スキマ妖怪、邁進す   作:りーな

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2話目です。チート要素が一部明らかに。
原作から大きく乖離し始めるのは、大体書籍3巻辺りから。
原作の形は残しますが、最早6巻あたりは別物。

お気に入り登録、評価等ありがとうございました。


カルネ村

ナザリック内のモモンガの私室には、個人的なドレスルームが併設されている。

そこにはローブや杖といったモモンガ自身が装備できるものから、鎧や剣といったまかり間違ってもおよそ魔法職が装備するようなものではないものまで多種多様に揃っている。

いや、その表現には語弊がある。正しくは「転がっている」だ。

整理、もしくは整頓の「せ」の字など跡形もない程度には乱雑だと言っておこう。

紫が情報を整理している間、モモンガは剣を持ち、構えて落とすという傍から見ると不審極まりない行動をしていた。

それを目を細めて観察しながら少ない情報をできる限り纏める。

 

フレンドリィ・ファイアは解禁状態。でなければモモンガが召喚した根源の火精霊(プライマル・ファイアーエレメンタル)をアウラとマーレが倒せるはずがない。

守護者を始めとするNPC達の忠誠は疑う余地はない。アルベドはどうも微妙だが。

魔法・スキル・アイテムは問題なく効力を発揮している。多少は仕様が変わっていたりするが、許容範囲だ。

そして目の前のモモンガの動き。モモンガは剣を装備出来ない。それが剣を持つことが出来ても構える―――つまり「使う」ことが出来ない理由だろう。どうやら微妙な所でゲーム内の法則は仕事を続けているらしい。

 

《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》で漆黒の全身鎧を創ったモモンガは、確かめるように全身を見回していた。どうやら魔法で創造したものなら魔法詠唱者(マジック・キャスター)であっても装備できるらしい。

モモンガはひとしきり確認して満足したように頷くと、その姿のまま紫の方を振り向いて言った。

 

「八雲さん。ナザリックの外に行ってみませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支配者2人だけで外に出ようとしたモモンガに紫は強硬に反対、ある程度の実力を持つシモベを複数、もしくは守護者の誰かを随伴することを主張した。

モモンガの「儀仗兵にうんざりした」というのは分からないでもない。だが、安全策は用意しておくべきだ。

結局モモンガが折れ、ナザリック上層へと親衛隊共々一時的に移動しているデミウルゴスを連れて行くことで落ち着いた。勿論、前もって《メッセージ/伝言》でデミウルゴスには伝えてある。

 

ナザリックの外の空は一面星空だった。2人が《フライ/飛行》の魔法で飛び上がり、半悪魔形態になったデミウルゴスが翼でそれに追随する。

 

「…綺麗ね」

「…ええ。現実(リアル)ではもう見られなくなってしまった光景です」

 

夜故に辺り一面は闇が覆っていたが、空で無数に輝く星々の光が淡く地上を照らしていた。

向こう(リアル)では空は有害物質を多分に含んだ暗雲に覆われ、早死にしたくなければ対毒マスクを付けていなければ外出することすら出来ないほど汚染が進んでいる。

今2人の眼前に広がる光景など、文字通り直接見た事などないものだった。

彼らの目には、この自然が宝の山のようにすら見えていた。

 

「…ブループラネットさんが喜びそうな光景ね」

「違いないですね。声を上ずらせて、止めるまで魅力を語ってくれることでしょう」

「今なら話について行けそうな気がするわ」

「私もですよ」

 

第6階層のフィールドの作成に最も入れ込んだ、自然を愛するメンバーの事を思い浮かべ、自ずと声に愉快そうな音が混じる。

 

「この星々は世界を飾る為のものかしら?ちょっと世界には勿体無いわね」

「確かに…ナザリックを、アインズ・ウール・ゴウンを飾るのにこそ相応しいでしょうね」

 

軽く笑いながら軽口を叩き合う。

不意に、紫が真剣な表情をした。

 

「…もし」

「ん?」

「もし、この世界に人間が…もしくはそれに類する知的生命体が居たのなら、彼らも向こう(リアル)と同じように争っているのかしらね」

 

モモンガは眼を細めるように眼窩の灯火の光量を落とした。

 

「…争っている、でしょうね。人間は良くも悪くも欲望に忠実ですから」

「…だったら、ユグドラシル史上最悪のギルド『アインズ・ウール・ゴウン』らしく振舞ってみましょう?」

「……どういう事ですか?」

「………狙ってみない?世界征服」

 

紫らしくない意見に、モモンガは内心驚いた。

彼女は実在したキャラクターの再現をしていた以上、その行動基準もそれに準じていた。

曰く、『裏から胡散臭く』。表からの干渉は最小限に、自分の存在自体を悟られず、それでいて自由に局面を動かす。

それをモットーしていた彼女らしからぬ発言だ。余りにも直接的すぎる。

 

「ちょっと興奮してるのかもね、私。…世界征服、貴方だって一度は考えた事位あるでしょう?」

「それは、まぁ…」

「多くの血が流れるかもしれない。もしかしたら、今までの争いで流れたよりも多く。…でも、こんなに美しい世界なのだから、『理想』を追い求めたって良いんじゃないかしら。

究極的には、争いがこの世界から無くなればいいと思ってるわ。…元の世界じゃ最早可能性の無い願いだからこそ」

「…確かに、そうですね」

 

その気持ちはモモンガにも分かる。

元の世界では確実にあり得ない光景。空気が澄み、自然が広がり、見渡す限り世界が「生きて」いる光景。

後は恒久の平和を付け加えるだけ。一番重要で、一番難しいもの。一度失った、もしくは今まで得られなかったからこそ分かる尊さだろう。

 

ズズズ、と突如地鳴りが起こる。

そちらへ視線を向ければ、平原から次々と小さな隆起が生み出されているところだった。

近場の隆起同士が合わさり僅かに大きくなり、また合わさりと繰り返され、最終的には一塊に纏まってナザリックの壁へと押し寄せた。

強固な壁へとぶつかって砕け散る土の様子は、さながら津波のようだった。

 

「…《アース・サージ/大地の大波》ね」

「ええ。スキルによる範囲拡大に、クラススキルまで併用しているようですね」

「流石はマーレ、と言った所かしら」

 

円形闘技場(アンフィテアトルム)でモモンガがマーレに割り振った役割は「ナザリックの隠蔽」。草原に石壁は目立ちすぎる為に、魔法で地形を変えて隠しているのだ。

 

「はい。ただ、マーレ以外にもアンデッドやゴーレムといった疲労をしないシモベを駆使して作業を行っていますが、残念ですが遅々として進まない状況であります」

「…まあ、そればかりは仕方ないわよ。ナザリック自体広大だし、周辺も含めての隠蔽工作となると…」

「八雲さんの言う通りだ。時間が多少掛かるのは仕方がない。問題は作業中に発見されることだろうが、周辺の警戒はどうなっている?」

「早期警戒網の構築は既に終わっております。おおよそ半径5キロ範囲内に知的生物が侵入した際には相手に気づかれず即座に発見することが可能となっております」

「それは見事だ。…だが、それはシモベを動員しての警戒網だな?」

 

デミウルゴスの肯定を受け、モモンガは別の警戒網も構築しておくことを視野に入れた。

 

「私の方にも警戒網を作るのに心当たりがある。それを利用してくれ」

「なら、私も藍に命じてスキマから監視させるわ。あそこからだと誰も探知出来ないし」

「かしこまりました、アルベドと相談した上でどちらも組み込ませていただきます。所でお二方はこの後、どういったご予定で?」

 

モモンガは少し悩んだ。元々、セバスからの報告で夜空があると聞いたから、息抜きも兼ねて彼女と共に外へ出てきたのだ。その後の予定などあろうはずもない。

そんなモモンガの心境を悟って助け舟を出したのは紫だった。

 

「そうねえ…マーレは頑張っているみたいだし、陣中見舞いでもしてこようかしら。尽くしてくれている部下を褒めるのは当然よね」

「そうですね、それがいいでしょう」

 

紫の提案に乗ったモモンガは、マーレの横に降り立つべく向かう。

その後、モモンガがマーレに「リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン」を下賜されて恐縮したり、どこからか聞きつけたアルベドが現れたり、羨ましそうな―――嫉妬がこれでもかと溢れた―――目をしていたアルベドにもモモンガが同じく下賜したり、それを左手の薬指に嵌め、隠れて悶絶しているアルベドを見てしまったりしたが、些細なことである。…多分。

ちなみに、内部へ帰還したあとモモンガが供の者もつけずに外へ行こうとしていたことを聞きつけたセバスによって、モモンガは小一時間ほど小言を言われる羽目になっていた。

まあ、スキマの中に逃げ込んで藍を愛でていた紫には関係のない話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付が変わって、翌日。疲労というバッドステータスなど存在しないはずのアンデッドであるにも関わらず、妙に疲れた雰囲気を醸し出しているモモンガが椅子に座り、その横に開かれたスキマから紫は上半身だけだらしなく出している。

モモンガの左斜め後ろにはセバスが直立不動の姿勢で待機しており、モモンガの目の前には机から浮いて静止している鏡があった。

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)。それがこの鏡の名だ。

指定したポイントを映し出すことが出来るが、低位の情報系魔法で簡単に隠匿されるし攻性防壁による反撃を受けやすい、微妙としか言えないアイテムだ。

そんな今まで使ったことのないアイテムの操作方法を完全に把握し終えたモモンガは、ようやく人のいる場所を探し始めた。

そうして見つけたのは、ナザリックから南西におよそ10キロ程離れた場所にある村。村の近くには森、周囲には麦畑があり、中世の風景を見ているような気分になる。

その村は人の動きが激しく、さっきから家を出たり入ったり、道を駆け回ったりと忙しない。

 

「何だ?…祭りか?」

 

モモンガの言葉に、しかし横合いから覗き込んだ紫の意見は違った。

 

「祭りは祭りでも血祭りよ、これ」

 

拡大してみると、なるほど確かに祭りと言うには些か血なまぐさすぎた。

追われる側は使い込んだのが分かる色褪せた服装。追う側は馬に乗り、陽の光を鈍く反射する全身鎧に身を包み、手には剣と盾。

統率された無駄のない包囲陣形と装備、盾にあしらわれた共通の紋章。明らかに訓練された兵だ。

 

「野盗ではないようだな」

「更に付け加えるなら、どこかの組織…そう、国とかに所属している騎士ね」

 

視点を変えたことでより鮮明に映し出された虐殺の様子に、紫は違和感を抱く。小さく漏れた動揺の声からして、モモンガも同じなのだろう。

虐殺されている現場を見ても、何とも思わないのだ。いや、むしろ喜悦すら感じる。以前(リアル)なら、気分が悪くなって当然の光景なのに。

「精神という中身の有り様は、肉体という器の有り様によって定義される」。既に肉体的には人間を辞めている自覚はあった紫だが、まさか精神的にも辞める時が来るとは、と驚いたりはしない。

ある程度予想できたことである。ただ、紫の想像よりも早かったのは否定しないが。

村を見捨てると決めたモモンガに紫は意見した。

 

「そろそろこの世界での私達の力量を知っておくべきだと思うの。ちょうど訓練された人間がいて、しかもそいつらを殺しても感謝される。実験台には十分じゃない?」

 

その言葉でモモンガは動いた。元々不快だったのだろう。アルベドにフル装備で来るよう命じ、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取った。

向かう先は鏡に映し出されている森の中。幼い姉妹が逃げ込み、その後を騎士2人が追っている。

 

「《ゲート/転移門》」

 

距離無限、転移失敗率0%。ユグドラシルでは一般的かつ最も確実な方法で、モモンガは目的地へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移した先で、モモンガを見て呆然とする騎士達と姉妹。何の前触れもなく突然アンデッドが現れた時の反応とすれば当然ではある。

モモンガが狙いを定めたのは、姉妹に今にも剣を振り下ろしそうだった騎士。何も持たない右手を上げ、魔法を発動する。

 

「《グラスプ・ハート/心臓掌握》」

 

モモンガが得意とする死霊系魔法の中でも高位に位置する、第9位階魔法。騎士は抵抗(レジスト)できず、小さな呻き声を残して糸の切れた人形の様に倒れ伏し、絶命した。

人を殺しても何も感じない心に動揺することもなく、モモンガは歩を進める。その時、騎士の背後の空間に亀裂が走った。

 

「こっちは私にくれないかしら?」

 

最早見慣れたスキマから現れた紫の右手には日傘、左手には扇子。扇子からは輪になった紐が垂れ、それを手首あたりにかけている。

一見戦闘が出来るようには見えないが、身に付けているものは全て神器級(ゴッズ)世界級(ワールド)のアイテムである。

 

耐久性に重点を置いているものの、ダメージを与えると装備者のHP・MPの最大値の1%分を回復させる、日傘型槍「ミラ」。

自動HP・MP回復量のブーストに加え、攻撃してきた者に猛毒・スタン・石化のいずれかを60%の確率かつランダムで耐性を貫通して付与し、そのうち0.5%の確率で強制即死させる服型鎧、「ウィオラケウス」。

100レベルにはダメージが入らないほど弱く、武器としては使えないが魔法の効果を30%アップさせる効果を持つ扇子型短剣「ウェリタス」。

1日に5回、死亡する攻撃・超位魔法の効果を無効化する指輪型世界級アイテム、「虚無(アザトース)」。

全ての魔法のMP消費を1に抑え、同じ魔法を続けて発動するたびに元の威力の5%ずつ威力が上がり、威力上昇の上限値は+150%。更にはリキャストタイムを半減させるぶっ壊れ性能を持つ指輪型世界級アイテム、「連環(メビウス)」。

 

この5つを装備してきているのである。これらは紫の本気(ガチ)装備だ。ネタ要素は外装データを除いて一切ない。

前方には仲間を瞬殺したアンデッド。背後には突然現れた女性。

追い詰められた騎士の矛先が向いたのは、

 

「わああああ!」

「…あら」

 

紫だった。何も知らない者が見れば只の女性なので当然だが。

振り向きざまに横薙ぎに払われた剣を、紫は体で受ける。装備の効果で5回は死なないと分かっているからではあるのだが。

右腕の肘あたりに吸い込まれるようにして向かった剣は、キィィン、と澄んだ高音を発して砕けた。

 

「…ば、馬鹿な」

「脆いわね、その剣。ちゃんと手入れしてたのかしら?」

 

まさか砕けるとは思ってなかった。その思いは、奇しくも攻撃をした側と受けた側、双方の共通した思いだった。

 

「今度は私の番ね。《トリプレットマキシマイズマジック・マジック・アロー/魔法三重最強化・魔法の矢》」

 

紫の背後に3つの魔法陣が現れ、騎士が反応するよりも早く、合計30発の光弾が放たれた。

悲鳴を上げる間も無く、全身を強かに打ち据えられる。一発一発が全身鎧を凹ませ、あるいは貫き、装備を鉄屑に、人間を肉塊へと変えていく。

10秒にも満たない間に行われた蹂躙は、そこに生物が存在したと血痕のみが物語る結果を残した。

その結果に紫とモモンガはあまりのあっけなさに驚いた。

紫が発動した魔法は、三重化されていようが最強化されていようが装備の効果で強化されていようが、所詮は第1位階の魔法だ。

ユグドラシルでのレベルにして70程―――つまりはありふれたプレイヤー相手であれば、「牽制になればラッキー」程度の認識の威力と位階だ。魔力(MP)の無駄使いと言い換えてもいい。

それで跡形もなく死ぬとは何事か。

最早警戒の必要が無いといっても過言ではない実力差に暫し呆然としていると、効果時間終了直前の《ゲート/転移門》から人影が現れた。

漆黒の全身鎧を装着し、手にはバルディッシュを装備した者。完全武装したアルベドである。

 

「準備に時間が掛かり申し訳ありませんでした」

「いや、そうでもない。実に良いタイミングだ」

 

アルベドはモモンガに対して最上級の礼をした。相変わらず紫にはピリピリとした嫉妬の視線を向けている。

アルベドの懸念は的外れもいいとこだ。紫にそんな感情はない。

はあ、と気疲れから小さく溜息を吐き、紫はモモンガの後ろで震えている姉妹へ歩み寄る。

びくりと恐怖から体を一度大きく撥ねさせ、更に姉妹の震えが大きくなる。姉と思われる方の背中にはそれなりに深い切り傷がある。紫は手を翳した。

 

「《ミドル・キュアウーンズ/中傷治癒》」

 

淡い緑色の光が傷口に降り掛かり、どんどんと治っていく。

第2位階の治癒魔法であれほどの傷が全快するならば、レベルにしておよそ5、あの程度の魔法で死ぬ騎士達はせいぜい10といった所か。

せっかく助けたのに死なれるのも後味が悪い。そう考え、防御魔法を掛ける。

 

「《アンティライフ・コクーン/生命拒否の繭》《ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ/矢守りの障壁》」

 

半透明の球形の障壁が2人を包み、空間が一瞬だけ僅かに歪む。

モモンガがアイテムボックスの中からみすぼらしい角笛を2つ取り出し、姉妹に投げてよこした。

子鬼将軍の角笛。普通よりも多少強いゴブリンを複数召喚するだけのアイテムだ。護身用位にはなるだろう。

その後、騎士の死体を使い、モモンガがスキルで中位アンデッドの死の騎士(デス・ナイト)を作成し、村を襲う騎士を殺すよう命じると走り去ったのには2人揃って唖然としたが。

名を聞かれた際、「モモンガ」と名乗らず、「アインズ・ウール・ゴウン」と名乗ったのには、ある種の感嘆を覚えた。

彼はギルド長という立場にいながら謙虚で、率先して雑用をこなすタイプだ。彼だからこそギルドが団結していけたと考えていたメンバーは多い。本人は気付いていないだろうし否定するだろうが。

彼がギルドの名を名乗るのを嫌がるメンバーが一体何人いるだろうか。そんな事を言う奴がいたらウルベルトさんとたっち・みーさんがリスポーンキルを仕掛けたろう。

《メッセージ/伝言》でわざわざ不安そうに許可を求めてきたモモンガ―――否、アインズにそう言えば、案の定照れくさそうに否定したが。

 

「?…行かないのか?」

「ちょっとね。それと、その骸骨の姿どうにかして隠したら?」

 

村を襲撃している騎士達とは別行動をしている騎兵から潰しに行こうとしたモモンガ―――否、アインズの呼びかけに、紫はついていかなかった。

無論後で行くつもりだが、必要な措置をとらねばならない。そこまで気が回らなかったアインズのフォローは、自分がやるべきだと紫は思っている。

アインズが去ったのを確認して、姉妹に向き直る。

 

「ごめんなさいね…《コントロール・アムネジア/記憶操作》」

 

記憶に干渉し弄る、第10位階魔法。先程去り際にアイテムボックスの中から取り出していたのは、メンバー達が遊びで作った篭手の「イルアン・グライベル」と、ある意味呪われているアイテム「嫉妬する者達のマスク」、通称嫉妬マスク。

最初からアインズがそれらを付け、胸元を閉めていたように記憶を改竄する。流石に骸骨の姿はまずかろう。

本来燃費最悪の魔法だが、世界級アイテムのおかげで無視できる。

念入りに確認した後、スキマを開いてアインズのいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アインズの隣へ出てくると同時に、村の方角から笛の音がした。恐らく、騎士達の撤退の合図か何かだろう。あの程度の雑魚が、曲がりなりにも中位アンデッドであるデスナイトに勝てるとは思えない。

目線で意思疎通し、《フライ/飛行》で飛ぶ。アルベドはアインズが《マス・フライ/集団飛行》で連れて行った。

その後、何とか生き残った騎士達を見逃したり、村人に感謝されたりということがあった。

今は簡素な弔いをしている。アインズもそれに立ち会っているが、手に蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)を持っていたので《メッセージ/伝言》で釘を刺すというということをした。

村人がアインズを囲んでいるその光景を、アルベドが遠くから不快そうに眺めていた。

紫はその横に立った。

 

「…やっぱり、人間は嫌い?」

 

紫のその問い掛けに、アルベドは当然と言わんばかりの感情を込めて答えた。

 

「好きではありません。脆弱な生き物、下等生物。虫のように踏み潰したらどれだけ綺麗になるか…と」

「そう。改めろ、とは言わないけれど、もう少し貴方は自分の感情を隠すことを学んだほうがいいわね。だからアインズさんの事を好きだと私にバレるのよ」

「うぇっ?!」

 

アルベドが素っ頓狂な声を上げる。バレていないとでも思っていたのだろうか。あまりにも見立てが甘い。

 

「別にその考えは不敬でも何でもないわよ。貴方の創造主のタブラさんは『そうあれ』と貴方に直接伝えたのか知らないけど、元々貴方はアインズさんの側に女性的な意味で立つ為に生み出されたのよ」

「…え?タブラ様が?」

「ええ。そうあるのが、タブラさんが望んだ貴方の姿。…ちなみに、私にそんな感情はないから、嫉妬の視線を向けなくても良いのよ?あくまでアインズさんは私にとって仲間以上でも以下でもないし」

 

だからさっさと突撃して来なさいな、と茶化すと軽く笑って、では行ってきます、と返してきた。

この後、アルベドは事あるごとにそっち方面で紫に相談するようになり、紫はたまに「アンデッドと人間の境界」を弄って、アインズを半アンデッドとでも言うべき状態にしてアルベドを嗾けるようになる。

その事にアインズが頭を抱える事になるまで、後数日。




・らしくないことを言うゆかりん
 若干ハイになってます。
 そしてナザリックの行動方針が世界征服、もとい世界平和に決定。
 戦争が大前提な辺り、ナザリック魂が輝いてる。

・藍を愛でるゆかりん
 もふもふは正義。異論?却下。

・ガチ装備のゆかりん
 チート要素その1。
 装備の所為で若干名に死亡フラグが立ちました。ちなみに回避不可。

・唖然とするゆかりん
 この世界の住民にはフル装備ゆかりんの攻撃魔法は一部の生物を除いてオーバーキル。
 跡形も残らないのはweb版の「侵入者」編からいただきました。ゆかりんの方が弾数が少ないですが。

・アルベドを煽るゆかりん
 アインズと執拗にくっつけようとする。
 わざわざ「境界を操る程度の能力」を使うあたり、本気度が伺える。
 よって(性的に)食われる可能性大。アインズさん逃げてー!
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