規格外れの英雄に育てられた、常識外れの魔法剣士   作:kt60

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レリクス無双

 圧倒的な力を見せた父さんの前に、三魔騎士は成す術もなく吹き飛ばされた。

 しかし戦いは終わっていなかった。

 

「クククク、クク…………」

 

 父さんに吹き飛ばされた銀髪オールバックの男が、不気味な笑い声をあげる。

 

「魔王様を討ち取られ、自らも封印された余ら三魔騎士は、封印の中で考えていた。

 仕えるべきあるじを亡くした今、どうしようかと。

 そして結論を得たのだ。

 我ら三魔騎士のうちのひとりが、新たな王になろうではないかと!」

 

 銀髪の男から、禍々しい妖気が滲み出る。

 大気が震え、壁や天井が小刻みにゆれた。

 

「ふたりの騎士が封印を解くことに力を注力する中、余はひとり力を溜めた!

 そして今、手にした力は魔王のそれだ!」

 

 紫の騎士と黒い騎士が、男の左右で再生した。

 

「王がいれば兵は生まれる!

 王がいれば騎士は生まれる!

 そして余の特性は『不死』!

 貴様が何度殺そうと、余は無限に蘇る!!!」

 

 父さんが、有無を言わさず突撃をかけた。

 拳を放つ。

 しかし銀髪の男は、あろうことか――――。

 

 父さんの拳を、素手でつかんだ。

 

「さらに蘇った余の力は、死する前よりも強化される」

 

 あいているほうの手で、父さんに掌底を叩き込む。

 父さんが吹き飛んだ。

 燕尾服の胸元が、わずかに瘴気で腐食していた。

 マリナがつぶやく。

 

「つよい………。」

「確かに無限に再生するうえ、そのたびに強くなるって言うんじゃ……」

 

 理屈では倒せない。

 もう本当に、オレがクリストフから受け取った封印の腕輪が頼りだ。

 

 ただしあくまで、理屈で言えば。

 ふしぎなことに、父さんがいると思えば負ける気がしない。

 父さんは、闘気をたぎらせ口角をゆがめた。

 

「不死を名乗る存在であれば、ワシは過去に286体殺した。

 その経験から言えば――」

 

 父さんが剣を抜く。

 父さんが剣を振る。

 真空の斬撃が、地面をえぐりながら飛ぶ。

 銀髪の男は真っ二つになる。

 男は再生を始めるが、父さんは剣を放り投げて男に接近。

 

「貴様のようなタイプは、殺し続ければ死ぬ」

 

 男のこめかみに右フック。

 男の頭蓋骨をへし折ると、宙にほうった剣を手に取り、無数の斬撃。

 コンマ一秒にも満たない時間で男を八つ裂きにした。

 男が父さんから、十メートルほど離れたところで再生を始める。

 父さんは、自身の両手に闘気を溜める。

 

「ワシが相手をした中でもっともしつこかった男は、98万6280回で死んだものじゃが――」

 

 闘気弾を放った。

 

「クククク…………デスゾーン!」

 

 男が言うと、男の前に亜空間が発生した。

 闘気弾が吸われる。

 復活していた騎士のふたりが、父さんの両手をつかんだ。

 男が叫ぶ。

 

「デスゾーン!」

 

 父さんは、現れた異空間に吸われてしまった。

 

「やつは異空間に葬らせてもらった。

 我ら三魔騎士以外の者が入れば『死』によって腐食され、五分と持たずに死亡する空間だ。

 脱出する方法も、余を倒す以外には――――ない」

 

 男はクククと勝ち誇る。

 その時だった。

 

 ザグウゥ、ザグウゥ、ザグウゥ!!

 空間に亀裂が入ると同時に、誰かが奥で空間を蹴り飛ばした。

 魔力の壁がバリンと割れて、父さんが現れた。

 

「たかが異次元に送った程度で、ワシを倒せると思っては困る」

「うおおっ、おっ、おのれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 男が初めて動揺を見せた。

 父さんを出すまいと、漆黒の魔力弾を無数に発射し、自身も突っ込む。

 父さんは魔力と男の勢いに押され、再び異次元に戻ってしまった。

 

「決まったネェ……」

「あの空間は、入った者を殺すだけではない。

 我ら三魔騎士の力を十倍にし、それ以外の者の力を十分の一にする」

「自力で脱出しかけた時は驚いたガ……。シルバー自らが入り込んだなら終わりさネェ」

 

 ふたりの騎士は、あとは事後処理と言わんばかりにオレたちを見た。

 リリーナが言う。

 

「気をつけろよ…………少年。

 レリクスにかかればただの雑魚でしかなかったやつらだが、キミやマリナの基準では強いぞ」

 

「そうみたいだね」

 

 オレとマリナとリリーナは構えた。


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