規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士 作:kt60
淡々と迷宮を進んでいると、一際立派な門に辿りついた。
色合いなどは今までと同じだが、込められている魔力が違う。
例によって、宝玉がないとダメそうな雰囲気だったが――。
「んっ!」
マリナが蹴ったら吹き飛んだ。
オレたちは、門を抜ける。
その先にあったのは、禍々しい門。
そして門を守るかのように佇んでいるひとりの男。
陽炎のようにたゆたう白いオーラは、死霊の者とは思えないほどに神々しい。
「始めまして。
私の名前はクリストフ。この迷宮に三魔騎士を封印した、四勇者のひとり」
クリストフは、恭しく礼をした。
「オレはレインだ。レイン=カーティス」
「ワシはレリクス。レリクス=カーティス」
「わたしは………マリナ。レインの………およめさん。」
そんな感じで、オレたちは名乗った。
マリナの名乗りだけ、すこしかわいい。
「きてくれて礼を――と言いたいところだが、宝玉を持っていないようだな」
「ダメなのか?」
「あの宝玉は、正しい心を持っている者でなければあつかえないようになっている。
この門を通る戦士は、力と正しい心の両方を持った戦士でなければならない。
魔族を尊ぶ邪教徒であってはならない。
宝玉がないのなら、貴公の心を我が剣で確かめさせていただく」
クリストフは剣を構えた。
「不愉快に思われたならすまない。
しかしわたしは、わたし自身の封印術でこの場に封じられた存在だ。
封印術で封じられた存在は、複雑な判断をこなすことができない。
以上の言葉も、事前に定めた通りにつづっている」
「なるほど……」
オレは静かに剣を構えた。
「それじゃあ、一対一で」
「よかろう」
オレが前にでると、マリナたちは後ろにさがった。
「では、行きます」
オレは攻撃を宣言し、ファイアボルトをクリストフに放った。
レベル2000の大王スクイッド程度なら、一撃で殺せる炎雷魔法。
だがクリストフは、左手一本で受け止めた。
ファイアボルトは、小さな爆発を起こし消え去る。
「よい魔力だが――浅い」
クリストフが突っ込んできた。
右手の剣でオレを突く。オレが素早く左に逃げれば、剣を両手で持って刺突を斬撃に変えてくる。
バク転で回避した。
蹴りのひとつでも入れれそうな気はしたが――――。
(っ?!)
危険なオーラを察知して離れる。
父さんはもちろん、ネクロやゼフィロスとも違う、独特の力。
それをクリストフは持っていた。
「カンがいいようだね」
陽炎のようだったクリストフのオーラが、太陽のフレアのように波打った。
さらに沸き立つフレアの一部が、白い球となって浮かぶ。
「わたしの聖闘気の特徴は、『対象の封印』
この聖闘気に触れたものは、その個所を封印される。
魔法で傷を受けなかったのも、そのおかげだ」
クリストフが、封印の白い球を放つ!!
「聖封・散弾射!!」
無数の球が飛んでくる。
視界を埋め尽くす超高速のそれは、必然的に回避不可。
オレは咄嗟に、ダブルをだした。
炎と雷の魔力で作った、オレそっくりの偽物だ。
ボシュボシュ、ボシュンッ!
しかしダブルは、散弾を食らった端から弾けてしまった!
「くそっ!」
それでも弾幕は薄らいだ。身をよじって回避する。
白い球のひとつの一部が、オレの左腕をわずかにかすめた。
それはもう本当に、『かすめた』というだけだった。
「っ?!」
なのに左腕が『封印』された。
完全に動かない。
クリストフが突っ込んできた。斜めの軌跡を描く斬撃。
オレは自身の剣で受ける。
キィンッ! と紅い火花が散った。
左腕が封印されている今、剣を持つ手は右腕だけだ。
そのせいで重い。
じりじりと押される。
オレは咄嗟に剣を引く。
クリストフの体勢を崩し、バックステップでさがる。
「甘いっ!」
クリストフの左手から閃光。身を翻して回避する。
その閃光は、右目のまつ毛にチリッと触れた。
それでも確かに回避した。
まつ毛にチリッと触れた以外には、一切触れなかった。
が――。
右目の視界も封印された。
クリストフの周囲に、封印の発球が浮かぶ。
「聖封・散弾射!!」
「ファイアーウォール!」
オレは炎の壁を張る。
だがそれも、先刻のダブルのように消されてしまう。
身をよじって最小限に受けてはいくが――。
「かすったね? 右足に」
その通り。
右の太ももにかすってしまっている。
機能がゆるやかに封印された。
「わたしの散弾射を二度も受けてその程度で済んでいるとは、驚きだ。
ランクをつけるなら、優にSとは言えるだろう。
しかし三魔騎士たちは、SS以上の実力者たちなのだ」
クリストフの周囲に、またも封印の白球が浮かぶ。
しかしまったく同じ技を、三度も食らうつもりはない。
オレはクリストフをイメージし、炎の球をオレの周辺に浮かべた。
「炎の球で、わたしの聖気を無効化させよう、というわけか。
確かに球をぶつければ、ひとつでひとつ、相殺させることはできるだろう」
「…………」
「しかしどうかな? わたしはキミという大きな目標にひとつでも当てればそれでいい。
だがキミは、わたしの球という小さな目標に全弾当てなければならない。
それは大変なことだと思うが?」
「常識で言えば、その通りだな」
「フフフ……。よろしい。それでは貴公に敬意を表し、温存なしの全力でいこう」
クリストフの全身が光り輝く。
五〇ほどの光球が、一〇〇にまで増えた。
「ではゆくぞ――聖封・散弾射!!」