリーナさんは、眉根を寄せた。

 オレは困った。

 

 オレは父さんに拾われた子どもだ。

 母親なんていない。

 ゆえに尋ねたこともない。

 

 しかし初対面の相手に、『実は異世界からきておりまして……』と言うわけにもいくまい。

 

「細かいことは、父さんに聞いていただければ……」

 

 そう言って、お茶を濁す。

 その刹那、リリーナさんが赤くなる。

 

「ひひひっ、独り身の女が、独り身の男の家になど行けるかぁ!!」

「えっ???」

 

 素っ頓狂な声がでた。

 全体的に華奢だけど、男の人だよね? このリリーナさん。

 

 思っていたら、リリーナさん。自身の指をパチッと鳴らした。

 白い光が、リリーナさんを包む。

 

 身長や凛々しい雰囲気はそのままで、しかしほんのりやわらかくなった。

 唇は艶やかに赤く、おっぱいは大きい。

 

「女ひとりで移動してると、面倒ごとも多いからな。

 ひとりで移動する際は、男化の魔法をかけているのだ」

 

(むぎゅっ。)

 

 説明が終わると、腕にやわらかな触感がきた。

 マリナである。

 マリナがオレの腕に抱きつき、オレを見ている。

 

 不安に怯えるその顔は、つい先刻のオレの姿だ。

 女神のクセに不安がり屋とか、オレのマリナ超かわいい。

 七年ずっとオレを想って、異世界にまで追いかけてきちゃうだけはある。

 

「大丈夫。どんな人が目の前にいても、オレの一番はマリナだから」

(ん………♪)

 

 とってもうれしかったらしい。

 マリナはオレの肩に顔をうずめて、(ぴと………。)と押しつけた。

 かわいい。

 

「とにかくそういうわけなので、事情が知りたいのでしたら父さんのところにきてください――としか」

「レッ……レリクスがいる上に、少年もいるキミの家にか……?」

「まぁ……そうです」

 

「わっ……わかった。

 このリリーナ。心臓が破裂しかねん想いを賭して、堂々と会いに行こう!」

 

 リリーナさんは、謎の決意を固めてた。




次の更新はあしたの午後十時ごろの予定です。
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