暫く四人で話してると、お客さんがやって来た。
「いらっしゃいませ!」
ココア姉は元気よくそう言う。
「あら?新人さん」
「はい!今日からここで働かせてもらってるココアと言います!」
「よろしくね。キリマンジェロお願い」
「はい!」
お客さんに対応するココアを見て、リゼさんが感心したように言う。
「ちゃんと接客できてるじゃないか」
「はい。心配ないみたいですね」
「やったぁ!私、ちゃんと注文取れたよ!キリマンジェロ、お願いしまーす!」
はしゃぐココア姉を見てると、何故か僕までやる気が出て来る。
よし!次のお客さんは、僕が対応するぞ!
そう意気込んだ瞬間、店の扉が開き、また女性のお客さんが入って来る。
「いらっちゃ―――」
……………噛んじゃった。
「いらっしゃいませ…………」
「えっと………新人さんかな?」
「……はい。今日からここで働かせてもらってるテイと言います」
「そう……頑張ってね。ブルーマウンテン、お願いできるかしら」
「はい。お席でお待ちください」
そう言い、三人の所に戻る。
「チノ……ブルーマウンテンお願い………」
「その……なんだ……テイはよく頑張ったぞ。噛んだ位気にするな」
「偉いですよ、テイさん」
リゼさんとチノの慰めが心にしみる…………
「大丈夫!噛んでもテイは可愛いから!」
ココア姉………全然フォローになってないよ…………
その後、暫くせわしく動き回りながら仕事をこなす。
お客さんが全員帰ると、ココア姉が口を開く。
「ねぇねぇ、チノちゃん。この喫茶店、ラビットハウスって名前でしょ。ウサ耳付けないの?」
「そんなの付けたら違う店になってしまいます」
「リゼちゃんとかウサ耳似合いそうだよね」
「そんなもん付けるか…………………露出が高過ぎるだろ!」
「ウサ耳の話だよ!?」
一体何を想像したんだろう。
ウサ耳か……………
試しにこっそり手でウサ耳のような形を取り頭に持ってくる。
「…………ぴょん………なんちゃって」
一人で呟き、軽く苦笑する。
(テイ………男がする行動じゃないぞ………可愛いけど………)
(テイさん………可愛いです………)
(可愛いよテイ!可愛い可愛い可愛い可愛い!)
「リゼさん。それはなんですか?」
リゼさんがコーヒーにミルクを注ぎながら何かをやっているので手元を覗き込みながら尋ねる。
「これか?これはラテアートだ。カフェラテにミルクの泡で絵を描いてるんだ。うちの喫茶店では、サービスでやってるんだ」
「うわぁ……綺麗……」
思わず口からそう言葉が漏れた。
「リゼさんってとても器用ですね。凄いです」
「大したことじゃないよ」
リゼさんはそう言うけど、僕からしてみれば十分に凄い。
なんていうか、リゼさんってかっこいいな……………
「そうだ。テイもやってみるか?」
「いいんですか?」
「もちろんだ」
「あ!私もやりたい!」
するとココア姉が会話に割り込んでくる。
「お!ココアもやるか?」
「もちろん!これでも絵で金賞貰ったことあるんだよ」
「町内会の小学校低学年の部と言うのは無しな」
「うっ……」
ちなみにその絵、今だに実家に残ってます。
額縁に入れて……………………
「まぁ、手本としてはこんな感じだ」
そう言ってリゼさんは素早く、ラテアートを三杯作る。
「うわぁ、凄いよ!リゼちゃんって絵上手いんだね!ねぇ、もう一つ作って!」
「仕方ないなぁ。よく見てろよ」
そう言うとリゼさんはまるで曲芸の様な動きでコーヒーにミルクを淹れ、そして、マドラーを使い、泡で絵を描いていく。
「出来た!」
出来たのは戦車だった。
しっかり模様が描かれ、砲塔からは煙が立ち上ってる絵だ。
「凄い!」
「そんな上手くないって!」
「いや……上手って言うか………人間技じゃないよ…………」
よく小さな面で、これだけの絵が描けるなぁ……………
「よし、私たちもやるよ!」
「うん」
「頑張れよ」
僕とココア姉は一緒に並び絵を描いていく。
取り敢えず簡単な感じでやるつもりで六芒星を描いてみた。
意外と六芒星は簡単に描けたので、その周りに小さく適当に英語の様な文字も描いていく。
「出来た」
「どれどれ?」
リゼさんが僕の手元を覗き込むと、へーっと言った。
「はじめてにしては上出来じゃないか。この調子で練習していけばもっと凄いのが描けるぞ」
「ありがとうございます。もっと頑張ります」
「ああ、その意気だぞ」
そう言ってリゼさんはまた頭を撫でて来る。
まぁ、いやじゃないけど……………
「あうっ………イメージ通りに描けない…………」
そう言うココア姉のコーヒーにはウサギのようなものが描かれていた。
それを見てリゼさんはフルフルと震え出した。
「笑われてる!?」
(可愛い………!!)
「笑うなんて酷いよぉ………ねぇ、チノちゃんも描いてみてよ」
「私もですか?」
ココア姉に言われて、チノもラテアートを始める。
「できました」
チノの書いたラテアートはなんか芸術ぽかった。
「チノちゃんも仲間!」
「仲間?」
ココア姉はチノの絵を下手な絵だと思い込み、仲間だと言い出す。
「違うぞ、ココア。こういう絵は私たちのと一緒にしちゃ………」
「リゼさん言うだけ無駄です。今のココア姉には何を言っても無駄でしかないですから」
そう言いながらチノの手を取りはしゃいでるココア姉を見る。
全く、本当にしょうがない人だ。