「では、リゼさん。先輩として色々教えてあげてください」
「きょ、教官ということだな!」
チノにそう言われ、リゼさんは嬉しそうに言う。
「よろしくねリゼちゃん!」
「お願いします、リゼさん」
「上司に口を聞くときは、言葉の最後にサーを付けろ!」
「お、落ち着いてサー!」
ココア姉も落ち着いたほうがいいと思う。
その後、僕とココア姉が連れてかれたのは倉庫だった。
「このコーヒー豆の入った袋をキッチンまで運ぶぞ」
「う、うん」
「はい」
リゼさんは軽々と大きな袋を持ち、肩で担ぐ。
凄いなぁ………
試しに一つ持ってみたけど、結構重くて持ち上がらない。
「う、う~ん!重いよ、コレ!普通の女の子には無理だよ!ねぇ、リゼちゃん」
するとリゼさんは持っていた袋を急に下ろした。
「そ、そうだな!女の子には無理だな!」
「小さい袋の奴を運ぼうか」
そう言ってココア姉は小さい袋を持つが、それでも重いみたいだった。
リゼさんは小さい袋を四つぐらいもち上げてた。
それ、多分大きい袋一つ分と重さ変わらないと思うんだけど………………
「小さいのでも結構重いね。一つ持つのはやっとだよ」
「あ、ああ!そうだな!」
するとリゼさんはまた袋を下ろして、小さいのを一つだけ持った。
取り敢えず、僕は小さいのを両手に一つずつ持った。
キッチン移動し、お客さんが来るまでの間、いろんな仕事を教えてもらった。
「ココア、テイ。メニューを覚えとけよ」
そう言って僕たちにメニュー表を見せて来る。
メニューにはコーヒーの種類から軽食と言った物まで色々ある。
「コーヒーの種類が多くて難しいね」
「そうか?私は一目で暗記したぞ」
「凄い!」
「訓練してるからな。チノなんて香りだけでコーヒーの銘柄当てられるし」
凄いなぁ……
同い年なのに、チノの方が大人っぽく見える。
「ミルクと砂糖は必須だ」
そう言うとチノは恥ずかしそうに持っていたノートで口元を隠した。
安心したと同時に、その姿がとてもかわいく思えた。
「いいなー、チノちゃんもリゼちゃんも。私も何か特技あったらなぁ……」
「僕も特技が欲しい」
「ん、チノちゃん何してるの?」
「春休みの宿題です。空いた時間にこっそりやってます」
「へぇ……。あ、その答えは128で、その隣は367だよ」
出た。
ココア姉の暗算。
ココア姉はああ見えて、理数系の科目が物凄く得意だ。
僕もよく数学の宿題とか手伝ってもらっていた。
「ココア、430円のブレンドコーヒーを29杯頼むといくらになる?」
「12470円だよ」
やはり一瞬で答えるココア姉。
「私も何か特技あったらなー」
「いや、それは十分に特技だろ」
「リゼさん、ココア姉はああいう人だから」
でも、やっぱり羨ましいよ。
姉弟の中で、僕はこれと言った特技は無い。
「はぁ~、僕も特技が欲しいな………」
「あっ!」
その時、僕の背後でココア姉が水を拭いていたコーヒーカップを落としてしまった。
僕は、カップが床に落ちる前にリゼさんの方を向いたまま、後ろに半歩程下がり、手を後ろに伸ばしてキャッチする。
「ココア姉。食器を洗う時は落とさないように気を付けてっていつも言ってるじゃん」
「ごめんね。ありがとうね、テイ」
カップをココア姉に渡し、溜息を吐く。
「なぁ、テイ」
するとリゼさんが何処から出したのかボールを三つ取り出し、僕に投げて来た。
それを素早く片手で三つキャッチする。
「リゼさん、これは?」
「………いや、何でもない。ちょっと確認をな」
そう言ってボールを回収し、しまう。
「はぁ~、僕も特技があったらなぁ…………」
(いや、今のは特技だろ………)
(今のテイさん………ちょっとかっこよかったです………)
(やっぱテイは凄いなぁ~。流石は私の自慢の弟!)