ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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REBORN最終巻を読んで衝動的に書いてしまいました
指摘とかあればどうぞ


YES!ウサギが呼びました
箱庭来る!


 虹の代理戦争からしばらくして少年、沢田綱吉ことツナはまた仲間達や家庭教師のリボーンとともにハチャメチャな日々を過ごしていた。ただでさえハチャメチャな日々がシモンファミリーが並中に来たことでさらにその規模が広まっている。

 

「つ、疲れた~」

 

「相変わらずなさけねえぞ。そんなことでネオボンゴレⅠ世になれると思ってんのか?」

 

「だからマフィアになんかならないって何回言わせ……イテッ!」

 

 ツナは家に帰るなり玄関にへたり込む。そしてその横を歩いていた赤ん坊、リボーンはツナの疲れきった顔を軽く蹴飛ばした。今日も日がなリボーンの妙な特訓につき合わされ、友人の獄寺隼人や山本武、それにシモンの古里炎真が付き合いそれを風紀委員の雲雀恭弥や粛清委員の鈴木アーデルハイトに目をつけられるといった一連の騒動が起こって、本日も帰りが遅くなった。

 

 この少年は少し前まで見た目人畜無害で何をやってもダメなごく普通の中学生だった。しかし突然現れたその赤ん坊によって格式ある大マフィアであるボンゴレファミリーのボス候補であることを告げられて立派なボンゴレⅩ世(デーチモ)になるように育て上げると宣言されてしまったのだ。彼もそれを頑なに拒み続け、やっとリボーンを諦めさせることができたかと思えば今度は名前を変えてネオ・ボンゴレⅠ世になるようにと九代目の許可をもらい、戻ってきてしまったのだった。

 

 ツナは自分の部屋に行く途中に牛の格好をしたアホそうな子ども、ランボと中華服を着た子ども、イーピンが喧嘩しているのを止めてまた疲れる。部屋のベッドに大の字に寝転がった。リボーンは座り込んで自分の銃の手入れをしている。

 

『ツっくーん! ごはんできたわよー!』

 

「はーい!」

 

 下から彼の母沢田奈々の声がドア越しに響く。しかしツナは疲れきっていて今は眠りたかった。

 

「先行ってるぞ」

 

「わかった……」 

 

 そう言ってリボーンは小さい身体で器用にドアを開けて出て行った。

 

 ツナはダルそうに上体を起こすと部屋を見回す。小さなハンモック(リボーン用)といい立てかけられた銃(リボーンの私物)といい約3分の1は自分の部屋をリボーンに侵食されてることを再確認して溜息をついた。そして次に目についた手紙。

 

「何だろ? 母さんがおいてったのかな?」

 

 今時珍しいキャンドルの蝋で止められている手紙で、表にも裏にも差出人の名前さえ書かれていない。誰かのいたずらだと思い捨てようとしたが、以前炎真の手紙に気がつかなかったせいでシモンファミリーの暴走が起こったことを思い出し、慌てて開封した(そのことは事件の後炎真に聞いて謝った)。もしこの場にリボーンがいたら「少しは警戒しやがれダメツナ」と蹴りを入れられてもおかしくない。

 

「『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』……何だこれ? 炎真君じゃないよな……かといって九代目でもないだろうし」

 

 あとでリボーンにでも聞いてみようと思った瞬間に辺り一面にまばゆい光が立ち込め、次の瞬間にはツナは自分の持っていた鞄ごと部屋から消えていた。

 

 

 

 

「んなーーーーーーーーーー!!?」

 

 透き通るように青い大空の下を空中落下していることに気がついたツナは絶叫し恐怖のあまり涙を流す。彼は基本へたれだ。ジェットコースターやフリーフォールのような絶叫マシンは自分から乗ろうとしないしバンジージャンプなんてもってのほか。

 

「ひぃぃいいいいいいいい!!」

 

 周りには他にも誰かいる気がしたがそんなことに構っていられなかった。とにかく恐い。未来に言った時さえ急に空中に放りだされはしなかったし。しかし棺桶の中からのスタートはそれはそれで薄気味悪さがあった。

 

 いつまでも紐なしバンジーが続くわけでもなくツナは真下にあった湖に不時着する。普通なら水面に激突してバラバラになって死ぬだろうが、それは幾重にもある緩衝材のような薄い水膜ために防がれた。

 他三人は問題ないだろうが、ツナにはここで新しい問題が発生した。彼は泳げないのだ。

 

「お、溺れる! 死ぬ! 死んじゃう!」

 

 あっぷあっぷとパニックになった状態でめちゃくちゃに手足をバタつかせて必死で溺れまいと水面から口を出す。それを同じく溺れていた猫を引っ張りあげている飼い主の少女がその様子を不思議そうに観察していた。

 助けてやれよ。

 

「足……つくよ?」

 

「えっ!? ……あっ」

 

 手を出そうとしなかった理由はそれらしい。

 湖は思ったほど深くなく、ツナの身長でも十分足がついた。

 

(は、恥ずかしーーーーーー!!)

 

 ツナの顔は羞恥心で真っ赤になっている。初対面の女の子(しかも普通に可愛い)相手に情けない格好を見せたことがその恥ずかしさを一層強くしている。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句に、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

 ツナや先程の少女以外にも空中落下していた人物がいたようだった。長髪でどこか高飛車そうな少女と金髪で学ランを着た所謂不良っぽさのある少年。二人は今の状況に悪態をついている。

 

(金髪の人は初めて会ったころの獄寺くんに似てるな。それとあの女の子は……ちょっとビアンキっぽい。それでさっき助けてくれた子はクロームみたいかな?)

 

 ツナは近くにいる状況を同じくする少年少女を自分の知り合いに当てはめてみた。

 

「うわ、制服がびしょびしょだよ……」

 

「ホントよ! この服お気に入りだったのに!」

 

 全員服を絞って水を出す。火がないから乾くのに時間がかかりそうだ。

 

(死ぬ気の炎で服乾かないかな? ……そうだ! バッグの中身!)

 

 中の教科書類はほとんど学校に置いてきているのが幸いして思いのほかダメージは少なかった。リボーンに肌身離さず持っとけと言われていた死ぬ気丸、X(イクス)グローブ、ヘッドホン、コンタクトディスプレイも濡れているが問題はなさそうだ。そもそもスパナは水中戦も考慮してつくっているから防水機能もついていて当たり前なのだが、そのことを確認してツナは安堵する。首にかかってるリングもあるからとりあえず戦闘面での心配はなさそうだ。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは『オマエ』って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて」 

 

 ツナが鞄を漁っていたら、いつの間にやら自己紹介の方向に話が進んでいる。

 

「それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?」

 

「……春日部耀。以下同文」

 

(春日部さんっていうんだ。後でお礼言っておこう)

 

「そう。よろしく春日部さん。それで野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

 とりあえずこの逆廻十六夜という少年と久遠飛鳥という少女の相性は悪そうだというのをツナは理解した。

 

「それで、そこのナヨナヨして平凡そうなそこの貴方は?」

 

「(いきなりえらい言われようだーーーーーー!!)え、えっと沢田綱吉です」

 

(綱吉……徳川の将軍と同じ名前ね。……名前負けしてるわね)

(なんかなさけなさそうなツラしてんな~。何か隠してんのか?)

(ツナ缶……そういえばここに猫の餌ってあるかな?)

 

 他三人のツナの評価はえらく低かった。うち一人は他のこと考えている始末。それもその筈、彼は今までみんなからダメツナと渾名をつけられている程のダメッぷりなのだから。

 

「で、呼び出されたいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

 

「ええ、そうよね。何の説明もないままでは動きようがないもの」

 

(オレはとりあえず帰りたいんですけどーーーー! というか何でこの人たち全然動じてないの!? )

 

 ツナは帰って寝たかった。奈々や父親の家光にも何も言わずにここへ来てしまったし、友人達もツナがいなくなったことを知れば必死になって探すだろう。しかしこの二人を前にして下手なことは言えない。もう一人も我関せず状態でビビリなツナでは積極的に話そうという気になかなかなれない。

 

 そしてこの手の妙な現象に多く遭遇してある程度耐性のあるツナはともかくこの三人の冷静さはツナから見ても異常だった。未来に連れてこられた京子やハルでさえ終始不安だらけであったし。 

 

「―――仕方ねぇな。こうなったらそこに隠れているやつにでも話を聞くか?」

 

(え? あっ!!)

 

 突然の十六夜の発言にツナは戸惑った。そして彼の超直感が働き、この場にもう一人何者かが隠れていることを察知する。

 

「なんだ?貴方も気づいてたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだったんだぜ? そっちの二人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「気がついたのはついさっきだけどあそこに……」

 

 ツナが指を差した先の草陰からウサギの耳がはみ出しているのが一瞬だけ見えた。

 

「や、やだなあ、そんな怖い顔で見られると――」

 

「ようし、出てこないんじゃ仕方がねえ」

 

 物陰に隠れていたウサミミをつけている女性がおずおずと出てこようとした瞬間、逆廻十六夜が明らかに普通ではない脚力で跳躍した。そして女性のすぐ近くの地面が彼の跳び蹴りよって思いっきり抉れる。

 

「マジでーーーーー!!?」

 

「なにあれ?」

 

「コスプレ?」

 

(ツッコむとこそっち!?)

 

 ツナ以外の女二人はただの跳び蹴りで地面を抉ったことよりウサミミをつけた女性が現れたことに注目している。

 

「違います、黒ウサギはコスプレなどでは――!?」

 

 黒ウサギと名乗った少女が抗弁しようとするも十六夜がまたも人並み外れた威力の蹴りをお見舞いし、それをバック転で回避する。どちらも超人レベルの技の応酬だ。

 

 そこに春日部耀が加わり猫のような動きで辺りをピョンピョン跳びまわる黒ウサギを追跡。この中では一番まともそうかと思いきやこの子も充分異常だった。

 

(そういえばラル・ミルチにいきなり襲われた時のことを思い出すな~)

 

 あの時は何もわからずいきなり襲撃されて、その後現状を知ったのだった。

  

 ――と、そんな感じでツナが現実逃避していると久遠飛鳥にも動きがあった。

 

「鳥たちよ、彼女の動きを(・・・・・・)封じなさい(・・・・・)!」

 

 彼女の命令に従うかのように無数の鳥たちが黒ウサギを取り囲み動くのを阻止。その誠実さはまるで死ぬ気の炎を注入された(ボックス)アニマルのようであった。跳んでいた黒ウサギはいつまでも滞空していることはできずに地面に尻餅をついた。

 そしてツナを除く三人にあえなく囲まれてしまう。

 

(あの人なら元の世界に帰る方法知って……るといいな)

 

 

 

 

「――あ、あり得ないのですよ、学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに間違いないのデス」

 

「いいからさっさと話せ」

 

(鬼がいる! この人たち鬼畜過ぎだろーーーー!)

 

 黒ウサギはツナ以外の三人に寄ってたかって虐められている。ウサギ耳を引っ張られて半泣き状態の黒ウサギ。それでも何とか気を取り直したのか咳払いをして手を広げ高らかに宣言した。

 

「ようこそ、"箱庭の世界"へ! 我々は貴方がたにギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと思いまして、この世界にご招待いたしました!」

 

(ギフトゲーム? 『チョイス』みたいなものかな?)

 

 ツナは白蘭と(トゥリニセッテ)を賭けて戦ったゲームのことを真っ先に思い浮かべた。

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです! 既にお気づきかもしれませんが、貴方がたは皆、普通の人間ではありません!」

 

(それオレも含まれてんの!?)

 

 ツナ自身は自分を人外扱いされることには心外であるが、すでに人外レベルの相手に何度も一対一で戦い、勝ち残っているので普段はダメでも死ぬ気になればツナの戦闘力も充分人外レベルだったりするのだ。

 

「皆様の持つその特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を駆使して、あるいは賭けて競いあうゲームのこと。この箱庭の世界はその為のステージとして造られたものなのですよ!」

 

(恩恵ってことはみんな何かの才能とか能力を持ってるんだ。才能……才能……アレ? 何か悲しくなってきたーーーーー)

 

 彼は悲しいほどに何かをすることへの才能がないことに思い当たる。今までのことは全て自分が死ぬ気にならなければできなかったことばかり。

 

「恩恵――つまり自分の力を賭けなければいけないの?」

 

 ツナが落ち込んでいる間にも飛鳥が黒ウサギへと質問をする。黒ウサギの言ったことが本当であれば飛鳥の能力(ギフト)はおそらく『生き物を操る能力』といったところだろうか。

 残りの二人は身体能力が優れているくらいでまだ不明瞭な点が多い。

 

「そうとは限りません。ゲームのチップは様々です。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど、得られる賞品の価値も高くなるというものです。ですが当然、賞品を手に入れるためには"主催者(ホスト)"の提示した条件をクリアし、ゲームに勝利しなければなりません」

 

「……"主権者(ホスト)"って何?」

 

 今度は耀が黒ウサギへと質問した。

 

 ここでツナは帰る方法を聞きだすチャンスをまた一度逃してしまったことに今更気がついた。

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏から、商店街のご主人まで。それに合わせてゲームのレベルも、命懸けの凶悪、難解なものから福引き的なものまで、多種多様に揃っているのでございますよ!」

 

 ツナはとりあえず説明が全部終わってからでも遅くはないと自分に慰めの言葉をかけて気を取り直した。

 

「話を聞いただけではわからないことも多いでしょう、なのでここで簡単なゲームをしませんか?」

 

(あれ?)

 

 てっきり「他に何か質問はございませんかー?」と聞いてくれるものだと思って待っていたらおかしな方向に話が進んでいる。

 

「この世界にはコミュニティというものが存在します」

 

 どこからともなく取り出したトランプをシャッフルしながらも、黒ウサギは説明を続ける。

 

「この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに所属しなければなりません。いえ、所属しなければ生きていくことさえ困難と言っても過言ではないのです!」

 

 力説する黒ウサギがパチンと指を鳴らすと、宙に突然カードテーブルが現れ、ドサリと地面に着地する。

 

「みなさんを黒ウサギの所属するコミュニティに入れてさしあげても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。ええ、まったく本当に困るのです、むしろお荷物・邪魔者・足手まといなのです!」

 

 この言葉にツナは内心グサッときたと同時に歓喜した。別に自分がここにいる必要はないのだと、別に帰ってくれても構わないのだから。

 

「あ、じゃあ元の世界に帰してください!」

 

「え゛!?」

 

 ツナの挙手と同時に放った帰宅願望の言葉に黒ウサギはフリーズした。

 

(え、ちょ! 計算外です。ここでいきなり怖気づく方がこの問題児の中にいらっしゃるとは! 一応強いギフト持ちたちに手紙を出したからあの方もかなり強い……筈です。あんまりそうは見えませんが。でもここで帰してしまったら黒ウサギの計画がパーに……うーん)

 

 変な声を出してしまった以外は平静を装っている黒ウサギも内心は冷や汗だらだらで心臓がバクバクなっている。ギフト持ちのほとんどはプライド高そうなやつら多いから煽っておけば乗ってくるだろうと考えていたから帰る気満々のツナのことは予想外であった。

 

「(仕方ありません。この方についてはちょっと予定を変更して)ちょっとこっちへ」

 

「は?」

 

 黒ウサギはツナの手を引いて他三人から少し離れる。

 

「あのー?」

 

「あ、はい聞こえてますよ! そうですか、帰りたいんですか。でもせっかくここまで来たのですから少し遊んでから帰るっていうのもいいんじゃないでしょうか?」

 

「え? でもさっき足手まといになるからいらないって……」

 

「またまたご謙遜を! ここに着たってことはそれだけ実力があるってことじゃないですか!」

 

 黒ウサギは作戦変更しおだてて引き止めることにした。しかしそれが反ってツナの不信感を煽る。そしてツナも黒ウサギがツナたちを帰したくないのだとなんとなく理解した。

 

「あのー。もしかしてオレたちをここに呼んだのには何か理由があるんじゃ……」

 

「いや……それはその……」

 

「話してみてくれませんか? もしかしたらオレでも力になれるかもしれないし」

 

 チキンだけども大がつく程のお人好し。そして全てを包み込む大空である彼は目の前で困っている人は見捨てられないのだ。さっきまでのオドオドした態度が一変して真剣な表情で黒ウサギを見つめている。

 

 そんなツナの表情に気圧されたのか、黒ウサギは彼にならと全てを打ち明けたのだった


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